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76.進化する天職

 

 

 

 

「それならば《肉体強化》か《器用》を120にするべきですね」

「え……《器用》?」

「ええ、《器用》です。むしろ武器をメインで使うならば《操作》や《肉体強化》よりも重視すべきパラメータですよ」

「安全面を考えれば、《肉体強化》の方が明らかによさそうな気がするのだが……」

「確かにその一面はありますね。ですが、コロナさんの思惑を考えれば《器用》の方がいいと思うのです」

「ほぅ。すると何だね、キミィ。

 《器用》にはスキルを取得しやすくなるという効果でもあるのかね?」


 コロナは再び調子に乗っていた。

 気分は教師から、良き部下を持った上司へと……


「いきなりなんですか、その呼び方?」

「いや、気分的な問題でだね。

 こうした方が、教授してもらうには雰囲気が出るのだよ、レイリア君」

「まあ、いいですけどね……」


(こういうところはついていけませんね)


 突然変な事を始めるコロナにはさすがのレイリアもそれはどうかと感じているようだった。


「普段通りに話してください。

 そうしないと、話しませんからね!」

「わかった。残念だが不評だったようだな」

「全然似合ってませんでした。

 それはそれとして、話を戻しますけど――」


 レイリアによると、《器用》を上げることにより、コロナのいう熟練度が上がりやすくなるという。

 より武器を上手く使えるようになり、最適な動きを見いだしやすくなる。つまり次の武の階梯に登り安くなるということだ。


「つまり、スキルが増えやすくなるのではなく、進化させやすいってことかな?」

「そういう認識で間違いありません。もっとも武器スキルに限った話ですけどね」

「いや、それでもありがたい。知らなかった話だからな」


 【二刀流】を持っていながら、これまで一つの武器しか使ってこなかったのは熟練度が関係している。

 二つの武器を使うと、その成長が遅くなるのではないか――という考えがあったのだ。

 もちろんSkillPointが足りないという理由もあったが……



「それと――」

「ん? 何か他にも理由が?」

「ええ! もちろんありますよ」

「もったいぶったりして……そんなにすごい理由なのか?」


 コロナは期待のあまり、ゴクリとつばを飲み込む。


「どういうことかは知りませんが、《器用》があがると料理が美味しくなるのです!」

「へっ? あ、ああ……そう。良かったね?」


 期待外れもいいところだろう。

 彼の中ではよくある話であって、たいした効果ではないように思えたのだ。


「むむっ! 信じてませんね! 本当なんですよ?」

「信じてるよ。ああ、信じているとも。

 ただ、想像したほどすごい理由でもないかな……なんて、ハハッ……」

「十分すごい内容だと思うんですけどね。

 美味しい料理ですよ? いえ、もっと美味しくなるんですよ?

 料理は毎日の活力の源です! 料理こそ――」


 ・

 ・

 ・


「こほんっ! 失礼しました。つい、熱くなってしまいました。

 でも、これで《器用》がいかに・・・重要な物であるか理解してもらえたと思います」

「ああ、十分にわかったよ。(半分以上聞き流したけどな!)

 帰り道も美味しい物いっぱい食べような!」

「はいっ!」


 美味しい物が食べたい。それが彼女が《器用》を一押しする理由なのだろう。

 機嫌取りのためにも、レイリアには定期的に美食をさせる必要があるな……とこのときコロナは感じた。



 料理が美味しくなるということは、つまり――生産スキルに影響を及ぼすと言うこと。

 スキルは《魔力》と関連するパラメータだと思っていたが、生産は《器用》ということなのだろう。


「いずれ《器用》もあげることは決めているが、120にするのは《肉体強化》にすることにしたよ」

「どうしてか、伺っていいですか?」

「あぁ、理由は簡単だ。実感できるほど強くなったと感じないならば、120という数値にこだわる必要がなくなる。

 もちろん、次の段階に至る数値はあるかもしれないが、わかっていない以上無理をする必要はない。いずれそこにたどり着く可能性はあるんだからな!

 ならば《魔力》や《操作》の自然成長が鈍くなるまで貯めて、そこからその二つを強化したほうが強くなれるだろ?」

「なるほど……それならば前人未踏の数値――かつてないほど強くなれる可能性がありますね」


 どうやらレイリアもその意見に賛同してくれたのだろう。コロナはうなずきを以て答える。


「問題は120の次に極端に変わるのは、どのくらいに設定されているのが謎ということだろうな」

「そうですね。ですが、気にする必要もないと思いますよ。

 極端に変わらなくても数値があがるだけで強くなれるのですから」

「だろうな……

 まあ、俺が先行する形になるから、それに併せてレイリアも考えたらいい」

「はい、今度は失敗のないように――後悔のないように……」





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 そのようなやりとりをした後、俺は《肉体強化》にrefinePointを注ぎ込んだ。

 一つずつあげ、慎重にその違いを確かめていく。しかし、その違いはよくわからない。

 上げ始めた当初――80と、100を超えた今でさえ同じような感覚しかない。

 つまり、いくら上げたところで、俺は今強くなったと確信するほどのパワーアップはしていないということだ。

 強くなっていない――ということはないだろうが、なんとなく詐欺にあったような気分だ……


 だが、それも119までだった。



「お、おぉ? おおおおおお」


 力がわき上がってる感覚だろうか?

 思わず声が出てしまった。少し恥ずかしいものがあるが、このときは気にしていられる状態ではなかった。


 何せ――



 み な ぎ っ て き た



 ――という状態だったのだから。



 これがおそらく全能感というやつだろう。だが、その感覚は錯覚なんだろうけどな!

 だとしても、強くなったのは間違いない。

 ちょっと強くなったと思えるだけで、俺TUEEEと認識してしまうのは俺の悪いところだろう。

 しかし、人間誰しもそうだと思う。人は壁を越えたとき過去の自分と比較してしまう者なのだから……



 それはさておき、


 《肉体強化》だからこそわかりやすかったのかもしれない。身体の奥底から何かがたぎってくるのがわかる。

 レイリアのいうように120になった途端に、今までの自分は明らかに違う段階に足を踏み入れたと感じられた。


 現在の自分と比較すると、先ほどの119までの自分では倍とまではいかない。それでも、3割くらいは出力が違うと【究明】によって理解できる。

 念のため、80のときと120を比べてみると実に5割増しになっているようだ。35の時と比べれば2倍だろうか?

 そう考えると、パラメータは1ずつの効果はあまりないと思った方がいいだろう。

 ギアを上げる段階まで一度に使うのが理想的に思える。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「レイリア、間違いない。120で急激に強化されたぞ」


 コロナのその確信した表情をみて、レイリアは自分の今後の方向性を考える。

 さきほどの反応から考えても、冗談を言っているようにはみえない。

 満遍なく35にしたあとは、一点集中。これがベストだろう。

 そうレイリアは結論を出した。


 そのことをコロナに告げると、コロナもそれが正しいと力強くうなずき、同調する。

 経験者は語る、その意見は重みが違うのだ――という雰囲気を出すようにして……





 レイリアの方向が決まると、コロナは残りの作業を始める。

 つまり、refinePointを使う作業に戻るということ――


 次にコロナは、これ以上自然には上がらない《器用》をあげることにした。やはり一つずつゆっくり丁寧にだ。やり直しはできないのだから……


 《器用》35 → 70



 一つずつ慎重に上げていると……それは突然起こった。

 自己能力ステータスを弄って《器用》を上げていると《天職》の名前が変わったのだ。それも2つも。


 剣士 → 剣豪

 異界の魔法使い → 異界の大魔導


 《剣豪》

 攻撃力+20 剣に纏わるスキルの経験値上昇


 《異界の大魔導》

 《魔力》と《操作》の成長に補正が掛かり、存在強化とともに《魔力》が1あがる。



 ともに成長促進効果がある。いや、片方は元々成長効果があった。《異界の大魔導》は更なる成長を遂げたと言うべきだろう。

 存在強化の上昇とともに確実にパラメータが1増えるという……

 いつあがるのかわからない促進効果などではない、本物のボーナス効果だった。


 《器用》が70になったと同時に起こった現象だった。

 つまり、条件の内の一つに《器用》70があったのだろう。

 そう考えると、存在強度が72の時にrefinePointを注ぎ込んで70にしていれば、得だったのかもしれない。

 当時の《器用》は33だった為、12ポイントほど無駄にしていたことになる。


(レイリアではないけど……本当に口惜しいな)



 しかし、これにより考え方をまた変えなければいけないことに気がついた。

 先ほどは、35、120といった壁まで一気に突き抜けるのがいいと考えたが、それは間違いのように感じる。


 ――《天職》


 そのことをすっかり忘れてしまっていた。

 パラメータにより、変化していく……という現象。

 つまり、どれがどういう風に影響を与えるのか不明という点がある。

 様々な種類があり、一つ一つを把握するのは無理だろう。仮にできたとしても、その情報を知り得ない限り不可能だ。


 そして、その情報を持っていると考えられるのが、英霊を祭っている教会とギルドなのだ。

 ギルドは規約で教えてはくれそうもない。

 一方教会だが――


(あんな威圧たっぷりな場所には近寄りたくないぜ)


 牧師などではなく、せめてシスターがいたなら……と旭人は思う。

 そもそも宗教には関わりたくないという想いがあるため、その選択肢もまたありえないことだった。

 

 

 

 

 

通し番号をつけ忘れていたので修正しました。

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