41.スキルポイントが足りない!!
それからというもの、俺はこの階層で先生――《ギャオーン》と訓練に励んでいた。
※そう思っているのはコロナだけです。
先生の襲撃は突然でいついかなるときも気が抜けない。
【直感】により、いつ来るか分かるが、その初動が読めないのだ。
そしてタイミングはわかるからこそ、よく"学べる 。
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これは言ってみれば、リプレイ体験で感覚を磨いているようなものだろう。
コロナはかつて日本に居た頃、ゲームで上手くいかない時はネット上にあるプレイ動画を参考に動きをマネをした。
もちろん完全にわけではない。自分に合った動きだけを取り入れるだけだ。
それでも充分に効果がある。先人が作り上げた方法は、理屈がわからなくてもある程度は使えるようになるのだから……。
ただし、それは所詮動画。
動きを真似たところで、完全再現できるテクニックなどは持っていなかった。
けれども今回の場合は違う。体感リプレイなのだ。
その動き、その感覚、そしてそのタイミング。それを見て感じればいいだけなのだから。
だが、【ブースト】の使用を止めると、【直感】の制度が鈍る。
奇襲を感じ取れないこともあった。
おそらくだが、このスキルは自身の能力相応の効果しか発揮できないのだろう。
コロナの今の地力では【直感】ver9は不相応ということだ。
彼の経験からして、失敗したことは実は身に付かない……ということがわかっていた。
【ブースト】を常に展開しながら、3階層を徘徊して、《ギャオーン》の奇襲について経験を積んでいった。
途中で4階層へつながる階段は見つけていたが、まだ時期ではない。『そう先生が言っている』と自分に言い聞かせた。
次第に【直感】が告げる前に、『あぁ、あそこに隠れ潜んでいるな』とわかるようになると、【ブースト】を切って更なる修練を励んだ。
これは感覚を鍛えるというより――洞察力を磨くと言った方がいいだろうか。
長く研鑽を積んで始めて身に付く者が、常にその道のプロに手取り足取り教えて貰っているようなものだ。
理屈は分からなくても――
『このパターンならこうすれば良い』
『あのパターンならこうだな』
と優しく教えてくれるのだから。
何度も繰り返しやっていれば、判断できるようになるくらいにはなる。
インターンというよりはチュートリアル。まさに至れり尽くせりである。
そんな『超簡単! 今日からできる俺は……』講座を受講してたコロナだったが、卒業するまでに3日ほどの期間を要した。
ロナルドに鍛え上げられたとはいえ、レイニーに扱かれたとはいえ、所詮平和なボケした日本人。
特殊訓練を受けたわけでもなければ、危機感もない。
トラウマにより卑屈感はあっても、そんなものは何の意味もない。
しかしながら、戦地に長く居たことで、ようやく雰囲気などを感じ取る感覚が発達し始めた。
そして経験を積んで洞察力を身につけたのである。
それとともに【敵意感知】というスキルも身に付いたのだった。
「ふぅ、そろそろこいつ等と遊ぶのも終わりにするかな」
既にに『こいつ』扱いである。
『先生』呼ぶ殊勝な態度などどこへやら……。彼にとって、もはや用なしとなったモノにはその程度で充分なのだ。
どの様に、そして何処に潜んでいるか。それが一目で分かるようになると、地下へと続く階段に向かうさなかに出遭う《ギャオーン》は、他のスキルの練習台となっていた。
新たに手に入れた【魔法剣】。
これは制御がとても難しく、ただ魔法を唱えてスキルを使えば良いというものではない。
武器の程度にあった魔法の威力に制御しないと暴発しそうなのだ。
これも相棒である【直感】が告げたことだ。そうしないとヤバイと。
そもそも魔法とは、使用する――覚えることつまり身に刻む――のに必要最低限の《魔力》値が決まっている。
そして威力も一定なのである。
たとえverを強化することで、効力や性質は多少変わったとしても、単純な威力は一緒なのだ。
もっとも、それによって数が変わったり、連鎖したりするので最終ダメージはかわってくるのだが……。
そこで、魔法を応用活用するのに必要なのが《操作》だ。
呪文を唱えた後の展開の早さ、範囲や命中補正などのコントロール、そして既定以上に《魔力》を込めることなど。
逆に、威力を弱める為に《魔力》を減らし、発動させるのも全て《操作》によるものだ。
既に発動することが可能なものに、《魔力》をさらに込め威力を増すことは簡単である。もちろん制御するという点では難しいのだが……。
だが、威力を下げるというのは根本からして発想が違う。
たとえば、ある設計図があり、それを製造すると考えて貰いたい。
構成するのに必要なパーツが足りていない状況で、それを構築するとなると不可能である。余ったパーツで補強するのとは話が違う。
根本――設計から見直す必要があるのだ。
だが、一つ例外がある。
そう――手抜き工事だ!
耐久性、安定性、信頼性。
全てにおいて実用的ではないそれは、本来許されないし、許してもいけないことなのだ。
ところが作る人の腕で、それを誤魔化すことができる。
耐久年数と使用期間、そして既定の使用に限ることだけならなんとか間に合わす、ということすらあり得るのだ。
今回の場合は、設置する場所では設計図通りの物は作れないので、小型化しろと要求している点が問題だ。
そこで親方が、「任せてくださいよ大将!」と手抜き工事を施工する。
つまり、しょぼい武器に【魔法剣】――このような無茶振りをしたことが、そもそもの原因なのだ。
このような難易度の高い【魔法剣】を戦闘中に使う――
というわけにもいかず、予め攻撃魔法――【フレアバースト】と【ウィンドカッター】を先に唱えて、剣に封じ込めるという方法をとっていた。
もちろんずっと効果が続くというわけではない。
接敵する前に効果が切れ、再度使用……といったところで、使う暇もなく戦闘が始まってしまうこともあった。
このため、コロナのSPが尽きそうになって身体が重くなり、すぐ息が切れるようになってしまった。
階段へとたどり着く頃には、今日は探索を始めたばかりというのにもかかわらず、これ以上は進めないという状態になる羽目になっていた。
「ふぅ~~~~~~~。
今日はもう無理そうだな。身体がろくに動かねぇ……」
その日の探索を諦めることにした。
――もっとも、1日単位と割り切って探索しているわけではない。疲れたら休憩し、眠るだけというサイクルを送ってきていた。
身体は疲れているが、手持ち無沙汰になるためコロナは暇を感じた。
疲れを癒すために睡眠でも……と思うが、起きたばかりで眠ることなどできない。
そこでその時間を利用して、自己能力を弄ろうと考えた。
「う~ん、SkillPointが足りないなぁ……。
そろそろ進化できそうなのもあるし、どうしたらいいか」
彼としてはAbilityPointが、SkillPointの代用になるからといって使う気などない。
固有能力は強化させるにはコストがかなり掛かる。
スキル・魔法は1ポイントに対して、固有能力は4ポイント、進化させた上位スキルでさえ2ポイントしか使わない。
もし、【???】の進化したスキルにverがあった場合は、いくらコストがかかるかわかったものではない。
そう考えると、今あるAbilityPointを無駄にするという判断はまずありえない。
【魔法剣】を覚えたことで、魔法の強化も視野に入れる必要が出てきた。
他にも振っていない、有用なスキルはいっぱいある。そもそも【ブースト】ですらあれ以来強化していない。
そう考えるとどれを強化していいのか分からなくなる。
ゲームならやり直せばいいのだが、これは現実で、なおかつ自分のことなのだ。
(他人のなら、あーすればいい。こーすればいい。と簡単に言ってしまうこともできんだが……なぁ)
悩んだ末、結局現状維持という結論に落ち着いた。
もっともダンジョンに潜ってからちょくちょく振っていたはいたのだけれども。
その後、食事を取り、装備品を手入れすることにした。
暇ならば、装備の整備をするというのは正しい考えだろう。
格好悪くて、早く脱ぎ去りたい鎧であっても、ここでは命を預けているのだからなおさらだろう。
コロナは詳しい手入れの仕方など知らなかったので、汚れや油を手ぬぐいで拭き軽く研ぐだけ。
鎧に関しては、そもそも補修道具など持ち歩いてはいない。
このような雑な処置では長く持たないだろう。
彼は『どうせ買い換えるんだから別にいいか』などという、物を大切にしない性格をしていた。
想い出のある物ならともかくとして、そもそも妥協で使っている物にそのような物などありはしない。
それが終わると、今度は収納道具の食料を調べた。
収納道具に入れている限り劣化しないとは聞いていたが、実際はどうなのかという点と残数確認のためだ。
(節約して1月……はもたないか。――3食しっかり食べて13日か)
戦地で節食というのは本来あり得ない選択肢だ。
過酷な状況で生き延びるというのなら話は違うが、『戦い』という戦術を取るなら、むしろ多めに取ることが肝心だ。
ただし、食べ過ぎは注意だが……。
そして現状を見る限りギリギリまでというのもありえない。
余裕を持って地上に戻らなければいけないのだから……。
(そうなると残り――――――10日)
ネトゲでもオフゲでもスキルの方向性って一番悩むところですよね。
個人的に魔法使い系を選ぶことが多く、正直上手なタンカーさんは尊敬します。下手なタンカーさんにはピキピキすることもありますがw




