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32.ブラック企業





「――――以上、合計¥33,750となります」

「は?」


 いきなり疑問の声をあげたのはコロナ。


 ――――ここはギルドの買取窓口。


 今ダンジョンで取得したアイテムの販売に来ていたのだ。


「内訳は教えて貰えるのかな」

「ええ、かまいませんよ」


 そう答えたのは、今まで関わりのかなった受付嬢カーチャンだ。

 少し年齢を召しているのが玉に瑕。若い頃はそれはそれは周囲を魅了していた事だろう。

 だがそれもいまはむかし。 時の流れとは、かくも残酷になりにけり……。



「単価を述べていきますね。

 もふもふな毛皮¥320、黒蜜¥430、石けん¥30、シャンプー¥1,250、リンス¥1,200、ねこ缶¥600となっております」

「むぅ……」


(思った以上に安い)


 普通に、依頼板に載ってある依頼をこなした方が稼げる。


「じゃあ、ナイロンの服はいくらぐらい?」

「ナイロンの服は上下セットで¥15,000ですね」


 服まで売ってようやく、まともな稼ぎといえるのかもしれない。


(これは、かなりキツイな……)


「換算ポイントとかって提示できる?」

「服以外はどれも1となっております。服は3ですね。

 【サル】なるには3000ポイント必要です。

 ちなみに探索者サーチャーの場合、掲示依頼の場合はどれも20ポイント、指名依頼で50ポイントになっております」


 知りたい事を先回りして答えてくる。流石ベテランは伊達じゃない。



 探索者サーチャーは……ってことは、傭兵ソルジャーはもっとポイント数が多いか、必要ポイントが少ないのだろう。

 それにしても、依頼よりもアイテム売却の方がポイントは稼げるらしい。


 一日かかって、20に対し今回は90ポイントを越えている。

 やはり、探索者サーチャーはダンジョンを探索してこその職業なのだろう。

 依頼の方がお金は遙かに稼げるのだが……。




 どのくらい稼げるのか、例をあげるとしよう。



 ・【ニート】が請け負う魔獸退治の荷物運び ¥63.000

 ・化樹宴かじゅえんの上位化樹出現エリアでの収穫 ¥58,000

 ・水族館ツキジの戦闘での援護射撃(弓使いに限る) ¥83,000



 数日こなすだけで、今付けている装備が買えそうなくらいだ。

 しかし、階級ランクが早く上がれば稼げる額も増える。

 早く上がる内は階級ランク重視にした方が良い。


(あとは……一部の階級ランクを罠を避けるときくらいか?)


 罠階級ランク――【ニート】や【邪気眼】に上がるのを避ける。

 または一段抜かしで上がるためそれ以前の階級ランクに長く居続ける。

 そんなときは飽きや、途中でダレたりすることもあるだろう。

 そんなときに気分転換に依頼をこなすとかいいのかもしれない。


 そう結論を下すと、しばらくダンジョンに籠もることに決めた。

 また、この受付嬢カーチャンに缶詰の中身について聞いてみた。

 中身はランダムで同じものがはいっているということはないらしい。

 当たりだと超高級食材が入っているらしいが……主な用途は宴会で盛り上がるために使われるらしい。


 ついでにダンジョンで出る魔物についても尋ねると、現在許可されている階の魔物のみ、書類を閲覧する許可が下りた。


(情報規制が相変わらずキツいぜ……)


 通された資料室で、その資料を眺めながらそう感じた。

 もちろん監査員がおり、勝手な行動をとることはできなかった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 俺はレイニーちゃんと効果的なスキル取得方法を試したり、ダンジョンに籠もる生活を送っていた。

 その日々は濃密で、合間合間に休暇を取る必要すらあった。


 しかし、その甲斐もあって、有用なスキルを得る事ができた。



 【投擲】  【気配感知】  【体術の心得】

 【衝撃耐性】  【連撃】  【治癒力向上】



 このほかに最初のダンジョンアタックで【反撃】を習得していた。


 ――――おそらくは捨て身攻撃が要因だろう。


 それと覚えている数が少ない魔法を覚えるためにも、レイニーちゃんに教えて貰おうとしたのだが――魔道書を読まないと効果がないといわれ、泣く泣くギルドで借りることになったんだ。


 結構レンタル代金は高く、1冊借りるのに¥100,000もした。

 他に安いのもあったのだが、ただ覚えればいいという問題でもない。条件に合ったものでなければ意味はないのだ。



 そして覚えた魔法はこれらだ。


 【フレアバースト】  【ウィンドウォール】


 この二つは訓練所で教えられる3つの内の2つらしいが、軍曹殿の選んだ魔法も同じ値段だった。だから特に文句はない。

 そもそも文句など言えるはずもないのだから……。



 それと存在強度もあがったことで、スキルをあげることにした。

 まだまだ進化できそうなほど熟練は貯まっていない。SkillPointを余らせすぎても効率的ではないからな!




===========================================


   自己能力ステータス

 名前:コロナ・パディーフィールド

 存在強度:25

 種族:渡界人とかいじん

 職業:探索者サーチャー

 天職:発掘調査 剣士

 HP:675+1520/1700

 SP:155

 パラメータ

  攻撃力:(20+10)+10

  肉体強度:27+12+5

  魔力:(6+35)

  器用:32

  操作:(19)

  速度:18-26



 refinePoint:74

 AbilityPoint:3

 SkillPoint:0


固有能力ユニークスキル>

・スキル >

・魔法 >



===========================================

固有能力ユニークスキル

         【異界の旅人】  Active!!

         【魔力の補助輪】   19

         【好奇心旺盛みようみまね】  Active!! 

         【???】 ver9.0

         【???】

===========================================

・スキル

         【魔刃】      ver2.6

         【連撃】      ver1.0

         【盾術】      ver5.3

         【投擲】      ver1.0

         【反撃】      ver1.0

         【回避上昇】    ver9.1

         【治癒力向上】   ver9.0

         【刺突剣の心得】  ver9.2

         【体術の心得】   ver2.0

         【解体の心得】   ver3.1

         【気配感知】    ver3.0

         【物理耐性】    ver9.4

         【衝撃耐性】    ver1.0

         【恐怖耐性】    ver5.2

         【料理】      ver0.3

===========================================

・魔法

         【ウィンドカッター】ver1.9

         【ウィンドウォール】ver1.0

         【フレアバースト】 ver1.1

         【ヒール】     ver9.1

         【ブースト】    ver3.4

===========================================

所持金 ¥610,219

装備

 ・《刺突剣》 エペ +10

 ・《鎧》チープレザーアーマー +11

 ・《盾》ウッドバックラー +5

 ・《靴》レザーブーツ +1

===========================================

 階級ランク:D-3-イモ 1633/3000



===========================================



 一つ変わったところがあるのがわかるだろうか?


 そう、――――天職が付いたのだ。



 剣士の効果は攻撃力が10ほど増える程度だった。

 後々になっていくと+10の効果は大きいかもしれない。が、現状では微妙としかいえない天職だ。


(どうせボーナスポイントが上がる天職があればそれが良かったなぁ)


 俺は結局は無い物ねだりをするのであった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ――――ある日


 ダンジョンのアイテムを換金していると、年配である受付嬢カーチャン――ヒルダ・エコーミックに話しかけられた。


「コロナさん。あなた、最近調子がいいみたいですけど――

 たとえば……今から再びB1Fはに行ったとしても余裕かしら?」

「ええ、特に問題はありませんよ」




 俺は愛想良くそう答えた。

 事実だし、美熟女はそれはそれで悪くはない。


「それなら頼みたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「頼み……ですか?」


 何やら深刻そうな顔でヒルダはこちらを見つめてくる。


 ――――嫌な予感がひしひしと伝わってきやがる……。


 俺は逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。



「ええ、依頼よ。緊急性の高い救助要請――強制依頼として処理します」

「強制――ですか?」

「無理だったら別の人に頼んだのだけれど。

 今日はいつもより早めに切り上げてきたので、丁度いいかなって」


 装備の下見でもしようかと、早めに切り上げて来たのが間違いだった。

 その依頼にしたってゾンビみたいになって、「みずみず」いってた連中のことだろう。


 俺はあいつらが嫌いだ。

 正直助けたいとも思わないね!

 なんとしても逃げたい俺は、強制依頼を避けようと努力する。


「疲れてたら別の人だったってことですね」

「まぁ、別の人にも頼みますけどね。数が多い方が早く発見できますし」


 が、どうやらそんな余裕はなさそうだ。


 まぁ、殺したいほど憎んでいるわけじゃないし……。

 仕方ないのかね。


「少し、休憩くらいは構いませんよね?」

「次の時間の鐘がなるまでなら……大丈夫よ」


 休憩は貰えるらしい。

 流石にこのまますぐに行けとか言われたら、いくら謙虚な剣士でも『怒りが有頂天』になってしまうところだった。


「それで、救助対象は?」

「モヒカン頭のグレッグさんと、

 唇の端にピアスをしているレノンさん、

 あとは額にキノコの入れ墨をしているゲイラさん。

 ……ゲイラさんは今日タコになったばかりで、他の二人より心配ですね」


 ――――キノコの入れ墨?

 馬鹿なことやってるやつがいるなぁ……。


「今日【イモ】になっていきなりか……それは色々と結構キツイな」

「ええ、下手したら引退しちゃうかもしれませんね。

 それと心配なことがもう一つあるんです。これが緊急と付く原因でもあります」


 確かに、ゾンビどもはいつも放置されていたな……。


「それは?」

「魔女ニャンターが出現する頃なんです」

「魔女ニャンター? 資料を読んだが、そんなのは載っていなかったが……」

「本来ボスについての情報はA~Dのそれぞれの階級の5にならないと開示されないんですよ。

 ですが今回は本来命の危険性のないところにも関わらず、それが起きてしまう可能性があるための例外なんですよ」


 おいおいおいおい。まてまてまて。

 秘密主義にしても、いいことと、悪いことがあるだろ……。


「命の危険がないところで、危険のあるボスが出るって……矛盾していないか?」

「ですが、そういうものなんです。まぁ、このような仕事をしている以上は、それなりに危険があるってことですよ。

 そもそも【狂犬】を受けなければ魔女ニャンターからだって逃げられるのですから」

「…………」



 これだからこの世界のギルドは最悪だ。

 けむに巻くようなマニュアルがあって、いかにも悪徳業者そのものである。


 きっと、後でいろんな部署をたらい回しにされて――最後は、「それは仕方ないですね、諦めてください」で片付られるようなことも出てくることだろう。

 しかもブラック企業バリの劣悪環境。

 従業員――ギルド所属者を当然のように酷使する。そして残業手当――緊急の強制依頼はなしと来た。


 ――――あるのは業績……つまりポイントだけ。



 さらに窓口の受付嬢カーチャンの美貌に騙されて、よく規約を読まない可能性も高いと来た。

 どこからどうみても悪徳商法そのものだ。


 そんな事を考えていると、神殿から鐘の音が聞こえてきた。


「時間になりましたね。それでは行ってください」



 あまり、休憩してね―よ!!



 次の鐘、みたいな条件は無情である。

 きっかりした時計などないのに、鐘で時間を区別する世界。現在8時だとして1分後に鐘が鳴ったら9時なのだ。



 やってらんないよ!


 俺は荒んだ気持ちでダンジョンへと一人向かう。


 何人かに依頼を出したとは言っていたが、それも怪しいものがある。

 あの後、誰も窓口に行ってなかったしな!

 先に受けている者がいなければ、おそらく自分1人だろう覚悟する。



 俺はギルドへの怒りを胸に抱き、一人地下ダンジョンへと潜っていったのだった。

 

 

 

 

 

所持金の端数はお菓子とか買い食いしていたからです。

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