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強欲と暴食 6

「あちゃー。やっぱダメだったか」


 ミチルが千佳に頭部を粉砕され、胴体が地面に倒れ、俺が、それをやってのけた千佳に恐怖していた其の時だった。


「あ……アンタ……」

「おお。子孫様。生きていたかい」


 エリックは俺に対して愛想よくほほ笑んできた。

 俺は思わず血を浴びて真っ赤になっている千佳をもう一度見てから、エリックを見る。


「う~ん。そうかぁ。お人形はよくできていたってわけね」

「……お前も、罪人だな?」

「あ? あ~、まぁ、そうなんだけどねぇ。いや、そうなんだけどねぇ。ちょっと、今の状態でアンタの相手をするのはちと厳しそうなんだよねぇ」


 そういうとエリックは懐から何かを取り出した。

 それは、一冊の本だった。

 エリックはそれを開くと、ニヤリと俺と千佳を見て笑う。


「まぁ、いずれあんたらを殺さないと、また俺が殺されちまうんでね。しかるべき時に君達を殺しにくるよ。じゃあな」


 そして、エリックが本を開く。

 すると、いきなりエリックの周囲をまばゆい光が包んだ。思わず俺は眼をつぶってしまう。


「……あれ?」


 そして、次の瞬間、目を開けた時にはエリックの姿はどこにもなかった。


「逃げられたか」


 千佳は悔しそうな表情でそうつぶやいた。

 そして、俺の方に顔を向ける。

 直後、千佳の体がグラリと傾いたかと思うと、そのまま千佳は倒れてしまった。


「あ……お、おい!」


 俺は慌てて千佳の傍に駆け寄る。


「千佳! おい! 千佳!」


 俺が呼びかけても千佳は返事をしない。

 ……というか、眠っていた。

 小さな寝息を立てて眠っている。


「なんだ……寝たのか」


 一安心した俺は、それからチラリと千佳の隣の、ミチルの死体に目をやった。


「あ……」


 俺が見ている前で、いきなりミチルの死体に火がついた。

 この前の犬と同じだった。炎を見る見るうちに大きくなり、あっという間にミチルの体を灰にしてしまった。


「……え? 使い魔、だったのか?」


 ミチルは、あのエリックとかいう男の使い魔だったのだろうか?

 でも、千佳は罪人だとか言っていたし……

 よくわからない。

 俺はもう一度千佳の顔を見てみた。

 すでに髪は元の色に戻っている。ただ、顔と衣服に受けた血だけが、彼女がいまさっき俺の目の前でミチルの頭部を粉砕した証だった。

 それを思うと、どうしようもない恐怖が俺を襲う。


「……いや。とりあえず、帰ろう」


 俺は千佳を背中に背負うと、ゆっくりと立ち上がった。

 思ったより軽いからだ。そして何より、柔らかかった。


「……まぁ、普通の女の子だよな」


 自分に言い聞かせるようにしながら、俺は家の方へ向かったのだった。

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