徒労
そして、俺と千佳はそのまま外に出た。
罪人探しというのは一体どういうことかわからなかったが、俺はただ前を歩く千佳の後をついていく。
罪人探しって……一体何をするつもりなんだろうか?
また、ナイフを振り回したりしないことを願うばかりだが……
「あ……千佳。どこまで行くの?」
「ん? ああ。そうだな……今日は罪人の気配をあまり感じられない。適当に見回りをして帰るくらいだな」
見回りって……そもそも、罪人ってのがわからない。
人でない、異世界からの存在って……それって、イルマが言っていた俺を狙っている者たちなんだろうか?
大体、異世界の存在だって信じられないのに、そんな奴らが俺を狙っていることがそもそも信じられない。
なのに、罪人探しって……
俺と千佳はそのまま近くの公園にまでやってきた。無論、この前の二丁目の公園とは違う公園だ。もっと小さい規模の公園。
「……え? ここに罪人がいるの?」
難しそうな顔で目の前を見つめている千佳。そして、小さくため息をついた。
「いや。いないな。気配を感じられない」
「そ、そう……じゃあ、帰る?」
「いや。もう一ヶ所確認しておきたいところがある」
そういって、千佳は再び歩き出した。そもそも気配なんて感じられるものなんだろうか? でもまぁ、アリシアによって「作られた」存在である千佳ならば、そういうのも感じられるのかもしれない。
無論、それが真実ならば、の話だが。
千佳はそのまま再び歩き出した。俺もその後を続く。
どこに行くのか全くわからなかったが、その後約十分ほど歩いた。俺と千佳は何も会話もせずただ無言のままに歩く。
そして、千佳がいきなり歩くのをやめた。
「え? どうしたの?」
「……ここだな」
千佳はそういって目の前の光景をにらんだ。そこはただの空き地だった。
「……え? ここにいるの?」
「……ああ。かすかだが、気配を感じる」
そして、千佳はどこからか瞬時にナイフを取り出した。
「あ……ちょ、ちょっと危ないから……」
「慎治。ここで待っていろ。私が確認してくる」
そういってナイフを構えたままで、千佳は空き地の敷地内に入って行った。そして、周囲を警戒しながらあたりを見回している。
時折、何かを感じたようにナイフを構えたままでとびのいたり、サッと素早く動いたりしていた。
無論、俺には何も見えなかったのだけれど。
しばらくそれが二十分くらい続いた。千佳はナイフをスカートの中にしまったように見えた。
「……よし」
「え?」
千佳はこちらに戻ってきた。
「ここの見回りは完了だ。慎治。帰るぞ」
「……え? もういいの?」
「ああ。罪人の気配は断ち切った。続きは夜だ」
「え? よ、夜も?」
「ああ。ダメなのか?」
困ったような顔でそう聞いてくる千佳。困ってしまうのは、俺の方なのだが……
「……ああ。わかったよ。とりあえず帰ろう」
俺がそういうと、千佳は満足したようだった。
……まぁ、何も起きなかったし。良しとしよう。というか、何も起きないんじゃないだろうか。
異世界も、俺が狙われているってのも、そもそもこの子の妄想なんじゃ……
それに、イルマとアリシアも付き合っているだけなんじゃ……
「おい、慎治。行くぞ」
「え? あ、ああ。うん」
そこまで考えていた俺は千佳に呼ばれ、その後を追ったのだった。




