表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/112

29.あんた……イモね と呼ばれた日

通し番号をつけてみました。

 

 

 

 

 俺はステ振りした後、黙々と依頼をこなす日々を過ごしていた。



 ・化樹宴かじゅえんでの収穫 ¥18,000

 ・夷化巣いけすでの漁獲 ¥13,000

 ・食堂で調理の助手 ¥3,000



 これらを中心に受けていた。

 農場は遠いので、日帰りで請け負うのは正直効率的とはいえない。

 だから民都近郊で……となると、この3つに限られた。



 では、仕事か説明しよう。

 化樹宴かじゅえんは特産施設である。

 特産施設というと水族館ツキジや農園といったトンデモ施設だ。

 ここは果樹園の木が化け物というだけで収穫するモノは地球と変わらない。


 まぁ、化け物がアイテムをドロップするというのは普通ではないのだろう。が、この異世界においてはそれは普通のことなのだ。

 気にしてはいけない。いけないんだ!


 日々出現する化樹かじゅたちを倒し、特産物である果物をゲットするための施設だ。

 化樹かじゅたちの宴とはいったもの、やつらは様々な種類――いや種族というべきか? その様々な種族がいる。



 桜の樹木モドキのチェリッシュ。

 こいつはさくらんぼなどチェリー系をドロップする。


 木と侮るなかれ。なんとこいつはチェリーボムを投げてくるのだ。ま、俺が名付けた技名だがな!

 火力は大したことはないが、当たると爆発するのでそれ自体痛い。

 避けても地面で炸裂するので、石などが飛び跳ねて躱すのも大変なのだ。


 軍曹殿との訓練で小さく避ける練習はしたが、今回の場合は大きく避ける事が正解だったのだろう。

 まだまだ精進が足りないってことだろうな……。



 蜜柑の樹木のオレンジ精人せいじん

 「み○ん星人か!」と思わずツッコミたくなる名前だが、こいつはチェリッシュと違い接近戦闘を仕掛けてくる。


 目つぶし攻撃として合間、合間に汁を飛ばしてくる。ウザいことこの上ない。

 が、防御力があるわけではないので、複数に囲まれなければたいしたことがない。


 そもそも囲まれても、顔を向けているのはほぼ一匹しかいない。後ろから目つぶし攻撃をされても意味はない。残念な戦闘力の化樹かじゅだ。

 そんながっかり系のオレンジ精人がドロップするのは、みかん含めオレンジ系だ。



 ブドウの化樹かじゅのブドーン。

 こいつは空手モドキの技を使ってくる。

 オレンジ精人とは比べものにならない近接格闘が上手く、また時間を掛けすぎると自爆・・する。


 一度自爆されたが、一粒一粒がかなりの威力を持っている。たが、関係ないところにも実が飛び散っていた。

 全弾食らえば相当なダメージを覚悟しなければいけないが、指向性はない。

 冷静にタイミングを見極め、『自爆しそうだな……』と思って、離れてみたらあっさりと回避することができた。


 きわどいコースに跳んでくることは確かなのだが、その速度は鈍く、楽に回避することができる。

 まぁ、D階級ランクの依頼なんで、そんな強い魔物とは戦うことはないのだろう。

 そんなこいつはブドウ系のアイテムをドロップする。



 もうだいたいわかっただろうか?

 他にも数種いるが大体こんなやつらばっかりだ。





 夷化巣いけすも似たようなモノだ。

 ただ、水族館ツキジほど巨大な魔物は現れないだけだ。


 ぽつんとある池に近づくと、ザバーンと池の中から魔物が勢いよく飛び出てくるのだ。


 ここで夷化いけとはどういうものか気になるだろう。

 それはただ目つきの悪い魚のことなのだ。

 人型の手が生えていたり、背びれが刃物だったり、空中を泳いだりするが――所詮その程度だ。



 こいつらの巣ということで夷化巣いけすという名前なのだ。

 特筆するべきことはない、こいつらは雑魚だ。小さい魚だけに……やめろ石を投げるな!



 おっと、失礼をした。


 ここからはナマズ、イワシ、アジ、メジナなどが。レアとしてサンマが獲れる。

 魚というと生臭い感じがするだろう。

 けど魔物自体は臭いはしない。ドロップアイテムの魚は臭うが……。



 また、化け物を生み出す特産施設の安全性について、疑問が生じるだろう。

 だが、この特産施設というものはいかにも人間にとって都合のいい存在であり、核となるもの――特産施設から、ある一定の範囲から出る事はできないのだ。

 水族館ツキジみたいに装置で生み出す物もあれば、自動生産みたいなのもある。


 中には魔物のドロップということではなく普通に、アイテムが生産されるだけの物もある。


 ――――つくづくご都合主義的な存在だ。


 まぁ俺の疑問などどうでもいいのだ。

 便利な物に不満などないし、不都合などないのだから。





 そんなこんなで、戦いをメインとした依頼をこなしていた。格好よくいえばクエスト! というやつだ。


 同時に、兼ねてより不安だった料理を習得するために、食堂でのバイト……おっとクエストをやることにしたんだ。

 皿洗いの仕事だが、このときの賄いは調理補助のクエストを受けたものが作った物だったらしい。

 ――このクエストを受けて判明した事だ。

 通りでそれほど美味しくないわけだな……。


 ナマポ用弁当の方が美味しかったからな!


 そんなわけで、しばらく――とはいっても2日ほどだが、続けているとスキル【料理】ver0.1が表示されるようになった。

 思った以上に早かったのは固有能力ユニークスキル好奇心旺盛みようみまね】の効果だろうか?

 しばらく続けてみるとver0.3になったけど、一週間ほどかかった。


 固有能力ユニークスキル好奇心旺盛みようみまね】は取得は早くなるが、熟練度の成長ボーナスはないのだろう。

 それがわかるなり、このクエストは受けるのをやめるようになった。


 どうせSkillPointで強化しないと意味がない。


 だが受けるのやめたら……、「あいつは根性なしだ」と言われるようになった。


 ――――何故だ!?



 聞いてみると、他のやつらは2週間くらいで取得するらしい。それで俺は取得するまで、『持たなかった』と思われたらしいのだ。

 これが固有能力ユニークスキル好奇心旺盛みようみまね】の弊害なのだろうか。


 よく見てみると、『マイナス効果として周囲に、「飽きっぽい奴」だと思われやすくなる。』と書かれていた。


 ――――なんということだ!

 気が付かなかったぜ……。



 そのイメージが浸透してしまったせいか、「やっぱりあいつは探検家スペランカーだ。根性すらねぇ。こちとら遊びじゃねぇんだよ」と言われるようになってしまった。

 そんなつもりは一切ないのに……流石にショックだ。


 だが、ここまで浸透してしまったものはなかなか払拭はできない。そう思って外野の声は無視することにした。

 態度で示す(キリッ) そんな俺格好いい。そう思って他の二つに集中してこなしたのだ。




 そしてついに――





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「これでコロナさんも【イモ】ですね!」

「あ、……あぁそうだな」


 結構来るものがある。

 女の子に、「あんたイモね」と呼ばれるのはキツイ。


 だ、大丈夫だ……俺はダサくはないはずだ。



 だが、少し冷静になってみよう。

 靴や盾。これは及第点には及ばないが、それほど悪くはないはずだ。


 しかし、チープなレザーアーマーは正直どうだろうか……。

 使い古されて、光沢のない革、いかにも金がありませんと謳っているかの象徴のような木製。

 これはもしかして……イモと言われても仕方がないのだろうか?


 いやいや、まてまて。


 これは制服みたいなものだ。普段着が平気なら問題はないはずだ!

 そんなことを考えていると、声を掛けられてしまった。


「どうかしました? この前一緒に買いに行った鎧見てましたけど、調子悪いのですか?」

「い、いや単にこれのおかげで階級ランクアップできたと思ってな。

 こいつのおかげ――つまりアーシャのおかげって、つい思ってな」


 格好悪いところは見せられない。適当に煽てて追求されないようにする。


「えへへ。そう言われると嬉しいですね」


 そう言って頬を染めるアーシャは、つい最近見習いを卒業し、希望していた総合窓口科に転属となった。

 これまでは俺専属として臨時でクエストの手続きをしてくれていたが、晴れて正式に・・・依頼業務にも携えることになったのだ。


「そういえば階級ランクアップすると特典が増えるような事を言っていたが、今回は何か変わった事ってあるの?」

「そうですね……探索者サーチャー登録をした方の場合、今回は踏破済みダンジョンの低層なら立ち入ることができるようになります。

 踏破済みのダンジョンは全部管理されているので、ギルドに加入しているとは立ち入りできないので、それの限定解除というものです」

「つまり加入していないものは未踏破――つまり危険なところのみということかな」

「そうです。

 それとコロナさんには関係ないのですが、傭兵ソルジャー登録の方は、依頼料が提示額より少し上がります」


 俺はふと気になったことを聞いてみた。


傭兵ソルジャーはダンジョンに入れないのか?」

傭兵ソルジャーの場合はまだ無理ですね。

 そもそも素材買取を傭兵ソルジャーはギルドでは受け付けていないので、行っても稼げないのですよ」

「買取をしない? どうしてだ? 勿体ないじゃないか」

「そういう決まりなんですよ。だから素材収集の依頼が出る頃にダンジョンの立ち入り許可が下りるようになってます」


 『決まり』ときたもんだ。

 やはりギルドは一癖も二癖もあるな……。


「ということは探索者サーチャーは素材収集の依頼より素材で稼ぎ、傭兵ソルジャーは依頼で稼ぐということになるのかな?」

「そういうことになりますね」

「そうなると……階級ランクの方はどうなるんだ?

 依頼を多くこなして稼ぐ傭兵ソルジャーじゃないと上がらないんじゃないのか?」

「それはですね……、素材買取でポイントを換算しているんですよ。

 これを利用して2段階アップとか狙う人がいるのですよ。

 傭兵ソルジャーの方は1歩ずつ階級ランクアップするしかないのですけど」


 ――良い事を聞いたぞ。

 これで通りが悪い名前の階級ランクを回避できる可能性ができたわけだ。



 つまり、2段階アップを狙えるという事は、【ニート】や【パシリ】を回避することができる!



「でも階級ランクアップしないという選択もできるんで、微妙な特典と依頼しかないと言われる【ダイス】や【エリート】を避ける人もいますよ。

 そこで【ピーオー】や【パシリ】でポイントを稼いで、2段階アップを目指すのが主流になりつつありますね。

 逆にその階級ランクの特典が美味しいとも言えるんですけどね」




 ――――な ん だ と !!




 酷い罠をみた。

 これは悪意だ! 悪意の塊だ! 腐ってやがる。このギルドは最低のクソに違いないね。

 こいつはくせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!! こんな○○××には出会ったことがねえほどなァーーーッ!



 声に出して叫ばなかったのを是非とも褒めていただきたい。

 正直暴れ出しても許されるレベルだ。

 きっとこの階級ランクを考えたやつらは、Cー3○Oやパシリと呼ばれているのを見てニヤニヤしているんだろう。


 趣味が悪すぎるぜ。



「それって、前の階級ランクの特典を利用しちゃいけないのか?」

「残念ながら、後人に譲る精神をモットーとしているらしく駄目なんですよ。階級ランク限定特典というものらしくて。

 あ、でも常時開放特典というのもありますよ。心配しないでくださいね」


 回避は不可能らしい。


「でも探索者サーチャーなら素材でポイントをため込めるのだから、そこを飛ばしてもいいんじゃないかな」

「ん~コロナさんは【ピーオー】や【パシリ】を嫌がってる感じに見えますが、本当にお得な特典なんですよ。

 そもそも入れる階層が違うので、買取ポイントの質が段違いですし」


 ぐぬぬぬ。何か方法は……――


 ――ッ!?


 そうだ!


「未踏破ダンジョンというのは、ギルドに入っていても階級ランク関係なしに入れるのかな?」

「ええ、できますよ。

 でも上級階級ランク前の方は遠慮して貰っているのですが、中には挑戦している人もちゃんと居ますよ」


 ビンゴ。


 ――――これが俺の生きる道だ。


 だが、案ずるにはまだ早い。他にも罠があるかもしれないのだから。

 ふふふ、今の俺は探検家スペランカー

 ちょっとしたことでも死んでしまうからな!



「あ、でも……」

「でも……なんだ?」


 やはりまだ罠が隠されていたのか!?


「そのですね、強制依頼が発動されると、ポイントに達しているか若干足りない人は強制的に階級ランクアップさせられるのですよ」

「な、なん…だと……」

「あ、やっぱり驚きますよね。ポイント足りないのに階級ランクアップできるなんてお得ですしね!」


 そっちじゃない。そっちじゃないんだっ!!


「実力が十分だとされる場合もポイントが全然足りないのに2段階アップという事例もあったんですよ。

 そういう人は大体歴史に名を残していますね」


 強制的にパシリにされるとか冗談じゃないぞぉぉぉぉおおおお!!

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ