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63.ぼっち→リア充

 

 

 

 

 コロナとレイリアは、とにかく話し合った。長く、長く話し合った。

 どのようなことをするか、したいのか。

 案をとにかく出した。可能なもの、不可能なものを無視して。

 それをレイリアは書き留めていく。

 それが終わると、どれをするか……と選んでいく。


 しかし、一つに絞ることはできなかった。


「う~ん。色々とあるなぁ……」

「そうですね。これなんか良いと思いますけど……」


 そういってレイリアが指し示したのは、生活習慣の改善だ。

 理由はおそらく簡単にできるからだろう。


「それだけじゃ、レイリアに頼むまでもないことだと思うんだが」

「確かに。それならこっちは――」



 しかし結局一つには絞ることはできなかった。


「もう悩んでも無駄な気がしてきました」

「ん? どういうこと?」


 レイリアが決意したような顔でコロナに話しかけた。


「どうせなら全部やったらいいんです!

 別に何時までにやらなければいけない……ってことじゃないんでしょう?」

「あ、あぁ……」


 突然上げた彼女のテンションにコロナはついていけない。

 そんな彼は相づちを打つしかできない。


「じゃあそういうことで決まりですね! 早速今日から始めましょう」



 こうしてしばらくは、二人で行動することに決まった。

 ――それが臨時パーティオフカイかどうかはわからないが……。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 そして決まった内容は多岐にわたる。


 まずは普段彼女がやっていた自己練習、もとい特訓。

 これは彼女の生活習慣ともいえた。

 規則正しい生活に、鍛錬、そして瞑想。


 鍛錬は素振りをして身体を温めた後、シャドーをする。

 仮想敵と相対しながら、自分のできることを模索していくというものだ。

 これも瞑想の一種ともいえるだろう。


 これらは彼女の両親から教わった事らしい。

 コロナは正直なところ意味あるか疑問ではあったが、普段やらないことではあったので実行することにした。


 それに併せて私生活も矯正されてしまったが……。

 一緒に過ごして、一緒に生活する。

 ――いわゆる同棲である。


 これは無論レイリアから言い出した事だ。

 コロナが言い出したら犯罪もいいところだろう。

 そもそもそんなことを言い出せる度胸は彼にはない。


 理由は簡単だ。口で説明してもわからないということだ。

 確かにスケジュール的な事ならわかるだろう。しかし、まったく同じということでない。

 そもそも勝手にアレンジしてしまいかねないのが私生活といえるだろう。


 だがそれでも一緒に住むとなると色々と期待してしまう年頃である。

 だからといって、コロナが期待しているようなことなど何も起こらない。


 つまり同棲に似たような何か……であり、同居といえるものだった。

 それにコロナは思わず涙した。

 確かに『ロリコン駄目絶対』ではあるが、期待してしまうのはどうにもならないのだから……。


 もちろん、家賃が勿体ないので交互に行き交って過ごしていた。

 彼女の部屋の香りにくらくらになってしまったのは一度や二度ではない。

 だがそれでも彼は耐えきった。自分の欲望に。



 そして二人一緒に依頼を受けたりもした。

 階級ランクが変わってしまったが、今までとほぼ同じものだ。

 違う事といったら、一人ではなく二人……という事だろう。それこそが狙いだった。



 これがまず最初にしたことであった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 だが交互にお互いの家を行ったり来たりの生活は、あたかも恋人同士のようにも見えた。

 レイリアは意外と自分の事は無頓着だった。だからそのことに気付いていない。

 彼女が気にしていたのは違う事だった。


 コロナもレイリアが噂には無頓着なことに気が付いていた。


 そう、レイリアはコロナの家が気に入ってしまっただけなのだ。


 あの和風の佇まいはどこか彼女の心を刺激したのだろう。

 調子に乗ったコロナが「もう一緒に住んじゃえよ」 などと吐いてしまったのがそもそもの原因だ。

 何も最初から同居するつもりではなかった。

 なのに、コロナに対し恋愛感情もないのに承諾したことから明白だ。



 仕事では一切スキルは増えていなかったが、彼女との同居にてあるスキルが手にはいった。




 ――――【健康】と【平常心】だ。



 【健康】についてはわかるだろう。

 彼女が規則正しい生活を送っているために得たものだ。


 だが【平常心】に関しては、さらに納得できるものだ。

 彼自身が狼にならなかったのは鋼鉄の意思を持っていたからではない。……チキンハートが成せる技であった。


 ともに強力なスキルである。

 こんな事で入手したのが申し訳ないくらいだ。



 【健康】

 異常状態になっても、ある程度、普通に動けるようになる。

 ――これは普通ならば麻痺になって動けなくなるようなときでも、痺れる程度に収まることだろう。


 耐性系は麻痺を防いだり、痺れなくするためのスキルで効果が違う。

 これで完全行動不能、という状態に陥ることが少なくなったはずだ。



 【平常心】

 混乱・興奮状態を平静に戻す。

 ――これは、ある意味今一番求めていたスキルともいえる。


 【扇動】によりそれが正しいと思ったとしても、このスキルにより疑問を覚えるはずだろう。

 そして【分 析アナライズ】でどのような状態だったのか、振り返ることが可能となる。



 今までは一度体験しないと、効果はなかった。

 しかしこの【平常心】のおかげで、自分がどのような状態だったかを把握できるようになった。

 【扇動】を受けたところで異常を感知し、【分 析アナライズ】が働いてくれるだろう。




 余談だが同居の際、お風呂を覗くという重要ミッションは行われなかった。

 不意にお尻が痛みを訴えてきたことで、身体が硬直してしまう。

 コロナは断腸の思いで諦めたのだった。


「た、竹、竹が……」

「ど、どうしました! コロナさん大丈夫ですか!!」


 コロナは風呂上がりのレイリアに心配されて、それ以降行動することができなかったのだから――





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 その後は、パーティでのダンジョン探索だった。

 これぞ臨時パーティオフカイといったところだろう。


 複数でダンジョンに突入することも始めてだった。

 しかし、それ以上に今までと違うこと――――


 それは、ここはフロンティア民国ではないということ。




 ここはヨゼンメゼンダ共和国。

 王族が滅び、他に方法がないので共和国として存続している。


 コロナたちは当初、フロンティア民国以外の国のダンジョンを探すことにしていた。もちろんギルド本部が管理していない未踏破ダンジョンだ。


 だが、意外なことからそれは難航することになった。

 酒盛りの件だ。あの一件が尾を引いてしまったのだ。


 コロナが発した貴族の悪口が原因で、暴動――テロが発生してしまった。

 それにより街に滞在することなど、とてもできない状態になっている。


(どこにでもロリコン貴族はいるものだな)


 などとコロナは楽観しすぎていた。




 それでテロとは関わりのない共和制の国で、探さなければならなかった。

 貴族もいないわけではないが、彼らはただの名誉職と化しており金も実権もない。

 それゆえ、玉の輿に引っかかる女性もいないだけの話だった。


 このことから条件が一致するダンジョンは、数が限られてしまった。



 他にも一応ながら選択肢はあった。オリアコン森国だ。

 人族の貴族がおらず、妖精族が納めているこの国なら問題は何一つなかった。

 しかし、コロナが断った。彼としては罠のある迷宮が良かったのである。


 オリアコン森国には魔物を討伐するタイプの迷宮しか現在・・は存在していない。

 そのため消去法でヨゼンメゼンダ共和国しかなかった。




 そして今《ルァーフツ大迷宮》とよばれる未踏破ダンジョンに、コロナたちは挑もうとしている。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 レイリアは気が向かなかった。

 迷宮タイプは初めてであるにも関わらず、いきなり大迷宮に挑むのはもってのほかだと思っていた。

 階層分けされている別の迷宮にしようと、コロナに頼んだのだが……。


「それならばオリアコン森国で良かった。

 どうせチャレンジするならば、大迷宮にするべきだ! いや、しなきゃいけない!」


 コロナはそう言って、嫌がるレイリアを無理矢理とそこへ誘い込んだ。

 まるで犯罪行為にみえるが、彼は大まじめである。

 彼には他の迷宮など選択肢にはなかった。


 ――もちろんそれには理由がある。

 大迷宮には『宝箱・・』が豊富に現れる。


 今まで籠もってきた《ローヌギア》には一切なかった宝箱。

 彼はその蠱惑的な魅力には勝てなかったのだ。


 そればかりではない。ちゃんと彼女のことも考えていた。

 それでレイリアが指定したダンジョンを拒否したのだ。


 その理由とは――


 彼女が選ぶ迷宮は通路の幅が狭い。彼女が使っている槍を振り回すことなど、到底できようもなかった。

 彼女はコロナに寄生するのを嫌がる性格だ。おんぶにだっこなどもってのほかだ。

 このことは同居生活でしっかりと把握していた。そのために除外するしかなかった。


 ――もちろん、宝箱の方が意味は大きいが……。


 この二点を満たせる場所は他には存在しておらず、ダンジョンにおいても消去法で決まったのだ。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 《ルァーフツ大迷宮》

 このダンジョンは大迷宮と呼ばれるに相応しい造りをしている。

 それは――このダンジョンには階層と呼ばれるものが1つしか存在しない。

 つまり大きな一つの階層で成り立っている。


 その巨大さ故に、進めば進むほど入り口に戻るのが困難になる。

 下手をすると戻れなくなり、そのまま朽ち果てるということが起こる。


 【地図作成マッピング】と呼ばれるスキルで地図を作り出し、どこの区画にいるかを常に把握する必要がある。

 これをおこたる者には、死という結果を与えられることになる。


 収納道具ストレージにどんなに多く食料を詰め込んでいたとしても、いずれは朽ち果てることとなるのだ。



 勿論ただ広いだけの迷宮ではない。

 落とし穴、毒ガス、魔物部屋、方向感覚を狂わせる回転床など様々な罠が待ち受けている。

 これらをもって探索者サーチャーを出迎えるのだ。


 ありふれた罠。されど、狡猾な罠。

 使い古された罠は効果があるからこそ、いまだ使われているのだ。


 罠がどのように設置されているのかわからない。

 一度潰した罠も、いつの間にか復活してしまうのだ。

 ダンジョンには意思があるのだろう。迷宮自体が設置してるとし思えない。

 つまり世界が作り出しているということだろう。

 どんな意図が隠されているかはわからないが――


 しかし攻略するものにとって、誰が何のために設置したかなど関係が無い。

 いかにそれを攻略し、財宝を持ち帰るか。

 そして最終的にはダンジョンを踏破し、新たな土地を開拓するかが全てなのだから。



 そして今、また一組の命知らずの男女が、死の入り口へと誘われたのだった。

 

 

 

 

 

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