始まりの少年
「狩谷……なんで呼び出されたかはわかるよな?」
放課後。職員室で数学教師の山田先生は、俺の前でしかめ面をしていた。
「まぁ……はい」
一方の俺は申し訳なさそうに目を伏せる。先生は長く深い溜息をつく。
「お前なぁ……確かに俺も若い頃は格別勉強ができたわけじゃないぞ? だけどな、さすがにここまで酷い点数はとったことないなぁ」
そういって先生は、教員用の机の上に置かれた俺のテスト用紙を叩く。
15点……確かに、酷い点数だ。
「……すいません」
「謝れって言ってんじゃないんだぞ? 俺はなぁ、お前のことが心配だから言っているんだ。仮にこれが数学だけの問題なら俺だってここまでお前を呼び出したりしない。だけどなぁ、お前、現代文でも世界史でも化学でも、全部やばい点数とっているそうじゃないか。先生はお前の担任としてさすがに放っておけないわけだ」
「……はい。すいません」
俺が結局また謝ると、山田先生は二度目の大きな溜息をついた。
「授業中も良く寝ているし……なぁ、本当に大丈夫なのか?」
「え……まぁ……あ、あはは……」
今度は曖昧に笑ってみせる。先生は無感動な表情で俺を見ている。
他にどうしろというのか。
既にとってしまった点数はとりかえしのつかないものなのだ。
だとしたらこの15点という点数でこれ以上何か話し合うよりも「これから頑張れよ」の一言で終わってしまっていいのではないか?
俺がそんな風に思っていると山田先生は俺のテスト用紙をつき返してきた。
「まだ高校一年だからそこまで重くは言わないが……いいか? この夏休み、しっかり勉強しろよ?」
「あ、はい。もちろんです」
まったく心のこもっていない返事を俺は先生に返す。先生も俺の本心は見抜いているようで三度目の大きな溜息をついた。
「……わかった。もう帰っていいぞ」
「はい。失礼します」
俺は先生にお辞儀すると、そのまま一目散に職員室を出て行った。
職員室の扉を占めると大きく息を吐いた。