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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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15 福神漬けもあるよ


「えっと、不味かったかしら……」


 委員長が珍しく不安そうな顔でこちらを見てくる。これは可愛いかも。


「ううん、ちょっと鑑定をお願いしたかったのだけど、一撃で倒せるならその必要もなかったよね」


「ご、ごめんなさい……」


「いや、僕のほうも言葉足らずだったから……」


 ハハハと乾いた笑い声が部屋に響く。天沢も苦笑いを浮かべている。


 無事、守護者を倒したというのになんだこの空気……。


「よ、よし、守護者も倒したし今日はこれで休もう」


「そ、そうね」


「そ、そうですね」


 気まずい空気の中、入り口とは反対側の扉が開いたので外に出る。下の階層へ続く階段を下り、少し歩いて適当なところを見つけるとそこで休むことにした。


 変な空気を吹き飛ばすために、秘密兵器を投入する。


「じゃーん。おーこーめーー」


 2人とも目の色を変えてこちらを見る。目が真剣過ぎてちょっと怖い。


「こっちに来てから食べてなかったでしょ。だからちょうどいい機会だと思ってね」


「いいわね、それでおかずはどうするのかしら?」


 委員長が期待した目で見てくる。

 カレーのルー、ジャガイモ、たまねぎ、ニンジンを取り出す。


「じゃーん。カレーライスーー」


「ほんとですか、まさかこっちでカレーが食べられるなんて」


「なんと、福神漬けもあるよ!」


「そう。で、ご飯はどうやって炊くのかしら?」


 あれ? 福神漬けはスルー? もしかしてラッキョ派なのかな?


「もちろん飯盒もあるよ、飯盒でならご飯炊いたことあるし」


 アウトドアでご飯炊くならやっぱり飯盒でしょ。


「じゃあ分担して作りましょうか」


「はい、料理なら任せて下さい」


 天沢は女子力高そうだから安心だ。委員長も料理とかできそうな雰囲気。

 インベントリからテーブル、イス、鍋、まな板、水、包丁、お玉、炭、バーベキューコンロなどを取り出す。


「じゃあ僕は周りの警戒をしているから料理、よろしくね」


 さっとその場を離れようと背を向ける、が止められる。


「あなた、サボる気?」


 げっ!


「べ、別に手伝うのはいいのだけれど、ほ、ほら久しぶりのカレーは美味しく食べたいでしょ?」


 僕はあまり料理が得意じゃないんだよね……。


「そうね、じゃあジャガイモの皮むきをお願いね、どうせピーラーを持っているんでしょ」


 ……ばれてる。僕が包丁で皮をむくと綺麗に剥けないんだよね、綺麗に剥ける人は尊敬するよ。ピーラーを取り出し、ジャガイモの皮をむき始める。委員長はお米を研ぎ、天沢はたまねぎを切っている。2人とも楽しそうだ。



 食事が終わると2人とも笑顔になっている。かなりの量を作ったのだけどみんなおかわりしてた。やはりカレーは最強だよね。

 残ったカレーをインベントリに放り込み、テントを取り出す。テントの周囲に障壁を展開し魔物が入ってこれないようにして本日就寝。



 ◇



 迷宮2日目


 昨夜のカレーをインベントリから取り出したところ、まだ温かいことが判明した。時間停止タイプか遅延タイプなのだろう。2日目カレーを満喫し、探索へゴー。


 昨日の影響のせいか、委員長が少しおとなしい。なので基本的に天沢が優先して魔物を倒していく。

 守護者部屋を超えて、なにか変わるのかと思いきや特に大きな変化はなく、魔物が少しずつ強くなってきたなと感じるぐらいだった。それでも僕達が強いのか、魔物がまだそこまで強くないのか、苦労することなく倒していく。




 35階層に入り初めて宝箱を発見した。ちょうど袋小路になっている場所があり、そこに分かりやすく大きくて綺麗な装飾が施された宝箱が鎮座していた。

 ここまでずっと出てこなかったので、もしかして出てこないかもと思っていた。それが急に出てきたものだから困惑する。

 さて、開けるべきか、開けないべきか。罠や魔物という可能性も捨てきれないので躊躇する。

 委員長が宝箱に近づき、躊躇なく上蓋の縁に手を入れ宝箱を開ける。


「ん…しょ」


 慌てて宝箱に近づき罠を警戒するが、特になにも起こらなかった。


「委員長!」


「え? 何かしら?」


「何かしら? じゃないから! 罠があったらどうするの!」


 確かに僕も天沢も治療魔法使えるけど、危険だってあるのだから。


「ごめんなさい、でも鑑定には【宝箱(罠なし)】と出ていたものだから…」


 ……鑑定で確認したのか。


「そっか、でも何があるか分からないから不用意には近づかないようにして」


「分かったわ、次からは気をつけるわ」


 僕が委員長に注意するのを天沢が珍しそうに見ている。

 ちょっと恥ずかしくなったので宝箱の中身を拝見する。


「それじゃあ見ようか」


「そうね」


「はい」


 中を覗くと弓、杖、鞄、ネックレスの4つが入っていた。弓は僕か委員長がユニークスキルのおかげで使えるだろうけど、矢が入っていない。しばらくはインベントリの中で眠ってもらおう。杖は天沢が使えるけど、既に持ってるから、今使っている杖よりいい杖なら変更だね。


「委員長、鑑定お願い」


「これは全て魔道具みたいね。弓には命中率補正が、杖には魔力+20がついてるわ。鞄は収納バッグ、ネックレスは解呪のネックレスよ」


 天沢の今の杖は魔力+10しかついてなかったから変更だね。


「じゃあ杖と鞄は天沢が持って、ネックレスは委員長が持つのはどう? 弓は矢がないので今はインベントリ行きで」


「私はそれでいいわ」


 委員長は賛成。


「私が2つも貰ってもいいのですか?」


「うん、収納バッグは後衛の天沢が持つほうが良いと思うし」


「私も剣を振るのに邪魔だから問題ないわ」


 それ、女子の会話じゃないよね。


「分かりました、それでは私の私物はこちらに入れておきますね」


 インベントリから天沢の私物を取り出し、収納バッグに入れていく。保存食や水なんかもどんどん入れていくが、結構入る。もしかしたらかなり容量が大きいのかもしれないな。


「でもこの鞄が壊れたら中身はどうなるのかな?」


「飛び出るんじゃないかしら?」


「飛び出るっ!?」


 僕がいないときに外で荷物をばら撒いたら片付けが大変だよね。収納バッグの中にも鞄とか入れといたほうがいいのかも。


「魔道具は丈夫なものが多いから、あまり気にしないで良いと思うわ」


「そ、そうですよね……」


「35階層でこれだけ良い物が出たのなら、もっと下層なら凄い物が期待できるよね」


「下層なら冒険者も少ないでしょうし、見つけられてない宝箱も多いかもしれないわね」


「できれば生活に役立つ物が欲しいですね」


「私は強力な武器がいいわね」


 ……委員長はこの世界のほうが合っているんじゃないかな。


お読み頂きありがとうございます。

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