番外編 キノコへの賛美歌
僕はゲイラ・ポープランド。
突然だが、僕は父親を尊敬している。
だって父親は強いし格好いい。
【邪気眼】階級の凄腕の探索者なんだ!
近所に住むアシモッフ君の親のライナーさんもソロ狩りで【エリート】なのは凄いけど、僕の父親のギニーブ・ホープランドの方が絶対上だ!
成人する前はそう言い合って、よくアシモッフ君と喧嘩してしまった。
僕よりずっと小さい子供相手に何をやっていたんだ……と今は思うけど、そのくらい父親を自慢に思っていると言うことなんだ。
父親はキノコが好きだ。
毎食キノコを食べていた。
母親はキノコがあまり好きではないらしく、別メニューを食べるときが多い。
僕も正直、食べ飽きてそれほど好きではないのだけど、大好きな父親が勧めてくるので、我慢して食べる事にしている。
それにアシモッフ君みたいに好き嫌いしてると強くなれないし。
そもそもライナーさんだって、アシモッフ君の好き嫌いは良くないことだと諭しているらしい。
凄い人達がそういっているんだから間違いはないんだ!
そして父親のキノコ好きは、私生活だけに及ばない。
まず鎧にキノコの絵を彫っている。
何種類かのキノコを肩当て、胸当てそして腰当て、脛当て、手甲そして兜にまで。
そしてはぎ取りナイフの柄はキノコ型だ。
依頼もキノコにちなんだ物が多い。最近も数日掛けてオリアコン森国まで行き、ダンジョン《キノコ山》に籠もってきたらしい。
何度もいうようだけれど、父親は凄い。
だけどそんな父親も苦労していた時代があるみたいだ。
でも近場のダンジョン、《ガイニース》のボスの魔女ニャンターを倒したことが転機となったらしい。
そいつが落とした『ランダムBOX』を開け、手に入れた《弓》『ライトホークス』があってこそ今の父親があるらしい。
今はもう手元にないみたいだが、その《弓》にはスキルが付与されていたという話だ。
それはとても珍しいもので、本来低い階級の者はとてもじゃないけど手に入れることができないみたいなんだ。
だけど父親は神様に選ばれたのか、運良くそれを手に入れどんどんギルドで昇級していったんだ。
良い仲間にも恵まれ、今では親父達の固定パーティ《マッシュメジー》は、民都プロンティア近郊では知らぬ者がないほどだ。
やがて、ただ憧れるだけの日々は終わり成人を迎えた。そして僕はギルドへ登録をしに行く日となった。
もっと早くからギルドに所属するという手もあったのだけど、今後のためにも父親から色々と教わっている内に成人してしまった。
それに文句などはない。多少スタートが他より遅くなっただけで、いずれは追いつけるのだから。
「ゲイラ、お前の弓は若い頃の俺以上だ。特に問題はないだろうが……無理だけはするなよ」
「うん、僕は父親みたいな凄い探索者になるから問題はないと思うよ」
「いまいち答えにはなっていないんだが……。
――言い遅れたが、その額の入れ墨、格好いいぞ! 最高に似合っているな」
「そうかな? それだといいんだけど」
この入れ墨は正直どうかな~って思ってたけど父親には受けたらしい。
意を決して、きのこを掘ってみたけど、どうやら正解だったらしい。
――――母親はこれを見て思わず泣いていたけど……。どういう意味だったのかな?
「魔女ニャンターを倒すまでは絶対に無理はしないよ」
「そうか? まぁ、あそこは死の危険性がないから大丈夫だとは思うが。
魔女ニャンターは結構強かった覚えがあるから、より一応気を付けるんだぞ」
「うん、まかせて!
――それじゃ遅くなるしそろそろ行くよ。じゃあいってきます父親」
「あぁ、何かあったらいつでも相談しに来い。きのこ鍋でも食いながらまた教えてやる。じゃあ行ってこい」
そのような遣り取りを経て、ギルドへやってきた。
集落から近いから民都まではすぐだ。
話は変わるけど、受付嬢はみな美人だったり可愛かったりする。
可愛い女性はうちの集落には居なかったので、ちょっと恥ずかしい。けど、何とか登録することができ、証を手に入れられた。
女の人にかまを掛けていられる状況じゃないしね。
僕も父親が結婚した年齢にできればいいと思っている。
――――できれば可愛い娘がいいけど……。
規約がなんとかといっていたけど、良く覚えていない。長いし、一度に言われても覚えられるわけがないんだ。
そもそもなんと言われようとも止めるなんて選択肢はありはしない!
訓練についても説明されたけど、正直訓練所なんて行く人の気が知れない。
だって、若い頃からちゃんと鍛えていれば行く必要もないからだ。
訓練所に通い、終了すれば魔法が3つ貰えるらしいけど……。
小さい頃から父親に、これは取っておけと言われたものは既に取得済みだし(キリッ
なんたって父親より凄い教官など、絶対にいるはずはないのだから!
――違うことを教わっても守る気なんてないからね。
【フレアバースト】・【ヒール】・【クリエイト(水)】・【ウィンドショット】
この4つ!
誰がなんと言おうとも、これらがあれば下級階級は問題などないのだ。
特に【クリエイト(水)】は重要だ。生きるためにも、依頼をこなす上でも。
父親の若い頃の教訓として、『生水だけは絶対に飲むな』と口を酸っぱくして言い聞かせられてきたからね。
――――一月後
僕はかなり早く【イモ】になった。
これで魔女ニャンターを倒せる。
そして受付嬢に聞くと、魔女ニャンターの出現時期が近いことが判明した。
――――これは父親と同じく、僕も神に選ばれた存在なのかもしれない!
そう興奮する気持ちを抑えながら、泊まり込みで魔女ニャンターを待ち受ける準備をする。
張りついていないと、他の人に持って行かれる可能性もあるしね!
そして運命の日を迎える――――




