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61.へい! かのじょ~おれとあそばない?

 



 

 あれから――


 【掃除】・【洗浄】は家事で。【爪の心得】【棍の心得】は武器屋で素振りをしてを手に入れた。


 そろそろここでの作業も終わりだろうと思っている時のことだった。

 ふと違和感を感じたコロナは周囲を伺った。それで気付いた。


 ――――店員から凄いプレッシャーを感じる!


 あれは冷やかしに、そろそろ耐えかねているという視線だろう。


(武器屋の店員の視線がそろそろやばいな……)


 やはり引き際だろうと、ここでのスキル習得を諦めることにした。

 そして、店員が持ってきていた安めの弓を手に取る。


「……そうだな。この弓を頼む」

「――……かしこまりました。少々お待ちください」


 店員は金額を提示し、コロナからカードを受け取る。

 そして売買処理を行い、カードをコロナへと戻す。


「ありがとうございました」


 そういって店員はコロナを追い出す。

 『またのお越しを』と続かなかったのは、やはりもう来て欲しくないという考えの表れだろうか。


(まぁ、修理しか――ここにはもう用はないけどな)



 弓を選んだのは簡単だ。

 流石に店内で射撃をするわけにはいかず、スキルを手に入れられなかったからだ。

 当然矢も数本購入している。そこに抜かりはない。


 またコロナが高いものを選ばなかったのは、使いこなせないから……という理由ではもちろんない。

 安いことには変わりないが、一番安いものでもない。

 しかし、初心者が使うにしては少し高い。


 ――店に入ったら、何か買わないといけない心境になる。

 日本人の一部が持っている強迫観念……これが働いたのだろう。

 いわゆる見栄というやつだ。つまり、コロナの安っぽい見栄以外の何物でもなかった。



 それから弓の練習を行えそうな開けた場所を探すが、街中では見つけることはできなかった。

 結局荒野まで出向くことはめにはなったが、その甲斐もあって【弓の心得】は手にはいったので無駄足ではないだろう。



 しかし、今更このようなスキルの習得など別段驚くべき事でもない。

 手にはいる事は嬉しいが、所詮【???】の目覚め程度にしか考えて居ない。

 もちろん有用なスキルは例外だが、今回手にはいったものはその域に達していない。


 だが驚くべきことが起きた。

 ついに求めていた結果が現れたといった方がいいだろう。【???】の覚醒ではない。

 そう、《複合化》と《派生》が起きたのだ。いや……正確には《複合派生》とでも言うべきだろうか。



 《複合派生》はスキルが合わさって、新たなスキルに生まれ変わるわけではない。

 2つ、もしくは3つのスキルが影響し合って、新たなスキルが生まれる。スキルの子供とでも言うべきだろうか。

 ゆえに、ver9.9にする必要すらもなく、SkillPointも使わずに取得することができた。

 まさに棚からぼた餅である。



 【長柄の扱い】

 【槍の心得】・【棍の心得】の複合派生スキル。スキルは強化できない。

 ――本来スキルに認識されないはずのグレイブやら戟といった特殊武器が、【槍の心得】や【棍の心得】に適応されるといったものだ。



 【連接の扱い】

 【長柄の扱い】・【○剣の心得】・【鞭の心得】の複合派生スキル。スキルは強化できない。

 ――夢の連接剣や、三節棍版の【長柄の扱い】と言うべきだろう。




 ともにロマン武器の一種だ。それを扱うスキルである。

 ――ハルバード、方天画戟、青龍偃月刀、蛇槍、ソードウィップといった物の類いだ。


 本来ならばコロナは直ぐさま飛びつくジャンルだ。

 歴史小説の題材とされていたり、マンガなどの空想武器もあるが、何よりも格好いい。

 だが、そうはならなかった。コロナはそれらに魅力は感じたものの、使おうという気にはならなかった。



 なぜならば、


 ――【魔法剣】


 既にロマン武器を使っていたからだ。それらに、【魔法剣】を上回る魅力はない。

 少なくともコロナの中ではそうであった。



 『【魔法剣】を使えるのは《刺突剣》のみ』という鉄則がある。

 【魔刃】しか使えないようなロマン武器などお呼びではない。浮気するほどのものではない。

 所詮ロマンはロマン。実用と夢を兼ねた【魔法剣】には及ばないのだ。






 やがて、スキル獲得のフィーバータイムは終わりを告げる。

 コロナは考えつく全ての事を行った。そして獲得していった。

 しかしやはりいつかは終わりが来るのだ。


(【好奇心旺盛みようみまね】で得た素養が尽きたかもしれないな。――いや、行動パターンの限界だろうか?)


 早々とスキルの取得を諦め、ならば今度は魔法でも増やしてみるかと思った。

 しかし、どんな魔道書を読めば良いのか判断が付かない。

 そもそも情報がないのだから、どのような魔法があるのかさえわからないのだ。


 目録があれば、どんな魔法があるのかわかるかもしれない。しかし、ギルドは情報を秘匿している。

 魔法名を言わないと、その魔道書を貸し出してはくれない。


 だが、魔法名を知るチャンスはある。

 それはギルド階級ランクを上げることだ。

 階級ランクが上がることによって公開される情報は増える。

 その中に魔法名が書かれた書類もあるのだ。


(つまり、強くなりたいなら、足踏みせず階級ランクを上げろ――というわけか……。でもなぁ~)



 現在コロナは【ニート】になれるほどのポイントは貯まっていない。

 そもそも貯まったからといって階級ランクをすぐ上げる気にはなれない。

 回避しようと思っている階級ランク――【ニート】になってまで、魔法を覚えたいとは思わない。


 ――――魔法は諦めるしかない。


 コロナがそう決意し、ぷらぷらっと歩いていた。そんなときだった。


「あ、コロナさん! お久しぶりです」


 背後から聞こえてきたのはレイリアの声。

 コロナは直ぐさま振り向き、笑顔で返事をする。


「ああ、久しぶりだな。元気してたか?」


 暗い気持ちになっていたこともあり、レイリアは一種の清涼剤のように感じた。


「はい、元気でしたよ。それより聞いてください!

 私、ようやく【サル】になりましたよ!」


(レイリアがサル……)


 コロナはその言葉に思わず下劣なことを考えてしまった。しかし、それを表に出すことはない。

 彼は変態紳士に着々となりつつあったのだった。

 そんな彼でも成功者への祝福を忘れることはない。


「おめでとう。これで一緒にできることがさらに増えるね」


 これも分 析アナライズと【美的感】のおかげである。

 決して彼の品性が優れていたということではない。


『《ポコポーン》の卵ばかり取りに行かないようにね』


 という発言を口にしなかったことだけが、彼の唯一の自制であった。



 ここで役に立つこととなった【美的感】だが、コロナはさりげなく強化をしていた。

 戦闘に役立つことはない。しかし彼は上げたかったのだ。


 ――――自分にはセンスがない。


 そう気付いてしまったからだ。

 しかし、このスキルはかゆい所に手が届く。

 【直感】が、相棒だとするなら、【美的感】は見苦しいことは許せない。さながらイケメンというところか。

 そして分 析アナライズが理性といったところだろう。



 そしてコロナはふと思いついた。

 ――先ほどの言葉の中に、まさに名案ともいえるものがあったではないかと。

 早速彼はレイリアにその事を告げる。


「なぁ、レイリア……。俺と臨時パーティオフカイしないか?」


 いきなりのことに、何を言われたか分からなかったレイリアであったが、その意味に気付くと少し意地が悪い顔をした。


「もしかして――デートのお誘いですか?」


 それを聞いたコロナは少しばつの悪そうな顔をして、レイリアに返す。


「意地悪なことも言えたんだな。

 まぁそれも魅力的ではあるんだが……本来の意味での方だ」

「あら、そうなんですか。――ちなみに私だって冗談くらい言いますよ」


 そう答えるレイリアの顔は実に晴れやかだ。


 仕事は階級ランクアップして順調。

 私生活においても、長年の夢であったなめらかプリンの再現に成功した。

 父親オヤジも復調し、再びあちらこちらのダンジョンへと駆け回っている。

 今や彼女を悩ましていることは何もない。


 心が軽くなれば、身近な者には行動も歳相応になるものだ。

 いや、歳を取っても甘えたくなる――心配を掛けていた家族には甘えられない分なおさらだ。


「それで――どのようなことをするのですか?」

「ん?」

「そちらから切り出したことじゃないですか。

 臨時パーティオフカイですよ。どんなことをするつもりだったんですか?」


 たとえ気安い相手でも、仕事のことはシビアなレイリア。

 彼女には既に独立して、1人の探索者サーチャーとして過ごしてきたか自負がある。

 割に合わない仕事や、(戦力として)強く優秀なコロナに寄生するような仕事は願い下げだった。

 臨時パーティオフカイをするならば、どちらにも利のあることをするべきなのだと考えていた。



 コロナはそんなレイリア思惑など考えもしない。

 むしろどんなことをすればいいのか、相手に委ねるつもりだったのだ。

 普段と違うこと――それが新たなスキルを手に入れる方法なのだから。それしか考えていなかった。


「むしろどんなことをしたい?

 俺気分転換に……いつもと違うことをしようと思ったんだが。

 自分で考えつくことなんか大体決まってるし、マンネリなんだよ」


 コロナは思った。

 固有能力ユニークスキルの話をせずに、どういう風に話を持って行けば納得してくれるのかを。


 そこで考えた理由は飽きたから気分転換というものだった。

 自分の【好奇心旺盛みようみまね】のマイナス要素を利用した自爆技と言ってもいい。


 本来のスキル効果を教えるほどにはレイリアを信頼はしていなかった。

 可愛いは正義ではあるが、それが自分にとって有益かどうかはわからない。縁が切れてしまえば情報は漏れてしまうのだから。

 そもそもコロナは自分が正義などと思ってもいない。正義に誅される可能性もあるのだから。


「もう! コロナさんから誘ったのに、全く考えていなかったのですか? そんなんじゃモテませんよ!」




 レイリアの言葉がコロナの胸に突き刺さった――

 

 

 

 

 

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