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欲深者は損をする

「……なんですか。それ」

「ああ。これね。君を日常から解放してくれるものだよ」


 今まで感じていた恐怖から、少女は再び開放された。

 なんだ。そういう意味だったのか、と。


「……悪いですけど、私、今度こそ帰りますから」

「え? な、なんで?」

「私、そういう薬とかは興味ないので」

「薬? 薬っていうか……え? ちょ、ちょっと」


 そのまま少女が帰って行ってしまいそうだったので、エリックは慌ててそれを引きとめた。


「なんですか? 警察、呼びますよ」

「ははは。警察ねぇ。別にいいよ。警察が俺をどうこうできるってんならだけどね」

「……なんですか? 貴方。警察の人が来たらアナタなんて、すぐに捕まりますよ?」


 そう言われて、エリックはポンと手をたたいた。

 そして、嬉しそうに少女を見る。


「そうだ。証拠を見せればいいんだな」

「え? 証拠?」

「そう。俺が、どうして君を勧誘しているのか、を」


 そういうとエリックは今度は懐から本を取り出した。

 奇妙な装丁の施された古そうな本である。


「な、なにをするんですか?」


 そういうとエリックは、本を開く。


「あ」


 そして、しまった、という顔でエリックは少女を見る。

 少女はキョトンとした顔でエリックを見る。


「なんですか?」

「あ、いや……悪いんだけど、今ハズレだったみたい」

「ハズレ、ですか?」

「うん。まぁ、いいや、とりあえず……出でよ! 我が僕よ!」


 エリックがそういうと、本が妖しく光りだす。あまりの光に少女が目をつぶってしまった。

 そして、次の瞬間、少女が目を開ける。


「え?」


 少女は驚いてしまった。

 目の前には、なぜかトカゲがいたかである。

 トカゲ、といっても少女の靴のサイズくらい。かなり大きなトカゲである。


「あの……これは?」

「えっと……それが、ハズレ」


 申し訳なさそうにエリックはそういう。

 そして、開いていた本をパタンと閉じた。

 本を閉じるとともに、少女の前にいたトカゲは姿を消した。


「とまぁ、こんな風にハズレがあるのが、この『強欲の書』の弱点だな」

「『強欲の書』……?」

「ああ。そう。っていうか、君、今のトカゲ、見えたの?」


 エリックがそういうと、少女はうなずいた。

 その反応にエリックは嬉しそうにほほ笑んだ。


「そっか。君はどうやら、この世界で言う、特別な力を持っているようだな」

「え? 私が、ですか?」

「ああ。勧誘しがいがある存在だよ。まぁ、もう一度、やってみせてあげよう」


 そういってエリックが本を開く。


「おお、当たりだ」


 エリックは嬉しそうにそういう。そして、続いて本が妖しく輝く。

 少女が目をつぶる。そして、次の瞬間、開いたときには……


「あ、ああ……」

「どう? これが、当たり」


 少女は唖然としてしまった。

 少女の前にいたのは、今度は少女の靴ほどの大きさではない。

 それこそ、車ほどの大きさもあろうというほどのオオトカゲだったのだ。


「これが、俺の……っていうか、『強欲』の力。格好いいでしょ?」


 エリックは得意げな顔で少女にそう言って見せたのだった。

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