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13.あこがれのステータスオープン!

 

 

 

 

 ギルドに戻り、アーシャとは違う受付嬢(カーチャンに手続きをして貰うと、訓練所に向かった。

 訓練所はギルド本部はここフロンティア民国にあるのが総本山らしい。

 狐太郎はその時『ミント』ではなく『民都』というのを教わった。

 訓練所はギルドの中に併設されており、迷わずたどり着くことができた。




「訓練を頼みたい(キリッ」

「はい、カードを提示してください」


 職員は証を受け取り、何やら手続きをしているようだ。これは宿舎に持って行ったものに、訓練項目を追加してもらったものだ。


カードはなんていうか……便利としか言いようがないな)


 狐太郎は手持ち無沙汰に職員の作業を待っていた。早く作業を終わらせろと視線に力を込め。こうした客はウザいことこの上ない。

 そんな狐太郎のプレッシャーを微塵にも気にせず、職員は自分の作業を終えた。


「それではこちらの用紙に自己能力ステータスを記入してください。

 訓練を希望する方はすべて・・・記入してください。

 偶に秘密にする人もいるのですが、適正とか調べその人にあったものを紹介する必要があるので――

 それと代筆が必要な場合は言ってください。」


(ステータス、だと……なんだそれは? ゲームかっ!?)


 なじみ深い言葉を聞きつつも、念のために職員に確認をする。


「ステータスってなんだ?」

「ん? 自己能力ステータスをしらない? そんな馬鹿なっ!?」


 職員は叫びだし、狐太郎のカードを取りだし何かの操作を行い始めた。


(うわっ! なんかカードが光ってるよ……)


 その光りはある程度する消えた。職員はカード弄るのを満足したのか、再びこちらに顔を向ける。


「ふむ、どうやら嘘をついているわけでもなそうですね」

「今ので、何をしらべたんですか?」

「ん? あぁ、今のは持ち主が嘘をついているとが抜けるんだ」

「へ?」


 とんでもない事をいわれた。毛が抜けるとか恐ろしい。


「どういう仕組みで――」

「詳しくは知らないが、名前欄に文字を書いた者に直接働きかける作用があるらしい。

 用紙の下の方にちゃんと書かれて居るぞ。嘘をついた者は禿げる……とな」


(馬鹿なっ!? そんな説明など無かった!)


 もしかするとアーシャにさらっと流された辺りの項目だったのだろう。


(可愛いがやっぱり残念な娘だ……)


 狐太郎は嘆いていると、


「まぁ禿げなかったし、いいじゃないか。

 それより自己能力ステータスが分からないというのはまずいな」

「どうまずいんだ?」

自己能力ステータスが見られないという事はスキルを強化できないという事だ。

 あとは存在強度が上がったときのボーナスも使えない」

「存在強度って何?」

「ん? あぁ、自己能力ステータスがわからないってことはそれも分からないんだな。

 ある程度魔物を倒したりしてもあがるが、その人にとって意味がある行動をすると存在強度ってのがあがるんだ。

 周囲に与える存在感が増すとでもいうか――なんと説明して良いものやら……」


 ボーナスとかスキルとか、ゲームっぽい色々心躍るような話にふと気付く。


「レベルってやつか? なんとなくわかったぜ」

「そうか? レベルというのは知らないが、わかったならいいけどな」

「ああ、俺はこの辺りの出じゃない。言葉の意味とか常識とか、意味が違ってわからないこともある。だから変な事を言っても気にしないで欲しい」

「まぁ自己能力ステータスを知らないようなやつだしな」


 だんだんとフレンドリーになっていく職員。物を教える立場故に、狐太郎を子供だと思い始めたのだろうか。

 そんな扱いをされる狐太郎であったが、いくらフレンドリーになろうが……相手は所詮男。わざわざ名前を聞くような必要も感じなかった。

 早速本題を切り出す。


「それで、自己能力ステータスってやつはどうやってみるんだ?」

「あぁ、それは体内の魔力を操り、自分を感じるんだ」

「魔力?」

「魔力すらしらないのか? 随分不便な所にいたんだな。

 魔力というのは、こう! 世界とつながる! ように自分の中にあるなんかを動かす力、なんだが……。

 分かるか? 今見せている光が魔力を扱っている証拠だ」


 男――職員が何かの力を込めると、全身が光りだし、誘導して拳に光が集まり輝きが強くなった。

 そして男は光を抑える。どうやら魔力をおさめたかようだ。


(あれが魔力――……)


 狐太郎は初めて見るその魔力に興奮を隠せなかった。当然自分もそれを扱いたいと心を馳せる。


「ど、どうやってそれを出すんだ!?」

「さっきもいったように、こうやって! こうだ!」


 男はいかにもな感覚派らしい。どうにも説明になっていない。

 それでも構わない。狐太郎は未知なる力に魅せられていた。

 男に言われるまま、実践してみる。


「こうやって……こうか!?」

「違う! 全然駄目だ! 気持ちをいれろ!」

「ふんぬーっ! これでも駄目か!?」

「それは怒りだ、もっとこう――」


 ……

 …………

 ……………………


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、はぁ」

「――全然駄目だな。今日はもう閉める時間だし、明日出直してこい」

「あぁ、明日も頼む」


 結局狐太郎は未知なる力――魔力を使うことができなかった。

 食堂に向かう狐太郎の背中は哀愁が漂っていた……。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 生活保護者は食堂では食べる事はできない。支給されるのは弁当だ。それをテイクアウトみたいな形で宿舎に持って行った。

 ちなみにトレイは明日の朝返却すれば良いらしい。


 もちろん、お金を払えば買えるメニューは存在する。しかし――


(ナマポには決まったメニューだけらしい。世辞辛い……)


 裏口から入り、自分の部屋に向かおうとするとレイニーに呼び止められた。

 どうやら一緒に食べようということらしい。





「それでどうでした?」

「…………」


 情けなくてその言葉を返せない狐太郎。


「その調子じゃ上手くいかなかったようですね。

 まぁ訓練が終わるまで、保護を受けられるので気にせずやっていきましょう」

「…………ったんだ」

「何ですか?」

自己能力ステータスが出せなかったんだ!」


 狐太郎は想わず八つ当たりをしていしまう。口から出た声は怒りに似た何かだった。

 そんな狐太郎にレイニーは優しい笑顔になり――


「ぷっ」


 と吹き出した。


「何がおかしい!!」

「コタローさんがです」


 打てば響くようにレイニーは言葉を返す。そのあまりの言葉に狐太郎は我慢できなくなった。そして拳に力を入れ握りしめる。



 ――――俺の怒りが有頂天!!――――



 だが、レイニーはそんな狐太郎の様子も気にせずマイペースだった。

 そしてハンカチを差し出し――


「顔に付いてます。すごく間抜け面ですよ」

「………………」



 ――レイニーはそこに笑ったのだ。

 自己能力ステータスが出せない事に笑ったのではない。顔にソースが付いていたから笑ったのである。

 それに気付き、思わず気を削がれる。


(馬鹿みたいだ……)


 狐太郎は、レイニーの気遣いに感謝し、ハンカチを受け取る。


「あぁ、ありがとう」

「いえいえ、――まぁ自己能力ステータスが出せないとか、別に良いじゃないですか。

 落伍者という方が恥ずかしい事です。今更その程度大したことじゃないですよ」


 レイニーの毒舌は健在である。

 毒気を抜かれた狐太郎では、もはや何も言う気にはならなかった。


「まあ食べ終わったら、お風呂に入って、寝て、また明日頑張れば良いのですよ」

「……ああ、ありがとう、レイニーさん」


 力なく微笑みハンカチを返す。


 ――自分で洗って返すような甲斐性は狐太郎にはないのだ。



 そして言われたとおり風呂に入って寝た。






 だが、次の日もその次の日も自己能力ステータスを出す事ができなかった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ――あの日から一週間過ぎた。


 狐太郎は魔力を毛の先ほど感じることも未だにできていない。

 そのことは日を追うごとに彼の精神を追い詰めていた。

 やさぐれるのも時間の問題――いや、既にやさぐれていた。


「俺は、終わりだ……、お終いだーーーー!」


 狐太郎はまるでこの世の終わりかのように叫びだした。

 職員の男も、遂にはさじを投げた。


「あんた、才能ないのかもな。

 魔力の扱いは自己能力ステータスのパラメータ《操作》ってやつが関係してる。ここまでやってできないってことは、それが低すぎるのかもな」


 狐太郎はその事を初めて聞いた。新事実である。今まで男はそのような事を教えてもくれなかった。

 こいつは教師としては無能だとそう決断を下す。


「あとは適当にやってみる。……できたらまた来るよ」


 この男に見切りをつけ、違う方法を模索する方が有用だろう。

 そう考えて狐太郎は早々と訓練所を立ち去っていった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「魔力の扱い方を教えて欲しい?」



 いきなりコタローさんに頼まれた。

 彼は自己能力ステータスが出せなくて、日々やつれていっている。元気もないし、張り合いがなくて面白くない。

 昨日夕食を一つこっそりいただいてみたけど、気付く様子もなかった。

 前までは、きっちりと報復行為に出ていたのに……。


 ――――張り合いがない。


 私はそれを残念に思う。


 顔色も悪い。薄ら笑いを浮かべるときもあり、なんだか気持ち悪い・・・・・時もある。


「あぁ、訓練所の窓口職員の説明はどうにも俺向きじゃない感じがしてな。

 言葉で説明できないタイプらしいんだ」


 コタローさんによると、その職員はどうやら自分の感覚で伝えるらしく、説明になっていないらしい。

 このまま弄っていてもいいのだけど、流石に可哀想だ。

 いじわるするのも洒落・・で済ませることでないと。


「そうですね、空いている時間だけならかまいませんよ。

 といっても説明する事とかほとんどないんですけどね」

「それでもありがたい。頼む!」


 結局私は教えることにした。そもそも悩むほど嫌なことでもないのだから。


 彼は頭を下げ、私に頼み込む。

 必死なその姿はなんだか可愛らしい。




「それじゃ説明しますね――

 魔力とかこの世界とのつながりを表す力で――」

「ちょっと待ってくれ。まさか魔力っていうのはパラメータの《操作》っていうと同じようなやつなのか?」

「え? えぇ、そうですよ。

 パラメータ《魔力》の数値が大きいほど、この世界とのつながりが強くなり、世界を塗り替える事ができるようになります。

 つまり塗り替えとは――自分の思ったことを具現する力とでも言いましょうか」


 わたしはそこで言葉を止め、スキルを使う。


「――こうやって氷を出したいと世界につながり、法則を書き換え・・・・ます。

 すると、こうなります」


 【氷結剣】を中途半端に発動し、途中で解除する。

 物騒なものをこんな場所で出す必要もない。軽く氷ができる程度で充分なのだから。



「これが……世界の書き換え……」


 コタローさんは私のスキルに何かを感じ取ろうとしている様子です。


「こんな感じに本来あり得ないことをする力。世界とつながり、そこから強引にスキルや魔法として具現化する力を魔力と言います」

「今のは魔法?」

「いいえ、スキルですよ。魔法は手順を踏むか、呪文を唱える必要がありますからね。」

「そ、それで魔力については分かったが……どうやればいいんだ?」


 私のスキルをみて、少し興奮気味なのでしょう。ですが、鼻息が荒くてちょっと怖いですね。


「私の場合――と先に言っておきますが。そうですね……もう一つの手があってそれを動かす感じですね。

 手が動かない状況でも、思った通りに動く手。

 人によって様々な感じ方があるので、その――コタローさんが教えて貰っていた人のやり方ですけど、よくわからなくても仕方がない事なのかもしれませんね」

「もう一つの手……か」

「ええ、何か質問はありますか? 私から教えられる事はこのくらいなのですが……」

「いや、特にないよ。ありがとう、色々やってみるよ」



 そういってコタローさんは去って行った。

 上手くできるといいのですが……。

 私は心配で彼が立ち去るまで、ずっとその背中を見ていた。

 

 

 

 

 

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