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16.違和感を感じる

 

 

 

 

 ――――違和感を感じる。


 まず座ることができない。

 俯せにならないと痛くて眠る事ができない。

 だが直接的な傷は既にない。それはレイニーの魔法で治癒されていた。


 この世界には魔法がある。

 始めて見た時の事だが、感動する――なんてことはなかった。

 『あぁ、やっぱりあったのね』という気分になっただけだ。



 心が死んでいた。

 新たな人生を歩む……つもりで居た。が、生暖かい目で見られると気付くことがある。

 ――過去のしがらみは簡単には捨て去る事はできないと。

 何の事はない狐太郎は死んでも、生まれ変わってもいなかっただけのことだった。


 自分がその気でも、周囲がそうと見なさない限りそれは――錯覚なのだ。




 それはさておき、痛みはない。だが幻痛があった。

 これは精神的な違和感の方である。


 だが肉体的にも違和感があったのだ。

 身体の中に異物が埋め込まれているそんな感じだ。


(知らない間に宇宙人グレイにチップでも埋め込まれたのか?)


 狐太郎はそんな妄想に駆られる。


 ――――だが、そんな事実はない。


 精神的苦痛を受け、頭がおかしくなってしまったのだろうか。


 普通恐怖を感じるものなのだが……。心が死んでしまっているため、そのような事も冷静に受け止める事ができる。



「――暇だ」


 俯せになって、寝転びながら足をばたばたとさせる。

 レイニーとは顔を合わせづらいこともあり、再び引きこもっていた。

 彼女には当然言い訳をしている。そうでもしないと再び折檻されてしまう可能性があった。


『身体に違和感があるんだ……。だからすこし安静にしていたい』


 ――これは、逃げによる引きこもりではないと。

 そうはっきり告げるしかなかった。


 もちろん引きこもりだけに限らず、破廉恥行為をした場合もお仕置きはされるだろう。既に予告というより宣言されている。

 しかも――


『今回はこの程度で許しましたけど……次からは手加減しませんよ?』


 あれが手加減――つまり温いお仕置きと聞いた時は狐太郎は戦慄してしまった。

 凍り付いた心もを震わす恐るべき言動。

 そして彼は、レイニーの名前を『怒らせてはいけない人リスト』にそっと刻む込むのだった……。





 それからしばらくすると、レイニーが食事をもってやって来た。


「こんな格好で悪いけど、食事ありがとう。食べさせて貰うよ」


 狐太郎は礼をいい、レイニーから食事を受け取る。


「はい。どうぞ召し上がってください。

 あと格好はそのままで問題ないですよ。

 どうですか? 違和感まだありますか?」

「ええ、まだ何か刺さってるような感じは抜けませんね」

「そうですか……。まぁ自業自得なので謝りませんよ。

 これに懲りたらもう止めてくださいね」


 狐太郎はさらに念を押されてしまう。

 柔らかい口調であるが、それが本気だということは既にわかっている。

 彼は思わず苦笑するしかなかった。


「あはは…」

「あはは…じゃありませんよ、もう」



 少し怒ったような仕草をするレイニー。


(なんとなく気まずさがなくなったかな?)


 彼はそれを感じ、気になっている違和感について尋ねてみることにした。


「レイニーさん」

「はい? 何ですか?」

「実は、……何か違和感があるだよ」

「それは聞きましたよ。 お尻に違和感あるんでしょ?」

「いや……それはさっきもいったでしょ。それとは別の……。

 そう、――身体の中に何か異物があるような、そんな違和感があるんだよ」

「異物?」

「そう。異物が埋め込まれているかのように感じるんだよね。

 精神的に何か障害が起きたってことは考えられるかな?」

「ん~~~~~~~、それはないと思いますよ。

 コタローさんの精神は、ちょっと壊れていた(・・・・・)ので修復・・が必要でしたし。

 それにもう大丈夫なはずです。だから精神的な原因だけはまず考えられないですよ。

 幻痛は身体が覚えているだけだから、消すことはできませんでしたけど」


(なんか恐ろしいことを言われたような気がする)


 狐太郎は精神的安定の為にも深く追求することはしなかった。

 そしてサラッと流すように場を繋ぐ。


「そうか。壊れていたのか~」

「ええ、それはもう。あのまま放置していれば、生きる屍となっていたことでしょうね」


 魔法の力とは凄いものである。精神にも働くようだ。

 凄いの一言で済ませていいことなのかはともかく、これならこの世界にはカウンセラーなど存在しないだろう。


「ん~なんでしょうね。違和感ってどの辺りにあるんですか?」

「どの辺りって聞かれると……。敢えて言うなら全身そこら中に? って感じかな」

「ふむふむ、体中そこかしこにかぁ……。

 それって、魔力を感じてるってことはないですか?」

「魔力……かぁ。

 でも俺には魔力がないんじゃないかな」


 そういうと、レイニーはキョトンという顔をした。


「どうしてそう思うのですか?

 この世に魔力がない生物など存在しないのですよ?」


 そう尋ねるレイニーに対し、狐太郎は何も隠さずに全ての事を教えることにした。

 ――色々情けないところを見せてしまったレイニーに、異世界出身ということも含め、今更隠し事をする必要はもはやなかった。


「実は俺、この世界の人間じゃないんだ。」

「?」

「魔力というものが存在しない世界の住人だったんだ。

 気がつくと、ここから半日くらい離れたところにある荒野に裸で倒れていたらしいんだ。

 ――見つけてくれた人の話によるとな」

「裸ですか……」


 レイニーは『何言ってんだ? こいつ』という目をしてこちらを見て来る。


「気を失う前は、裸だった。

 ――たぶんその状態で転移してきたんだと思う。

 発見してくれた人――ライナーつーおっさんには、虚空の向こう側から来たって言ったんだけどな」




 レイニーは狐太郎の言うことを理解できなかった。信じないというよりもわからないというべきだろう。

 色々と納得のできない彼女に向こうの世界――地球、それも日本の文化や、技術、そして常識などを説明した。


 やがてそれを理解し始め、ところどころ質問をしてくるようになった。

 そして段々と楽しそうな様子になっていった。興味津々といった表情をしている。

 彼女がここまで表情を変えることなど、これまで見たことがなかった。

 思わずときめいてしまったが、お尻が痛み出す。


 ――――お前には彼女は無理だ!


 そう身体が告げているようだった。



 狐太郎の秘密を全て話終わり、それが魔力がないと仮定した理由だと話した。


「ん~でも、この世界の存在じゃないからって、魔力がないなんてことは考えられないですね。

 この世界にある・・という時点でそれはもう、世界の一部・・・・・なのですから。

 世界とつながる力――すなわち魔力はあるはずなんですよ」

「俺にも魔力は――ある……と?」

「ええ、あります」


 断言された。静かだが、力強い言葉だった。

 『魔力がない』と諦めた矢先に、ないわけがないとその考えは否定されてしまった。


(なら、今感じているものが魔力――とそう思ってもいいかもしれないな)


 狐太郎はもう一度立ち上がる気になり始めていた。

 女に励まされ、立ち上がるシチュエーションに酔っていたのかもしれない。

 けれど、過程はともあれ……結果を出してしまえばいいのだ。



「そうですね……。違和感――魔力を感じていると仮定して、試してみるのも悪くはないかな」

「ええ。駄目で元々、できたらラッキーと思ってやってみるのがいいと思いますよ」

「駄目というのが前提なの?」

「ええ(にっこり)。だって駄目駄目な人なんですから。

 できない事が前提ですよ」


「…………」


「…………」


 ジト目でレイニーを見る狐太郎に、

 肩を竦め、『やれやれだぜ』という感じのレイニー。

 二人の無言の戦いは狐太郎が白旗を揚げることで終わる。


「はぁ~、解ったよ、解りましたよ。

 ダメ元の気分でやりますよ」

「ええ、期待すると裏切られますから、それが正しいのですよ」


 そんな気持ちに相応しい投げやりな口調で、レイニーに尋ねる。


「それでこれが魔力だとして、どうすればいいんだ?」

自己能力ステータスの表示をするには、その魔力に自分自身のことを尋ねればいいんですよ。

 今現在の私はどういう状態なんですか? どんな感じですか? と」

「自分に聞く? つまり風邪を引いた人の額に、手を乗せて体温を測る。そんな感じを自分に、魔力ですればいいんだな?」 

「そんな感じですね」


 アドバイスを受け、狐太郎はこれ以上にはないくらい集中する。

 そして違和感の元を強く、強く意識する。

 他の事を考えないくらいに強く――



 ――やがて、異物を違和感としてではなく、それがあるのが正常に感じられるようになってきた。


(何となく、何となくだけど解ってきたぞ)


 狐太郎は次第に感覚を掴み始めていた。

 やがて無作為に散らばって居たソレ・・は形を取り、意思を持つように感じられた。


(これで、こいつに自分自身を聴く・・けばいいんだな!)


私を教えてステータス・オープン


 思わず必要ないことを呟いてしまった。

 だが、それが良かったのだろう。


 言葉にする事で、より素直に想像することができた。

 そして結果が現れる――


(あぁ――。これが魔力の操作ってやつなのか)


 身体から放たれる不思議感覚。

 それに意思を与え、それに沿った動きを勝手にしてくれる。

 結果を出す為の意思は与える必要はあるが、過程は一切必要ない。


 例えるなら、カップラーメンを食べたいと思い、お湯を入れる。すると3~5分待たずにいきなり完成する。そんな感じだ。

 やがてそれが形となる――。



===========================================


   自己能力ステータス


 名前:暫定)コロー

     旧)田貫狐太郎 18歳


 存在強度:18

 種族:渡界人

 職業:ぷーさん

 天職:発掘調査

 HP:378

 SP:88

 パラメータ

   攻撃力:15

   肉体強度:21

   魔力:35

   器用:30

   操作:5

   速度:13(min)-23(max)


 refinePoint:54

 AbilityPoint:54

 SkillPoint:54


固有能力ユニークスキル>

・スキル >

・魔法 >



===========================================

 




 そしてそれは現れた。

 

 

 

 

 

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