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77.現実的な夢

 

 

 

 

 あれから俺たちはフロンティア民国に帰ってきていた。

 途中、魔獣など退治しながら戻ってきていたために、一月くらい時間をかけてしまった。おかげで、強制解除の期間まであと少しという状況だった。最後の方は少し焦ってしまった。

 しかし、守らないと逮捕されるとは……なんか執行猶予期間みたいな気分になってきたぜ。



 出立から数えること93日。

 ――つまり3ヶ月以上も留守にしていたことになる。



 遠征する前に、レイリアは借家を解約して俺の家に荷物を運び込んでいた。

 理由は簡単だ。少しでも出費を抑えるため。


 そもそも俺とは違い、彼女には実家がある。だから解約したところで、住所不定にはならないのだ!

 少し羨ましいが、節約するに越したことはない。

 それに、自分の部屋に女性の荷物が置かれているというのは、妖しい雰囲気を醸し出す……つまり悪くはない気分になる。



 それと帰郷の道中に2人で話し合ったことだが、新たに大きな間取りの家を借りて、正式に同居しようということになった。

 何もウフフな関係になったということではない。残念だが、それは次回だろう。


 ――――俺は一人で満足する漢ではないのだ(キリッ


 まぁ、それはともかくとして、固定パーティチームの拠点として構えようということだ。

 今後仲間が増えた場合に備えて、一緒に住めるようにという心づもりという訳だ。


 幸い資金は潤沢にある。これもハズレあたりのおかげだが……


 ならば多少広い家でも問題ない。

 いっそこと家でも買ってしまおうかと思った。それをレイリアに提案したのだが……

 どうやら俺には家を買うことができないということが判明した。結婚できない階級ランクでは家も買えないそうだ。


 ……またしても上手く事は運ばないのか!?


 社会的地位の欠如で不可能というのは、銀行のローンやカード審査のようで何か釈然としない。

 とはいえ、不可能はものは不可能とあきらめる必要がある。

 どちらにしても、新居を探す必要があるので再び住民課を訪れる必要があった。




 自宅に戻ると、カードを挿し未払い分を精算する。

 ¥5,000の半額の¥2,500。それの93日分が引かれ、カードが手元に戻ってくる。 

 コンテナみたいなものがあれば、そこに借りてぶち込んでおいたんだが、そのようなものはありはしない。

 そもそも、コンテナがあったとしてもそこに住めるという訳ではない。

 俺は住所不定になった瞬間に犯罪者になってしまう。だからそれすら無理な話なんだよなぁ……クソッ!


 いくら稼いだとはいえ、無駄な倉庫費用には思わずため息として漏れてしまう。


「どうしました?」

「いや、荷物置きだけに金が取られるのがちょっと無念に感じただけだ」

「確かにそうですね。やはり、私の家は解約しておいて正解でしたね。

 持ち家ならば、そんなことは気にしなくても済むのでしょうが……

 流石に自宅の購入は、夢の一つに上げられているだけのことはありますよね」



 ちなみに夢のひとつ――というからには他にも当然ながらある。


 1.建国

 2.ダンジョンの踏破

 3.貴族になる


 ここまでは、叶わないけど成れたらいいな、と思う程度だ。人は誰しも夢を見ることは自由だからな。


 今レイリアが言っている夢とは堅実に叶える事を指す。


 1.理想の伴侶を得る

 2.自宅を持つ

 3.無事に引退して鑑定士になる


 といったものだ。

 やはりこの世界でもトップ3というのは意味があるのだろうか? まあ、どうでもいいことだな、うん。



 正直なところ、一昔前の日本人が挙げたものと同じではないだろうか?

 結婚、自宅、そして定年退職。

 小さくはマイカーとか色々あるだろうが、一般敵サラリーマンだったらこの3つだろう。


 現在ではステップアップして転職・独立することもあり、終身雇用という形にとらわれなくなっている。

 しかし、この世界では大企業開拓共同体フロンティアソサエティに終身雇用が本命で、挫折したら転職という風潮がある。

 現代社会においても、大企業の信頼がなくなったからこそ、有能な人物が離れるようになったのではないだろうか?

 つまり、ある意味ではこの世界の経済は万全ともいえる。


 まあ、あれだけ暴利をむさぼってれば破綻など考えられないがな!




 だが、考えてもみて欲しい。

 叶える夢として認知されているなら、何故借家を借り続けている人がいるのだろうか? ということを。

 つまり、到達点といいつつも100%実現可能ではないのだ。



 ある程度以上の階級ランクにならないと、買う資格は与えられない、という決まりがある。いくら稼いでいても【ニート】以下のギルド員では、マイホームというものは手に入れる事はできないのだ。

 極端な例でいうと、貴族の住処やしきも一応は借家というくくりになっている。


 つまり、あいつらの屋敷は借り物なのだ……ザマーミロ!


 もっとも、王族はその限りではないが。

 そもそも領土全体が国の物であって、金を払って買う仕組みなのだから……



 おっと、話がずれてしまった。


 正直、そこまではいいと思う。

 返済能力の有無は重要だ。低ランクには家を買うというのは荷が重いはず。

 金融機関は遊びやボランティアではないのだから、信用のおけない者に金は貸さないだろう。担保になりそうな物すらないのだから……

 このことは納得できる理由でもあるのだ。


 ドロップ組には残念なことかもしれないが、貴族も例外ではないというところが我慢せざるを得ない理由だろう。



 では、問題なのかというと――ある程度以上の階級ランクになると、その借家すら追い出されてしまうということだ。


 家を購入して出て行く者はいい。とはいえ、必ずしも追放されるまでに資金を稼げているかというと……そういうわけでもない。

 例外として、かなりの税を納めることで滞在許可は下りる。

 しかしそれは、あくまでも家を借りるための権利を貰う為のものだ。つまり賃貸料は除く……ということだ。


 確かに街中は便利だろう。ちょっとした買い物など、簡単にはできなくなる。

 郊外に居を構えたならば、日本のようにすぐそこのコンビニへ……というわけにはいかない。


 しかし、この世界には収納道具ストレージという冷凍庫以上の保管道具があるのだ。

 一家に1つ。食材倉庫用に使う収納道具ストレージ程度のものなら、それほど値が嵩むというほどではない。

 むしろ1人1つ――携帯電話のように必需品となっている。

 つまり、それは雪国の冬支度のように、買い溜めがより機能的にできるということに他ならない。

 細々とした物までは足りないかもしれないが、なくてもちょっと不便、程度で済むのだ。


 だとしたら、何故税を払ってまで街に残るのか疑問が残る。


 1.ローンに相当する物がない

 2.土地・家がべらぼうに高い

 3.固定資産税が高く、税金を払ってでも貸家に住んだ方が経済的

 4.独り身に家はいらねーぜ


 考えられるだけで、このくらいはパッと浮かぶ。

 4は悲しいが、連れ合いの要望で他の場所がいいと言われたら無駄になってしまう。理由としては一番あり得ることだ。


「はぁ~」


 俺は再びため息をついてしまう。

 なんとなく予想できてしまったからだ。


 3は論外だろう。

 いくらこの世界の住民は、ギルドに洗脳されているような状態になろうとも、金銭に無駄なら無駄に家を買う必要などない。

 どんなに流言飛語をギルドがばらまいたところで、ない袖は振れないのだから……


 その場合は街を広げていくという方針に切り替わるはずだ。戦争はなく、街を脅かす存在といったら、魔獣くらいだ。

 その魔獣にしたって、頻繁に現れるということはない。



 ――家を持たないやつは一人前じゃない。


 おっさん――ライナーが言っていた。この風潮も、一家を預かる者は無駄遣いをするのは経済的じゃない、というのがそうなったと思える。

 曲解されようとも元は生活の知恵だ。もしかしたら戒めの気持ちからそうなったのかもしれない。


 つまり3はあり得ない。


 だから答えは、1と2両方だ。

 4も理由の一つだが、それは〝買わない〟 のであって、〝 買えない〟ではない。



 この世界にローンがあるかわからない。

 もしあるならば、前金分稼いだものを元手に家を購入する者も当然出てくるはずだ。

 しかし、探索者サーチャーにしても傭兵ソルジャーにしてもヤクザな仕事だ。明日もしれないという意味でだがな!

 いつなんどき死んでもおかしくないやつらに、ローンなどいう信用取引はできないということだろうな……


 この世界のギルドはがめつい。つまり1と2で一括購入できない者に対し、税という形で集金する。

 税とは国に納めるもの。このギルドが治めているフロンティア民国はともかくとして、他国においては仲介手数料としてのマージンが稼ぎになるだろう。

 いかに多く税を搾り取るかが財源につながるのだから、一度に出て行かれても困るというのもあるだろう。


 だが、根本はそういうものではないと思う。



 この世界は思った以上に人口が大きい。

 密度はそれほどでもないのだが、食料生産と釣り合っていない。

 農作業をしていないわけではないが農家の数は少ない。それは旅を通して把握できている。

 つまり農地が少ないからこそ、土地が余っているのだ。土地が狭い国出身の立場からしたら羨ましいかぎりだ。

 もっとも、それがいい事なのかは話は別だが……


 生産能力が低いが人は多い。だからこそ一度はギルドに所属して、食料調達にかかわる必要があるのだろう。

 食料系の特産施設などもあるが、討伐する者が居なければ意味を成さない。


 農業が盛んではないのは、すべてとは言わないが特産施設の特性による物が大きい。

 すべてではないのは、ダンジョンでも食料が手に入るからだ。もっともそれすら特産品と言えないこともないが……


 若者が生産に携わり、そしてある程度死ぬような状況を作り出し・・・・を間引く。

 次から次へと加入してくる若者が居る以上、無能な者を大切に育てない理由もこれが大本にあるのだろう。



 つまり、だ。

 この世界の風習――仕来りとして、間引きは秩序を保つために必要ということだろう。

 個を捨て、全を生かす立場ならばそれもまたよし、と上の立場なら言いそうなことだ。


 ギルドは秩序を守るために、より優秀な者を選別していく。無能な遺伝子は残さないためにも。

 そして理不尽な状況を敢えて作り出しているのは、選別――段階を踏まえて試練を与えているという可能性もある。




 まあ、これは客観的に事象をみて、好意的に捉えた考えだ。


 仮にそうだとしても……だからどうした? って感じだな。俺を殺そうとしたのは変わらないし、忘れてやらない。

 理由はどうあれ、そんなこと俺には関係ねぇ!


 そもそも人口が大きすぎるからといって、ギルドが若い命を粗末にしているのは確かだ。

 そこにどんな理由があったとしても、命を弄んでいる時点で正義ではない。でかいツラをしないで貰いたい!


 いや、そもそも正義でもなんでもなかったな。ギルドはがめついのだ。悪徳なのだから正義とは真逆なのだから――

 

 

 

 

 

色々と修正していたら長くなってしまい、帰ってきただけに……

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