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おっさんの冒険録  作者: おっさん
記録者:桜葉一郎 「一日目」
7/58

因果応報って知ってるか?

 只今、改稿作業中。この前書きが消えたら出来上がりです。

 改稿作業中のお話には、この前書きをテンプレで貼って

 行くので、コレがあるか無いかを目安にして下さい(作者)






(本日此処まで。大分、過ごし易くなってきましたがまだまだ残暑が厳しいですねぇ。

 仕事の方も十月位迄は立て込んでおりますが……まぁボチボチ頑張ります! 作者)






 ……丸刈り野郎との「お話し合い」中に、お嬢ちゃんが何かの拍子に巻き添えを

食らっちまったらヤべェので、彼女へもっと後に下がるようにと指示を出した俺は、

次いで、此方をニヤケ面で眺めてやがる野郎のご期待通り、奴とジックリ話し合いの

出来る間合いへと此方から歩み寄ろうとしたんだが……丁度、その時だった。


「お、おぃ……ベ、ベネッツォぉ……! こ、コイツを……どけてくれぇっ……!!」


 ……俺と丸刈り野郎を、この空間の上空から見て点と点で置き換えた場合。

 その点二つを直線で結んだライン上の、丁度その中間地点で変態は麻袋の下敷きに

なって呻いてたんだが。その変態が突然、丸刈り野郎に助けを訴えかける様な感じの

眼差しを向けつつ、喉の奥から絞り出した様な、かすれた声を出しやがったんだわ。

 ……その時の言葉から分かったんだが。この丸刈り野郎の名前は、どうやら

「ベネッツォ」って、言うらしいぞ。


「チッ……。バカが、名前を出しやがって……」


 ……そんな事を考えていると、変態から「ベネッツォ」と呼ばれた男の顔付きは、

先程迄のニヤケ面から一変して、急に憮然な表情へと変わったんだ。すると……

奴とは距離が離れている為、俺には聞こえなかったんだが。奴は何かを一言呟いた後、

憮然な表情のまま変態が寝ているトコへ静かに歩み始めたんだ。そして、変態の頭の

位置まで歩み寄るとソコで立ち止まり、変態の顔を見下す様に一瞥すると……無言で、

自身の左腰に佩いていたロングソードをゆっくりと右手で引き抜き、引き抜いた後は

手馴れた手付きでソイツを宙へ軽く遊ばせたかと思ったら、次いでその剣を宙で瞬時に

逆手に掴み、そしてソレをっ……!! そのロングソードの刃先をっ……!!


[ザスッ……!!]

 

 こ、コイツっ……!? なんの躊躇とまどいも無く仲間の首に突き刺しやがった……!!


「カハッ……!?」


 ……ロングソードの先端が、小柄な男の首へ深々と沈み込んだ。その瞬間、小柄な男は

一言だけ呻くと。その一言を最後にして、それから先は何も言わなくなった。

 ……首へ剣先を突き立てられた直後は、その身体をビクビクと痙攣もさせてはいたが、

次第にその痙攣の間隔も短く弱くなって行き、やがて……目を大きく見開いた驚きの

表情のままで、ベネッツォの顔を見据えたまま、小柄な男はピクリとも動かなくなった。

 

「……ゴクっ」


[ズッ……]


 ……眼前で繰り広げられている光景に、俺は思わず息を飲んだ。だが奴は――

 そんな俺の事など何のお構いも成しに、何事も無かったかの様に小柄な男の首へ深々と

突き刺した剣を引き抜いたんだ。すると、剣を引き抜いた瞬間。その傷口からは大量の

紅い鮮血が生まれ、溢れ出し……首を伝い、首がある辺りを中心に地面へ紅い血溜まりが

出来て行った。……その原因を作った、鈍く銀色に光る刀身に目を向けてみりゃあ。

 その先端部分には小柄な男の鮮血が纏わり付いてて、更にソコからは鮮血が雫となって

滴り落ちていて、その雫は……さっきの血溜まりの中へ吸い込まれ、同化して行ってた。


「うっ……!? 酷いっ……」


 ……不意に背後からお嬢ちゃんの声が聞こえたので、俺はベネッツォから視線を外し、

お嬢ちゃんの方をみる事にした。……無用心に見えるが、まだ奴とは十分に距離が

あるから問題ないぞ。すると、俺から離れたトコにいたお嬢ちゃんにも「その光景」が、

鮮明に見えてしまったらしく、お嬢ちゃんは口元に右手を添えて、未だに首から血を

流し続けている小柄な男を、直視しないように顔を叛けていた。


 ……チッ、女にこんなモン見せ付けやがって。だが……しかし、まぁ……よ。

 この場面で重要なのはソコじゃねぇんだわ。……お嬢ちゃんの状態確認を終えた俺は、

彼女へ向けていた視線をベネッツォに再び戻し、奴を睨み付けながら詰問する事にした。


「……おい、テメェ。ソイツ、仲間なんじゃねぇのか……?」


 ……何故だろうな。目の前で死んでるのは赤の他人だってのに、頭に血が昇りやがる。


「……あぁ? こんなゴミ、仲間だと思ったこたぁ一度もねぇよ」


 仲間を殺した事に、一切の悪びれる素振りすらも見せずにベネッツォは言葉を続ける。


「……なんだ、テメェ? ナニ、キレてやがんだ? ……あぁ、コレか。

 別にヒデェ事でも何でもねぇさ。このゴミはな? 女だったら年端も行かねぇ様な

 ガキにだって構わず突っ込んじまう様なクズだ。逆に、感謝して欲しいくれぇだぜ?」


「奴」は……「ベネッツォ」は、そう口にすると呆れ顔で肩をすくめた。

 ……俺は、そんな奴の挙動の一つ一つに苛立ちを覚えながらも返事をしてやる。


「……あぁ、そうかい。まっ、それなら仕方ねぇか。オメェが言ってるソレが本当なら、

 ソイツは殺されて当然のクズだわな。でもよ……おりゃあ、おめぇが気に食わねぇよ」


 ……駄目だな、こりゃ。「抑え」が利かねぇや。ったく……面倒臭ぇ性格してんぜ、

我ながら。なんでこうなるかねぇ、カルシウム不足なのかな。イラ付きが収まらねぇや。


「……だったら、どうするよ。気に食わねぇって喚くだけじゃ、なんの腹の足しにも

 なんねぇぞ。……俺と『ヤル』か? 良いぜ、その『ナリ』なら暇潰しにゃなりそうだ」


 奴は、そう口にすると。血まみれになったロングソードの切っ先を俺の方へ向けた。

 ……いまんトコは、その剣から「殺意」なんてモンは感じねぇけどな。……だがよ、

人様へ刃物を向けた以上はよ。コイツは「その意味」を知ってると、俺は受け取ったぞ。


「……人を斬ろうとする奴は勿論だが、人様へ刃物を向けた奴ってのもよぉ……。

 テメェも相手から斬られても良いっていう覚悟は、既に完了済み。なんだよな……?」


 無抵抗の相手を一方的に殺した「クズ」に、俺は「最終確認」をする。

 ……刃物向けられて「此処は一つ、話し合いましょう」なんて、そんな下らねぇ漫才

やる気は俺にはねぇ。……相手が刃物を引くか、そのままか。「ソレ」次第ってトコだ。


「あぁ? 今更、ナニ言ってんだ? 怖気づきやがったのか? ひゃはははははっ!!」


[……ブチィ!!]


「……。」


 ……奴の高笑いを耳にした瞬間、俺の中で「何か」が弾けた。「理性」で抑えていた

「何か」って、トコかねぇ……。「ソイツ」が弾ける迄は、多少の戸惑いや遠慮みてぇな

モンが「俺の中」にはあったんだがよ。今は、そんなモン。何処かへ行っちまったわ。

 

「迷い」の無くなった俺は、左手に握っていた「つるはし」を奴の足元へ放り投げた。


[ブンッ……] [……ドサッ]


 ……放り投げられた「つるはし」が宙を舞い、そしてすぐさま奴の足元近くの地面に

落下する。すると、落下したと同時に「つるはし」の鉄で出来た作業部分が落下地点に

ある雑草と土を叩き、重い音が響いた。突然の俺の行動に、奴はその「つるはし」を

訝しげな表情を浮かべながらに一瞬だけ眺めると。次いで、俺の行為の真意を探るべく

「つるはし」から視線を外し、今度は俺の方を見据えながら此方へ呟きを寄越したんだ。


「あ……? なんだぁ……?」


「……俺の名は『イチロー』だ」


 ……奴の呟きに対し、俺は返答代わりに俯き加減で自らの名乗りを上げた。

 さっき奴の名前は聞いたからな。……だからよ、俺の方も名乗っておかなきゃフェア

じゃねぇって話だ。……これから「やり合う」相手なんだから、名前くれぇ名乗って

おかねぇとな。……何故なら、中途半端な「終わらせ方」は絶対しねぇと決めたからさ。


 名乗り終えた俺は、俯き加減のまま言葉を続けた。その視界の先には、俺の瞳には。

 ……先程迄は「小柄な男」だった「物言わぬ肉塊」が映っていた。


「……よ、ベネッツォ」


[キッ……]


 俺は腰に手を回し、ナイフを木鞘から静かに引き抜いた。そして、もう一度。

 今度は「奴の目をキチンと見据えて」先程の、啖呵の続きを激しい口調で口にする。


「……来いよ! ベネッツォ! そんな剣なんか捨てて『コイツ』で! 来いよっ!?

 俺の苦しむ顔をみてぇんだろっ!? その腰に付いてるナイフは飾りモンかぁ!?」


 ……俺は左手に握ったナイフの刃を奴に見せ付ける様に向けて、奴を煽った。

 すると、その啖呵を受けた奴の表情が次第に変わって行くのが見て取れた。

 ……奴が、どんなツラしてんのかと言うと。額に青筋を「ビクビク」と浮き上がらせ、

両肩を「ぷるぷる」と震わせながら、紅潮した表情を隠す様な感じによぉ……。

 先程の俺と、同じ様な具合に俯き加減になってやがるわ。……良いねぇ、その表情。


[……ザスッ!!] [……ザッ!!] 


 奴は無言で右手に持ってたロングソードを地面に突き刺すと、その代わりに自らの腰に

括り付けていたナイフを革鞘から勢い良く抜き放った。そして、そのナイフを両手で

しっかりとホールドすると……俯き加減だった顔を上げると同時に、ナイフを自らの顔の

前にかざしながらその刃を俺の方へ向け、紅潮し切った顔、血走った眼球、眉間に激しく

刻んだシワ……ソレ等を合わせた凄まじい勢いのある形相で、俺を睨んで来やがったわ。


「……野郎ー!! ブッ殺してやるっ!!」


[ダッ!!]


 奴は、そう吐き捨てると。右手にナイフを握り締めて、俺に向かい突進して来た――!




 ……やはりな、俺の「読み通り」な性格の野郎だった。……奴が、手に持ってる

ロングソードは「簡素な作りの一般的な物」だったのに、ソレと比べたら腰に差している

ナイフの方はキチンと革鞘にも脂が塗布されてて、しっかりと手入れされているのが

見えたからだ。……奴さん、相当な自信があるんだろうな。「ナイフ術」に。


 ……フツー、こんな顔面凶器みてぇなヒデェツラした野郎がデッケェ刃物持って

特攻を仕掛けてきたら、誰でもビビるってモンだ。ビビッてる間に「グサリ」と

やられちまうのが関の山だろうな。……そんな相手に対してだ、その受け手となる者。

 ……まぁ、俺の事なんだがね。昔、わけぇ時にちょっとだけ「やんちゃしてた頃」の

経験くれぇしかねぇ、そんなただの「おっさん」である俺が、そんな本職さん相手によ。

 ……この場面、どうやって対処するのか。つぅとだな――


 今、俺は左手にナイフを持ってんだが。俺にゃ、奴さんの様にナイフ……つぅか、

武器を扱って来た経験なんてのはねぇんだわ。だから利き手とは逆の左手にナイフを

持って、利き手を自由に動かせるようにしてんだよ。でだ「この世界」にゃ「魔法」

っていう、超能力みてぇなモンもあるらしいんだが。ミルフィールからも言われた様に、

俺には魔法を扱う才能なんてのもねぇんだわ。……別の意味での「魔法使いさん」に

なる方法もあるにはあったが、そっちは十九の時に「その資格」を失ったしなぁ……。

 

 ……今、話した事から冷静に状況を分析すりゃあ、何も打つ手無し状況な俺だがよ。

 そんな俺が、どうしてこんなに落ち着いていられるのか。つぅとだな……コレには

「理由」がありまして。そのワケってのはよ、ミルフィールの事を思い出してみてくれ。

 ……アイツのお陰で、いまの俺は「格闘」なら「誰にも負ける気はしねぇ」んだ。




 ……「アレ」は、この世界「アースグリーン」に来てから、三日目の事だったな――




「……『豪力』という『加護』は『剛力』や『強力』とは異なり、ただ単に。

 『力のみが強くなる』という、単純にありふれたような加護なんかではありません」


 ……ミルフィールは、そう言ったんだ。……ってか、コイツ。相変わらず姿を

見せないモンだからよ。だもんで、そんなコイツと会話すっときゃ俺が一方的に喋ってる

みてぇな変な構図になるんだわ。なのでもし、この場を第三者から見られた場合はよぉ。

 そんときゃまず間違いなく、一人で喋ってる俺は……さっき言ったような、そういう

第三者から晴れてめでたく変人扱いされる事だろうぜ。……まぁ、そりゃ置いといてだ。


「……へえ、そうなのかい。じゃあよ、具体的には他に何が出来るんだ?」


「よっ……とっ!!」


[ザッ!]


 つるはしを振る手は休めずに、頭の中に響く「声の主」ミルフィールに、

俺は「ソレ」を訊ねる事にした。……姿は見せねぇけど、声は良い声してんだよコイツ。


「んもぉ……せっかく、イチローと楽しくお話しようと思って出てきたのにぃ……。

 コラっ、イチロー。私と、お話してる時くらい私とのお話に集中しなさいよぉ……」


 ミルフィールは拗ねてたみてぇだが、こっちは「生活」が掛かってる「お仕事中」だ。

 だもんで俺は手を休めずに、ひたすら「つるはし」を振る事に専念したさ。


 ……女の中には、こんな感じによ。働いてる男の都合っちゅうモンを、たまに無視して

一方的に喋り出す者もいるから手に負えんよなぁ。……あぁ、変な誤解はすんなよ。

 女の全部が全部、そういう性格だって俺は言ってんじゃねぇぞ。ただ、俺の場合はよ。


 そういう性格の女に好かれやすいっていう話さ。……そういう女が持ち掛けてくる話を

真面目に聞いてやったとしても、大抵は中身のねぇ話だったりするしな……はぁ……。

 話を聞き終わった後で「話は分かった。で、どうしたいんだ?」って、具体的にナニを

どうして欲しいのか、何が必要なのかを聞こうとすりゃ、そういう女って大抵キレるし。


 ……おっと、脱線したから話を戻すが。んで、その時に「聞いた話」によるとだな。

 どうやら俺は、ただ単純に力が強くなっただけじゃなくて「一度見た体術」であれば、

鍛錬とか経験とかを積まなくても、直ぐに覚えて使えてしまう様な「加護」ってのを

貰ったらしい。しかも「ソレ」は、この世界に来る前に見た事のある「記憶の中」にある、

体術でも有効なんだとさ。……しかしまぁ、俺はよ。そうは言われてもだ。自分からは、

滅多に喧嘩を売らずに買う方だから……いや、そこの君。コレ、ホントなんだって。


 俺と話してると、相手が勝手に逆上してキレて掛かって来るだけなんだって。

 まぁ、相手を選んで「そういう相手」にだけ「ワザ」と、そうなるように此方から

「仕向け」てんだけどな。そんな訳で、今日まで「ソレ」は試せなかったんだが――




 今、俺に突進して来てる「コイツ」になら。俺は「ソレ」を全力で試そうと思ったよ――




[……ヒュオッ!!]


 俺に向かって勢い良く突進して来た「奴」は、その勢いを殺さずにそのまま利用し、

力強く踏み込んだ軸足を基点に、右手に持った大振りなナイフを俺の首へ目掛けて、

自身の身体の内側から外側へとナイフの刃を走らせる様に一閃させてきた。


 奴の持つナイフの刃が、凄まじい速度で俺の首元へと迫る。なんの格闘経験も無い

一般人ならその一撃で、一切の抵抗すら何もさせて貰えずに「命の灯火」をアッサリと

吹き消されちまう様な、そんな勢いのある体重を乗せた一撃必倒な刃筋だ。


 ……だが、俺には「ソレ」がハッキリと見えるんだ。これが「加護」の一部だろう。

 自身の身体を、いったいどういう具合に動かせば、その「一撃」を回避できるのか?

ってのもよ。頭で考えるよりも早く、自動的に俺の身体が勝手に考えてくれて、

自然と最善の方向へと俺の身体を導いてくれるんだわ。俺の思考もソッチの方のが良いと

自然に思うようになってるみてぇだから、意志の反発みてぇな障害なんてのもねぇぞ。


[……サッ!!] [ヒュッ……!!]


 ……奴の「その一撃」を、俺は上半身のみを大きく仰け反らせる事で避けた。俺の首が

あった場所を、奴の大振りなナイフの刃先が空気を切る音も立てながら通過していく。

 回避行動を何もせずにボケッとしてたら、間違いなく俺の首は「スポーンっ」ってな

具合に「木樽に剣を突き刺して行く玩具のキャラ」みてぇに吹っ飛んでただろうな……。


 ……大振りな動作には必ず隙が生じる。なので俺はナイフを大振りした直後の、

奴の「その隙」を逃すまいと、奴の首を自身の左手に持ったナイフの刃で先程の奴の刃筋

とは逆の、身体の外側から内側へとナイフを運ぶ振り方で横薙ぎに狙う事にした。


 ……だが、ナイフ術なんて扱えない俺の一撃なんて力任せに「素振り」してんのと

同じだ。奴は素人さん丸出しな俺の一撃を、その身を屈める動作でアッサリと避け……

そのまま流れる様な動作で、さっきの奴と同様。ナイフを大振りした事でガラ空きと

なってしまった無防備な俺の腹を、その手に持った大振りなナイフで浅く素早く

斬りつけてきやがった。


[……ヒュッ!!] [ヂッ……!!]


 ……小さな異音と共に、腹に何か熱いモノを感じた。……まぁ、深手じゃないのは

感覚で分かったけどな。奴から斬られたのはシャツと腹の薄皮一枚ってトコだろう。

 しかし、コイツぁ……致命傷とは言わないが、それでも斬られりゃ血は出るんだ。

 

 こんな小傷でも、何箇所も付けられ続けちまうと後々、出血多量でヤベェ事になる。

 そうなりゃ、幾ら「加護」があったとしても肝心の身体が動かなくなっちまう。

 俺は医者でも神官でもねぇから、怪我なんて治せねぇ。もっと用心しねぇとな……。

 

 ……シャツが切り裂かれた腹の部分に目を落とすと、うっすらと血が滲み出ていた。


「チッ……!」


 俺は、小さく吐き捨てる様に舌打ちしながら「奴」を睨んだ。

 すると奴は、そんな俺へ対してニヤけたツラで語り掛けて来たよ。


「へっ……そんな『ナリ』してるから、ヤルかと思えば……。

 採掘のヤリ過ぎで、平和ボケして腕が落ちてるんじゃねぇか?」


 奴は、そう口にすると。ニヤついた顔付きでナイフを持っていない空いた手の方の指を

「せわしく」動かしながら、これまたニヤけたツラで俺との間合いを図っていた。

 ……楽しんでいるのだろう、この「命のやりとり」を。


 ……余裕かましやがって、上等じゃねぇか、この野郎……! しかもさっきから

「ナリナリ」言いやがって……! テメェは、どこぞのゴムマリ坊主の親戚かよ……! 

 

 ……奴のニヤけ面が非常に癪に障る。いますぐにでもナイフを大振りして、

奴のニヤケ面をかき消してやりたい、そんな衝動にも駆られる。だが、これも奴の「手」

なんだろう。俺から「冷静さ」を失わせる為のな。なので俺は此方からは仕掛けずに、

奴の挑発には乗らずに、静かに奴との間合いを維持する事にした。


 ……これも「加護」のお陰って奴かねぇ、普段の俺なら構わずブチ切れてイってたな。


「チィッ……!」


 俺の表情から挑発に乗ってこない事を察したか、舌打ち一つすると同時に奴が動いた。

 大振りなナイフを持っている右手を、初手と同じ運び方で此方へ一閃させて来た。

 その軌道から察するに、俺の胸板を狙った一撃だろう。


 ……おいおい、自分から挑発してきといてなんだそりゃ。

 テメェの方から先にキレるなんて……いったい何処のおバカさんだ?


 ……俺は奴の「その動き」に合わせ、奴のナイフを持っていない左腕の方へ、

自らの右足を出すと同時に上半身もソチラ側へ倒し、身体を屈める事で奴の横薙ぎを

かわした。……待てば海路のなんとやら、つってなぁ――


 その際に出来た隙を、俺は見逃さなかった。俺は奴の胸元で、自らの頭上を通過して

行く奴の腕の「流れ切った位置」を見極めると、奴の「ナイフを持つ方の手首」を、

奴と同じく……身体の内側から外側へとナイフを運ぶ動作で、素早く斬り付けた。


[ヒュッ……!] [……ジャッ!]


「ぐっ……!?」


 俺のナイフを、その右手手首に受けた奴が小さく呻く。……初めての反撃って奴だ。

 しかし、その一閃は急所には至っていなかった。……何処を斬ったのかというとだな。

 血液を運ぶ重要な血管には至らず、奴の右手首側面の皮膚を浅く斬り付けたのみって

トコだ。……経験の差、って奴だろうな。こればっかしは、俺の「加護」じゃどうにも

ならん。なんとか斬り付けはしたが、やはり「素人」の、俺の一撃では「浅い」――


 ……俺から初めて斬り付けられた事によって、奴さんもどうやら「本気」になった

みてぇだ。チラリと奴の顔を確認してみると、先程迄のニヤけ面は何処かへ消えていて、

代わりに真剣な顔付きに変わってやがった。……その顔付きになったのを確認した刹那、

今度は奴の胸元の位置にあった俺の顔の左側頭部へと、奴の持つナイフの刃が凄まじい

勢いで、奴の身体の外側から内側へと向かう刃筋で迫って来たよ。


 ……まぁ、こうなるわな。いま俺のナイフは、奴の右手首を狙う為に振り切った

ばかりだから遠い所へ行ってる。なので直ぐには動かせねぇから、今度は奴さんの

反撃タイムってトコさ。……しかし、改めて思ったが「加護」ってのは凄ぇモンだな。

 ナイフ術なんて知らねぇ俺が、本職さん相手に互角の攻防なんかやっちまってるぜ。


 ……俺は、その刃の軌道を読み、右足を「すっ」と引くと同時に、全身の筋肉のバネを

使って上半身を思い切り仰け反らし、大振りな「ソレ」を避けた。その一撃を、かわした

直後にガラ空きになっていた奴の右肩を狙い、俺も左手に握っているナイフを先程の奴の

一撃と同じ刃筋で横薙ぎに一閃させる。しかし、奴も……先程の俺と同じ様な動きで、

上体を大きく仰け反らし、その一撃を避けた。

 

 ……数回、お互いに同じ様な「やりとり」を繰り返した。拮抗した状態が続く――


 ……だが、しかし。その拮抗も、やがて終わりを迎える時が来た。それは俺が、

奴の首を再度狙い、大振りな横薙ぎをした時だった。奴は、俺の「その一撃」を最小限の

動作でかわすと同時に、ナイフを持っていない方の左腕を俺の首へと伸ばして来たんだ。


[ヒュッ……] [……ガシッ!!]


「うぐっ……!?」


 奴のナイフ攻撃に意識を集中させていた為、予測外の攻撃である「ソレ」へ対しての

対応が遅れ、奴に首を掴まれてしまった。……痛みに対してというより突然の事に驚き、

思わず声が出た。……奴の左手を通して、俺の首へその膂力りょりょくが伝わってくる。


[ググッ……!]


 ……このまま俺の首を絞め続けて気道を塞ぎ、窒息させるつもりか。あるいは、

頚動脈を圧迫し続けて失神させる気なのかどうかは現時点では分からないが、とにかく

凄まじい力だった。……だが、奴の狙いは俺の予測に反して他にあったんだ。俺の首を

掴んだ奴は、そのまま無言で力押しに俺の首を掴んだまま、俺の身体を俺の背後に

生えていた大木に、打ち付ける様な具合に強烈にゴリ押しして来やがった。


[……ドカッ!!] [……シャッ!!]


「ぐおっ……!?」


 背中に衝撃が伝わると同時に、その衝撃によって視界も僅かながらに眩んだ。

 その視界の中へ、奴の右手に握られているナイフの刃先が俺の顔面に迫って来ている

のが確認出来た。今度の奴の攻撃は、今迄の「斬る」ではなく「突く」方の攻撃だ。


 ……んなもん貰っちまったら、一発アウトってのは誰にだって分かるよな。

 なので俺もソレには負けじと、空いていた方の右手で奴がナイフを握っている

右手首を掴み、顔面に迫り来る奴のナイフの動きを封じる事にした。


[ガシィッ!!]


 ……俺の回避行動は成功し、上手く奴の右手首を右手で掴む事が出来た。

 奴の突きを封じた俺はその瞬間を好機と判断し、今度は此方から左手に握っている

ナイフで奴の心臓を狙い、突いた。……此方の、この攻撃が通れば形勢逆転だし、

通らなくても奴が回避行動を取れば奴と間合いを取る事が出来る。……しかし、奴も――!


[シュッ……!!] [サッ……] [……ガシィッ!!]


 俺の首を掴んでいた左手を放し、その左手を使って俺のナイフを持つ方の左手首を

掴んできやがった。その結果、組み合って互いに相手のナイフを牽制しあう力押しの

膠着状態となった。こうなると「ナイフ術」は関係なくなる。……後は「力比べ」だ。

 

[グググッ……!!]


 俺は右腕に力を込めて、奴の右腕から繰り出されているナイフ攻撃を押し返しつつ、

奴の心臓へとナイフを向けている自身の左腕にもありったけの力を込めて、奴の身体を

力技で、奴の後ろに生えている大木に思い切り打ち付ける事にした。


[ドガァッ!!]


 その際の「衝撃」と「はずみ」で、両者の持っているナイフが手から足元へと

零れ落ちて行く事となった。それに加えて、その大木は無数の太い木の根が地面上に

出ており、そのせいで俺と奴はその木の根に足を取られて共に転倒する運びとなった。

 ……両者の互いのナイフが落ちた場所は先程も述べた様に、複雑に木の根が

絡み合っており、その木の根が邪魔をして、容易にはナイフを取り出せない場所だ。


 ……今の状況を狙ってやったワケじゃあ無いんだが、何はともあれ偶然とは言え、

奴の手からナイフを奪う事に成功した俺は、自身のナイフを拾う事は考えず、直ぐさま

その場で立ち上がる事にして、その代わりに。俺とは対象的に、木の根の隙間から

慌ててナイフを取り出そうとしていた奴の顔面を、思い切り蹴り上げてやる事にした。


[ヒュッ……!] [ドガッ!!]


「があっ!?」


 ……おぉ、身体が軽い。蹴り足が頭上の高さくらいにまでだって楽に自由に

振り上げられる。これがミルフィールの言ってた「豪力の加護」って、奴か。


 俺から顔面を蹴り上げられた奴は、叫び声を一つ上げながら「三メートル」程、

その場から派手にブッ飛んだ。……俺の蹴りの威力でそうなったというよりは、奴が

俺の蹴りの威力を殺すために、蹴りの威力に逆らわず、その身を任せた為だろう。


「ぐおぁ……」


 ……とはいえ、それでも俺の蹴りは結構効いたらしく、奴はブッ飛んだ先で俺から

蹴り上げられた顔面を右手で抑えながら唸ってた。……倒れてる奴に一撃を加えるのは

趣味じゃねぇんだが、奴が体勢を崩した今はコレ以上ない好機とも言える。相手は此方を

殺しに掛かって来てる奴なんだ。だから普通の喧嘩のトキみてぇに甘い事なんか言って

られねぇんだわ。「ヤル」と決めたからには、キチンとヤっとかねぇとな……。


 そう割り切った俺は、起き上がろうとしている奴に追撃を加える為に歩み寄って

行ったんだが。奴が倒れこんだ場所には丁度「木刀」の様な長さの朽木があったらしく、

奴はソレを俺に気付かれない様に入手し、起き上がると同時に……

俺をその朽木で殴りつけてきた。


[ドゴッ!!]


「うっ……!?」


 ……油断した。予想外の攻撃に遭った俺は、その攻撃に対する対応が遅れてしまい、

右足の膝の裏に位置する場所を強打され、右膝を地面に着く様に体制を崩してしまう。

 その刹那、奴の体重を乗せた重い蹴りが「併せ技」で、俺の「顔面」に飛んできた。


[ドパァンッ!!]


「がっ……!?」


 ぐうっ……!? かなり良い奴を……! まともに貰っちまったみてぇだ……!!

 その蹴りで脳を揺らされたせいか、一瞬意識が飛びそうになる。奴の蹴りで身体ごと

吹っ飛ばされはしなかったものの、奴の蹴りの威力を殺す為にとった回避動作の影響で、

俺は奴に背中を見せる様な具合に身体を強制的に半回転させられた。……ソレを好機と

見た奴が、ガラ空きとなった俺の背中を「サンドバック」の様に殴り付けて来た。


[……ドッ!!] [ゴッ……!!] [ゴスッ……!!] [ガスッ……!!]


 ……重い音が、重い鈍痛が、俺の身体に次々と伝わる。さっきの奴の蹴りで、

まだ意識がハッキリとは回復してねぇから身体が言う事を利かねぇっ……。

 なので反撃したくとも、こちらからは手がだせねぇ……!! クソッタレがっ……!!

 

 俺には奴の攻撃を、ただ歯噛みしながら耐えるしかなかった。そんな俺へ対し、

先程迄とは打って変わって優勢な立場へなった奴が、俺の背中を殴り付けながら……

歓喜とも、狂喜とも受け取れるテンションで声を掛けてきやがったんだ。


「ひゃははははっ!! ザマァねぇなぁ、おいっ!! まぁ安心しなっ!! 

 テメェをブチ殺した後はっ!! 今度は、あの女をヤッてやるからよぉ!?」


 奴の言葉を耳にし、俺は「ある事」に気付いた。……そうだった、俺が護って

やんなきゃ、あのお嬢ちゃんは「コイツ」に……!! 身体はメチャクチャ痛てぇし

ダルイが……!! 此処で決めなきゃ男じゃねぇよなぁ……!! 


 なら、あの「セリフ」だ……!! 俺は、日本人だがっ!! 俺は思い切り歯を

食いしばると「奴」を「ベネッツォ」を振り向き様に睨みつけ、奴にこう言い放った!!


holyホーリー  shitシィット!」


 ホーリーシィット!!「くそったれが!」って奴だ!! やられた分は、やり返すっ!

 ……お嬢ちゃんの事を思い、意識を覚醒させた俺は。振り向き様に……奴の顔面を、

思い付く限りの「やりかた」で、次から次に殴ってやった!!


[ドカッ!!] [バキャ!!] [ガスッ!!] [ドカァ!!] [ドッパァン……!!]


 ……最後に「アッパーカット」で、奴をブッ飛ばしたんだが。その方向には奴さんが、

さっき地面に突き刺した「ロングソード」があった。ソレに気付いた奴はブッ飛ばされた

場所から慌てながら起き上がると、そのロングソードに駆け寄り、ソレを手にとった。


 ……チッ、男の「プライド」捨てて「ヘタり」やがったか。


[ザッ……!]


「……ははっ! コイツでテメェの股間のモノを! 切り取ってやるぜぇ!」


 奴は剣を引き抜くと、その剣を頭上に振りかざして此方へ突進して来た。

 ……でも、何故だろうな。そんな奴を見ても、全く恐怖なんて感じねぇんだわ。

 恐怖を感じる所か、俺の身体は「奴を仕留める為の方法」を俺に求めて来ていた。


 ……なので意を決した俺は、身体が求めるままに「空手技」を扱う事で有名の、

とある海外の映画俳優の事を記憶を頼りに思い浮かべた。……すると、その俳優さんの

「体術の経験」やら、その俳優さんが映画でやってたワンシーンの状況が鮮明に

俺の頭の中へ浮かんだんだ。……ミルフィールの言ってた事は、どうやら本当だった。


Lessonレッスン 1(ワン)」


 まずは「レッスン ワン」だ。その映画俳優さん宜しく、此方へ頭上に剣を掲げながら

突っ込んで来る途中の奴に向かい「そう告げる」と、俺は奴が剣を振り下ろすよりも早く、

カウンター気味に、奴に「後ろ回し蹴り」をブチかます事にした。


[ドパァンッ!!]


 ……さっきの「お返し」とばかりに、奴の顔面を蹴ってやった。


「……ぶふぁっ!? ぐくっ……!!」


 ……鼻血と汗が混ざった様なモノを霧吹きの様に噴出した奴は、一つ呻くと。

 俺に蹴られた顔面を片手で抑え、よろけながらも……今度は、俺を「串刺し」にでも

しようと思っているのか、左手を一杯に広げた状態で、その左腕を思いっ切り俺の方へ

突き出して、剣を持った右腕を左腕とは逆に目一杯引き下げた様な構えを取り、

その構えから俺に「突き」を繰り出して来た。


 ……だがよ、余裕で避けれるぜ。「へタレちまった」お前の攻撃なんぞ。


Lessonレッスン 2(ツー)」


 「レッスン ツー」だ。俺は、落ち着いて……奴に、そう告げる。


[ドカァッ!!]


「ぐぶぅっ……!!」


 俺は奴の突きに「左足でのハイキック」を併せて、そのままその左足は戻さずに蹴りの

姿勢を維持し、眼下に伸びきった「奴の右腕」を確認すると。奴の顔面を蹴り抜いた左足

を、奴の伸びきった右腕へ「またごす様な具合」に落とし、奴が剣を握っている

右手首を動かせない様に、両手でがっちり決めた。ついでに右腕も捻り上げる様な

「極め技」になるように調整もする。そうすると、奴の頭の位置が自然と下がる。


「こ、殺してやるっ……!!」


 ……俺の行為に奴が悪態を吐いてきた。どうやらしつけが、足りなかったみたいだ。


[……ドガッ!!]


「こ、ころひてやるぅ……」


[……ガスッ!!] 


「くふぅ……」


 俺は奴の下がった顔面に数発の「ヒールキック」をくれてやる事にした。

 要は、奴が「悪態」を付く度に、俺が奴の「顔面」に「ヒールキック」を入れて、

奴を「黙らせてる」と、思ってくれ。……腕を極めてあるので、反撃はされねぇよ。


 ……奴が、大人しくなったので放してやった。しかし、奴は「フラフラ」に

なりながらも決して剣は放さずに、俺に再度斬りかかって来た。


Lessonレッスン 3(スリー)」


 ……仕方ねぇか。俺は奴を見据えながら「レッスン スリー」と、奴にそう告げる。

 フラフラになりながらも袈裟斬りして来た奴の剣をかわすと同時に俺は、奴の「背後」

に回り込んだ。そして左腕を奴の首に回し、右腕の内肘うちひじでその左手を受けて、

右腕を立て、右手で奴の頭頂部をガッチリとホールドして……「最後」に「奴」には、

「ベネッツォ」には、こう……告げた。


「……お前は、落第だ」


[ギリリッ……!!] [……ドサッ]


 ……そして、俺は腕に力を込めた。力を込め始めると、奴は手に持っていた剣を

その場で取り落とした。……中途半端な三下などではない、実力者である奴だからこそ

気付いたのだろう。俺の腕から奴の首に伝わる膂力が「どういう性質」を持ったモノ、

なのか……にな。……しかし、今更降参されてもな。……俺だって鬼じゃねぇからよ、

コイツには先程「離してやった時」に「最後のチャンス」はくれてやってたんだ。


 ……そんときに負けを認めてたら、俺はソレ以上の事はせずにコイツを見逃した。

 だがコイツは、ソレを無視して切り掛かって来た。……なので、もう容赦はしねぇよ。

 コイツからは「ヤル前」に「確認」も取ったしな……。自業自得って奴だ……。


[ミシッ……!!]


「ひっ……!? た、たしゅけ……」


 ……力を更に強めると、奴の首から骨が軋む嫌な音が響いた。

 ソレと同時にベネッツォが、情けない声を出して「命乞い」をする。

 そんな奴に対して、俺は口には出さずに心の中で奴に質問を投げ掛ける。


 ……お前は「今のお前」と同じ様に「命乞い」をした者を、一度でも助けてやったり

した事はあるのか? ねぇだろうな……。だから俺もよ、絶対に手を抜かねぇ……!!


[ゴキッ……!!]


 ……首の骨が折れる鈍い音と鈍い感触が俺の両腕、そして……俺の身体に伝わる。

 それと同時に奴の身体から、力が抜けて行った。「ソレ」を確認した俺は、

両腕に込めていた力を抜き、奴を解放する。俺から「解放」された「ベネッツォ」は、

糸の切れた操り人形の様になって膝から崩れ落ちて行き……そして、それっきり「ピクリ」

とも動かなくなった。……奴が先程、殺した「小柄な男」と同じ様にな。


 ……こうなる事は、奴自身が望んだ事だ。だから俺は、後悔なんて一切しねぇよ。

 動かなくなった奴を見下ろしながら俺は、そう……自分に言い聞かせた。



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