70.人生相談……あるんだ
【真 贋】というのは固有能力だが、【鑑定】の劣化版に聞こえてしまう。
名前負けをしていると言ってもいいだろう。これも某テレビ番組のせいだろうか……。
いいや、責任を押しつけてはいけない。
言語の意味の違いからして明らかだ!
何せ真贋とは本物か偽物か、しか判別できないのだから。
だが腐っても固有能力。そのようなものではなかった。
最初は俺も騙された。真贋なのに騙すとか、どんだけとんちが効いてるのやら。
まぁ、騙された俺も悪いのだが……。
ともかく、偽物と本物を見分ける鑑定スキルではないということは確かだ。
確かに偽物と本物を見分けるスキルなのだが、意味の範囲が違った。
広域なのである。
【真 贋】
虚実を見破る。また精神系のスキルと魔法を一切無効化し、罠の発見率も上昇する。
という優れものだった。
真贋の広域意味の嘘発見だけにかかわらず、耐性系の上位スキルの【緩和】のさらに上の【無効】を含んでいた。
流石に固有能力と言ったところだろうか……。
ぶっちゃけこのスキルあれば【平常心】などいらなかっただろう。
だが、そこで【予測】が待ったを掛けてきた。
どういうことだ?
俺には先生の言う事がさっぱりわからない。
まぁ、先生に答えを聞けばいいから気にする必要はないだろう!
【予測】がいうには薬を含め他の手段を用いられれば、洗脳されてしまうという事らしい。
たしかにスキル・魔法としか表示されていない。
つまり【精神操作無効】ではなく、スキルと魔法の限定無効ということだろう。
危ない危ない。
今までの俺なら間違いなく安心して、油断してしまったに違いない。
だが、こうして精神耐性系のスキルを手に入れたならば、後回しにしていた【平常心】を強化するのは躊躇われる。
そもそも心に関するスキルを強化すれば、自分が自分でなくなる可能性も考えるべきなのだから。
熱血な漢にこの【平常心】を獲得させたとすると、「熱くなれよ!」が「冷静になれ……」になってしまうことだろう。
それを考えると、もはやキャラブレでは許されないことだ。
キャラブレということはもはや、別人と言っていいのだから。
俺はそっと、自己能力の使わない一覧にスキルを移動することにした。
「さて、俺の方は一段落ついたけど……レイリアの方はどうだ?」
俺はレイリアを見て、未だ悩んでいるのがわかり、声を掛けた。
気分転換、もしくは何かアドバイスができるのではないかと思ったからだ。
「う~ん、どれを強化しようか悩んでしまいますね」
「槍を重点的に上げるのはまず基本だよね」
「ええ、もちろんそれは既に最大まで強化してます。――AbilityPointをどうするか悩んでいます。
今までは念のために取っておいたんですよね。いずれ取得できるのではないかと思って……」
「確かに、ある程度は残しておくべきだな。
固有能力が手に入る、入らないは別として――ピンチになったときの応用性が全然違うからな」
そのことを指摘すると、始めて気がついたかのような顔をしていた。
恐らく考えた事だったのだろう。
refinePointも全部使っていた事から、彼女は常に全力投球だ。
「たとえば――魔法をたくさん覚えておいて、強化しない状況にあったとしよう」
「…………」
「仲間とはぐれ遭難してしまった。しかし水筒の中身は既になく、耐えきれない。
そこで今までまったく強化してない【クリエイト(水)】を2つ強化をするだけで、助かる可能性が出てくるわけだ」
「確かに……そうですね」
「まぁ、金との兼ね合いで魔法の予備を取得しておくことも考えた方が良い。
だが、どうしても必要と思ったら迷わずスキルを強化してもいいと思うぞ」
「先ほどの意見とは矛盾してるように感じます」
たしかに取っておけと言いながら、使い切ってもいいというのは矛盾して感じるだろう。
だが――
「それは早く存在強化できる見込みがある場合だ。
スキルを強化したことで、戦闘効率があがる。そうすれば早く存在強度もあがる。
それによってスキルが進化すれば、それだけ自分が強化されることに繋がり、効率が段違いになる。
この場合においては出し惜しみするのは良くないことだ」
「…………」
「だが、その時は無理な仕事はしないと言うことが重要だな。
今までやってきたことが簡単になる程度の物を選ぶのがいいだろう」
その後もくどくどと効率性についてレイリアに語った。
これは所謂ゲーム脳の効率廚に分類されるような方針だ。
しかし、俺は今までの経験上、それはあながち間違いではないと確信していた。
結局レイリアは、戦闘に主に使っているスキルを最大まで強化することにしたようだ。
パラメータは元々が《操作》を上げるつもりだったらしいのだが、『35』になっていないことから貯めておくことにしたようだ。
詳しい話もしていないというのに、俺の言う事を信じてくれているということだろう。
――――すごく嬉しい気持ちになってしまう。
「じゃあ、スキルはそんな感じでいいかな?」
「はいっ! 参考になりました。
まさかそんな考え方があるとは思っていませんでしたから」
「使い分けをちゃんと考えないと、ダメだぜ?
全部使ってる人よりは不利なことは確かなんだから」
「そう……ですね。確かにその通りです。
ですが、やっぱり固有能力を諦めきれない人もたくさんいるんですよ?」
「そういうものなのか?」
「そういうものです。AbilityPointを使い切ってしまう人は少ないと思いますよ。
少なくとも私たちの世代では。
もうちょっと大人になると諦めて、全部使ってしまうと思いますけどね」
夢を諦めたら大人とも言えるのだろうか。
夢といっても固有能力なんだが……。
「次はパラメータについてお願いします」
「俺、槍は使わないけどいいの?」
「はい、使わない人の意見も重要だと思ってますから。
それにコロナさんがrefinePoint使うなって言ったのですよ?
ちゃんと面倒くらい見てくださいよ……」
「そう言われると言葉も出ないが……。
別に大したことでもないし、何でも聞いてくれ」
俺には彼女の自己能力は見えないが、教えて貰った感じではこのようになっているらしい。
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自己能力
名前:レイリア・ヒューズ
存在強度:60
種族:人族
職業:探索者
天職:戦士 槍の申し子 探索
HP:4920
SP:405
パラメータ
攻撃力:59
肉体強度:62
魔力:35
器用:36
操作:29
速度:35-45
refinePoint:15
AbilityPoint:54
SkillPoint:0
・スキル >
・魔法 >
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・スキル
【槍の極意】ver9.0 【観察】ver9.0 【連撃】ver9.2
【気迫】3.0 【料理】ver5.9 【迷宮の心得】ver0.9
【罠探知】ver0.9 【地図作成】ver0.9
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・魔法
【ヒール】ver3.9
【フレアバースト】ver4.9
【クリエイト(水)】ver2.9
【ブースト】ver2.9
【ワールウィンド】ver2.9
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俺とは違い自己能力は弄っていないようだ。
整理をしたり、パラメータの装備補正を別表記にしたりしていない。
だから証の表示と同じ仕様になっている。
つまり武器や防具を含めたHPとパラメータで、とても信頼性はないものとなっている。
「おいおい、レイリア。別にそこまで数値を開示する必要はないだろ?」
「いえ、今後の事を考えて、全体的に見直して貰おうかと……」
「気になったところだけで充分じゃなかったのか?」
「別に隠すような事でもありませんよ」
どうやら俺とは考え方が違うようだ。
もしかしたら、秘匿するという発想がこの世界の住人にはないのだろうか?
いや、レイリアだけがそう、という可能性もある。
日本人だって人それぞれだった。ならばそっちの可能性の方が高いだろう。
「それで、どういう方向でいきたいんだ?」
「槍をメインで伸ばすのは先ほどもいいましたけど、それ一本でいいのか悩んでます」
「確か……《操作》に全振りするつもりだったんだよね」
「はい。パラメータをすべて35にして始めて一人前。と父親に言われてきてたので……」
『35』という数値が、やはり重要なことは世界には伝わっているのだろう。
それが人間の自然限界だからこそ……強くなる境目でもあったのだろう。
――――だが、それはミステイクだぜ!
ごめん、ちょっと格好を付けたかったんだ。
でも本当は、自分の秘密を話す前には、少しテンションを上げておきたいというのが理由だ。
格好をつけたかったのも事実だがな!
「多分もう、レイリアも俺が固有能力を持っていることは気付いているだろう?」
「はい、恐らく上位のものだと思っています。《選ばれし者》に纏わる天職を授かっていると……」
《選ばれし者》? なんだ聞いたことのない言葉がでてきたが……。
「《選ばれし者》という言葉は知らないし、それではないと思うが……今は正直どうでも良い。
重要なのは俺の固有能力には、パラメータの自然上昇限界がなくなるというものがある」
「そ、それは……!!」




