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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
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14 再び迷宮へ


「…きな…い、お……さい、いい加減起きなさい」


 体がゆさゆさと揺らされる。委員長が呆れた顔をしているけど、前にも似たようなことがあったような…。


「……ん? どうしたの?」


「もう朝よ、迷宮に潜るって言ったこと忘れたの?」


 ……迷宮? したかな、そんな話?


「はぁ、どうしてこんなに寝起きが悪いのかしら……」


 ほんとどうしてだろう?



 ◇



 朝食を食べ、迷宮に向かうと馬車で一緒だった【断罪の剣】を見つけた。


「お、昨日の騎士様じゃねえか、3人とも迷宮に潜るのかい?」


「もちろん、とりあえず最下層を目指そうかな」


「がははは、そりゃいい。迷宮に来た以上は最下層を目指さないとな」


「でも最下層って何があるの?」


 ボスがいてお宝があるだけなのかな?


「小さい迷宮なら迷宮主がいてそいつを倒すとそこそこのお宝が手に入るらしいぜ。ただこうでかい迷宮はよく分かっていないんだよな。凄いお宝があるとかドラゴンがいるとか別の世界に繋がっているみたいな話を聞いたことがあるけど、実際はどうなんだろうな?」


 「「「!?」」」


「面白そうな話だね」


「まあな、実際は見てのお楽しみってやつだろ」


「参考になったよ、ありがとう」


「がははは、いいってことよ」


 まさかこんなところでこんな話が聞けるとはね。



 ◇



 迷宮に入ると前回よりも冒険者の数が多い。おそらく進化の影響で下に行くのを控えている冒険者が上層に多いのだろう。

 僕たちは前回上がってきているから道は覚えているのでさっさと10階層まで行くことにしよう。一応ステータス的に僕が一番強いので、地図を僕が書くこととなった。

 進化後すぐは魔物が溢れていたけれど、今はそんなこともなく、前回の行きよりもむしろ少ない遭遇率だ。冒険者が上層に多い影響だろうね。


「意外に順調ね。もっと手こずるかと思っていたわ」


 魔物が現れるたびに委員長の蛇腹剣が魔物を切り裂いていく。


「そ、そうですね」


「委員長……」


「何かしら?」


「どうして1人で魔物を全て倒しているの?」


「……あら、つい」


 ついって……。天沢も引いているし。僕や天沢が手を出す前に蛇腹剣が切り裂くものだから、出番がないのだけど……。


「ここはレベルが一番低い天沢がまず戦っていくべきじゃないかな……」


「そうね、ごめんなさい天沢さん」


「い、いえ」


 なるほど、委員長が戦闘狂なのはよく分かった。


「このメンバーはバランスはいいと思うけど、盗賊ポジションがいないよね」


「盗賊ですか?」


「うん、盗賊っていうのは本物の盗賊ではなく罠を発見したり解除したりとトレジャーハンターみたいな役職のことだよ」


「……確かに罠は危険ですね」


「……だ、だよね」


 しまった。藪蛇だ。天沢が気を落とした。目の前で好きな人が罠で跳ばされたのだから当然だよね。


「パーティーメンバーでも増やしたいのかしら?」


「今はまだ考えてないけど、攻略が行き詰まれば考えるかな」


「そうね、普通は3人で潜ったりしないでしょうし」


 他の冒険者達は5、6人ぐらいで潜っていたみたいだしね。人数が多いと報酬なんかでトラブルが出てくるかもしれないけど、安全に攻略ができそうだし、2人ぐらいなら増やしたいとこだよね。



 ◇



「まさか20階層まで簡単に行けるとは思ってなかったわね」


「そうですね、ですがこの階層に守護者部屋があると聞いていますので、強い守護者がいるのではないのでしょうか」


「それなんだけど、どうもこの先に下りる階段があるみたい」


 空間把握が下に下りる階段を捉えている。


「え? ですがこの階層には守護者がいるって聞きましたよ」


「もしかしたら、進化によって変わってしまったのかもしれないわね」


「そうなると最下層は相当先になるかもだよね」


「ええ、なので今日は25階層までで休むというのはどうかしら?」


「そうですね」


「賛成ー」



 ◇



 25階層に下りると直線の通路があり、その先に黒くて大きな扉がある。その手前には広い部屋があり、そこには3組の冒険者パーティーがいた。そのうち一組は知っているパーティーだ。


「あれ? 断罪の剣だ」


「おぉ、三騎士もここまできたのか、早かったな」


「断罪さんとこも早いですね、進化してから初めてのはずなのに」


「がははは、そこは経験と勘よ。それにあまり時間をかけると他の奴らにお宝持っていかれるからな」


 周りの冒険者を見ながらニヤリと笑う。


「なるほどね、それでここで何してるの? 順番待ち?」


「守護者部屋は初めてか、この扉は今入っているパーティーが守護者を倒すか全滅するかでないと開かなくてな、終わるまで待っているところだ」


 ふーん、周りから視線を感じるが、品定めされてるのかな。


「ちなみに一度に何人まで入れるのか決まっているの?」


 断罪の剣は5人だが、他の2組は6人いる。


「ああ、6人までだ。だからパーティーは5人から6人が基本だ」


「そうなのか、僕も2人ほどメンバー増やしたいとは思っているんだけどね」


「なら前衛2人、後衛2人。後はどちらもできるやつか回復役がいるのが理想だな」


 僕と委員長は前衛も後衛もどちらも出来るから、誰が入っても形は調うけど、委員長は前衛をやりたがりそうだね。


「参考にするよ、ありがとう」


「おうよ。お、ちょうど色が変わったな。じゃあちょっと行ってくるわ」


 黒かった扉の色が上から白に変わっていく。

 なるほど、白くなったら終わった合図か。


「ささっと頼むよ」


 がはははと笑いながら扉に入っていく。


「他に2組いるし、もう少し先になりそうだね」


「そうね、順番がくるまで休憩にしましょ」


「はい」


 干し肉を齧りながら壁際まで歩き座る。


「行儀悪いわよ」


 まさか迷宮で行儀について注意されるとは思わなかった。さすが委員長。


「2人も食べる?」


 干し肉を差し出す。


「頂くわ」


「ありがとうございます」


 お腹空いていたのかな? 守護者を倒したら晩御飯にしよう。



 ◇



 30分ほどで僕達の番が回ってきた。1組約10分ってことはそこまで強い守護者ではないのだろう。待ってる間にも2組ほどきた。


「じゃあ行くよ」


「私が倒してしまっていいのよね」


「え? そんな話してました?」


 絶対してない。あと変なフラグは立てないで欲しい。


 扉を開けて守護者部屋にはいる。中は学校の運動場ぐらいの広さがあり、高さも50メートルほどだ。そしてその真ん中に大きな魔方陣がある。


 僕達が入ると扉が勝手に閉まっていく。扉が閉まり終わると、魔方陣が光り始めた。その光の中から豚の頭をもつオークの姿が浮かび上がってくる。体長は約2メートルの巨漢で、右手には剣を持ち、左手には丸い盾を持っている。体は黒い鎧に包まれているが唯一、頭のみは兜をかぶっておらず、狙うならそこか鎧の隙間だろう。


 ここはまず、鑑定だよね。委員長にやってもらいましょう。


「委員長、お願いできる?」


「分かったわ、任せて」


 委員長は持っていた蛇腹剣を伸ばし、オークの頭を一突きにする。


 刺さった剣を引き戻すと同時にオークは膝を突き、顔から倒れた。


「え?」


「え?」


 僕と委員長が見つめ合う……。


 ………。


 よ、よし、次に進もう。


お読み頂きありがとうございます。

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