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その者金色の証を身につけて異世界の地に降りたつべし

 

 

 

 

 コロナはどうしてこうなったのか、訳がわからなかった。

 レイリアがシャーロットに対し威嚇している。

 あげく、自分の事が好きと宣言してしまった。


 なんとなく好意は感じていたものの、そこまで想われているとは想像もしなかった。

 期待はしていたものの、自分では無理かな……所詮は兄的立場で終わるんだな、とあきらめの境地であった。



 しかし、コロナの予想を覆して、こう言う状況になっている。


 ――俗にいう修羅場


 選ばれた者だけに起こり得るという、恐怖の惨劇への一歩手前。

 一つでも選択を間違えると、ナイフで刺されてしまうという嬉しくない・・・・・ものだ。



 コロナもまさか自分が経験することになるとは思っていなかった。

 シャーロットに慕われることに、つい浮かれすぎていたというのもある。


 ここのところレイリアを構って上げていないので、どことなく荒れている様子があるのはわかってはいた。

 だが、初めての経験に振り回されて、自制するということができていなかったのだ。


 その結果がこれだ。



 シャーロットをまるでかたきと見るかのような目で、にらみつけている。

 シャーロットが、「あら? そうなの? うふふ」と軽く受け流していることが幸いだった。


 これで彼女も喧嘩越しになっていたら、悲惨なことになっていたことだろう。


 なんとかこの状態を止めなくてはならない。そういう気持ちは勿論ある。

 だが、どうして良いのかわからない。


 修羅場など、中途半端なイケメンのみが経験することだと考えていたからだ。

 真のイケメンは修羅場という状況に陥らないからイケメンというのだ。




 コロナは、思考系のスキルをフル稼働して対策を考えた。

 しかし、頼りになる相棒ちょっかんも、自分を導く先生よそくもうんともすんとも言わない。


 コロナはそのために逃げ出したくなった。

 普段温厚で、それでいて最終兵器的な【緊急脱出エマージェ】が「俺を使えっ!」と激しく訴えているように感じた。

 もちろんそれは錯覚だ。


 だがそこで、この間強化した【疾駆】も【急加速ステップ】も「いつでも力になるぜ」と、何時になく張り切っている。

 ついでに【隠形】が「俺も忘れるな」と言ってくれている。 


 頼もしいやつらスキルだ……

 こんなに頼もしいならば、是非とも進化させてやりたい。そんな気分になっていた。

 しかし、それもこの危機を乗り越えたら……の話である。ここでコロナの旅は終わってしまう可能性があるのだ。


 それをしてしまっては人生が終わると、先生よそくもしかりつけている。

 その結果、コロナは現状維持という――最悪と呼ばれるものを除いて、下から二番目の方法をとることになってしまった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「あら、妬いてますの?」

「べ、別に妬いてなどっ!」

「そうですわね、妬いている暇があるのでしたら、貴女もコロナに口づけをすればいいのですわ」

「く、くち、口づけっ!?」

「あらわら、焦っても何も良いことなどありませんわ。

 落ち着きが肝心ですわよ」

「う、うぅうううるさいわねっ! わかってるわよっ!」


 あら、可愛い反応ですわね。ふふふっ。


「全然わかってらっしゃいませんわ。

 さぁ深呼吸をしましょう。すぅ~~はぁ~~~、すぅ~~~は~~~

 ほら一緒にすぅ~~~~は~~~~」

「あなた、私を舐めているの!?」

「すぅ~~~~は~~~~」

「なんとかいいなさいよ!」

「すぅ~~~~は~~~~。ほぉら、深呼吸。一緒にさぁ」



 このレイリアさんという方は、どうやら私のコロナに惚れているようですわね。

 確かに彼女の名前も報告書にあったので、『玉石』を見つけた時の一人だということはわかっています。

 ですが、調べをつけるまでもなく、彼女はおまけ・・・ということは共通の見解になっています。だから、彼女が教会と関わりがあるとは思ってもいません。


 まぁ、それは今はどうでもいいことなのでしょうね。


 ここで重要なのは、彼女の方が先にコロナに目を付けていたということですわね。


 ――彼は頼りになる。


 それはもう、実に頼りになるということが、ここしばらくの臨時パーティオフカイで実感しましたわ。

 理外の存在とも言って良いでしょう。




 わたくしが彼の限界は何処かと言うことを尋ねたところ、


「わからない、自分でも確かめたことがないから」


 と。とんでもないことを言ってきた。

 それならば限界を見せてください、とわたくしはお願いしましたの。


 すると――未踏破ダンジョンにいきなり連れて行かれましたのよ。

 用意もなにもなく――正直自殺に付き合わされると想ってしまいましたわ。


 ですが何のことはなく、私は彼の後ろを着いていくだけでした。

 食料も大量に持っているらしく、心配ないとのこと。

 ですが、相方がいるから何時までもこもっているわけにはいかない。長くても半月を区切りにするとか……

 そう言われてしまいました。



 それを聞いた時私は半月潜るのかと狼狽してしまいましたのよ……

 驚きも過ぎると毒ですわね。


 《ローヌギア》に入るなり、私を抱え、走り出しましたわ。そして一気に18層まで行ってしまいました。

 そしてその日の内に20層の着き、ボスの《石巨人》すらあっという間に倒してしまいました。



 最終的に40層のボス間際で、時間切れとなってしまいました。

 あのまま進んでいたのなら何処まで行けたのやら……もしかすると――


 いえ、今は関係ないことですわね。





 今肝心な事。それはレイリアさんが、私に対抗するという手段をとっていることです。

 何故、対抗するのでしょうか。一緒にコロナを愛すればいいことですのに……


 どうやらその事に彼女は気付いていない。

 重要なことは自分の気持ち。

 彼ほどの人物ならば、いずれダンジョンを踏破し、新たな土地を開拓するでしょう。

 そうなったならば、伴侶の一人や二人ものの数ではない――ということを想像していないのでしょう。


 私は彼女が落ち着くのを見計らい、耳元でそっと呟いた。


「貴女もコロナを愛しているのね」

「っ!?」

「しぃ~、声は出さないで。コロナに聞こえてしまいますわよ。

 私も愛していますの。でも気にすることありませんわ」

「それは……奪い取って……いいってこと?」


 まあ、なんてこと!

 なんと過激な考えをするでしょう!?


「違いますわ。二人で愛すればいいということですわ」


 わたくしは優しく、彼女の考えを否定する。


「ふたりで……って」

「あぁ、人族の方ならそういうことは考えないのですね。

 私たち妖精族は、永きを生きるのでそういうケースがよくあるのですわ。

 ――ですから、コロナを二人で分け合いましょ。

 彼はいずれ開拓して、嫁の一人や二人は全然問題なくなりますわよ」


 そして憮然ぶぜんとしながらも、私の言葉に頷いたのでした。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ――妖精族


 まさか彼女が妖精族だなんて思いも寄らなかった。

 確かに、歳にしてはあざとく、そしてどうにも小さい女の子という感じではない。

 でも妖精族というのならば納得のできることだった。


 彼女――シャーロット・ベルリアンは、一度相手を決めたら一生添い遂げると言われる妖精族。

 いくらコロナさんが拒否したとしても、離れることはできない。

 受け入れて貰えなかったなら、妖精族は自ら死を選ぶという性質がある。

 こうして生きているということは、コロナさんは受け入れたと言うことだろう。



 そもそも「結婚してくれなければ死んでやる」と目の前で主張したら、受け入れざるを得ないだろう。

 優しいコロナさんならば、なおさらだろう。


 第一、妖精族に求婚されたら断る者などいる訳がない。

 彼女たち妖精族は、実によく伴侶に尽くす。

 美しく、気立てがよく、そして老いない。


 本来ならば、妖精族同士で婚姻するのだが、稀に違う種族の伴侶を選ぶことがある。

 その場合は、相手は間違いなく大器であるとされている。

 つまりコロナさんは大器と、正式に認められたことを意味している。


 もともとわかっていたことが証明された形になったのだ。



 それはともかく。

 その場合は伴侶としてでなく、母親オフクロのように見守り、そして導くらしい。

 対等である婚姻が、相手により尽くす配偶者優位の婚姻へと変わる。

 つまり、男にとって理想の嫁ということになる。

 最終的に伴侶が死ぬときに一緒に死ぬらしいが……それは愛の深さを感じさせる。


 これで男がダメダメで、穀潰しのような男だったら――という物語もあるのだが、そういう者に対しては妖精族は見向きもしない。

 おそらく相手の深層心理まで感じ取れる能力があるのだろう。


 そういう物語は、す、少し、え、エッチなものなのだけど。

 男の理想というものはこういうもの――という空想物語だから仕方ないのかな。

 


 つまり、既に彼女とコロナさんを引きはがすということはできなくなっていた。

 だけど私も彼を諦めるたくない。



 結局のところ、彼女の提案を受け入れる他には選択はなかった。


 グスンッ





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 それからコロナたちはギルドに向かい、正式に固定パーティチームを組むことになった。


 それに合わせて、シャーロットは傭兵ソルジャーから探索者サーチャーに転向する手続きをとる。

 だがそれは、無条件にできるということではない。

 階級ランクが三階級下がる事が規約で決まっているのだ。


 これは何もギルドの利する為の事ではない。

 これは職を変える者のためなのだ。



 たとえ同じ階級ランクでも、やることが全く変わってしまう。それで何をするにしても役に立たない。

 それ故、戦闘力は満たしているので、少し下の階級ランクで慣らせる、ということなのだ。


 それと稼ぎが変わってしまうことから、なるべく職は変えないで欲しいという思惑でもある。



 そもそもダンジョンで負ったケガや、老化による衰えた者。それによって潜れなくなった者が、探索者サーチャーから傭兵ソルジャーに変わっても、逆はほとんどないのだから。

 ダンジョンに潜る気でいる者は、最初から探索者サーチャーになっているのだから。



 つまりシャーロットの階級ランクは【エリート】から【ピーオー】に落ちたというわけだ。


 そしてもう一人、【ピーオー】になった者が居る。


 ――それはコロナだ。


 彼は今まで溜めてきたポイントで2階級ランクアップを果たしたのだ。

 それはレイリアと溜めたポイントであり、シャーロットの指名依頼によるものであったり、そして臨時パーティオフカイの時、中層で得た物を販売して得たポイントである。



 こうして異世界よりやってきた男は、C-3-【ピーオー】となったのだった。

 スターな戦争から連想することによって、コロナはギルドカードが金色にみえた――――かどうかは彼のみぞ知ることであった。

 

 

 

 

 

夜に登場人物を載せて、この章は終わりとなります。

それと活動報告に書いたとおり、ここでしばらく休止にします。

開始までに一月は掛からないと思いますが、再開時期はなろう大賞2014用の新作次第です。

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