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終天の異世界と拳撃の騎士  作者: ふるろうた
7. 天に轟くは、闘いの宴
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217. 復讐拳

 窓から吹き込むさわやかな風に頬を撫でられ、ボウとしていた意識が引き戻される。


「あ……れ、あたし……なにして、たんだっけ……」


 呟いたミョール・フェルストレムの声は、少しかすれていた。


 ここは病院の一室。自分が身を起こしているのは、清潔に保たれたベッドの上。手元には、看護師に持ってきてもらった日報紙。

 何だか頭がはっきりしない。起きたばかりだというのに。

 ああ、そうだ。暇潰しに日報紙を読んでいて……気付けば、呆然と窓の外を眺めてしまっていたのだ。

 見慣れない奇妙な造形の建物が並ぶ、不可思議な異国の街の風景を。


 今日は……星遼の月、二十二日。天轟闘宴当日だ。思えば、参加費として支払った十万エスクも無駄になってしまった。ゴンダーは今頃、『無極の庭』で奮闘しているのだろうか。流護やベルグレッテは、レインディールへ……王都へ帰ってしまったのだろう。きっともう、二度と会うこともない……。


 ふと、ベッド脇の棚に目が向いた。

 そこにあるのは、小さな籠に入った果物の数々。面会が禁じられているため会えなかったが、先日、流護たちが差し入れてくれたという見舞いの品だった。

 少し強めの風が吹き込み、


「……あ、」


 大きな梨が一つ、籠からぼとりと転がり落ちてしまう。ころころと、床を転がっていく。


「あ……、ぃぎ!」


 拾おうと身を屈めたところで、全身に激痛が走った。


「ぁ、う……」


 思い起こす。苛む痛みが、あの路地裏での出来事を脳裏に甦らせる。

 たまらず顔を覆う。

 その両手も、顔も、包帯で幾重にも巻かれていて。痛みが、状況が、惨めな現実を突きつける。


「ひっ……ぐ……」


 痛い。怖い。寂しい。

 こんな異国の地で、たった一人。三週間も、治療に専念していかなければならないのか。

 流護に。ベルグレッテに。ゴンダーに。妹に。みんなに、会いたい……。






『とにかくまぁ二人とも、いい人だってことは分かるよー。じいちゃん譲りの人を見る目だけは、子供の頃から間違ったことないんだから。それが理由じゃダメ?』


 近くを通る川のせせらぎを耳にしながら。有海流護は、進む。


『天轟闘宴がどうなるかは分からないけど、でも……あたし、ここまで来てよかったよ』


 一歩一歩、草葉の大地を踏みしめて。


『だってさ、リューゴくんとベルグレッテちゃん、それにゴンダーさん。こんなふうに友達ができて。どんな結果になろうと、帰ったら妹に自慢するね!』


 疲弊しきって、痛みに軋む身体をおしながら。


『あたしの腕じゃ、天轟闘宴なんて絶対無理だって……理解できたから。ありゃ無理だわ……。出場したらもっとひどいケガしてたかもしれないし、神様が「出場するな」って忠告してくれたのかもしれないね……』


 それでもその拳には、力が滾り。その足は、自然と前へ進み――


 到着する。


 警戒はしていたが、ゴンダーが懸念した『得体の知れない何か』に遭遇することはなかった。運がよかったのか、神詠術オラクルの使えない流護には感知すらできないものだったのか。


 常緑の広場――という名の通り、開けた緑の空間だった。障害物はなく、ちょっとした試合場のような広さがある。

 正面前方、十メートルほど。朽ちた倒木に大股で腰を下ろす、黒衣の男。

 魔闘術士メイガスらの特徴なのか、病的なまでに痩せ細った造形の貌。逆立ち尖った黒髪。飛び出したように大きく、ギョロリとした両の瞳。この男はそれらの特徴がより顕著で、その容貌は髑髏を彷彿とさせた。羽織っている丈長の黒マントと相俟って、まるで滅びを司る死神のよう。

 開幕式で目にした、その姿。網膜に焼きつけた、その顔。

 間違いないと知りつつも、流護はあえて問う。


「ジ・ファール……だな?」


 濁った目を流護へ向けていたその男だったが、ペッと唾を吐くと、盛大な溜息と共に視線を逸らす。

 瞬間。


「テメェがジ・ファールかって訊いてんだゴラァ! スカしてんじゃねぇぞビチグソがッッ!」


 少年にしては珍しい、感情を剥き出しにした怒号が木霊した。


「……んだぁ? オイ、どうなってる」


 罵声を受け、魔闘術士メイガスはようやく重い腰を上げるように立つ。


「いきなり人様を不躾に呼び捨てておいてよー、礼儀のなってねぇガキだと思って無視したら何だ? あ? お前は何様なんだ? 親はどんな教育してんだ? 一族まとめて皆殺しだろ、こりゃもうよ」

「礼儀? 教育? はあぁ~~~~? 何がどうなったらテメェの口からそんな単語が飛び出すんだぁおい? シュールギャグのつもりか? クッソつまんねーぞ。わざわざ訊いてやったんだ、さっさと答えろ。間違って別人を再起不能にしちゃいました、じゃシャレになんねぇからな。念のための確認、ってやつだ」

「よく喋るガキだ。興奮してんじゃねーよ。で? オレがジ・ファールだったら何だ?」

「お前を殴りに来た」

「そうかよ」


 続くジ・ファールの挙動は、ゴミを放るみたいな何気ない仕草。大きさは手のひら程度。白濁した球のようなものが、軽い挙動に似合わぬ高速で流護の顔目がけて飛来する。

 首を傾けて最小限の動きで躱せば、


「――ッ」


 ぶちぶちと厭な痛み。通過したその白い塊が、なびいた流護の髪をわずかに巻き込み、引き千切っていった。

 見た目に反して強大な吸引力と、回転力。


「風か……」


 先ほど対峙したエンロカクと同じ、その属性。何気ない術にすぎなくとも、その鋭さから技量が窺い知れる。極めて熟練した使い手に違いない。


「風か、じゃねぇ。何だお前は。名指しで突っ掛かってきたかと思えば、オレの属性すら知らねーってのはどういう了見だ」

「んなもん、どうでもいいんだよ。てめぇが何だろうと、ブチのめすだけだからな」

「チッ……面倒臭ぇ。撃ち漏らしちまったか。戻ってくるまで、オレが直々に相手しなきゃなんねーのかよ」


 そんなジ・ファールのぼやきを、流護は鼻で笑う。


「戻ってくる? てめぇの部下の話か? 十匹ぐらいいるんだっけか。少なくとも、そのうち六匹は戻ってこねぇけどな」

「あ?」

「全部ぶちのめしてやったよ」


 正確には一人だけゴンダーに任せてきたところだが、大差はない。十人のうち半数は、確実に戻ってこない。ここで頭領となるこの男を潰せば、残りなど有象無象だ。


「ふーん……んなコタァ別に、どーでもいいがな」 


 言い捨てた死神の姿が、跳ぶ。黒いマントが翼のごとくバサリとはためいた。

 風の力を利用した跳躍か。一足飛びで十メートルの距離を飛翔したジ・ファールは、その勢いのまま流護の腹へつま先を突き入れた。


「……、!」


 この世界ならではの、神詠術オラクルを利用した飛び蹴り。常の流護であれば、難なく躱せていただろう。しかし疲弊の積み重なった身体は咄嗟に反応せず、


「オレの手を煩わせんじゃねぇ、屑」


 着地するなり続く連撃。固く握られた左右の拳が、流護の頬をしたたかに打ち据える。


「ケッ、男殴ってもカタくてつまんねーんだ。さっさと死ね」


 連続して浴びせられる、拳の連打。殴り慣れている。硬く発達した『拳ダコ』は、日常的に拳を武器として扱っている証に他ならない。


(ミョール……は……)


 こんな暴力に晒されたのだ。ひどく手慣れた、拳骨の殴打。闘い慣れた詠術士メイジとはいえ、その身はか弱い女性。彼女は、一体どれほどの痛みと恐怖を味わったのだろう。


「粘ってんじゃねぇぞ、ガキ。さっさと――」


 流護は、飛んできた拳を一つ――これにするか、と『選び取った』。


 左脚を力強く踏み込み、引きつけるように身体の重心を左へ。同時に腰を捻り、右腕を疾らせる。

 両者の腕が交差し、十字を描く。

 ジ・ファールの右拳は流護へ触れることなく空を切り、代わりに少年の右拳が魔闘術士メイガスの頬を打ち据えた。


「ご、ぶっ……」


 拳に押し戻される形で、ジ・ファールがよろめきながら後退する。


「は、クロスカウンターなんてそうそう取れるもんじゃねーんだけどな。素人のザコ相手だと楽なもんだ」


 指を鳴らしながら、心底見下した口調で流護は言い捨てる。

 ジ・ファールは確かに慣れている。拳骨を使い込んでいる。この世界の常人に対しては、充分に脅威となるだろう。

 だが、それだけだ。


「ブンブン振り回してるだけのパンチ。俺なら、その気になりゃいくらでも耐えられる。当たっても大したことなければ、避けるのも楽。カウンター取るのも楽勝だ。ステゴロに慣れてねぇ相手をいたぶるにゃ、それで充分だったかもしれねぇけどな」


 先ほどのエンロカクと比べたなら、もはや児戯に等しい。

 血の混じった唾を吐き捨てたジ・ファールが、大きな眼で睨めつけてくる。


「ッ、の……マグレ当たりが……吐かしてんじゃねぇぞ、オイ」


 対する流護は冷たい眼差しで、口の端を歪に吊り上げた。


「素人には分からんだろうけど……俺は今、わざと打ち抜かなかった。カウンターを『合わせただけ』だ。お前はもう、一回死んでる。開幕十数秒、KO負けだ」

「ああ?」

「ジ・ファールさんよ。俺はさ……天轟闘宴のルールに従って、お前のリングを奪いに来た訳じゃねえんだ」


 そして少年は、修羅の形相で宣告する。これまで溜め込んだ怒り、その全てを吐き出すがごとく。



「ワンパンKOでキモチよくお寝んねなんざさせねぇよ。死にたくなるまで、ゆっくりド突き回してやらぁ」



 そう宣言された男の額に、こめかみにビシリと浮き上がる血管。激昂の証を痙攣させ、ジ・ファールが無言で拳を振りかぶる。

 ぱん、と弾けた。


「がはっ――」


 のけ反ったのは魔闘術士メイガス

 拳を『打つ前』に合わせるカウンター。大振りなテレフォンパンチを放とうとしたジ・ファールの顔面へ、流護は右の縦打ちリードブローをねじ込んでいた。またしても振り抜かず、手元を素早く引き戻す。

 ふらついたジ・ファールは大きく下がり、口元を拭った。その唇は歪に吊り上がっている。


「……ペッ。大層なコト吐かす割には、拳の威力が伴ってねぇようだが?」

「人の話聞いてたのかよ。まぁ……焦らんでも、すぐ実感することになるって。ちなみにお前、もう二回死んだぞ」

「吐かせ。ボロボロんなって力入ってねーだけなのが見え透いてんだよ、ガキ」


 互い、目に見えた怒りを秘め。静かに――双方、身構える。






 若干、肩透かし……とでもいうべきか。

 率直に評するならば、やや迫力に欠ける闘いだった。

 暴虐の限りを尽くした魔闘術士メイガスたちの長と、無手で数多の闘いを潜り抜けてきた強靭な少年。そんな両者の激突ということで、派手な交錯が予想される注目の一戦――となるはずだったのだが、


『殴りかかるジ・ファール選手に対し、防ぎつつ稀に反撃を当てていくリューゴ選手、といった場面が続いていますが……』


 客席も、いささか困惑した空気に包まれている。


『ジ・ファール選手は攻撃術をあまり使おうとしませんし、リューゴ選手は拳打に迫力が感じられないというか……実際、打たれているジ・ファール選手もさほど効いていないようです』


 これまで繰り広げられてきた戦闘と比較しても、妙にレベルが低い。そう思わざるを得ない闘い。

 接近戦の間合い。あるいは殴りかかり、あるいは間を空けて風を放つジ・ファール。流護は捌き、防ぎつつ、反撃の拳を振るう。それも差し込むような右ではなく、下方からの左拳による腹打ちが目立つ。打たれたジ・ファールはわずかに動きを止めるものの、大打撃には至らず、すぐ反撃へと転じてしまう。同じ白兵戦でも、エンロカクの時とは違い豪快な迫力がない。


(左拳による腹打ち……か)


 ふむ、とドゥエン・アケローンは思索を巡らせる。


『天轟闘宴も、すでに開始から四時間が経過しようとしています。双方とも、疲れきってしまって力が出せていない……のでしょうか? 特にリューゴ選手は、先ほどの大爆発に遭遇していますし……かなり消耗しているようにも見受けられます。もう、あの凄まじい拳を放つ力はなくなってしまったのでしょうかっ』

『黒髪の坊やはともかく、ジ・ファールの奴めは開始から一戦もしとらんはずじゃぞ。あの場から、動いてすらおらんかったようじゃ。疲れとる、ということもなかろう』


 あまりに動きがないため、途中からはほとんどこの男に焦点が当たることもなくなっていた。

 動きらしい動きといえば、天轟闘宴が始まった直後。それぞれ思い思いの方角へと分散していく前に、ジ・ファールの周囲へ集った魔闘術士メイガスたちが輪になって『何かをしていた』程度。遠方の鏡に背を向ける形となっていたため何をしていたのかは不明だが、武祭の動き方や作戦やらについて指示を出していた、といったところが妥当か。


『ふむ……』


 納得するように唸ったのは、ドゥエン・アケローン。


『はい、どういうことでしょうかドゥエンさんっ』


 分からないことはこの男に訊く。心得てきたシーノメアが素早く話を振る。


風峰かざみねの術……でしょうか』

『というのは?』

『森の中等で、外敵から身を隠す為に使う術です。風の流れや漂う魂心力プラルナの流れに干渉し、相手の感覚を鈍らせます。自然と共に生き、狩りを生業とする者たちが主に扱う技術なのですが』

『なるほどー……それでジ・ファール選手は、これまで見つからずに闘いを避けてきたと。あれ? でも、リューゴ選手にああして見つかってしまいましたよねっ』

『飽くまで見つかり「づらく」なるだけですから。あのように開けた場所で四時間近くも戦闘を避け続けてきた事は、流石に偶然と言って良いでしょう』

『そも……時に隠れ、時に打って出るのが天轟闘宴じゃ。あのように隠れ続けとるなど、やる気があるのか。舐めた輩よの』


 ツェイリンは侮蔑の色を隠しもしない。

 そこで唐突に――バシュン、と脱落者が出たことを告げる音が鳴り響く。

 眼前の鏡に視線を戻す解説席の面々だが、流護とジ・ファールは依然として小競り合いを続けている。他の参加者だ。


『あっと! ここで脱落したのは――078番、オッドマー選手です!』


 ツェイリンが場面を操作し、手早く切り替える。やや俯瞰の視点で、うずくまって右脚を押さえる中年男が映し出された。ざっくりとふくらはぎを斬られ、大量の血を流している。

 周囲に敵の姿はない。

 リングは、オッドマー自身の左手に握られていた。つまり――彼が、自らの手でリングを外したのだ。脚を負傷し、続行不可能だと判断して。


『……あれ……これって、もしかして……また、ですか?』


 そんな様子を眺めて、シーノメアが訝しげに眉根を寄せる。

 そう、『また』なのだ。

 何度目となるか。不意に何者かの襲撃を受けて、訳も分からないまま脱落する参加者が出る――という例が数件報告されている。こうして皆が目にするのも初めてではない。

 遠距離から他の参加者が狙い撃った、と考えるのが妥当だろう。

 しかし、不可解な点が多い。襲われた者が皆、リングを奪われていないこと。同じく皆が、何の攻撃を受けたのか認識していないこと。ある者は気を配って歩いていたにもかかわらず唐突に吹き飛ばされたと証言し、ある者は見えない何かに殴られたようだと語る。

 リングに興味を示さぬ、姿なき襲撃者。

 そして今、脚を斬られうずくまる男。


『くっそ……一体どこから……。ちっ、誰だか知らんが俺の負けだ! 持っていきな!』


 悪態をつき、リングを放り出して座り込む。しかし、何者かがリングを回収しにやってくる気配はない。オッドマーは不思議そうに周囲を見渡していた。


 その場面を眺めつつ、ドゥエンは思案する。

 視認できぬ攻撃を得手とする属性といえば、


(……風、か)


 ふと思いついたドゥエンは、ツェイリンに尋ねる。


『この場所はどの辺りでしょうか?』

『大老神樹の近く、F地点……黒髪の坊やとジ・ファールめが小競り合いをしとる、常緑の広場の近くじゃな』

『…………、ふむ』


 男が至るのは、先ほどの自説の否定。

 四時間もの間、戦闘を回避し続けたジ・ファール。いかな風峰の術とはいえ、それほどの長時間に渡って誰にも見つからずいられるものなのか。暗殺者として自らも隠遁術を得手とするドゥエンだからこそ、その難度は極めて高いものだと理解できる。

 参加者数も過去最多となる此度の天轟闘宴。今は人数も減ってきたものの、たった今脱落したオッドマーのように、近くを通りかかる者も多いはず。


『…………』


 その闘いへ目を向ける。

 地味な拳の応酬を繰り広げている、有海流護とジ・ファール。徒手空拳しか手段がない流護はともかく、ジ・ファールはなぜあまり術を使おうとしないのか。


(使わない、のではなく……)


 使えない。

 開幕に放った風の塊。放出する力を利用しての跳躍。その程度の術しか、使う余裕がない。どちらも簡易な攻撃術。

 何か、別の術に注力している。だから、片手間にしか術を振るえない。そして――異なる種別の同時行使は不可能、という原則に当てはめるならば――


(ジ・ファールは初めから風峰の術など使ってはいない。この男は今……否、数時間の長きに渡って、何らかの『攻撃術』を発動し続けている。……となると、その正体は恐らく――)


 思い出すのは、先ほどのジ・ファールの言葉。


『チッ……面倒臭ぇ。撃ち漏らしちまったか。戻ってくるまで、オレが直々に相手しなきゃなんねーのかよ』


(成程。双方共に、何らかの思惑を隠した小競り合いを見せているが……ジ・ファールの狙いは判明した)


 ドゥエンは細い舌で唇を湿す。


(……リューゴ君)


 威力に乏しい拳をジ・ファールに浴びせ続ける、隣国の遊撃兵だという少年。その光景を眺め、覇者はニヤリと口元を歪める。


(疲労から思うように動けぬのも確かなのだろうが……倒せるならば、今の内に全力で倒してしまうべきだ)


 どちらに転んでも、面白いものが見られそうではある。しかし魔闘術士メイガスが勝ってしまえば、観客たちの不満も募るだろう。ゆえに天轟闘宴を盛り上げる裏方の一人として、思わずにいられない。


(……その男はエンロカクとは違う。君とは『噛み合わない』。今の内に倒さなければ……負けるかもしれないよ、リューゴ君)

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