22.死の呼び声 まさか…こんな所でぇえええーーー!
目を開けるとそこには見知った顔があった。
救護室のおばちゃんだ。
このおばちゃんは随分と世話になった。
「あんたも懲りないね。あ・た・し に会いに来ているのかい?」
冗談ではない!
――――何故そんな顔をして俺を見る!?
俺は若い子が好きだ。若い女の子が好きだ。このような出涸らしなど用はない。
世話になっておきながら、こんな事を言うのは不遜に違いない。
だが、それとこれとは話が違うのだ。
「ごめん、おばちゃん。俺はレイニーさん一筋だから!」
断るにしても世話になった人に嫌だというのも悪いと感じ、『所謂好きな人がいるから~』というのを使ってみた。
――――一度使ってみたかったんだ。
たとえ相手がおばちゃんだとしても!
「何あんた、冗談をまともに受け取ってるんだい。まったく……」
冗談であったらしい。迫真の演技だ。
この男が愛おしいなどという表情を浮かべているのにも関わらず冗談という。
女は怖い。いとも簡単に嘘をつく。いや、人間誰しも嘘をつく。
だが、女は自分の利にならない事でも平気で嘘をつく。
それでも女嫌いになるようなことはない。
――――エッチな事がしたいからだ!
にゃんにゃん にゃんにゃん
おっと、トリップしてしまった。
Be cool!!だ。
俺はまだやれる。
もう一人の俺――下半身の欲求――になど負けるわけにはいかない。
そうしないとまたおしおきされるからな!
「なんだいあんた。ぼーっとして、まだ本調子にならないかい?」
「いや、状態を確認していたんだ。さすが、魔法だ! もう痛くもないぜ!!」
「【リジェネレート】の魔法だって死んだら生き返せないんだからね。気をつけるんだよ」
「ああ、俺は(レイニーさんを含んだ)ハーレムを築くという、大望を果たすまで死ぬわけにはいかない!」
「なにいってんだい、あんた。男は口を開けばハーレムだの酒だの。
まったく……国を建てるとかもっと大きな事は言えないのかい?」
「国を建てる? そんなことできるのか?」
「ダンジョンを踏破して、領地を3つ所有すればできるらしいけど……。
まぁ、あんたみたいなクソガキにはできるわけないよね」
そんなことをゲラゲラと笑いながら答える。
大口を開けて笑うところを冷ややかな目で眺める。
(女もこうなってしまったらお終いだな……)
だが、誰でも建国できる可能性があるらしい。
いい事を聞いたが……領地とか国家運営とか面倒極まりない。
ただのお金持ちが一番だ。義務などなく、ただ女の子とキャッキャウフフなことができればそれでいい。
そんなことを考えながら、俺は救護室を出て行った。
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アーシャの元へ戻るなり、
「もう、こた……、違った。コロナさん! 【パシリ】の人に喧嘩を売ったそうですね! 馬鹿なんですか?」
ものすごい剣幕で捲し立てられた。
「ぱ、パシリならそんな強くないと思ったし。それに喧嘩は売っていない。真面目な顔をして笑わせてきたから、吹き出してしまっただけなんだ」
「どう思ったら【パシリ】が弱いって発想になるんですか!? もうすぐ上級階級になる人達なんですよ?」
「何!? パシリなのに強いのか? それにパシリって何人もいるのか!?」
衝撃の事実! 強い人をパシリにしている親分がいるらしい。
弱いやつをパシリにしても役に立たないという考えなのだろうか、使い勝手のいい者を選別している様子だ。
「そりゃ、上級と中級の間は結構な実力差があるから、結構そこで足止めされている人が居ますよ」
「そんなに壁は高いのか?」
「ええ、下級から中級になるときと、中級から上級になるときの審査は同じ階級内の昇級よりも厳しくなります。
その先の最上級は別格なのでそれ以上に厳しいんですけどね!」
「そんなにいるのか……」
どうやらパシリを締めているのは上級の上の方か、最上級のやつらなのだろう。
そんな事を思っていると、アーシャは用件を済ませようとしてきた。
「はい、渡しそびれてた開拓共同体認定書ですよ。コロナさんが居なくなっちゃったからずっと保管してたんですからね!」
「ああ、悪いな」
そう言って受け取った開拓共同体認定書なるものに目を通す。
その名称に突っ込むようなことはもうしない。しないんだからね!
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開拓共同体認定書
名前:コロナ・パディーフィールド
存在強度:21
種族:渡界人
職業:探索者? 探検家
階級:D-1-チキン
パラメータ
攻撃力:19
肉体強度:24
魔力:40
器用:30
操作:9
速度:13-25
依頼履歴>
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渡された物に目を通す。
それは黄色の無地の証であった。
何だこれは?
文字が浮かび上がってきた。
それは、――簡易自己能力画面の様なものだろうか……。
特殊技能と天職が表示されていない。依頼履歴と最後にあるのが違う。
それにしてもしばらく自己能力をよく見ていなかったが、随分と変わっている。
惜しい、重要だと言われていた《操作》が1足りない!
パラメータを十分見た後、他の項目に目を通していく。
すると気になるところを見かけた。
――――種族:渡界人?
なんだそれは都会人の間違いだろうか?
でもそれはどうでもいい。いやよくはないのだが……。
だがそれ以上に気になるところが2つある。
開拓共同体認定書に『?』 と表示されている探索者と、その後に続く探検家だ。
あと階級の所にある『D-1-チキン』というのも意味が分からない。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥というからな。
俺は迷わずアーシャに尋ねる事にした。
「ん~、これはどういうことなんだ?」
と、問題の項目を指し示す。
――――しまった!
自己能力は他人には見えなかったんだ!
そんな心配をよそに、アーシャは答えた。
「あぁ、それはまだ見習いってことですよ。あなたはまだ探索者としては半人前以下ですよって」
それは杞憂で見えていたようだ。
自己能力と違い、これは相手に見せるためのものであるらしい。
一体どういう造りになっているのか興味は尽きないが――
それ以上に探検家というのはいいイメージが湧かない。
諸君は知っているだろうか?
レトロゲームに分類されるであろうこのゲームを。
わずかな段差に躓くと死んでしまう最弱の主人公。
銃を使い、爆弾を使い、ダンジョンを潜っていく一人の男。
幾人もの挑戦者が、この男に本懐を遂げさせようと努力した。
が、そんな挑戦者達を嘲笑うがごとく、無情にも男は何気ないところで死んでいく。
そのあまりの貧弱ぶりに、一人、また一人と、次々に諦めていくことになる。
中には本懐を遂げさせた者もいるかもしれない。
だからといってそんな大業を成し遂げた者など、浜辺の砂の一粒にすぎないのだ。
つまり探検家=不可能、無能、最弱というレッテルを貼られているも同然に感じたのだ。
そんな俺を余所にアーシャは、
「探検家は周囲にあまりいい印象がないので、早く表示されなくなるように頑張ってください」
などと暢気に話しかけてくる。
そのあまりにも邪気のない笑顔に、悩んでいる自分が馬鹿らしいと思うようになる。
だが、この世界においてもスペランカーとは良い印象がないらしい。
これは早く抜け出さないといけないな……。
「それでですねD-1ーチキンというのはですね。
下級の1番下の順位である【チキン】という名称って意味です」
「ち、チキンが名称なのか?」
「はいそうです。どういう意味なのか分かりませんが、設立当初から決められていますね。
ついで、ですので他の階級も説明しますね。
下級、中級、上級、最上級をそれぞれD、C、B、Aとしています。
これも何故なのか分かっていません。理由は分かりませんが、研究者達によると『神が決めた』という説が濃厚なようです。
それは置いておいてですね……階級の順位ですが、
1、2、3、4、5と上がっていき5の次に昇級するときに、DからCへ、CからBへ、といった感じに上がります。」
やはり日本人がかかわったっぽい名残がある。
いかにもAランク、Bランクとか日本人が好きそうなネーミングだ。
「それでそれぞれに名称がついているんですよ。
私としてはD1ランク、D2ランクといった感じでもいいと思うんですが。決まりなので仕方ないんですよね。
正直面倒臭いんで。って、これ内緒にしてくださいね! 上に見つかると五月蠅いんで!」
「ああ、告げ口などしないよ。可愛いアーシャが泣くようなことはもうしないつもりだから(キリッ」
さりげなく、ポイントを稼ぐことを忘れない。
ラブはさりげなくである。魔法少女とは何ら関係はないが。
その仕草に頬を染めるアーシャ。実にチョロい。
まぁ、惚れられているというより、照れているだけだろうな――
最初に話を書こうということで何にするかと考えたところ、
スペランカーm9(^Д^)プギャーとされる話が思いついた。
そこから色々膨らませてこんな話になってしまった。




