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終天の異世界と拳撃の騎士  作者: ふるろうた
4. レインディール・スペキュレーション
112/667

112. その二つ名は

 その夜。

 手際がいい、というのだろうか。

 流護の褒賞金――今回は百万エスク――はすでに用意されており、あの後すぐに受け取った。さらには夕食、宿泊の準備までもが整っていた。全てが予定通り、といった滞りのなさで。


 そして、夜は九時過ぎ。

 流護は兵士に呼ばれ、謁見の間へと向かっていた。アルディア王から話がある――とのこと。

 延々と続く赤い絨毯を踏みしめ、歩く。


「…………」


 ベルグレッテたちが言っていた通り……まず間違いなく、遊撃兵の話だろう。

 すでに、心は決まっている。しかしそれでも、これでいいんだろうかという迷いもつきまとう。

 思い悩みながら廊下の角を曲がったところで、見知った顔に出くわした。


「あ、リューゴ」

「リューゴさんっ」


 ベルグレッテとリーフィアだった。


 あの戦闘の後。

 駆けつけた兵士たちによって捜索されたが、闘っていた相手――ブランダルという男は、見つからなかった。

 本来ならばリーフィアの一撃で倒れるなり転がるなりしたブランダルを捕縛するつもりのベルグレッテたちだったが、いかんせんそのリーフィアの神詠術オラクルが想像を超えていた。横に飛んだ竜巻が上にホップし、人間を軽々と上空へ飛ばすなど考えるはずもない。ボールの遠投よりも遥か彼方へ飛んでいった男を見つけるのは至難の業かもしれなかった。当然、リーフィアに非はない。


 生きていて再度襲撃してくることも考えられるため、今夜はひとまず、リーフィアは流護と同じように城で宿泊することになっていた。

 クレアリアは消耗が激しかったため、もう夕方から床に就いている。


「二人は何してんだ? 散歩?」

「あ、いえ、その……」


 口ごもったのはリーフィアだ。


(……あ)


 その様子で流護は悟った。

 ……トイレか。

 基本的に、民衆は許可がなければ城へは入れない。リーフィアも『ペンタ』とはいえ括りとしては平民だ。城に入ったことはそう多くないのだろう。どこに何があるかなど把握していないはず。そこでベルグレッテが付き添っている……と、そんなところか。


「あーと、なぁ、リーフィアさ」

「は、はいっ」

「えーと……あれだ。怖く、なかったか? 闘うのとか」


 咄嗟に話題を変えようとした流護は、何となしにそんなことを訊いていた。


「……は、はい。怖かった……ですっ」


 実際にブランダルと対峙していたときのことを思い出したのか。少女は、わずかに怯えた表情を見せる――が、


「怖かった……です。傷つけられることも、傷つけることも。制御に失敗すれば、みなさんを巻き込んでいたかもしれないことも。で、でも……と、友達を……失ってしまうことのほうが、ずっと怖かったので」


 いつもと同じ、おどおどした口調。しかしその瞳には、強い意思の光が宿っていた。

 そんなリーフィアの頭を、ベルグレッテが優しく撫でる。風の少女は、照れくさそうな笑顔を見せた。


「そっか。すげえな、リーフィアは」

「い、いえっ。リューゴさんのほうが、その……」

「まあ俺、いきなり出てきて石投げただけっすけどね」

「ふふっ。たしかに、あの状況だけ見ればそうかもしれないわね」


 ベルグレッテが困ったように笑う。

 荒事など経験したこともなかった、普通の少女。刺客と向き合ったときの恐怖は、どれほどのものだったろう。それを乗り越え、闘うことを決意したその勇気は、どれほどのものだったろう。

 有海流護が敵と対峙できるのは、修練に裏付けられた自信や過去の経験があるからだ。仮に流護が今より大きな力を持っていたとしても、戦闘経験がなかったなら、ただ恐怖が先立つだけで何もできはしないだろう。

 負けてらんねえな、こりゃ――と。流護は期せず、身の引き締まる思いがした。


「リューゴは……これから、陛下のところね」


 ベルグレッテは笑顔から一転、どこか沈んだ顔を見せる。


「……いいの? 本当に」


 その言葉に、流護は頷く。

 ベルグレッテたちには、もう告げている。遊撃兵になるつもりだと。


「やっぱ、いつまでも学院の雑用って訳にもいかないだろうし……いい機会だと思ってるよ」

「でも……」

「大丈夫だって」


 任務も過酷だという。事実、これまで全員が殉職しているのだ。決して楽観視などしてはいない。できはしない。けれど少女騎士を安心させるために、流護は優しく笑う。

 いまいち何の話だか分かっていないのか、リーフィアは顔に「?」を浮かべて流護たちを見上げている。


「つーかさ、これだけ遊撃兵ー遊撃兵とか言ってて、王様にそんなつもりなかったらどうすんだ」

「……ううん。間違いないと思う」

「そっか。ま、行ってくるよ。今後は、ベル子とも同僚みたいな間柄になんのかな」

「う、ん。そうだね……」

「うりゃ」


 ベルグレッテの額を、つん、とつついた。


「な、なによぉ」

「行ってくる」

「……ん」


 心配そうなベルグレッテとよく分かっていなさそうなリーフィアに見送られ、流護は謁見の間へと足を急がせた。






 豪放というか何というか。

 だだっ広い謁見の間。玉座に腰掛けたアルディア王、向かい立つ流護。

 二人きりだった。護衛の人間すらいない。不要な照明を消しているのか、周囲も薄暗い。柱に備え付けられたカンテラのいくつかが、ぼんやりとした光を放っているだけだ。

 一国の王がこんな無防備でいいのか、と少年は余計な心配をしてしまう。


「おう。疲れてるとこ悪いな、リューゴ」

「いえ……王様こそ、あんなテロとか……疲れてないですか」

「なァに」


 どっしりと玉座に腰掛けたアルディア王は、口元を豪快ににやりと歪めた。

 実際には、テロの件だけではない。時を同じくして、ミディール学院の『ペンタ』であるオプトの遺体が発見された。まだ公表されてはいないものの、一部の間では大騒ぎとなっている。

 しかし、隠しきれるような話ではないだろう。すぐに、皆が知るところとなるはずだ。


「さて、じゃあ本題に入るか。まず今回の急な要請に応じてくれたこと、心から感謝する。人質解放の肝となった決闘を制し、リーフィアやベルグレッテたちを守った功績……実に見事だった」

「いえ……あのブランダルって奴には、逃げられてしまいましたし……」

「ベルたちに大事がなかったんだ、充分さ。女二人の尻を追っかけたところで、結局どっちも捕まえられやしねえ――って言い伝えが昔からあってな。ブラ何とかってのは男だが」


 くくと笑った王は一拍置いて、告げた。


「回りくでぇのはナシだ、率直に言う。リューゴ……お前さん、遊撃兵になってみねえか」


 予想に違わぬ申し出。ほぼ分かっていたこととはいえ、流護の心臓がわずかに脈打った。

 やはりここは――流護としては、アルディア王から直接、遊撃兵について聞いておきたいところだった。あえて聞き返してみる。


「遊撃兵……ってのは?」

「兵士や騎士みてえなモンだ。レインディール外の人間は、兵士や騎士にはなれねえ。が、それらと同様の兵として受け入れることもある。それが遊撃兵だ」

「詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

「んー……今話した通りなモンだけどな。給金やその他の待遇も、騎士たちと同様だ。任務によっては、特別褒賞もある。あ~……あとは何かあったかぁ?」

「……なるほど。遊撃兵って――何人ぐらいいるんですか?」


 ピクリ、と。流護の言葉に、アルディア王の眉がかすかに動いた気がした。


「……今は、一人もいねえ」

「どうしてですか?」

「正直、過酷な任務も多くてな。全員死んだ。有能な人間だと思ったら、スパイだったりしたこともあったな。そいつは、粛清した」


 アルディア王はかすかな溜息をつき、下を向く。過酷であることを隠すつもりはないらしい。

 そして流護は、クレアリアから聞いた話を思い出す。


「クレアから、少しだけ聞きました。逃げようとして、粛清された遊撃兵がいるって……」

「……聞いてたか。レッシア・ウィル。有能な女戦士でよ、特にクレアと仲が良かったんだが……有能な故かねえ。とある組織のスパイだった。おっと、こりゃ内緒だぜ。今お前さんが言ったように、レッシアが逃げ出そうとして、そこを粛清した――ってコトになってるからな。クレアは……ベルも含めた若い連中は、レッシアがスパイだったことを知らねえんだ」

「……え?」


 流護は困惑して巨大な王を仰ぎ見る。

 なぜ隠すのか。本当のことを言ってやればいいのではないかと。

 そんな流護の疑問を読んだ王が、どこか自嘲気味に笑った。


「あの偏屈なクレアが、ホント犬っころみてえに懐いてたんだぜ? レッシアのヤツによ。アイツは若い連中の姉貴分みてえな存在でな。実の弟や妹みてえに、ガキどもを可愛がってた……ように、見えた」

「……あ」


 流護は理解した。

 そのレッシア・ウィルの、皆に対する思いが――クレアリアに対する親愛が、偽物だったと。それを、知らせないために。


「ただでさえ男嫌い、嘘つかれるのが大嫌いなクレアちゃんだぜ? レッシアにまで嘘つかれてましたなんてなぁ、ちっとばかし酷だと思ってよ。これが原因で、女嫌いにまでなっちまったらえらいこったぜ」

「……でもそれだと、王様が……」

「なァに。嫌われるのは慣れっこなんだよ、おじさんはな。クレアちゃんはまだまだ多感なお子様だからよ、胸も尻ももう少しばかり育って、イイ女になった頃にでも話すとするさ」


 一国の主は、ただそう笑った。昼間、クレアリアに「大嫌い」と言われたときにも見せた、その表情。

 まるで、年頃の娘に対する接し方が分からない父親のような。そんな不器用さと親しみやすさを感じさせる笑み。


「ま、少しばかり話が逸れちまったが……遊撃兵は、危険な仕事さ。それは間違いねえ。過去、一人として達成できなかった任務もある。が、お前さんなら何でもやり遂げてくれそうな気がしてよぉ」

「はぁ……あ、そうだ。『レインディールの遊撃兵』になるんですよね。俺、記憶が……その、ないんですけど……これで記憶が戻って、元の国に帰りたい……ってなった場合はどうなるんですか?」

「んー……前例がねえんで、如何とも言い難いな。そりゃ、記憶が戻ったときに考えようや」


 計算高く繊細な一面を見せたかと思えば、豪胆かつ適当な顔を覗かせる。何とも掴みどころがない。流護は思わず脱力してしまいそうになった。


「はは……あとは……遊撃兵になったら、城に住むことになるんですか?」

「いや。城に住みたいってんならそれもいいが、基本的には、今のまま学院に滞在してもらおうと思ってる。任務の際に呼びつける感じになるか。学生とはいえ詠術士メイジだらけの学院なら兵士はいらんだろうと思って置いてなかったが、ファーヴナールの件もあって、常在する兵士がいた方がいいと思い直してな。しかしまァ、そこは『遊撃』兵だ。臨機応変に動いてもらうことにはなるだろうぜ」


 基本的な生活に変化はなさそうだった。任務に応じて、城と学院を行き来する形にはなるかもしれない。


「なるほど……ここまで聞いといてアレなんですけど、ここで俺が断ったらどうなるんですか?」

「んー……名残り惜しいが、そりゃ嫌だってんなら無理強いするこたぁできんわな」


 玉座に深く身を預け、アルディア王は笑う――と、


「っとぉ……やぁしまった。俺ぁリューゴが欲しいあまり、こうして呼びつけちまった訳なんだが……」


 何だろうか。急に、アルディア王の喋りが不自然になった。

 棒読みというか、しらじらしいというか、下手な演技っぽいというか。


「この状況、生真面目なヤツが見たら勘違いしちまうかもしれねえ。護衛もなしで、こんな時間に、俺とお前さん……二人っきりだもんなぁ」

「………………」


 流護は思わず沈黙する。

 つまり。

 アルディア王がその気になれば、今この状況をどうとでも捻じ曲げ、流護を拘束することすらできるということだ。

 例えば――こんな時間に謁見の間に忍び込み、一人でいる王を狙った刺客、その名は有海流護――であるとか。


「は、はは……おっかねえ人だな……でもベル子なんかは、俺がここに来ること知ってますよ」

「なんでえ。イチイチ行き先報告してんのか? お前ぇら完全にデキてんだろ。ま、とにかくよ……俺は、それぐれえにお前さんが欲しいってコトだ」


 実際には、流護がここへ来ることをベルグレッテが知っていたとて、そんなものは何の証拠にもならないだろう。

 逃がさん、というように見据えてくるアルディア王――だったが、ふと表情を和らげた。


「簡単に決めろ、ってぇ訳にもいかんわな。まぁ、正直なことを言わせてもらえば……」


 言葉を模索しているのか視線を泳がせ、


「俺は……強い者が好きだ」


 例えばな、とアルディア王は自慢のコレクションを披露するように笑う。


「『銀黎部隊シルヴァリオス』に、ダルコールってヤツがいる。こいつがまァ何というか……残念ながら馬鹿なんだ。馬鹿なんだが――強い。身体は俺よりでけぇかな。怪力自慢でよ、パワーだけなら俺より上かもしれん。本来であれば学の面で『銀黎部隊シルヴァリオス』になる基準を満たせてねぇんだが、特例としてこの馬鹿をメンバーの一員としてるんだ」


 その男が収まるべき場所が存在しない。だから、ひとまず『銀黎部隊シルヴァリオス』として組み込んでいる。王はそう語った。


「お前さんも同じさ」


 ぐっ、とアルディア王は右の拳を握り締め、胸の高さへと掲げた。


「リューゴには、俺の拳になってほしい」

「こぶし……?」

「ぶっちゃけた話だがよ。俺はな、お前さんが記憶喪失なのをいいことに、この国の兵士にしちまいてぇんだ。その力、放っとくには惜しすぎる。お前さんが他国の人間だなんてのは関係ねえ。神詠術オラクルが使えねえなんてのも関係ねえ。騎士や兵士の作法なんてモンには期待しねえ。遊撃兵だなんてのは建前よ。ただ、その拳を振るう法の暴力として、お前さんを自分の力にしちまいてえんだ」


 その言葉に。流護は、


「……ぶふっ」


 思わず吹き出した。


「何でえ。おかしかったか? いや、おかしいか。がはははは!」


 おかしいに決まっている。

 テロ対応の手助けに王都へと向かう馬車の中で、クレアリアが懸念していたこと。

 それを、アルディア王自らが正直に語ってしまっているのだから。


「つか、今の話聞かされて『じゃあやろう!』って思う人間はあんまいないと思いますよ」

「まァそうだわな。ぶははは!」


 しばし、二人の笑い声が謁見の間に木霊する。


「リューゴよ。お前さんは……神詠術オラクルについて、どう思ってる」

「え……いや、俺はその……色々忘れちゃってて使えないんで、何と言ってみようも……」


 唐突な問いかけに惑う流護だったが、王はその答えに頷きを返した。


「俺ぁよ、それが……『使えないのが当たり前』なんじゃないかと考えてる」

「――え?」


 思いもしなかった言葉に、流護はきょとんとなった。


「こっからは秘密だぜ? ベルにも報告したりすんじゃねえぞ? ……俺たちが生まれながらに扱える、神詠術オラクルってぇ力。誰もが扱えて、それを疑問にすら思わず、頼り切っている力。この神詠術オラクルってな何だ? どういう力なんだ? なぜ人間だけが使える? 俺は、ガキの頃から疑問だった。まァ神から授かった力だってんで、そんなこと言おうモンなら、罰当たりだってこっぴどく叱られたがな。そりゃ不思議だなんて言い出しゃキリがねえ。どうして手足は動くのか、人間は何なのかって話になるんだが……どうにも、この神詠術オラクルって力は異質な気がしてよ」

「…………、」


 流護は息をのんでいた。

 神詠術オラクル。この世界において当然のように誰もが行使でき、それを疑いもしない力。疑えば、罰当たりだと咎められる力。

 しかし王は、そのことに疑念を覚えていたという。

 ふと、昼間の決闘を思い出す。

 まるで天然の鎧のようだった、アルディア王の鍛え抜かれた肉体。あれは、決して神詠術オラクルを妄信しない王が自らを磨き上げた結果なのかもしれない。


 そこでアルディア王が、これまでにない真面目な瞳で流護を見据えた。


「俺には、夢がある。その夢に到達するため、強い武力が必要だ。さっき話したレッシアなんか、ホント強かったんだぜ。あいつが遊撃兵なら、到達できると思っていた。遊撃兵が強けりゃ、国の兵たちも奮起する。『外国人のアイツが頑張ってんだ、俺らも負けてられねぇ』ってな。だから、率先して危険な任務に赴いてもらうこともあった」


 巨大な王は拳を握り締めて、熱く告げた。


「お前さんとなら――今度こそ、往けると思っている」

「何……ですか? その、夢っていうのは」

「そいつぁ後々のお楽しみだ。レッシアの件もあるからな。機が熟し……お主に話すべきだと判断したそのときに、話すとしよう。……とでも言った方が、気になるだろ?」


 つう訳でよ、とアルディア王は居住まいを正す。


「――リューゴ・アリウミよ。俺に……力を、貸してほしい」


 そうして。

 一国の王は年端もいかぬ少年に対して――深々と、その頭を下げていた。


「ちょっ……! お、王様! 何してんですか!? あ、頭上げてくださいよ……!」


 さすがに流護でも分かる。一国の頂点に立つ人物が民に対して……それも出自の知れない個人に対して頭を下げるなど、ただごとではない。この場面を誰かに見られでもしたら、色々と大変なことになってしまいそうだ。


「リューゴが承諾するまで上げんぞ」

「えぇー!?」

「ところで小腹が空いたな。給仕でも呼ぶか」

「そのままの姿勢でですか?」

「ああ」


 ひどい王様だ。……とはいえ、もう決めていたことだ。

 流護は宣言する。


「えーと……俺……遊撃兵、やります」


 何とも締まらない流れになってしまったが、その言葉に王は勢いよく顔を上げる。満面の笑みだった。


「おう、そうかそうか! やってくれるか! よろしく頼むぜぇ! そんじゃ、任命式は明日だな。今日は部屋に戻って、ゆるりと休んでくれ」

「もう最初からそのつもりで色々進めてそうですよね……」


 用意されていた褒賞金。宿泊の準備。こうして流護が遊撃兵となるのも、全て計画通りのはずだ。


「くく、まぁそう言うなって。おおそうだ、お前さんにも二つ名を授けるからな」

「え」


 軽い調子で言うアルディア王に、流護は呆けた声を出してしまった。

『二つ名』。それは、優秀な詠術士メイジに贈られるものだったはずだ。それがまさか、何の神詠術オラクルも使えない自分に授けられるとは。

 戸惑う少年に、王がその二つ名を告げる。



「――遊撃兵、『拳撃ラッケルス』のリューゴ・アリウミよ。今後とも、よろしくな」

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