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20.ホント 訓練は地獄だぜ! フゥハハハーハァー





 ――あれから訓練の日々が続いた。


「何故できない!」


 と罵倒され、疲れたので少し手抜きをしようとすると見破られ、根性論を振りかざしてくる。

 やっと終わったかと思い、疲れ果てて倒れていると更なる扱きが加えられる。



 なるほどな……。

 ――鬼軍曹は伊達じゃない。



 逆らうような愚は起こさず、軍曹に従う毎日。

 次第に身体がついて行くようになると、更なる扱きが待っていた。

 新兵を鍛えるその生かさず殺さずを体現していた。その指導には恐れ戦くしかない。


 頭で考えるから動くようでは三流、身体で反応できるようで二流とはよくいったもの。

 身体に染みつくまでひたすら反復させられた。


 ある日――


「今日からは回避訓練を入れる」


 と宣告されるなり、いきなり石を投げつけられた。


 思わず借りていた盾で防ぐのは無理もないと思う。

 だが――


「回避の訓練だと言ったはずだ! 貴様に耳は付いているのか!?」


 とやはり罵倒され、今度は視認できない早さで石を投げられた。

 当然防ぐことも、回避する事もできず身体に当たる。

 悶絶し、倒れ苦しむ俺に対し、


「受け身はどうした!」


 と叫び、蹴りつけてくる。理不尽極まりない。

 だが、逆らうようなことはできない。俺は命が惜しいからな。


「も、申し訳ありません、軍曹殿」


 とすぐに誤り、立ち上がるしかなかった。

 このまま痛みに従い、倒れていては更なる追撃が待っている。これは既に経験済みだ。


 そんなロナルド軍曹殿だが、優しいところもある。


 俺は《操作》が低く、苦労していることが分かっているのだろう。

 本来なら打ち込み訓練と同時にやるはずなのに、手を取り見本を見せてくれる。


 前にレイニーさんに魔力を流して貰ったことがあったが、あの時は感じる事ができなかった。

 今は魔力を感じ取る事ができるので、軍曹殿が流す【魔刃】を使う魔力の流れがわかった。


 本来であれば、男に手を握られるなど冗談ではないが、この時ばかりは軍曹殿も優しいので不満などありはしない。


 それと一度、他の訓練室を覗いたこともあったが、いきなり【魔刃】をやらされているのを見た。


 ――――もしかすると、俺の為に特別な訓練を考えてくれたのかもしれない。


 そう思うようになった。

 厳しいところに優しさを感じる。思わず惚れてしまう……


 ――なんてことはなく、訓練された犬にならないよう宿舎に帰ったらレイニーさんに愚痴を吐いている。

 レイニーさんは『しょうがない子ね』という顔をしながら、俺の話を聞いてくれる。


 ――――実に心が洗われるようだ。


 正直この癒やし空間がなかったら、軍曹殿を殺害するプランを考えていただろう。

 きっと第二の○ーレンスとなっていたことだろう。



 そんな日々が続いた。






 だが、それでもまだ温い生活だったのだろう。

 ある日突然軍曹殿が言ったのだ。


「貴様はこのままではサル・・にもなれない! 集中訓練をしようと思う。

 これからしばらく、この訓練室に泊まり込みだ。手続きは俺がしておいた。感謝しろ」


 ――――泊まり込みだと!

 ……レイニーさんに会えないではないか!


 それも問題なのだが……。

 それ以上に問題なのは、俺は人間として認められていなかったということだ。


 俺は豚か? 豚なのか? 全て平等に価値がないというやつなのか?

 だが、抵抗してはいけない。

 素直に感謝を捧げなくてはいけないんだ!

 俺は死にたくない。俺はここで死ぬわけにはいかないんだっ!


「感謝します。軍曹殿」

「貴様ならそう言ってくれると思っていたぞ。

 さぁ訓練を開始するとしよう」


 そういった軍曹は早速行動を起こす。

 遅れるわけにはいかない。俺はさらに気を引き締めた。


「打ち込みをやる。一度だけ見本を見せてやる」


 そう言って鋭い突きを見せた。そして元の体勢に戻るなり――


「さぁ掛かってこい!」


 と言い放った。冗談じゃない!

 行きなりできるわけねぇだろ!!


 だが口答えなどするわけにはいかない。

 俺はそれに応じ、打ち込んだ……が、受け流され転ばされてしまう。



「なんだその突きは! それと受け身がなってないぞ!」


 追撃をされない様にすぐさま起き上がり、刺突を繰り返した。

 軍曹殿は全てを回避するだけでなく、時折受け流し、俺の体勢を崩すことで転ばせる。

 油断をする暇もなく、身体だけでなく精神も疲労する。

 そして疲れを見せると、軍曹殿の鋭い突きが放たれる。

 それを回避する。


 最初の内は大げさに跳んで立ち上がっていたが、それでも許された。

 だが、次第にダメ出しをされるようになった。きっと我慢の限界だったのだろう……。


 少しずつ避ける距離を短くしていく。


 ――――俺は逆らうことなどできないのだから。


 疲れた身に鞭を打ち、軍曹殿の考えるコロナ(自分)へ改造される。

 やがて、それでも回避ができない連撃をされるようになった。

 思わず盾で防いでしまい、叱咤されるかと思っていると、


「そうだ! そのタイミングで盾を使うのだ。

 体勢を崩しているときか、相手の体勢を崩すとを狙ったときのみ盾を使え!」

「はい、軍曹殿」


 それが身に付いた頃に、今度は盾で防ぐことができない攻撃を受ける。

 まるで一瞬の油断が命取りかというように――


「痛みを覚えろ! 痛みで身体が竦むようでは『殺してくれ』といっているようなものだ」



 それからは酷いものだった。

 訓練の度俺は傷つき倒れ、虫の息といった状態まで痛めつけられる。


 気付いたら、救護室のベッドの上だったことも数え切れない。

 たとえ軽傷であっても、訓練後には救護室へ駆け込まなくてはいけない状態だった。


 救護室のおばちゃん達の魔法がなければ、既に満足な生活を送る事はできなくなっていただろう。



 訓練というなの扱きに耐えていると、いつの間にか立ち合いに変わっていた。

 軍曹殿は俺を叩きのめし、ある程度なぶり満足した後、


「模擬戦をする。少し待っていろ」


 と言って、他の訓練生を連れてきて戦わせる。

 息も絶え耐えになり、立つのもやっとというザマにも関わらず――

 そんな疲れ果てて、ぼろぼろな俺では勝てるはずもない。

 為す術もなくやれれる俺に文句を言ってくる。


「貴様は勝つつもりはないのかっ!!」


 と叫び、更なる訓練を強要する。



 ――――やばい! 俺の中の○ーレンスが目覚め始めているっ!!



 もはや一刻の猶予もないことに気付いてしまった。



 そんな状態にまで追い詰められたある日のこと――


 突然軍曹殿がこういった。


「よく今まで着いてきた。後は魔法を教えたら訓練はお終いだ」

「え?」


 今なんといった?

 訓練は終わりだといわなかったか?

 まさかな……。軍曹殿が嘘を付くはずもない。本当に終わりなのか?


「情けない声を出すな! そんなに終わるのが名残惜しいか?

 だが、仕方あるまいここはあくまで、素人の為の無料の訓練所だ。

 これ以上を望むなら有料訓練機関の、教練所に通って貰うしかない」


 ――――聞き間違いじゃない!!


 やはり終わりと言っている!

 有料でこんな扱きとかとんでもない話だ。



「お前に覚えて貰う魔法は……そうだな【ブースト】と【ウィンドカッター】、そして【ヒール】だ」

「はい、軍曹殿。それはどういったモノなのですか」


「【ブースト】は五感を強化する。より早く感じ、より早く動き、より力強く攻撃できる。

 また毒を判別するスキルがあるなら、より詳細にわかるようにもなる。


 【ウィンドカッター】は風を生み出し、対象を切り裂く。

 事前に風を切る動作があった場合それを増幅して打ち出す事ができる。

 貴様に勧める理由はこれだ。切り払いを練習させたのもこのためだ。

 《刺突剣》は薄く軽い為、他のどの武器よりも空気を切り裂く事ができる。

 もっとも《弓》なら【ウィンドショット】、鞭なら【ワールウィンド】というのがあるがな


 そして【ヒール】だ。これは訓練生すべてに教えている。

 傷を癒やす魔法だ。たが、貴様が救護室で受けていものほど効果がない。何せそれの下級魔法だからな。

 強化していけば、次第に腕が切れたとしても再生することができるようになるだろう」


「魔法は強化すると違うものになるのですか?」


「そうだ。大体の者は多様性を持つために違う魔法を取得していくが、一点を極め進化させる魔法もある。それが【ヒール】だ。

 貴様が受けたのは【リカバリー】だ。そしてその上が再生魔法【リジェネレート】だ」


「つまり【ヒール】ではあれほどのケガは治せないと言う事ですか?」


「そういうことだ。放って置いても血が止まる……その程度の回復だ。

 他に質問がなければこの魔法書を読め」


 流石の軍曹殿も魔法書を投げつけるようなマネはせず、丁寧に渡してきた。

 所々破けていて、長く使われているのが分かる。

 文字が見えなくなる前に書き換えているのだろう。


 魔法書というと本を思い浮かべるかもしれないが、小冊子程度の物だ。

 それぞれ一つの魔法に対して分厚くなるようなことはないし、そういう物なのだろう。

 使用注意と効果。そして最後に呪文が載っている。


 だが覚えなくても、一度唱えるとその身に呪文が刻まれるらしい。

 だから一度だけ使えば用なしだ。それ故使い回しているのだろう。


 ――ボロいしな。


 日本なら習得セミナーした後に、販売所が設置されている事だろう。

 だが、覚える必要がないならそのような物などいらない。

 さっさと魔法を唱えて、後人の為に返却しよう。


「まずは【ウィンドカッター】から行きます」


 そう軍曹殿に宣言する。


「【ウィンドカッター】はまず普通に唱えてみて、その後《刺突剣》を使った後と比較してその効果を実感してみろ」


「はい、軍曹殿。それでは行きます――

 『風よ切り裂け、祖は兇刃の刃なり』 ――――【ウィンドカッター】!」


 ・

 ・

 ・


 しかし、何も起らなかった。


「貴様、俺を舐めているのか?

 魔力を使わずして魔法ができるわけがなかろう!

 戦闘時は常に魔力をその身で活性化し続けろ!」


 そういえば魔力訓練である程度形になったあとは、常に魔力を活性化させられていたな。

 軍曹殿と対面していないと戦闘態勢にならない状況だったからすっかり忘れていた。

 条件反射というやつだな……。


「済みません、軍曹殿。魔力操作は未だ苦手なので……。

 初めての魔法ということで緊張してしまいました」

「そうか……、今貴様が戦闘中だったらそのミスで死んでいたぞ。

 貴様は何度死んだら気が済むのだ。だが、これは訓練だ、これを糧に二度と忘れないようにしろ!」

「はい、軍曹殿」


 適当に取り繕って、死亡フラグを回避する。


 ――――いまのはあぶなかったな。最後の最後で油断してしまった。




 そして――――


「『風よ切り裂け、其は兇刃の刃なり』 ――――【ウィンドカッター】】!」


 すると、目の前で何か・・が生まれる事に気付いた。

 自分とつながっている何か・・から風の刃が飛び出した。


 これが、――世界と繋がり改変するということか!

 世界に『風の刃が放たれる』という現象を生み出すために、魔力が世界と繋がりそれを生み出す要素を作り出す。

 続いて斬撃と組み合わせたものを試す。


「『風よ切り裂け、其は兇刃の刃なり』 ――――【ウィンドカッター】 ハァッ!!」


 斬撃とともに生み出される風の刃。

 斬撃による軌跡がそのまま刃になったかのように、それは生み出される。

 魔力が世界を改変し、風を生み出すという要素を短縮した感じだ。

 元々あるものを利用し、指向性を設定する事で威力が増すのだろう。

 たとえば腕を振るということも、【ウィンドカッター】の場合は威力増加と速射が可能となるはずだ。


 ちなみに二つの風 刃ウィンドカッターは軍曹殿が打ち落としていた。


 ――――やっぱパネェ。


「『我は全てを求め、全てを手に入れる』 ――――【ブースト】!」

「【ブースト】は判断がつき難い。適当に走ってみろ」


 指示に従い、走ってみる。だが、特に変わった要素は見当たらない。

 ふと軍曹殿が石を投げる所作が見えた。

 油断してるところで攻撃してくるとは、流石に軍曹殿は鬼だ。

 石の軌道を計算・・し、あらかじめ当たらない場所に移動する。


「どうやら上手く発動しているようだな」


 動くのを止め、軍曹殿に確認する。


「どういうことでしょうか。自分は失敗したかと思ったのですが」

「それは貴様の感覚が鋭くなっているからだ。より早く認識し、より早く動くことで投擲を回避してみせた。

 普段通りの貴様なら石を食らい、情けなく倒れ伏していたであろう。

 まぁそれはそれで【ヒール】の効果を把握できるために、役に立ったかもしれないがな」


 とことん鬼畜である。

 この調子なら、ケガをさせられ【ヒール】を使うというパターンだな。


「最後の【ヒール】だが、――そうだな、貴様、歯を食いしばれ!」


 そういうなり修正された。

 痛い。だが、それで態勢を崩すような調教は受けていない。



 ――――それに大丈夫だ、歯は欠けていない。

 

 

 

 

 

実はフルメタル・ジ○ケットみたことないんですよね

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