26.殺戮の魔刃
翌日――
ギルドに向かったコロナは次の依頼を受ける事にした。
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D-2ータコ
・牧場での作業(戦闘あり) ¥23,000
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その日コロナが手に取った依頼を見て、周囲が少しざわめく。
――戦闘が必要とされている依頼だからだ。
防具を着けて、既に準備ができているところから本気が窺える。
今まで雑務しかしていなかったものが、ここに来て鎧を着込んでやる気満々なのだ。
注目していた者達ならば、それは驚くことだろう。
学のないものは即興で馬鹿にする理由も考えつけなかった。彼らは罵倒できずに終わってしまった。
そんな中、一人の男だけがこう言えただけだった。
「探検家ダセェ」
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――民都プロンティアから半日の距離にある村の近郊
コロナは今、牧場に来ていた。ただ本物の牧場という訳ではない。特産施設だ。
この特産施設は、木造の建物から定期的に牛・豚・鶏が生み出される。
これらは解体作業をする必要はなく、倒すと肉がアイテムとしてドロップする。
(手間が省けるのはいいことなんだが――ご都合主義っぽくてなぁ……)
確かにツッコミどころがあるのは事実だった。
しかし、解体ともなるとたくさん手間が掛かるので、作業する側ともすれば文句のいいようがない。
そもそもこの依頼は水族館とは違い、戦闘能力を持たない家畜しかいない。
そのためD-2ータコでも受ける事ができる依頼であった。
ちなみに卵は鶏を放置していると、卵を産むのだが、何故か産んだあと消えてしまう。
卵は3つは産むので、依頼者の希望に従い倒さない日もあるとか。
これは収納道具があるからできることだろう。
新鮮な卵はいつでも置いておけるというわけだ。
毎日採らなくても新鮮な卵が食べられる。実にいいことだろう。
(病気の原因が減るってわけだな)
これにより、卵よりも肉の比率が多くなる……。
ただし、出荷のコントロールはギルドがしているのらしいのだが――
それは依頼をする上では必要のないことだろう。
コロナはここでの作業を2日ほど契約した。
特に注意事項はなかった。
それは好き放題できるということを意味している。
今までに蓄積した鬱憤をそれらの特産生物にぶつけ、蹂躙することもできる……わけである。
「『風よ切り裂け、其は兇刃の刃なり』 ――――【ウィンドカッター】」
「ブ、ブモォオオオオオオ」
「ゴゴケェエエエエ」
「ぶ、ぶぶひいいぃぃぃぃ」
襲い来るその風刃に、為す術もなく切り倒される家畜。
それらに魔法を耐える防御力はあるわけもなく、一撃で死んでいった。
するとその死体は光り輝き、それが収まると地面に肉が落ちる。
むしろ、この光りが死体を肉に変えたようにもみえる。
コロナは落ちたそれを無視し、次々と標的へ襲い掛かる。
「『我は全てを求め、全てを手に入れる』 ――――【ブースト】」
【ブースト】を唱えると、素早く駆け寄り豚の頭に剣を突き刺す。
「ブヒヒィイイイイ」
アイテムに変化するまで見ているのは、時間の無駄だろう。
コロナはそれを無視して、次の標的である鶏へと疾走する。
そのまま鶏を空中へと蹴り上げる。そして――
「コケコッゴォオオオオオ」
――腹から串刺しにする。
飛び散る血潮、剣と顔に染み渡るがそんなことは必要もない。
彼は今暴虐の化身となっていたのだ。
笑みを浮かべるその顔は、実に悪そうだ。
切り裂き魔とはこのような人物なのだろうか。
――イライラしてやった、反省はするけど後悔はしない。
とでも言いそうである。
コロナはその日、風となっていた。
突き刺す。蹴っ飛ばす。切り刻む。
それらしかできないが、単純ゆえに効率的。
直線的な動きは無駄な事が一切なく、雑魚を相手にするのには最適なものだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
周りを見ると、アイテムの山、山、山。
その事から、どれほどの動物を虐待したかはわからない。
いや、動物ではなく家畜だ。食べるためにあるのだから、殺すことは虐待とはいわないだろう。
(言ったとしても、一部の保護団体だけだな……うん)
少し罪悪感を覚えたものの、見事に思考の軌道修正をし、それらの感情を押しやる。
「さて……アイテム拾って終わりにするか」
標的はまだいるものの、それまで倒す必要はないように思えた。
指定されている異常の量は、充分にありそうにみえる。
コロナはそれらが落としたアイテムを、渡された収納道具に収納していった。
それが終わる頃には日は落ち始めてていた……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
完全に日が暮れると、近場の村へと戻っていた。
収納道具はアイテムの回収後、管理人へと手渡した。
アイテムの収納力に管理人は驚いていたようだが、追加ボーナスの査定はしていないようにみえた。
(クソッ……色くらいつけろよ)
悪態をつきながら彼は宿を探す。
宿泊が無料の宿舎に泊まっている現状、外泊――つまり日を跨ぐ依頼は、もしかしたら損なのかもしれない。
そこで少しでも出費を抑えるため、一番安い宿を借り、泊まることにした。
――最低価格¥5,500――
当然支払いは証払いであった。
「支払いはカードで――なんちゃって……」
(ツッコミ役がいないとむなしい……)
むなしさを感じ、一人ベッドに潜り眠りについたのだった。
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――――次の日
今日は鶏は倒さないようにと指示を受けた。
――――卵を回収する日なのだろう。
そのことを思い、今日は楽な日だろうとコロナは思う。
なので、昨日以上の速度で串刺しにして回った。
前日はサイズが小さい鶏を処理するには上下の動きを必要としたため、時間が掛かった。そうはいっても多少の誤差だが。
が、牛と豚だけならそれが必要ないのだ。
その代わりに気を使わないこともあった。
卵の取りこぼしもあったため、うっかり踏んでしまわないように注意が必要だったのだ。
だが、昨日鶏を全て始末したので卵を気にする必要もなかった。
(八つ当たり万歳~~~)
その事を気が付いてからは、早かった。
コロナは再び風となったのだ。
縦横無尽に駆け回り、魔法と【魔刃】の繋ぎを工夫する。
無駄な動きを検証し、それを少しずつ排除していった。
――――いつしか最適な動きとなっていく。
それはさらなる殲滅速度の向上を意味しており、特産生物を恐怖のどん底へと落としていったのであった。
そして、ストレスが解消したころ、ふと周りを見渡すと、辺りには一匹も生き物は存在しなかった。
(早く終わりすぎてしまった……)
本来ならば、もっとじっくりゆっくりいたぶるつもりだったのだ。
だが、終わってしまったことは仕方がない。
彼は諦めて肉の回収を行い、早々と民都へと引き上げたのだった。
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自己能力
名前:コロナ・パディーフィールド
存在強度:22
種族:渡界人
職業:探索者? 探検家
天職:発掘調査
HP:2272
SP:131
パラメータ
攻撃力:19+10
肉体強度:26+12+5
魔力:40
器用:31
操作:10
速度:13-25
refinePoint:66
AbilityPoint:66
SkillPoint:66
・固有能力>
・スキル >
・魔法 >
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・スキル
【魔刃】 ver0.3
【盾術】 ver0.5
【回避上昇】 ver0.9
【刺突剣の心得】 ver0.7
【解体の心得】 ver0.9
【物理耐性】 ver0.9
【恐怖耐性】 ver0.6
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・魔法
【ウィンドカッター】ver0.2
【ヒール】 ver0.1
【ブースト】 ver0.2
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所持金 ¥16,000
装備
・《刺突剣》 エペ +10
・《鎧》チープレザーアーマー +11
・《盾》ウッドバックラー +5
・《靴》レザーブーツ +1
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