204. やれることを
「……ぶ、はぁ!」
岩縁へ指をかけ、腕力に任せて這い上がった。身体に絡みついてくる苔藻は、まるで水場へ引きずり戻そうとする亡者の手のよう。忌々しげに振り払いながら、流護はようやく陸上への帰還を果たす。
「よー……っし……!」
転がりながらも背中の袋を放り出し、大の字となって荒く呼吸を整えた。倒れたまま、そびえ立つ崖を――自分が落ちてきた絶壁を見上げる。
「は、はは、は……」
あそこから落ちてきたのか、と肝が冷えた。男なら思わず、特定部位がヒュッとしてしまうほどの高さだ。
それでも何とか着水姿勢を整え、衝撃を最小限に抑えることに成功した。
もし気絶でもしていたなら、首輪が外れて負け扱いとなっていただろう。それ以前に、溺れ死んでしまうことのほうが問題か。そこはもう、この世界における自分の頑強さを信じるしかなかった。重力の強い地球だったなら、こう上手くはいかなかったかもしれない。
(……重力の強い地球、か)
いつしかグリムクロウズという異世界の基準で考えることが当たり前となっている自分に気付き、少年は苦笑する。
(……にしても、)
――ギリギリの賭け。最終手段だった。
事前資料で、この蒼壷の湖の存在も、飛び込めるだけの水深があることも知っていた。丘陵を登る前、その湖がここにあることも自分の目で確認していた。
そこで、まさかのディノとの遭遇。
手甲を駆使して消耗せず押さえ込めるかと思ったが、やはりそう上手くいくはずもなく。
一か八か、行く先が湖へ飛び込める地形となっていることに賭けて坂を駆け登った。そのまま逃げきれるか、もしくは第三者の横槍が入ることを期待したが、それもなくあの崖へ到達する。
ともかく、賭けは成功。崖は直角に切り立っていた。なだらかな傾斜にでもなって湖へ続いていたなら、逃げ道として使えないところだった。
そうして勘が鋭く慎重なディノに何とか『本気』だと匂わせ――闘う気になったと勘違いさせ、隙を見て飛び込むことに成功した。
これでディノに勝利を勘違いさせることができれば、流護としては大成功である。
が、あの男のことだ。今頃、騙されたことに気付いているかもしれない。……上手くいった瞬間、ざまあみろといわんばかりの笑みを送ってしまっているのもあって。
(ったくよ……何も、お前と闘らねえって言ってる訳じゃねーだろが……)
あれ以上続けていたら。
我慢、できなくなってしまう――
(……さて、)
自らの頬をぴしゃりと叩き、気持ちを切り替える。
ひとまず、ディノが追いかけてくる気配はない。が、諦めたという確証もない。
派手に着水したこともある。近くに誰かいたなら、音に釣られてここへやってくるかもしれない。早急にこの場から離れるべきだろう。
「……、っし、行くか……、っとと」
立ち上がろうとするも、足がふらついた。さすがに体力の消耗が大きくなってきている……。
踏ん張ると同時、ガサガサと前方の茂みが揺れた。
「!」
咄嗟に身構える流護だったが、薮を掻き分けて現れたのは、
「……む、リューゴ殿ではないか!」
「あ……ゴンダーさん……」
世話になっている宿屋の倅にして自称・霧氷の術士。開始前に健闘を誓い合って別れていた、ゴンダー・エビシールだった。
天轟闘宴もすでに開始から三時間弱。この男もまた、幾多の激戦を潜り抜けてきたのだろう。パリッとしていた黒の礼服はところどころ擦り切れ、土や血に汚れている。オールバックの髪形のため丸出しとなっている額にも、細かい切り傷が線を走らせていた。
「先程の水音……まさか貴殿、あの上から落ちてきたのか」
屹立する絶壁と全身ずぶ濡れの流護を見比べ、困惑した様子でゴンダーが尋ねる。
「はは……いやちょっと、ディノの野郎と出くわしちまって」
「何と! それで彼は……」
「無理無理。なんとか逃げてきてこの有様だよ。温存なんて考えながら闘える相手じゃねーや、やっぱ」
ファーヴナールの防具を手に入れたことで、以前より楽に立ち回れるのでは――という思いがなかった訳ではない。
しかし、とんでもなかった。間違いなく、ディノは以前より腕を上げている。
『オレは……強くなったぜ?』
乱撃の最中かすかに聞こえた、あの言葉通りに。
正直、他の参加者があの男に傷を負わせる図すら想像できないほどだ。天轟闘宴を勝ち抜いていけば、否が応にもまた出会うことになるだろう。優勝者を決める、その時に。実際に対峙した流護としては、冗談でなくそう思えてしまう。
……決着は、それまでお預けだ。
「目立った傷はないようだが……随分と疲弊しているな。あの落下音で人がやってくるやもしれぬ。少し場を移そう。手を貸す」
「ああ、サンキュ……」
厚意に甘え、ゴンダーに肩を貸してもらいながら移動を開始する流護だった。
湖より少し離れた森の中。遮蔽物の多い日陰の岩場に腰掛け、流護は身体を休める。
「ぐっ……!」
痛む右腕の篭手を外してみれば、手首から前腕にかけての部分が紫色に染まっていた。内出血を起こしている。
ここまで、様々な術を『受けて』きた。やはり特に、あの肥えた男の見えない一撃と、ディノの炎柱が強烈だった。こうなってしまうのも必然か。
「処置した方が良いな。アーシレグナの葉は?」
「一応袋に入ってるけど、あんまり使いたくないっていうか……」
先ほどのディノとの会話を思い出す。
アーシレグナの葉。その高すぎる効果ゆえ、認識力や判断力を鈍らせてしまう可能性。
「渋っている場合ではなかろう。このままでは、右腕が振るえなくなるぞ。その右拳は、貴殿の二つ名を体現するものであろうに」
「そう、だな……」
右拳が使えなくなれば、大幅な戦力低下を招くことになる。この武祭、負ける訳にはいかないのだ。
「……仕方ねぇか」
濡れて重くなった袋から、大振りの葉を一枚取り出す。
「どう使えばいいんだ? これ」
「すり潰して患部に当てればよい。じき、効果が現れる」
あの危篤状態となっていた若者を助けたときも正直かなり適当だったが、そんな処置でも問題はなかった。どう使おうと、高い効力を発揮してくれるということだろう。
中身の食料や地図も水を吸ってぐちゃぐちゃになってしまっているが、それらには構わず葉先を千切り、腕に当てる。すり潰し、滲み出る緑色の汁を塗り込んでいく。ついでに、身体についた細かな傷へも宛がっておく。
支給された三枚のアーシレグナの葉。
一枚はあの若者に使い、一枚はこうして自分で使っている。存外あっさりと、残り一枚になってしまった。
今後、この最後の一枚をどう使うかも重要になってくるところだろう。早々と使って後に息切れしてしまうことも、惜しんで温存したまま力尽きてしまうことも避けねばならない。
「えーっと……そっちは、ここまで何人ぐらい倒したんだ?」
処置を施しながら、現状把握のために情報を交換し合う。
「……六人だな。貴殿は?」
自分の獲得したリングを数えつつ、ゴンダーが神妙な顔で問い返す。
「多分、十五人ぐらい。そのうち、魔闘術士の奴らは四人かな。失敗したよ、こまめにリング預けちゃってたから、正確な人数が分からなくなっちまった」
「フッ、流石だな。一先ず我等だけで、二十人近くを倒したことになるか」
手練が一人あたり約五~十人を倒しているといったところか。他者と遭遇しなくなってきた現状。しかしまだ、互いの居場所を知らせ合うという『打ち上げ砲火』は見られない。かなり人数は減ってきたが、まだ決戦には遠いようだ。
「しかし……それだけの人数を下していながら、負傷はその右腕程度か。流石だな」
「そっちも大したケガはしてないみたいだけど……」
しかし流護の言葉に、霧氷の術士は自嘲気味な笑みを漏らす。
「いや……私は既に、アーシレグナの葉も使い切った。最後の一枚を使ったのはつい先刻だ。おかげで今は疲労も怪我の痛みも感じぬが……葉の効果が切れれば、倒れ込みたい心地になるだろうな」
「そうか……」
そうして双方、しばし無言となる。
(…………、)
少し、不可解だった。
ある程度の情報を交換し終え、一段落した会話。だがゴンダーは、まだ流護に『あること』を尋ねていない。
流護が出場した目的の一つ。ゴンダーも意識しているだろう。
魔闘術士らを叩き潰し、ミョールの無念を晴らすという目的。それを知っていながら、彼は尋ねてこない。
「奴らの首領、ジ・ファールとは遭遇できたのか? 倒せたのか?」と。
それを訊いてこない理由は――
「なあ、ゴンダーさん」
「む。如何した」
「あんたもしかして……ジ・ファールと遭遇したりしてない?」
つまりゴンダーのほうが、すでにジ・ファールと遭遇している。そしてあの男は未だ脱落しておらず、健在であることを知っている。だから尋ねてこない。
「…………、貴殿は……鋭いな」
観念したように、口布の傭兵は首を縦に振った。
「……貴殿と出会う二十分程前か。ここより北……常緑の広場にて、奴は身を隠すでもなく堂々と座り込んでいた」
そこにいたのはジ・ファール、ただ一人。
好機だと思ったそうだ。
こうしてあの男を発見できたのも神の思し召し。流護には悪いが、自分がミョールの仇討ちを果たそう、と意気込んで近づき――
「奴との距離は三十マイレ程もあった。奴はこちらに気付いていなかった。……しかし……あの近くに、何かが……人でない何者かが、潜んでいるかのような……」
妙な気配を感じたという。そこには、間違いなくジ・ファールが一人だけ。慎重に近づいた。他の魔闘術士の姿は見当たらない。しかし――周囲に漂う、異様な雰囲気。何者かが息を潜めているような、不穏な気配。
傭兵として培った勘が、その場から今すぐ離れろと警告を発した。
「……私は、呑まれてしまっていたのかもしれぬ」
あの妙な感覚が何だったのかは分からない。だが、確実なことがある――とゴンダーは声に苦渋の色を滲ませた。
「私は……臆病者だ。ミョール殿の仇を討つと意気込んでおきながら……いざ奴を前に、臆してしまった」
悔やむ男に対し、流護は飾らない率直な言葉を返した。
「いいと思う。それで」
「な……何が良いものか! 私は……倒さねばならぬ敵を前に、逃亡してしまったのだぞ……!」
「それであんたがジ・ファールに突っ掛かってって負けたなら、何の意味もないんだ。俺は……そう思うよ」
それは流護が小学生だった頃の話だ。
駅前で、道端にたむろして周囲の迷惑になっている高校生の集団を見かけた。派手に染めた金髪、短く詰めた学ラン、堂々とふかしているタバコ。
どういった連中なのか、子供だった流護にも容易に想像がつく。
そこで、通りかかった真面目そうなサラリーマンらしき男性が彼らに注意したのだ。
「周りの迷惑になるからやめなさい」、と。
残念ながら、当然と言うべきなのか。高校生らが素直に聞き入れる訳もなく、男性は袋叩きにされ、地面へと転がった。
揉め事が起きる前の時点で、すでに誰かが通報していたのだろう。すぐさま警官が駆けつけてきて、その場は治められたのだが――
かつて、流護に業を叩き込んだ老人は言っていた。心底どうでもよさげな口調で。
『力を伴わぬ正義ほど、無意味なものはないよ』
悪事を働く人間に対し、「そんなことをするのはやめろ」と言うのは確かに善だ。勇気もいるだろう。しかしそこで、暴力をもって返されたならばどうするのか。その蛮行から身を守る術がないのなら、例え善とはいえ安易に主張すべきではないのだと。
そんな考え方が絶対だと言うつもりはない。しかし駅前で見たあの出来事と師の言葉は、今の有海流護を形作るにあたって大きな礎の一つとなっている。
勝てずに玉砕するなど無意味。勝てないなら、誰かに託せばいい。駅前の件で人知れず通報していた、誰かのように。
「ゴンダーさんが教えてくれたおかげで……俺は、ジ・ファールを殴りに行ける。もしあんたがヤツに特攻して負けてたなら、俺はここでその情報も得られなかった訳だし」
勝てる誰かに、任せればいい。それは決して誰かに放り投げるとか、逃げるとかいった無責任な意味ではなく。
もっとも――それが嫌だった少年は、『託される側』へと回るために力を求めたのだが。
つまるところ、自分にやれることをやればいい。少年はそう考える。
「……しかし……」
「ァハハーハハ! ジ・ファールをどうするってぇー?」
霧氷の術士の言葉を遮って、唐突に第三者の声が割り込んだ。
「!」
流護とゴンダーは弾かれたように顔を向ける。
苔むして緑に染まった、前方の巨木。その上方、地上から四メートルほどの高さにて繁殖する枝――特別太い一本に、座した黒影。
果たしていつからいたのか。漆黒のマントを羽織った痩せぎすの男が、高みより二人を見下ろしていた。
「おめー等が呑気にくっちゃべってる間に百回は殺せそーだったんだがよー、そんなんでジ・ファールを殺れんのかねぇ。そもそもアイツに何の用よ、おめー等」
ばさりとマントを翻し、男は驚くほど身軽に着地する。
それは魔闘術士らの人種の特徴なのか。こけていると表現しても過言ではないほど細い頬。肉の少なさゆえか、ギョロリと飛び出しかけているようにも見える両眼。
その身体的特徴は、あのジ・ファールやバルバドルフ、最初に交戦したヒョヌパピオと共通しているところが多い。もっともそれは、この魔闘術士という集団そのものにおいていえることではあったが。
――とにかく。
「……」
相手は魔闘術士。問答無用で潰すべき敵。
無言で身構えようとする流護を、
「待たれよ」
ゴンダーが割り込む形で制止した。
「リューゴ殿。貴殿はジ・ファールに備え、体力を温存すべきだ。此奴は――私が受け持とう」
「ァハハ、バッカだろおめー、受け持つって何だよ? あぁ? 一人で俺と闘ろーってのか?」
魔闘術士は唾を飛ばしながら笑う。
一見して小物丸出し。安いチンピラみたいな男だが――違う。
痩せた顔には傷の一つもなく、纏う丈長のマントには一片の綻びも見られない。開始から三時間半。流護やゴンダーが傷や疲労を重ねているにもかからわず、だ。
「……ゴンダーさん。こいつ……」
「解っている」
強い。流護が開幕で瞬殺したヒョヌパピオや、途上で倒してきた末端たちとは明らかに違う。ビリビリと感じ取れる雰囲気。
「だからこそだ。貴殿の力をここで浪費する事は、得策ではない」
遮るように、霧氷の術士は立ちはだかる。
「先程も言ったが……私は最早、限界が近い。アーシレグナの葉による戦意高揚や沈痛の効果も、遠からず切れるだろう」
ならば、と傭兵は敵を見据える。
「難敵を前に逃げ出してしまった、せめてもの罪滅ぼしに。この闘志の炎が、消えてしまわぬうちに。そして……微力ながらも、貴殿やミョール殿の一助となる為に。我が力、振るわせて頂きたい。ここは私に任せ、進んでくれ」
「……そっか」
こんな状況でくだらない譲り合いをする気はない。流護としては実際、ありがたい提案だった。
つい今ほど、流護が思い浮かべたこと。自分にやれることをやればいい。奇しくもそれを体現するかのごとく、霧氷の術士は悪漢の前に立ちはだかった。
「んじゃ任せるよ、ゴンダーさん。ボス猿は……北の広場にいるんだっけか」
「あれから動いておらねばな。地図を参照して川沿いに行けば、迷わず辿り着ける筈だ」
「おけ。じゃ、また後で」
「承知。武運を祈る」
敵を見据えながらのやり取りを終え、流護は迷わず背を向ける。
その顔に浮かぶのは、ヘラヘラとした薄ら笑い。
二人の会話を妨害するでもなく眺めていた魔闘術士の男だったが、
「ほいっと」
流護が踵を返して歩き出した途端、その背中へ向けて無造作にナイフを投げ放った。
ばがん、と鈍い音がその射線を遮る。
銀の刃は直角に軌道を変え、すぐ脇の幹にスコンと突き刺さった。右腕へ生み出した氷の小盾で凶刃を弾き飛ばしたゴンダーが、鋭い視線を投げかける。
「卑劣な真似しか出来ぬのか? 貴様の相手は私だ。彼を追いたければ、私を倒してからにするのだな」
「あっそ、ひひひ」
投擲を弾かれ、仕留め損ねた流護がみるみる遠ざかっていくも、魔闘術士は焦る素振りすら見せようとしない。
「如何した。早く私を倒して後を追わねば、彼は貴様らの頭領の下へ辿り着いてしまうぞ」
「別にいんじゃねーの。ジ・ファールが負けるとも思えんし、仮に負けるなら――」
「次から、オレが頭になりゃいーだけの話だしよ?」
所詮は下衆の集まりか、とゴンダーは内心で溜息をつく。こういった連中の仲間意識など、結局はこの程度のものだ。もっとも傭兵稼業で汚い仕事も幾度となく経験したゴンダーとしては、偉そうなことを言える立場ではないのだが。
左腕にも盾を顕現し、傭兵は低く身構える。
「私は霧氷の術士、ゴンダー・エビシール。名を訊こうか、黒衣の無法者よ」
対峙する痩身の黒影は、軽薄な笑みを絶やさず佇む。
「名前ねぇ……、っと!」
瞬間。
「!」
声を置き去りに、姿が消えた。
そう錯覚するほどの速度。ただ速いのではない。足運びが巧みなのだ。
「――カザ・ファールネス」
瞬く間にゴンダーの至近へ立った魔闘術士は、そう名乗りを上げる。
「属性は――『斬』。ジ・ファールの……弟だよォ!」
そうして振るわれたのは、無手の右腕。
――刹那に思考が駆け巡る。
素手。流護のような豪腕でもあるまいし、何ら脅威を感じる一撃ではない。が、属性は――斬? 聞いたこともない属性だ。そのうえ、ジ・ファールの弟だと――?
迸る不吉な予感。
閃いた指先がたどる軌跡。
――その途上に。辛うじて身を反らしかけていた、ゴンダーの左脇腹があった。
ざくり、と伝わる厭な感触。
直後、爆発したような血飛沫が噴き上がった。
「ぐ、ぁあああぁぁっ――!?」
アーシレグナの葉による高揚状態、沈痛状態にあってなお、身体を駆け巡る激痛。容赦なく切り裂かれたゴンダーの脇腹が、痛みと鮮血を撒き散らした。
(……斬、属性ッ……だと……? 何だ、あの『手』は……!?)
ビッと指先を揃えたカザ・ファールネスの右手。そこに術の煌めきはなく、ただの無手にも見える。しかしこの切創は、間違いなくその素手によって刻まれたものに違いない。
そんな腕が、まさしく長剣のように高々と振り上げられる。
「あばよ、雑魚!」
「ぐ……!」
容赦なく、本物の剣と何ら変わらぬ斬撃がゴンダーへ降りかかった。




