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3.ここは天国? いいえ、おっさんといっしょです

 

 

 

 

 おっさんがいる。


 周りを見ると、明らかに店の中じゃない。どこからどう見ても屋外だ。

 なぜ断言しているかというと、何もないからだ。建物も道も木さえも……

 はっきり言おう。ここは荒野だ。



 あ、ありのままに今起こった事を話すぜ!

 俺は 風俗店で大人の階段を登っていたと思ったら いつのまにか違う場所でおっさんに起こされた。

 何を言っているのかわからねーと思うが、俺もナニをされたのかわからなかった――されてないよな……?

 (心配で)頭がどうにかなりそうだった……。

 この状況は催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。


 ふぅ、一度やってみたかったんだよ、このネタ。



 う~~、ち、沈黙が重いなぁ。

 そんなことを考えていると、おっさんが話しかけてきた。


「おい、お前、こんなところで何をしていた?

 死体かと思って近づいてみると、幸せそうな顔してやがるし。どうやら寝てるだけだったみてぇだし。

 死んでなかったから、一応救助してみたんだわ。追いはぎにでも遭ったのか?

 荷物もないし、裸だし……でもなぁ~、この辺りに追いはぎなんかでるわけもねーんだよなぁ。

 つーことで考えても分からなかったし。休憩ついでに、いい加減お前さん起こして聞いてみようと思ったんだ」



 ――は、裸だと……。


 俺は立ち上がり状況を確認しようとしたが、身体が動かなかった。

 首を動かして状況を確認すると、簀巻き状態――何かの布でぐるぐる巻き――にされていた。


「な、何でこの状態なんだ?」


 と俺は尋ねると、答えてきた。


「ん ?あぁ、そいつは男の裸なんか見てても面白くねーし。手持ちにあった布とロープでぐるぐる巻きにしてよぉ。

 お前さんをこうっ……やって、縛り、そうこういう感じで担いで来たんだよ。ガハハハ」


 おっさんは俺を縛った時の動作を再現をしてくれた。

 まさに簀巻きだ。ガハハじゃねーよ、ったく。



「少し状況を整理させてくれ」

「おう、いいぞ」


 そう言った後、おっさんは何かを喰い始めた。


 ――俺にはないのかよ……。


 そう思ったが、貰っても困るという、なんだか分からない物体だ。変な色をしているし食いたくなんてない。

 そもそも縛られてるから食えない。おっさんに『あーん』して貰うとか冗談じゃねーし。


 さて、余計に状況が分からなくなった。

 運ぶにしても人を呼ぶなり、車を使うなりするものだ。何故担いで運んでいるのかわからない。


 とにかく冷静になれ。慌てても良いことなどない。



《おちつけまだ慌てる時間じゃない》



 最初から考えるんだ。

 最初は店行く。次ににヤル。……ここまではいい。

 そして記憶の最期は天国へ向かったことだろうか……。

 あれは逆らえるものではない。仕方ないないことなんだ!

 そしてついさっき、おっさんに起こされる。おっさんが言うには荒野に捨てられて居た……と。



 ここはどうみても天国っていう訳ではないだろう……。

 俺はそう思いおっさんをみる。うん、違う。

 どう見ても、天使とか、天国に行った人の顔ではない。


「なんだ? 食いたいのか?」

「いや、何でもない」


 俺の視線が気になったのか、そう聞いてくる。いらねーよ。

 そしておっさんは再び食べる事に集中し始めた。

 美味そうに謎の物体を食ってるおっさん……シュールだ。



 いや、今はおっさんなんてどうでもいい。ここに居る状況を推測しなくては……


 おそらくあの店は罠――悪徳業者だったのだろう。

 それで身ぐるみを剥がし俺を捨てた。

 何故こんな場所なのか謎だが、たぶん何かの不法投棄のついでだったのだろう。死体とか一緒に……


 いや、待て。死体を捨てるためなら、俺がこうして息をして生きている意味がわからない。

 殺人を犯すような集団ならば、俺も既に殺されている可能性もある。

 流石に死体は言い過ぎたな。もっと違う何かだろう。


 だが推測に推測を重ねた時点で、それはもはやフィクションだ。


 ――――よく考えろ!!



 荒野に捨てられる?

 いや、捨てられたというのは推測だ。

 事実のみをとると荒野に居たとするのが正しいだろう。

 起きてすぐのことを思いだせ。判断材料と組み合わせれば何かがみえるはずだ。


 ――連想するんだ。


 荒野にいた。おっさん。はだか……。


「アッーーー!!」


 俺は思わず叫んでしまった。身体も震え出す。


 まままままま、まさか、掘られちゃった?


 落ち着け。落ち着け……。落ち着くんだ!!――――全然落ち着けない!


「おいっ! 何があった!? いきなりどうした!?」


 おっさんが何か言ってる。おもわず叫んだからだろう、きっと。

 だがそんなことにかまってる余裕はない。直ちにセーフかアウトか確認しなければいけない。


「ふぅ~~~~~。Don't think.Feel!!」


 ――それは突きを挿すようなものだ。

 つまり身体に痛みがなければ大丈夫なはずだ! ……よし尻は痛くないし穴も痛くない。セーフだ!


「すまない。少し混乱した」


 おっさんはまだ心配してるような顔をしてこちらを見ている。

 それはそうだろう。いきなり叫び出すようなやつは危険人物だ。俺はそんなやつとは関わりたくない。


「そ、そうか……。それで何か思い出したか?」

「もう少し待ってくれ。何か分かりそうだ」


 俺は適当なことを言っておっさんをあしらう。

 わかるわけないだろ。状況が不明なんだから……。


 おっさんを黙らせた後、俺は再び考える。

 おそらく俺に起こった状況から判断するのは不可能だろう。ならば、それ以外の情報から導き出すしかないな。

 まず簡単に手に入りそうな情報は、おっさんのことだろう。おっさん自体のことと現在地くらいはいけるか。



「すまない。どうして倒れていたかわからない、ということがわかった。

 むしろ、ここが何処なのかさえわからない。いったいここはなんというところなんだ?

 違う場所で拉致されて捨てられたのかもしれない。場所がわかれば少しはわかるかもしれない」


 俺はそう決断しおっさんに話しかける。


「むぅ……。そうか。たしかにこんな場所で追いはぎなどするようなやつはいない。捨てるやつなら……いるかもしれないな。

 わからんことは考えても無駄だしな! ガハハハ」


 おい、なんかこのおっさん妙に軽くね?

 救助するような心の持ち主なら、普通は心配そうな顔するもんだろ?


「それで、この場所の名前だったな。

 ここはフロンティア民国開拓12号線と13号線中間地点だ」

「はぁあああ???」


 何をいっているのか分からなかった。


 12号線13号線言ってるけど聞いたこともない道だ……私道なのか?

 随分愉快な名前を付けてるやつも居たものだ。道なのに国とかねーよ(笑)


「聞いたことがない場所だな。なら場所の名前じゃなく近く――ここらで一番大きい街の名前を教えてくれないか?」

「知らないのか? 変なやつだな(子供でも知ってることなのに)。ここらで一番はフロンティア民国の首都である民都プロンティアだ」

「ん? (首都だと?)ミントプロンティア? やはり知らないな。」


 まさかこいつ廚二病なのか?

 考えた設定とかいってるんじゃないだろうな?

 そんなことを考えていると、おっさんが怪訝な顔をして聞いてきた。


「お前、本当にしらないのか? 記憶喪失とかじゃないだろうな? 5歳にもなれば誰もが知ってるはずだぞ?」


 何? こいつの中では、俺は五歳児以下にされてしまったぞ!

 やべぇ、俺はある意味まずい相手に救助されたのかもしれない。

 そんなこと考えてるとあるもの・・・・に目が引きつけられた。


 何故今まで気付かなかったんだろう……まさに典型的・・・じゃないか。


「あんた……その腰につけているものは本物なのか?」


 そう聞くと、おっさんは厳つい顔をニヤリとさせた。すごく、うざい。だが今はどうでもいい。

 そしておっさんは俺の気に強いてたもの――腰に差していたを抜きはなった。


 それはとてもコスプレで使うようなものではない。

 とても重厚で、雄々しくまさに凶器と言えるようなものだった。



 やべぇ。――こいつ廚二病だけじゃなく銃刀法違反だよ。

 

 

 

 

 

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