第八話 駅
第八話 駅
真のマンションは二つの駅の真ん中くらいの距離にあった。
マンションの北の方面にある駅と、真が来ている駅。
真が今住んでいるマンションに引っ越しを決めた時、真はマンションの場所を見て住まいを決めたわけではなかった。
適当な性格だったのか、その時はそこまで気を配る余裕がなかったのかLDKと家賃くらいを考えて決めた。マンションの位置など、引っ越し前までは地図で見たくらいがすべてだった。
今は常連客になってしまったコンビニも最初は近くにいるのも知らず、最初は引っ越しの際に車の中で見た、結構遠くにある道路のコンビニまで出て買い物をしたこともあった。
しばらくして生活が落ち着いてから、真はやっとあまりにも周りのことを知らないことに気付いた。周りを知らないこともほどがあって、生活に問題があると思い、パソコンで地図を見ながらマンションの周りから少しずつ散歩気分で周辺を歩き回った。
それがここに引っ越しをしてきた何年かの前のことである。
北の方面にある駅は今来ている駅とはつながってない線の駅だ。私鉄でそのまま何か所の駅が一本道でそのあとは分岐線があり、北の方と北西の方に路線がつながるらしい。
「らしい」のはパソコンで地図を見ただけで、実際そこまでは行って見たことがないからだ。
でも、北の方にある駅までは行ったことがある。
行ったことは極めて少ないといえるほどそんなにないけど、その駅の前にちょっと珍しい古いゲームだけを扱っているセームショップに買い物や、終電に追われた遅い時間に東京からの帰りにその線を乗って家に帰ってきたことがあった。
特にその線の駅の利用を避ける理由はないが、わざと利用する理由もないくらいの曖昧なマンションとの距離と帰り道になんとなく利用しなかった。わざと私鉄を乗るのであれば、1か所前の駅に降り、バスに乗ってマンションへ帰るのが早いのも理由の一つだったかも知れない。
実際は遠くなかったかも知れないが、帰り道が宅地しなないからそう感じたかも知れない。
真しては「とにかく遠い!」と思っただけ。
逆に今着いた駅の場合は東京方面に行ったり来たりするときに特に遠回りしない限りはいつも利用していた。
たまには東京からの帰り道を考えると、乗り換えをしたりするのが楽だろうと思う距離までもこの線を乗って帰る。
慣れるのは恐ろしいものだ。
普通は駅について、隣にある結構大きな商店街によって食事をしたり、買い物もした。
用事がない時は歩いてマンションまで帰るか、ちょっと回って帰ることになるけど雨が降る日や風が強い日は駅の前にあるバス停でバスを乗り帰った。
真は毎日出勤をしていたサラリーマンじゃなかった。だから毎日この駅を通ったわけではない。
でも何年も同じ場所に住んでいると、その環境に馴染む。
そう。馴染んでしまった場所でこの駅を先に行って見ようと思った。
朝、バス停で待っていたバスもこの駅行きだった。
駅の前は静かだ。
風がちょっと吹くくらい。
やはり2月の風はちょっと寒い。
真は頬に当たる風で体が冷えるのを感じた。
駅の真ん中にあるバス停にはバスは一台も見つけることができない。
普通なら、出勤時間代を過ぎたといえバスも何台か停車していて、人が結構あるはずの場所なのに…。
誰もいない。
やはり普通じゃない。
コンビニやマンションの周りのことで、すでに分かってはいたはずだった。
わかっていたはずだった事実が今さら身に染みるほど感じられる。
理性では理解していたかことが、あまりにも非現実的だったので真の心の中では無意識にその事実を拒否していたかも知れない。
それがやっと今になって受け入れた。
貧血もないのに真はちょっとだけめまいがした。
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