旅立ち
次の日、ラージュは早々に村を出ることになった。
ラージュの母と父、ミルフィが村の門まで見送りに来ていた。
「旅先では体調に気を付けるんだよ」
母のエルが気づかわしげに言う。
「大丈夫だよ、小さい時から風邪なんてそうひかなかっただろ?」
「いや、お前は水浴びが好きでよく湖に行って風邪をひいてたからね」
「そんなことねぇよ」
ラージュはエルの言葉を恥ずかし気に否定する。
「ラージュ、お前は自衛団の中じゃ普通だったな、なに大抵の普通の魔物にはやられはしないさ」
父のビルがそう言う。
「いや、確かにそうかもしれないが、もう少しましな言い回しはなかったのかよ」
ラージュは笑いながら父の言葉に内心あきれる。
「ラージュ」
ミルフィがラージュを呼ぶ。
「あんた、村の外で生きていけんの?もしダメそうならいつでも帰ってきなよ」
「村に迷惑はこれ以上かけれない、でもミルフィ、ありがとう」
「ラージュ」
父のビルが落ち着いた口調で言う。
「勘違いするんじゃねぇぞ、お前はリーシア嬢ちゃんとネイバーに世話になることになる、お前はお前の意思で村を出ていくんだ。二人のせいでは決してないからな」
「「「元気で、ラージュ」」」
ビルとエル、ミルフィはそう言ってラージュを送り出した。
3人は徒歩で街道を目指した。
リーシアとネイバーが乗っていた馬は魔族との戦いで死んでしまった。
ラージュは口数少なく歩く。
リーシアは時々ラージュをチラっとみてすぐに申し訳なさそうに目をそらした。
しばらく歩いているとネイバーが言った。
「ここらで休憩だ」
「大丈夫だ、まだ歩ける」
ネイバーの言葉を否定するラージュ。
「いや、休むべきだ旅をするには体調管理も大切だ、無理をして体調を崩しては命に係わるからな」
「わかったよ」
ラージュはネイバーの言葉に従うことにした。
休憩中、ラージュはこの旅についてリーシアとネイバーに話を聞いた。
「この旅にあてはあるのか?俺は魔族に狙われる、何処に向かっているんだ?」
「私とネイバーは封印の地から逃げて来ました、しかし私は水の神ウォーティアの啓示を受け、聖者ゼラムの足跡をたどろうと思います」
「聖者ゼラムの足跡?」
ラージュは不思議そうにリーシアに尋ねた。
「ええ、ラージュさんに宿った魔剣ファルメールを封印した人物です」
リーシアは静かにそう答えた。