表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/112

33.ここが、おまえにょ、はかばだにゃ





 ボスも興味があるが、まずは救出をするべきだろう。

 放置してボス狩りしてました――なんてことが、あの悪徳ギルドに伝わったらどんな目に遭うかしれたものではない。


(そもそも生活保護という時点で、命綱を握られているのだから……)


 そのことを思い、コロナは賢明に探し回っていた。



 迫り来るゼミナールを盾でたたき落とし踏みつける。

 見かける人面犬は【魔刃】を使った石を、【投擲】で投げつけて頭を吹き飛ばす。

 幾千もある家屋の室内は無視して、街を全体的に走り回った。


 とはいっても、ドロップアイテムは回収するのだが。



 襲い掛かってくる魔物を蹴散らし、【気配察知】で索敵とともに救助対象まぬけどもを探す。

 元気よく移動している気配を発しているのは魔物だろう。

 救助対象まぬけどもは屍のごとく、「みずみず」とその場で言っているか、「こわい」と叫びながら、うずくまり這いずっているかのどちらかだ。


(熟練と階級ランクポイントを貯めるには、屋内を――家を家捜しするよりも、こういうやり方がいいのかもしれな)


 などと、関係ないことを思索する始末。

 そもそもコロナにやる気などないのだ。

 義務を強制された場合のものは大体このような態度である。



 そのとき何か音が聞こえた。

 よく耳を澄ましていると、【聞き耳】を取得した。

 【好奇心旺盛みようみまね】を取得してから、脳内に告知されるようになったので便利になったともいえる。

 もしかしたら、《操作》が10になったからかもしれない。

 どちらが要因かわからないが、便利になって文句はつけられないだろう。


 その成果に、「ラッキー」とコロナは呟く。

 これだけがこの依頼では楽しみだと言っていいだろう。

 自己能力ステータスを眺めながら、その能力を確認する。

 そして先ほどよりもおざなりに耳を傾けていると、遠くから、「みず~こわ~いぃいいいよぉおお」という声が聞こえてきた。


(馬鹿1名発見っと)



 声の主の元へ行くと、見るからに見事なモヒカンがいた。

 聞き知っていた容姿から、この男が『グレッグ』だと推測できる。


(見たことあるな。こいつ……、あぁ「探検家スペランカーダセェ」って会う度言ってきたやつか)


 いっそ放置して帰りたい気分だった。

 しかし、正義感ではなく強迫観念から仕方なく、救助しなければいけない。

 重い足を動かしてグレッグに近寄っていった。



(しかし、どうやって運んだらいいものか……)


 意識がはっきりしていない人は、通常以上に重い。いやそれが本来の重さなのだ。

 意識のあるものは、救助者の動きに沿ったベクトルをしてくれるため、それほど力を必要としない。

 しかし、意識のない者は救助者の力だけでなんとかしなければいけない。

 余裕のない者はもっと最悪だ。助けに抵抗して、意識のない者以上に力が必要となってしまう。


 ここでモヒカンをよく見て、どうするべきか考えた。


 ――――どうみても、暴れているな……。


 そこでロープがあったのをコロナは思い出した。そしてモヒカンの獲物である槍を手に取り、モヒカンの手足をそれと結びつけた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「えっほ、えっほ」


 俺は今、原人が獲物を確保したかのように、槍にぶら下げた肉を担いでいる。

 まぁ、肉といっても――モヒカンだが……。


 【ブースト】を掛けて全力疾走で入り口に戻っている最中だ。

 途中、ゼミナールに襲われたが、を振るって叩きつぶした。


「み、みずぐぇえええええ」


 何やら情けない声が時折響いたが、空耳だろう。

 【聞き耳】を取得したが、きっと空耳に違いない。間違いないんだ!

 そして、見る者が見れば力強いとされる歩みで、地上へと向かっていく。


 人面犬はまだ再出現リポップしていないのか、見当たらない。

 そもそも道の真ん中を通行していれば犬には絶対接触しないしな……。


 腕に自信がないものが人面犬を見かけたら、道の中央で待機していればいい。

 ゼミナールが来ないようなら突撃すればいい。そうすれば【狂犬】など怖くないのだ。

 1対1で【狂犬】を食らうようなら、化樹宴かじゅえんから出直してくるべきだ。

 あそこのブドーンの方がよほど強い。



 そんなことを考えている内に地上へと躍り出た。

 そのままを投げ、地面に突き刺し、2週目に入った。





 今度は逆回り――先ほどは左回りだった――で街を疾走する。ここでも【ブースト】を使う。

 もう呪文に恥ずかしくなるような歳ではないのだ。――ちょっと違うか? まぁ、同じようなものだろう。

 使い慣れたそれを駆使し疾走し続ける。


 これが――【ブースト】があるなら、正直人面犬の攻撃が当たりそうだな、と思ってからでも充分に回避ができると思える。


 こんなに便利な魔法を紹介してくれた軍曹殿には、感謝の念が尽きない。他の教官は何故【ブースト】を教えないのか?


 まぁ、俺は困らないからどうでもいいな!


 真実はおそらくシンプルなのだろう。

 もう少し上の狩り場では使い勝手がいいスキルを紹介しているだけなのだろう。

 【狂犬】などに引っかかるアホは考慮していないのだろう。


 思考の海に沈みながら、偶によってくるゼミナールを叩きつぶす。

 ほぼ反射的にやっていたことなので、いつの間にか盾で弾くだけでも倒せるようになっていたことに、ふと気付く。


 ゼミナールとかもう雑魚だな。いや、最初から不意打ち特化でそれ以外は微妙だったな……。


 これにより、もはや障害はなくなったので、息が切れるまで走り続けるだけになった。



 そんなときまた、物音が聞こえた。


 ズズ、ズ、ズズ~


 引きずるような音だ。これはおそらくゾンビ種|(笑)が沸いたのだろう。

 俺は立ち止まり、武器を構え戦闘態勢に移る。そしてゆっくりと進んでいく。


「のどかわいたよぉおおおお、だれかぁああたす~けてぇえ」

「ふん!」

「ぎゃふ~ん」


 ゾンビにかまれると……確か感染するんだったな。


 そんな言い訳を、いや言い訳ではない。身の安全を守ったに過ぎない!

 撃退したゾンビ・・・を前にそのようなことを考えていた。


 不意を突くつもりだったのだろう。塀に隠れていたのが、いきなり飛びかかってきた。


 ――――だが、残念だったな。フッ……。


「あうあぅ、水、みずぅうううう!」


 チッ、生きていやがったか。


「ふんっ!」


 俺はトドメを刺すべく、気合いを入れて蹴飛ばした。

 本気で殺すつもりはもちろんない。バレたときが問題だからな……。


 理由があって蹴っ飛ばしたわけだが……まぁ単に仰向けにさせたかっただけだ。

 仰向けにしなきゃ、顔がわからない。でも手で触りたくない。

 ならばどうするか――消去法で蹴っ飛ばした……というわけだ。


 顔を見て口ピアスが確認できると、救助対象まぬけその2の『レノン』というやつなのだろう。

 記憶にはないが、きっとこいつも俺を馬鹿にしたやつの一味だろう。


 ※初対面です。



「うんしょっと」


 俺は今ゾンビの足にロープを巻き付けている。

 正直触りたくもなかったが、他に方法はないし仕方のないことなんだ。

 後で消毒しないといけないが……。

 それもこいつが槍を持っていないのがいけないんだ。


 ま、足を縛りそれを引きずっていくことになるのも、こいつが槍を持っていないのがいけないんだな。

 何やら近くに弓が置かれているが、そんなものは気にせず放置することにした。


「さてと、『我は全てを求め、全てを手に入れる』 ――――【ブースト】、行くかっ!」


 【ブースト】をかけ再び全力疾走をする。俺は風だ! 風になるんだ!

 荷物がある分速度がいまいちだが、BGMが流れているので、『少しは遅くなってもいいかな?』という気持ちになってくる。


「ぶげぎょれば! みじょ~」


 よく分からないがお経みたいなものだろう。お経を聞くとか一時期流行ったし、問題ないよね?



 そんなことを思いながら駆けていると、地上へと舞い戻っていた。

 そして荷物を放りなげると、予備のロープがないことに気が付く。


 俺は辺りを見回し、先ほどのを探す。


 ――――あれがあれば、便利だからな!


 しかし、投げたはいつの間にかなくなっている。


 チッ、救助隊が運んで行きやがったか……。


 そうなるとこの手荷物を解くしかない。

 ロープを解き、収納道具ストレージにしまうと、ゾンビを遠くに蹴飛ばした。


 背中を向けた瞬間に襲われる可能性があるからな。その手は食わないぜっ!!



 さて、残り一人だな。

 初日で【狂犬】になったというある意味・・・・大物だ。

 それを捕獲しに俺は再び地下へと降りていった。




 今度は直進をする。周囲は大体捜索を終えている。後は、入り組んだ通路しか考えられない。

 しかし、そろそろボスという輩にも会ってみたい。むしろ救助よりもそちらが気になる。


 既に二人救助を終えているし、万一見つからなくても、間に合いませんでした……で済むだろう。

 依頼内容をよく思い返せば、『生きた状態で』など一言も言っていなかった。

 ギルドが揚げ足をとるなら、こちらもやってやるまでのことよ。



 このまま進み続けるとB2Fへの階段がある付近までやってきていた。


「いつの間にか、こんな所まできてしまったか」


 俺は立ち止まり、スキルを使って周囲の気配を探る。



 ドドドドドーーーーン!!


 探るまでもなく、向こうから気配を教えてくれている。これは戦闘音だろうか?

 随分と遠くだったが同業者だろうか?

 こんな低層で派手な魔法を使うとかアホだな。


 しかし、近づくにしても注意が必要だろう。何せあのような音を立てられるのだから。

 ある程度近づいた時だった。



「ここが、おまえにょ、はかばだにゃ」


 そんな声が聞こえてきたのは。

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ