表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/112

25.そんな装備で大丈夫か?





 土木作業は過酷であった。1日で《肉体強度》が1あがるというほどに。

 辛い仕事だったが稼ぎも良いため、連日で続けようとしたが……。

 短期集中工事だったらしく、その後見かける事はなかった。


(ぐすんっ)




 そして再び家具職人の手伝いをする日々が戻った。


 それは探検家スペランカーと貶される日々でもあった。

 ガラの悪い傭兵ソルジャー達はコロナを『便利屋』と呼ぶ。

 【パシリ】のシルバーに世話になっていた者は、


探検家スペランカーのダセェやつが今日もいるぜ」


 と絡んでくる。


 上級階級ランクの者はそんなことに興味ないのか、特に反応はない。

 むしろ構っている暇がないのだろう。彼らは更なる研鑽を積むために、日々努力している。


(俺も努力せねば……)


 探検家スペランカー脱却を目指しそう決意する。



 職員達からは生暖かい視線を感じてしまう。

 無理を言ってアーシャに担当して貰っている。

 本来アーシャはまだ登録手続き業務だけしか許されていないのだ。

 だが、研修も兼ねてということもあってか許可が下りた。

 アーシャもそんな雰囲気を気にしてか、色々と気を使ってくれたのだった。


「コロナさん、そろそろ防具のお金貯まりそうですよね?」

「ん? あぁ、若干足りないくらいだけどな」

「それなら、なんとかなるかもしれません」

「どういうことだ?」

「実はですね――」


 アーシャはそこで止め、コロナの耳元に顔を寄せた。

 コロナは彼女から漂ってくる香りにくらくらしてしまう。


(チョロ系だけじゃなく、無防備とか。どんだけだよ……)


 思わず、彼女を心配してしまった。

 それに気付かず彼女は話し続けている。


「――知り合いの親方が、中古品を扱うことにしたって言ってたんです。

 それを整備して販売する形になるので、新品を買うよりも安く済ませることができるはずなんです」

「中古品か……、だけど信頼性がどうこう言ってたのはアーシャじゃないか」


 そう、確かに言われたことだ。

 ――装備は信頼性が命だと……。


「私が言ったのは素人が作ったものの事です!

 ちゃんと整備されているので、簡単に壊れるようなものじゃありませんよ」

「まぁ簡単に壊れるかはどうかは素材次第だと思うけど。

 ふとしたときにパーツが分かれるなんてことにはならないか」

「ええ、そういうことですね。破壊されるのは別として、不良品ないはずです」

「一度見てみるのも悪くはないな」


 コロナがそう言うと、アーシャはパァっと顔をほころばせた。


「それじゃ、私の仕事が終わるころ外で待ち合わせしましょうよ。

 身内価格って感じに交渉頑張らせて貰いますから!」


 興奮したように、顔を上気させ、早口で喋る。


(何に興奮してるのかは知らないが、多分期待することではないだろうな……)


 コロナはそう判断した。

 思い込みで行動したときは碌な目にあわないのだから。


「じゃあお願いしようかな。でも、そんなことしていいのか?」

「いいんですよ。コロナさんはそんなこと気にせず、周囲を見返してやるって気持ちでいればいいんです」


 どうやらコロナの状況に憤慨していただけのようだ。

 思わず暴走しなくてよかったと、コロナはそっと胸をなで下ろすのだった。



 だが、当然この遣り取りを見ていた者達がいた。

 ――若い衆である。


 彼らは皆アーシャのファンである。

 このように親しい間柄を見せつけられては、当然嫉妬してしまう。

 コロナに辛く当たるのは、何もシルバーの件だけでないと、二人は気付く様子はなかった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ここが、親方の店ですよ」


 アーシャが案内した先は、一般的な街の建物だった。

 それは当然四角い石造の建物だった。


(正直、店なのかすらも、わかんねぇ)


「ここがそうなのか? 普通の家のようにみえるが……」

「見た目ではわかりませんよ。

 武器を扱う店は開拓共同体フロンティアソサエティに登録して貰い、そこから紹介するって形になっているので」

開拓共同体フロンティアソサエティ? あぁギルドのことか」


 一瞬なのことかわからなかったが、ギルドの事だと思い出す。

 俗称ばかり使っていると、確かに忘れてしまう。


「そうですよ、せっかく教えたんだからちゃんと覚えていてくださいね。

 まぁぶっちゃげギルドでいいですけど。私も面倒なので最近はギルドって言っちゃってますけどね。

 ちなみに紹介といっても、何処が武器屋なのか、という案内図を渡すだけですけどね」


 アーシャはそういって、地図を渡すような仕草をとる。

 手に何も持っていない状態でそれをやると、手裏剣を投げているようにもみえるから不思議だ。


「地図は貰えるのか? 作るのは結構手間が掛かるだろ?」

「【地図複製】のスキルで簡単に作れるので手間は掛かりませんよ。

 でも、そのスキルを覚えるとお給料が上がるんですけどね。羨ましい!」

「ははははっ」


 現金なアーシャに思わず笑いがこぼれ、心が温まる。

 それはあたかも学生時代に望んだ光景であった。

 青い春である。思わず恥ずかしい気分になってしまう。



「それじゃ早速中に入りましょう」


 赤面しつつあった顔を隠す為にも、彼女の案内に従い、その後に続いた。

 簡単に後ろを見せてしまうアーシャは実に無防備だ。


(このは男を虜にできても、利用などできないな)


 赤くなっていた顔が思わず苦笑いへとかわってしまった。





「親方~いますか?」


 中に入ると、アーシャがそれなりに大きな声で、親方という人物を呼んだ。

 その呼び声が聞こえたのか、奥からドシドシという音が聞こえてきた。


 ――奥からやってきたのはガタイのいい男だ。

 見るからに武器を作ってますといった体裁である。


「おー、アーシャちゃんじゃないか。

 今日はどうした? 父親オヤジさんのお使いか?」

「違いますよぉ、も~ぅ。いつまで経っても子供扱いなんだから。

 私もう働いているんですよ! いい加減子供扱いはやめてください」

「ハッハッハ、俺から見たらアーシャちゃんはいつまで経っても子供と同じよ。

 それで父親オヤジさんの用事じゃないとすると何の用だい?」

「それはですね、こちらのコロナさんの装備を見繕って貰いたいんですよ。

 彼は生活保護を受けていて、身一つから頑張ってきた人なんですよ~」


 その遣り取りから、親しい間柄なのがわかる。

 アーシャが浮かべる笑顔に堅さなど一切見受けられない。信頼している証拠だろう。


 それに反して語られている内容は、胸が締め付けられるようだった。

 アーシャは親から独立しているのに対し、自分は――と。


(それにしても生活保護を強調するのは、やめて欲しいなぁ……)


「そうか、初期投資なしでやっていくのは結構厳しいからな。

 それで予算はどのくらいあるんだ?」


 急に話しかけられ、心構えのできていなかったコロナは少し慌ててしまう。


「え? あ、あぁ。予算だな?

 ¥221,000しかない。訓練所で聞いた額だと……少し足りないって所だな」


 ロナルドがコロナに最低限だと提示した金額は、¥250,000だった。


「ふむ。その金額だと新品は確かに足りないな。

 中古装備ならなんとかなりそうだな。ついでに必需品も買えるだろう。

 装備はともかく、必需品の水筒、ロープ、灯火の魔道具は消耗品だから、中古って訳にもいかない。

 成り立ては、こういう所でケチって失敗するから気を付けろよ? 命にかかわるからな」


 親方はコロナにそう注意を促す。

 やはり小言が多くなるは年配者の悪癖だろう。大きなお世話だと言いたい。

 話の流れを絶つ為にコロナは動くことにした。


「それで買えそうなものはどんなのがあるんだ?」

「どんなのつーか、一つしかないからな。

 それで良ければ売ってやるよ。――ちょっと待ってろ」


 親方は奥へと戻っていった。恐らく商品を取りに行ったのだろう。

 奥からゴソゴソという音が聞こえてくる。

 その事から、余り大切に保管されていたのではないと想像がつく。

 そしてしばらくすると、捜し物が見つかったのだろう。鎧、盾、靴の順に持ってきた。


「こいつらだ。どれも長く使われてすり減っているが、ちゃんと補強してある。

 それに新品で買えるやつよりは、1ランク上の防具だぜ?」


 それは、なめした革を木製の型に貼り付けたものであった。

 裏地は布で保護され、身体に優しい造りとなっている。

 ただ……気になる事が一つある。


 ――――裏地の布だ。


 これは前の使用者の汗が染みている可能性があるのだ。

 綺麗好きな日本人であるコロナとしては、流石にそれはちょっと……、となるようなものは身につけたくない。

 女性が使ってた汗ならばと、変態じみた考えも浮かんでしまう。

 しかし、このような鎧は女性は使わないだろう。サイズも合わないし、そもそも胸部が女性用ではない。


 裸で倒れてた男とは思えない贅沢さである。

 随分と偉くなったものだと思わず自嘲する。

 そもそも洗濯済みとはいえ、おっさん――ライナーの服を着ていたのだ。今さら誰かが使ったと気にするのは微妙だろう。

 だが、お金はあるのだ。ちょっとしたことくらいは良いだろうと思ってしまう。


「それの裏地の布って交換してあるのか?」

「ん?あぁ裏地は消耗品だからな。整備を依頼されたときに交換するのが常だ。こいつも既に交換済みだから問題ないぞ」

「そうか、それならいいんだ」

「裏地の布も気にするとか、素人の癖になかなかいいセンスしてるぜ。

 裏地がすり切れて、露出した木やら金属に擦られて、集中を乱して死ぬやつもいるくらいだからな。

 俺から言わせたら、そいつらは死ぬべくして死んだんだと言いたいね」

「はははは」


 コロナの言葉に何やら勘違いしたらしい親方は、自己主張を始める。

 そのことに苦笑するしかない。



「それでどうするんだ? こいつを買うか?」

「ええ、問題もないようなのでお願いします」

「必需品もここで扱ってるからな。全部で¥200,000でいい。

 アーシャちゃんの紹介だし、少しまけてやる」


 親方が本当にまけたかどうかはわからない。

 内訳もわかっていないし、領収書もない。


 日本でもおまけしましたからといいつつ、内訳を出さない店もある。

 本当におまけしているの問い詰めたいところであるのだが、安くなっているしアーシャの手前でもある。

 ここで下手に騒げば、アーシャの面子を潰してしまうだろう。


「ありがとうございます。調整の方は今やって貰えますか?」


 他に選択肢はない。返事するしかなかった。


「見た感じ、このままでも問題なさそうだが、命にかかわる事だからな。

 後ろにいって、着替えてこい。着方が分からなかったら遠慮なく言えよ」

「はい、では着替えてきます」


 そして受け取った防具を着込む。



 《鎧》

 チープレザーアーマーとでもいうべきか。

 前と後ろに分かれてるタイプの上半身鎧だ。肩の所で結びつけられただけの簡素な造りをしている。


 下に着込む防具服など必要としていなかった。薄い木の胸鎧に、やすっぽいなめし革を打ち付け、ある程度の防御力を高めたのであろう。

 木の鎧だけでも、革の鎧だけでも中途半端なのを組み合わせた感じだ。

 純革製で防御力のあるハードレザーアーマーに比べると重いし、レザー特有のしなやかさがない。だが、防御力はある。

 しかし、このような使い方をするならば、金属を革にに打ち付けたスタデッドレザーアーマーを装備するべきだろう。

 まさに金がなかったからと妥協した鎧だ。



 《盾》ウッドバックラー。

 小型の円形の盾。

 割れにくい切り方で切り出した木を円形に成形し、申し訳程度にふちを金属で覆って補強してある。

 又表面はなだらかな弧を描き、ひび割れなどを防ぐために漆のようなものでコーティングされている。



 《靴》レザーブーツ

 厚底になっており、支給してもらった靴以上に頑丈な造りをしている。

 特筆すべきものはないだろう。



 これらを身につけ、親方に見せる。

 やはり所々調整が必要でだった。それを終えると違和感がなくなり、決ま・・っているように感じる。

 所詮安物。されど防具。

 格好悪いが、これで準備は整ったといえるだろう。


(これで、あと10年戦える……という訳ではないが、戦闘準備は完了だ!)



 そして必需品の使用法を確認し、親方の店を辞去した。


 帰り道には、アーシャと明日以降の受ける依頼を相談し、その日を終えたのだった。

 

 

 

 

 

物の描写がすごく難しい・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ