69.良い仕事してますねぇ
俺たち――……いや正確にはレイリアが手に入れた槍は、疑似スキルなどというちゃちなものではない。
――――本物の《スキル付き》の《槍》だ。
とはいっても、誇れるというほどでもない。
あくまで俺らのような階級が使う武器にしては凄いという程度の物だ。
そもそも封じ込められていた武器スキルは凄い……といえる物ではなかったのだが、それでも普通の武器に比べ優位性を発揮する。
武器素材の構成からしてみれば、それほど上位のものではない。
しばらくしたら買い換える必要が出てくるだろう。
だが、【パシリ】卒業までは使えるのではないか?
俺にとっては弱い武器スキルであっても、槍使いのレイリアからすれば中々に強力なスキルだ。
封じ込められているスキルは【幻槍】。
これは【連撃】を繰り出すとフェイントの如く幻の槍が現れ、その虚実を惑わすという。
――――猛攻
いわゆる、力押しのスキルである【連撃】のサポートをしてくれるのだ。
惜しむらくは、このスキルは対人用という事だろうか?
――魔物向けではないはずだ。
考える知能がある魔物ならば、確かに効果は抜群だろう。
だが、そのような魔物は恐らく高位の存在だ。
ならば、この迷宮槍ドングリーヌの素材では刃を通さない可能性が高い。
所詮はどんぐり…いやドングリーヌといったところだろう。
それと、この武器スキル【幻槍】は【好奇心旺盛】でも素養が生まれなかったらしい。
恐らくだが、人の身体では再現できないということが理由ではないだろか?
槍を惑わすのであって、肉体を惑わす訳ではない。
――俺の手足は槍ではないのだから……。
レイリアもこんなスキルは聞いたことがないと言っていた。
このスキルはレアという事なのだろうか?
だとしたら、残念な結果と言わざるをえない。
ゲームで考えたら、ゴミ装備にレアアイテムを使ってしまったようなものだ……。
ドングリーヌ程度に付いていては勿体ないにも程がある。
もちろん有名な《スキル付き》には、人が使うスキルもちゃんとあるらしい。
俺的に今回は残念だったが、彼女と相性のいいものなのは確かだ。
【好奇心旺盛】がある以上、いずれそういう機会も出てくるだろう。欲張りすぎるのもよくないことだしな!
ちなみに、何故《スキル付き》なのかわかったかというと、それには理由がある。
もちろん、宝箱から出た時点でアイテムにせず、証に締まっていたならば詳細が簡単にわかる。
しかし此度は最初の段階で、証にしまわず装備してしまった。俺に見せるためとは言え、だ。
こうなると証にしまうことはできない。
だが、他に方法があるのだ。それがなければ、レイリアも考えなしだったと言わざるをえない。
当然彼女はその方法を知っていた。流石に俺とは違うということだろう。
そしてその方法とは、対応する【武器の心得】以上のスキルを持っていることだ。
この場合は【槍の心得】だろう。
――ただレイリアは【槍の極意】を所有していたらしいのだが……。
そのスキルを以て、深く槍のことを把握しようとする。すると、どのような存在なのか理解することができる。
ならば、武器ではなく、鎧などの防具はどうか……というと、素人――この場合、装備する者では判断はできない。
鑑定士と呼ばれるものに【鑑定】して貰わなければならないのだ。
鑑定士と呼ばれる者達は、神に仕える者とされている。
教会は英霊を祭り、神殿は神を祭る。
だが、教会には牧師がいるが神殿には神官は存在しない。
なら鑑定士は神官ではないのに、神に仕えているとされているのにはもちろん理由がある。
【鑑定】は神殿でのみ、習得できるスキルだからだ。
このスキルは物の善し悪しを学ぶことで身に付く訳ではない。
神に願い、全てのスキルを捧げる。それと引き替えに手に入れるスキルなのだ。
つまり、【鑑定】を持つ物は他のスキルを一切使えないし、以後覚えることもできない。
このことから、老後の生活のため取得する――というのが基本というわけだ。
流石に神も、そんな年寄りに世話されたくなかろう……。
俺だったら絶対に嫌だ!
爺婆に看護される神とか……どんだけだよ(笑)
そんなわけで、その鑑定士に他のダンジョンで手に入れた装備を【鑑定】して貰ったのだが、どれも当たりはなかったようだ。
一見高そうに見える物も、曰く付きな装備に見える物も大した物ではなかった。
俺もレイリアも使えると思う物がなかったので、全て売却することにした。
持っていても邪魔だし、金に換えればかさ張らない。
現物はギルドでも買い取ってくれるのだが、武器屋でも買い取ってくれる。
そもそも武器屋は自分で作るか、中古として引き取るか、ギルドから仕入れるかのどれかしかない。
ギルドに売った物が巡り巡って武器屋に渡るのだから、結局は同じ事だろう。
当然武器屋に売る場合は手数料という名の税が発生するが、それはギルドに納める分なのだから仕方がないことなのだ。
どのみち、どのような経由をしたところでギルドに税を持って行かれるのだから……。
買取交渉の値段は商人の腕次第で変わるが、手数料は一定量だ。
だから儲けようと思えば、ギルドで売るのは下策だ。
俺にとっても、商人にとってもギルド経由では儲けが少なくなる。win-winの関係というやつだろう。
ギルドで発生するマージンに比べれば商人が有利なのだろうが、世界の隅々まで監視することなど、いくらギルドでもできようはずがない。
現在もこのシステムが残っていることから明らかだ。
それもあって、多少のことなら目をつぶるということなのだろう。
このように手数料という税を払えば、ギルドを経由しなくても良いことになっている地域もある。
近くにギルドの支部がない所で商売を営んでいる者は、年末に纏めて税を納めに行っているらしいのだ。
ギルドは年末決算なのだろう。納め過ぎは戻ってはこないだろうが……。
まぁ、このような話は蛇足になるだろうから、このくらいで止めておくとしよう。
販売価格は大体『ハズレ』の半額といったところだろうか……。
大物が無かったとはいえ、量が量なだけにかなりの値段となったようだ。
もちろんそれだけが理由ではない。
余りに暇なときがあったので、ついつい生産スキルをそれぞれver2にしてしまった。
そして加工できるものは、加工してしまい装備品が増えたというのが要因だ。
俺はそれで確信した。
――――これだけでも食べていける!
と。
スキル・存在強度・お金。
これら全てにおいて、このたびの遠征――臨時パーティは成功したといえるだろう。
俺だけではなくレイリアもスキルを取得し、存在強度を大幅に上げられたと興奮していた。
――俺は腋チラで興奮した。それはどうでもいいことだろう。男はスケベなのだ!
ただ、残念なことなことがあった。
彼女は今まで、存在強度が上がる度にrefinePointを使用してしまっていたらしい。
様々なダンジョンを探索しているとき、俺はふと気になってそのことを尋ねてみたんだ。
あまり親しくない内に、相手のパラメータやスキル構成など聞くのはマナー違反かと思い、自重していたのが徒となった。
そんなこと、誰にも教わったこともないし、聞いたこともないけどな……なんとなくそう思ってしまったんだ。
それから色々とあって、すっかり忘れてしまっていたんだ!
楽しいことがいっぱいあると、ついつい忘れちゃうよね? ね?
俺は悪くない(キリッ
まぁ、つまり気になってというよりは、思い出してといった方が正確だろうな、うん。
それで気付いた俺は、彼女にrefinePointを使うのはひとまず止めて欲しいと頼んだわけさ。
詳しい理由は話さなかったが、俺を信頼してくれているのか……しぶしぶながらそれに従ってくれたようだった。
固定パーティでも恋人でも嫁でもないレイリアに理由までは話すつもりはなかったとも言えるが、攻略中に話すことでもない内容だ。
下手にショックを受けて、返らぬ人になってしまったら問題だからな!
とってつけた理由――成長の方向は落ち着いてゆっくり考えた方がいいというを話、2人で自己能力を弄っていると、あることが起きた。
【???】がver9.9になり、目覚めたのだ。
【???】 ver9.9 → 【真 贋】 Revolution!!
パチモンサーチ……酷い名前だ。
どこか悲しみを背負っている感じがしてくる。ブランドバッグの偽物で摘ままされたのだろうか……。
俺にそのような覚えはないのだが、もしかしたら……何か偽物を持っていたのかもしれない。
もう、今となっては昔のことだ。どうでもいいことだな、うん。
それと悲しみを背負ったとか響きがいい。が、あくまで響きだけだ。
背負ってる側としては、冗談など何一つないし、他人にどうこう言われたくないものだ。
まぁ、スキルに悲しみもクソもないけどな!
この固有能力が目覚めたことで、天職《発掘調査》に影響を与えていたことが確定した。
それと共に《発掘調査》が《探索調査》という名前に切り替わっていた。
特に効果は変わっていないが、《天職》の能力に脳内マップという物が現れた。
シークレット能力だろうか?
――条件を満たしたことで表示されたのだろう。
実は機能はしていたこの能力、真の名前と同時に偽装が解かれたのだろうか?
いや、エラーを起こしていたと言うべきか……ともかく謎だったものが解決するのはいいものだ。




