退屈な日常
「ひひっ。馬鹿だなぁ。呼び出されてやんの」
俺が職員室から出てくると同時に、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて一人の少年が近付いてきた。
「……うるせぇよ。俺と10点しか変わんねぇくせに」
俺はソイツを睨みつける。
「ははは。15点と25点じゃ偉い差だよ。大体クラスで最下位の点数なんてとるもんじゃないぜ?」
ソイツはさも嬉しそうにそう言った。なんだかその様子が酷くムカついたので、俺はそのままソイツを置いて廊下を歩き出した。
「お、おいおい、待てよ、慎治。そんなに怒らなくてもいいだろ?」
すると慌てて少年は俺のことを追ってきた。
「別に怒ってねぇよ。ただイライラしてだけだ」
「おいおい、俺とお前の仲じゃないか。これくらい冗談で済ましてくれよ」
そういってニカッと歯をむき出して笑う少年。
鷹野康人。俺の親友にして悪友である。残念ながら俺にはこんなガラの悪く、子悪党のようなヤツしか友人がいない。かといって康人が嫌いなわけではないが。
「とにかく、お説教は終わったんだしもう夏休みだぜ? 楽しみだなぁ、おい!」
なぜか急激にテンションが高くなる康人。
「はぁ。そうか」
「あ? なんだよ。そのつれない反応は」
「ん? ああ……夏休みっていってもなぁ……」
夏休みといっても、一体何があるのか。
毎日に不安があるというわけではないが、かといって充実しているわけではない。
そもそも何を以て充実というのか俺にはわからない。とにかく退屈なのだ。なんだかガキっぽいが、それが俺の正直な気持ちだった。
だから、夏休みといわれても特に喜ばしい気持ちになれるはずもなかった。勉強に身が入らないのも、この勉強をしたからどうなるというのだ、と思ってしまうのもある……いや、それはまぁ単純に勉強ができないだけかもしれないが。
とにかく俺は退屈で仕方ないのだ。
「なぁ、康人」
「ん? なんだ?」
「お前、夏休み何か予定あるのか?」
俺が訊ねると康人はキョトンとした顔をする。
そして、なぜか嬉しそうに笑った。
「そんなもん、これからできるに決まってんだろ?」
「……は?」
「予定なんてねぇよ。だけど、きっとこれから高校生一年生の夏に相応しい青春の毎日が始まるんだよ!」
目を輝かせてそう言う康人。
コイツは馬鹿だなと思う反面、こんな風に期待に旨を膨らませることができて羨ましかったりした。