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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第1章 主人公を求めて
12/129

12 計画

本日2話投稿します。

18時に2話目。


 迷宮を出たクラスメイト達は疲れ果てていた。

 迷宮の進化により、道が変わり、階段を探すために歩き回る必要があった。さらに度重なる魔物の襲撃により休む暇もなかったからだ。

 秋人が魔方陣により跳ばされた事も影響しているだろう。自分もいつ何処かに跳ばされるか分からないものだから、気を抜くことができなかったのだろう。

 来た当初とは違い口数も少なく、自分たちが危険な場所にいたということにやっと理解が追いついたのだろう。


 騎士団長達は今後の予定について話し合っている。進化直後は迷宮が不安定になり危険も大きく、現状の人数では生徒達を守れるかどうか分からないからだ。もともと3日間潜り、迷宮でレベルを上げるとともに、魔物を倒すことに慣れてもらいたかったのだが、今それをすると犠牲が増える可能性とストレスやトラウマを植えつけるだけになりかねない。よって迷宮が安定するまでは、迷宮探索は延期となることが決まった。


 ラビリポルタから王都への帰り道は順調だったが、やはりみんなの気分は落ち込んでおり終始静かなままだった。


 王都に帰った一行は王座の間にて王に報告を行い、今回の迷宮探索は事実上の失敗と言う結果で幕を閉じた。

 王宮では今回の失敗により勇者達が使い物にならないのではないかと噂され、失ったのが一番の能力の低い秋人だと知ってむしろ良かったのではないかと言うものもいた。

 本来であれば今回の迷宮探索を成功させ、勇者の存在を民衆に知らしめる予定だったが、失敗したことにより公表は次回に持ち越された。


 そして王宮に戻ってきた僕達にはまた一ヶ月後に迷宮探索に行くことが報告された。


「私はもう迷宮には行きたくないです」

「俺もしばらく迷宮はいいや」

「わ、私も嫌です」


 と、迷宮反対者が出てきた。

 そこでリーダー様が前に出てきた。


「じゃあ迷宮探索をするグループとしないグループに分けよう。ただし何があるか分からないから、探索しないグループも訓練だけはいつも通りするということでどうかな?」


 訓練はいつも通り……訓練?


「じゃあ探索をしないグループは何をするんだ?」


「別の方法で元の世界に戻る方法を探すってのはどうかな? もしも魔王のコアで帰れなかった時のことも考えておいたほうがいいと思うんだよ」


「それはいいかも」

「私もそっちのグループがいい」

「安全第一だよな」


 という訳でグループ分けだ。迷宮探索グループは18人、元の世界に戻る方法を探すグループは17人。やはり迷宮探索グループのほうが男子が多く、元の世界に戻る方法を探すグループは女子が多い。

 僕? 僕は元の世界に戻る方法を探すグループだよ。みんな、え? って顔をしていたけどね。別に僕はこのグループでやっていきたい訳ではない。単独で動くにはこっちのほうが都合が良かっただけだ。だから勝手に迷宮にも潜るつもりでいる。


「で、ではしばらくはこのグループ分けでやっていこう」


 何故か若干リーダー様の顔が引きつっている気がする。……ああ、能力の高い委員長がこっちのグループにいるからだね。委員長と目が合うと「あなたが原因だから」って言っている気がする。……何故だ。



 ◇



 部屋に戻ってくると、出かける準備をする。準備と言っても荷物はインベントリの中にあるので手紙を書くだけだ。手紙を書いているとノックの音が聞こえた。


「どうぞー」


「おじゃまします」


 誰かと思ったら委員長と天沢か。


「珍しい組み合わせだね、どうしたの?」


「天沢さんが私達2人に話したいことがあるみたいで連れてきたの」


 天沢が? 元々クラスでも接点がなく、話をした機会は数えるぐらいしかなかったよね。

 もしかして僕が罠を踏んだことに気がついていて、文句を言いにきたのかな?。


「どうして、どうして2人は強いのに迷宮に潜ってくれないのですか? 2人は秋人君が心配じゃないのですか? 2人とも秋人君と仲がいいのにどうして……」


「んーそう言われても、心配とかしてないからね」


「ちょっと!」


「なっ、黒氏君が死んでもいいと思っているんですか!」


「まさか、秋人なら大丈夫、そう思っているだけだよ。そもそも秋人のユニークスキルはかなり強力だし便利だから1人でもなんとでもなるんだよ」


 主人公が死ぬわけないしね。おそらく今頃は強制修行パートの真っ最中じゃないかな。


「黒氏君のユニークスキルと言えばたしか商品売買だったかしら?」


 さすが委員長、よく覚えている。


「商品売買って物を売り買いできるスキルですよね? 便利は分かりますけど強力?」


「あのスキルは元の世界の商品も買うことができるのだよ」


「それと強力とどう繋がるのですか?」


 天沢が不思議そうな顔をする。確かに普通の人が買うことなんて一生ないからね。


「銃火器ね、確かにあれならステータスは必要としないものね」


 異世界で銃無双はあるあるだよね。


「でも銃とかって高いんじゃ…」


「アメリカで買えば日本円で5万円ぐらいの価格よ」


 さすが委員長。普通の女子高生は銃の値段なんて知らないはずなんだけどね。


「え、そんなに安いんだ。でも秋人君はお金持っていないんじゃ……」


「そこでこれの出番だよ」


 インベントリからギルドカードを取り出して見せる。


「これは?」


「これはギルドカード、冒険者や商人が持ってるカード。僕は冒険者ギルドと商業ギルドに登録しているんだよ」


「あなた訓練サボっていると思ったらそんなことしていたのね」


 委員長が呆れた顔で見てくる。


「サ、サボっていた訳じゃないし」


 あくまで社会勉強だし。


「迷宮探索時、レベル3だったのはあなたぐらいよ」


 ば、ばれている。ステータスは隠れて調べたから誰も知らないはずなのに……。


「私のレベルが10に上がったときに『鑑定』のスキルを覚えたの。それであなたのステータスも見れたのよ」


 か、鑑定だと。異世界のチートスキルの1つじゃないか、羨ましい。


「ま、まぁ色々動いていたから訓練する暇をなかなか作れなくて」


「それで、黒氏君がお金を持っている理由は?」


「色々な店に元の世界の商品を高く売って儲けてたってわけ」


「それで『交渉術』なんてスキルを取得してたのね。でもそんなお金を黒氏君が持っていたようには見えなかったけど?」


「商品売買のスキルにお金を入れておくことができるから、秋人はお金を持ち歩く必要がないんだよ」


「じゃあ秋人君は無事なんですね、良かったー」


 気が抜けたのか天沢は座り込んでしまった。


「ただ黒氏君のステータスだと、奇襲されたら終わりじゃないかしら」


 委員長ーーー! そうだけど黙っといてあげなよ……。


「え?」


「そこは運と根性でなんとか…」


「運がいい人は跳ばされたりしないわ」


 委員長ーーー! 天沢が泣きそうな顔をしてるじゃない。


「だから私はすぐにでも助けに行くべきだと思うわ」


 天沢も立ち上がる。


「私も!」


 その目はまっすぐ僕のほうを見ている。


「で、目的地は?」


「まずは北に行って、情報を集めながら移動しましょ。黒氏君が銃を使えば情報も入ってくるんじゃないかしら」


 この国はイタリアのように国境は北にしかない。それ以外の方角には海がある。


「そうですね。それにこちらでは黒目黒髪は珍しいですから」


 確かに僕も見かけたことがない。


「それで、メンバーはどうする?」


「この3人でいいんじゃないかしら、あまり多いのも無駄な時間が取られそうだし」


「そうですね、私もそれでいいと思います」


「オーケー、じゃあ今夜に王宮を出て、明日の朝に王都を出発。まずはラビリポルタに向かうよ」


「どうして夜に王宮を出るのかしら?」


「僕達だけだと王宮から出ることができないんだよ、監視の騎士がつけられることになる。そうなると王都から出られなくなるんだよ」


「つまり夜のうちにこっそり王宮を出るわけね」


「そういうこと」


「分かりました」

「分かったわ」


 こうして僕達の秋人を探す旅が始まることとなった。


お読み頂きありがとうございます。

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