和平交渉 3
「……で、アンタ、一体どういうつもりなわけ?」
「ん? ああ。まぁまぁ。そんな急がないでよ」
俺と千佳は二人並んで座っていた。それに対して、黒いコートの男は部屋に入ってきても相変わらずコートを着たままである。
「貴様……よくもおめおめと姿を現せたものだな」
千佳が憎々しげに俺達の向かいに座っているコートの男、エリックに対してそういう。
エリックはにやにやしながら俺達のことを見ている。その視線はまるで俺達のことを嘗めまわしているようで見ていて不快だった。
「いやいや。怒らないでよ。ね? 俺はさぁ、別に君達を殺しに来たんじゃないんだからさ」
「ふざけるな! お前はつい一週間前、私と慎治を襲ってきたじゃないか!」
千佳が立ち上がり、エリックに対してそう言い放つ。しかし、エリックはへらへらと笑ったままで動ずる気配すらない。
「ああ。そうね。でも、気が変わったんだ」
「気が変わっただと? あまりふざけたことを言うと、今この場で私が――」
そういっていつのまにか千佳はどこから取り出したのか、銀色のナイフを手にしていた。
「ちょ……千佳。それ。危ないからしまって」
「しかし、慎治……」
「そうそう。果物ナイフじゃ、俺は殺せないよ」
エリックのその言葉に、千佳は怒りを抑えられないようだったが、しぶしぶ腰を下ろした。
「……えっと、それで、あんたは一体ここに何しに来たの?」
「ふふっ。さすが子孫様。シャルルの旦那と似て冷静だ。お人形さんとは違う」
千佳が顔を赤くしていたが、俺がチラリと見るとなんとか衝動を抑えてくれたようだった。
「わかったから……用件を言ってくれ」
「ああ、すまないね。簡単なことさ。俺と、手を組まないか?」
その言葉に思わず俺と千佳は同時に目を丸くした。
エリックだけがにやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「え……手を組む、って?」
「言葉通りの意味さ。俺と手を組む……俺と協力して、アンタらの敵、つまり、俺のボスを倒さないかっていう相談なわけだよ、子孫様」
そういってエリックは、ニンマリと下卑た笑みを浮かべたのだった。




