15.新たな目覚め
色々と汚い描写を隔離するため短いです。
耐性のない人は回避必須。
あらすじとしては
吊られる→下品描写→魔力を感じる
――夏草や 兵どもが 夢の跡。
虫の鳴き声……。
風に靡く草花……。
ざわめく木々……。
うめく馬鹿……。
「ふぐぅ~」
顔を包まれ、呼吸するのもなかなかに厳しい。
繊維の隙間からなんとか空気が通るので窒息はしないであろうが。
縄で木につり下げられ、顔と上半身を帯で巻かれ、そしてお尻には竹が刺さっている。
こんな生き恥を晒すくらいなら死を選ぶという者も、中に入るだろう。
『止めてあげて! 狐太郎のHPは0よ!』
と思わず叫んでしまうものもいるだろう。
性格があまりよろしくない人なら――
『ざまぁ』
『"ぷぎゃーーーー』
とか指を差して蔑むであろう。
こんな情けない姿を晒しているのは、ある女性からのお仕置きである。
――痴漢行為を働いた、それが全ての理由だった
このような状態にも関わらず、彼の者が考えている事は、
(帯のレイニーさんの匂い、ハァハァ……)
で、あった。 とんだ変態野郎である。
寧ろご褒美なのでは? という声も否定しきれない。
だが、これは仕方がないのである。
確かに最初は痛みに呻き、打ちひしがれていた。それが次第に感覚が鈍り、苦痛が治まっていく。
そうすると自然に、何故失敗したのか、何故このような結果に終わったのか考えるようになる。
失敗したのは当然、興奮して鼻息が荒くなり、はぁはぁ言ってしまった事だろう。
しかし、それがなくとも失敗は決まっていた。
この世界の住人はある程度の実力者なら誰でも、素人の気配など感じ取る事は児戯に過ぎないのだ。
当然レイニーもこの段階にあり、始めから狐太郎の存在に気付いていた。
だが、声をかけ、過ちを認めてくるようならば許そうとしていた。
そんなことに気付きもしない狐太郎は、ただ興奮し、肢体を目に焼け付けようとその時を待つだけだった。
ゆえにお仕置きをされ、このような結果となったのだ。
そもそもの間違いは――
『この女、俺に惚れてるな?』
と錯覚した事が間違いなのだ。
そんなことを考えながら、次第に思索することに疲れ、ただ呼吸をするだけになった。
落ち着きを取り戻すと仄かに漂う香りに気付いてしまった。そしてついつい……と、その誘惑に釣られてしまう。
だが本来の香りとは別ものになっている。
彼の涙や涎で汚れて臭いが染みついていることに、彼は気付きようもない。
なぜならそう錯覚してしまっているからだ。思い込みは肉体を凌駕し、感覚を麻痺させる。
曹孟徳の梅林の逸話しかり、プラシーボ効果しかりだ。
そんな訳で彼は現状を楽しんでいたのだ。
いや、楽しむ事を見つけたといったほうがいいいだろう。
だが、無情にもさらなる悲劇が襲う。
そう――尿意と便意だ。
彼はこんな様ではあったが、既に無きが如しのちっぽけなプライドを守ろうとしていた。
必死に耐え、脂汗を娯楽に染みこませ、耐えに耐えた。
ここまで来るともはや……匂いを楽しむなど余裕はない。
彼は必死だった。必死に我慢した。
――――諦めたらどんなに楽な事か……。
ふと、脳裏に白髪の肥満爺が出てきて『あきらめたら?』と囁いてきた。
しかし狐太郎はNOといえる日本人だ当然その老人を殴り付け、打ち消し――何とか抵抗することに成功する。
・
・
・
やがて意識が次第に朦朧としていく。
(何故こんなにも耐えているのだろう)
狐太郎は耐えている理由が解らなくなっていった。
(勢いよくク○したらケツに刺さってるの抜けるんじゃね?)
という天恵が突如ひらめいた。とても素晴らしい作戦に感じ、段々と興奮していった。
だがそれを何とか打ち払い、理性を取り戻す。
そもそも、それをすると尿まで同時に漏れてしまう。流石に二冠は今の精神状況でも躊躇われた。
やがて、お尻に槍が刺さっていること自体が興奮している理由だと錯覚するようになっていった。
(これは俺の性癖なのか? 興奮してるのは性癖なのか?)
幻想が生み出したそれは蜜のように甘く、その誘惑に思わず頷いてしまいそうになる。
(いや、違う! これは身体が限界を迎えたから自己防衛のために発している感覚だ!)
自分にそう言いつけるようにして自我を保つ。
だが、そんな意思もむなしく決壊することになる。
我慢が、肉体が限界を迎えたのだ。
――――そして狐太郎は刻の涙を見る――
体は熱くなり、色々なしがらみから解放された気分になった。下半身は冷たくなったが――。
精も根も尽きた狐太郎は、全てから解放され……満足げに呟く。
「あぁ…がまん、など、する、ひつようは、なかった、んだ。
――だって、こんなにも……こころ、やすらかに、なれる、のだから」
下半身から嫌な臭いが漂ってくるが、疲れた身体は休息を欲している。
やがて、狐太郎は世界と一体となったのであった。
だが、その感覚こそが世界とつながる力――魔力によるものだったのだ。
他に色々と目覚めたような気もするが……。それは気にしてはいけないことなのだ。
――蛇足だが、竹が抜けるような事はなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――明くる翌日
狐太郎は解放され、風呂場に運ばれた。――服は当然焼却処分となった。
そしてレイニーの手により竹は抜かれた。
「おぅ」
彼はその開放感に思わず声を出してしまう。
レイニーはそんな彼に哀れみの視線を送り、何も言わずに出て行った。
解放された狐太郎はその身を清め、新たな人生を歩み始めたのだった。
――――諸君らの知っている田貫狐太郎は死んだ!! 何故か!?
漏 ら し た か ら さ