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おっさんの冒険録  作者: おっさん
記録者:桜葉一郎 「二日目」
18/58

天運、我にありっ!



「……と、言った感じかしらね。……どうですか、イチロー?

 掻い摘んで御話させて頂きましたが、コレが……貴方の聞きたがっていた事柄。

 エリカちゃんに関する事柄と『魔法』についての事柄を纏めた御話なのですよ」


「……そうか、なるほどなぁ。そういう話だったのか。……ミルフィール、有難うよ」


「ふふふ……」


 ……俺の要望に応えてくれて、ひとしきりの話を終えたミルフィールへ対し、

俺は彼女の労をねぎらう為に、御礼を口にしたんだ。すると彼女は結構な時間、

話して来てて疲れてんだろうに……その話疲れを隠す様な具合に、俺へ対して微笑んで

みせてくれたわ。……あれ、コイツ。こんなにイイ女だったっけ……? 話の途中で、

姉ちゃんか妹とかに中身、り替わってんじゃねぇか? ま、まぁ、そりゃ置いといて。


 彼女の話を聞いて、俺は改めてエリカの事を見直したよ。


 ミルフィールからの話を聞く迄は、おりゃあ……エリカの事をさ。

「叡智」の加護に頼って上手い事やっただけの有名人、って感じに思ってたんだが。

 ……実は、そうじゃなかった。エリカは「叡智」の加護に頼っていただけじゃなくて、

様々な葛藤を乗り越えて、苦労もして、その経験の中から「魔法」を編み出したらしい。


 いま俺が、ミルフィールから聞いた話以外のトコでも辛い思いも沢山したんだろうよ。

 けどよ、ミルフィールという「一本の横棒」が「彼女の頭」を……心を支え続けた

からこそ、その「辛さ」は「幸せ」に、変わったという話にもなったんだろう。

 ミルフィールがエリカの為にソコ迄やってくれた理由は、エリカがミルフィールからの

「信」に応えたからだろう。その逆も然り、だからこそ「魔法」が生まれたんだろうさ。


 親は選べねぇけど、友人は選べるって奴だな。……あぁ、ちっと話を脱線させるが――



 ……俺んトコは母親だけの片親だった。だが、逆にソレが良かったのかもしれねぇ。

 父親がだらしねぇモンだったから……俺は、その父親とは真逆の生き方をやるように

心掛けたんだ。……あぁソレ、別に難しいコトじゃねぇよ。誰にでも出来るコトさ。

「己の利得の為に、人を騙して利用したりしない」 ただ「ソレ」を護るだけだ。


 その結果「弟者」を始めとして、俺にゃあよ……。

 損得勘定抜きで付き合いをしてくれる友人に、俺は恵まれたのさ。


 ……まっ、エリカとミルフィールの話に至っては、ミルフィールは「神様」だから

相手の「嘘」を簡単に見抜ける力があるんだろうが……ソコを抜きにしてみても。

 エリカは、ミルフィールという友人へ対して「嘘」だけは吐かなかった。

「ソレ」が、さっき言った様な「信頼関係」を作ったんだと、俺は思うぜ。


 ……当たり前の事を、当たり前に出来ない奴が増えちまった……この世の中。

 日本人として生まれたんなら、どんなに身体を汚されても心だきゃあ……

常に清く保ちてぇモンだわな。……ふっ、異世界に生きる日本人って奴か。

 ……さぁて、どうなるコトやら。まっ、てなワケで……話を戻すぞっ――



「……すげぇヤツだったんだな。エリカっていう女エルフはよ……」


「……そうですね、後にも先にも彼女の様なエルフは現れていませんものね……」


 ミルフィールは、そういうと……物憂げな表情で、白み始めた空を見上げたよ。

 ……ん? 後にも……ってこたぁ、つまり……? ミルフィールの「その言葉」が

気になった俺は、彼女に「ソレ」が意味する事柄を聞いてみる事にしたんだ。


「なぁ、ミルフィール? 後にも……ってこたぁ、つまりエリカは……?」


「……はい、エルフ歳の五十四歳で亡くなりました」


「そうか、五十四歳でか。まだ若いってのに。美人薄命とは、よく言ったモノだな……」


 俺は、エリカの死を悼んだ。……だって、五十四って言ったらまだまだ現役だしなぁ。

 すると、そんな俺の表情と呟きから察したのか、ミルフィールが語り掛けて来たんだ。


「……この世界、アースグリーンに住まう者達の平均寿命は、

 種族によって異なりますが、大体六十歳前後なのですよ。イチロー」


「……六十かぁ、なるほどな。それならばエリカは、平均と比べるとちと早いが、

 サイモン爺様とその奥さんは長生きした方ってコトなんだな。……そうか、六十か。

 ん?『種族によって』って……そりゃどういうワケなんだ? ミルフィール?」


 俺は、ミルフィールからの話を聞いてエリカとサイモン爺様の死に納得は行ったが

その話の中で出てきた「種族によって」というのが気に掛かったからよ。なので、

モノはついでってワケで……彼女に「ソレ」も聞いてみる事にしたぜ。


 その質問に対し、ミルフィールは俺に微笑みながら応えてくれたよ。


「……良い質問ですね、イチロー。では、ソレに応えましょう。

 人族と獣人族は、人族の時間に換算すると一年に一つ歳を取りますが、

 エルフ族の場合は十五年で一つ歳をとり、ドワーフ族は十年で一つ歳をとり、

 そして……ドラゴン族は二十年で一つ歳を取ります。なので、エリカちゃんは

 エルフ歳の五十四歳での逝去でしたから……つまりは、人族の時間に換算すると。

 生まれてから亡くなる迄に、大体八百十年の歳月を生きた事になるのですよ」


「……はっ!? は、八百十年っ!? あ、あぁ……そういや『魔法』が出来たのは

 今から千百年前のコトだったか。つい、此処最近の話だったと勘違いしちまってた。

 確かにマックから聞いた話によると、エルフとかは長生きするって聞いちゃいたが。

 ……ん? ってこたぁ、ミルフィール? おめぇは正確にゃ、いま幾つなんだ?」


「……えぇー? それを……此処で聞いちゃうのぉ……?」


「……はぁ? 別に、勿体ぶる話でもねぇだろうが。良いから聞かせろ、ホレ早く」


 ……あ? なんだって?「女性に歳を聞くのは失礼にあたるのに……」だって?

 それなら幼女へ対して「お嬢ちゃん、いま幾つなのかなー?」って聞くのも失礼に

なんぞ? 別に、スリーサイズを教えろとか……年収は幾らなのかとか、そんなコトを

聞いてるワケじゃねぇんだ。……歳を知られて困るコトなんてあっか? 誰だって、

生きてりゃ皆平等に歳を取ってくモンだ。歳ってのは、自分が人生を歩んで来た年数だ。

 なのにソレを聞かれて恥ずかしいって……自分の人生を恥じてるみてぇな変な話だと

俺は思うがねぇ。……まっ、こりゃ俺だけのモノの見方だから……そりゃ置いといてだ。


 多分「神」であるミルフィールは、ウン千歳だとは思うが。さっき言った理由から、

丁度良い機会なので詳しいトコが知りたくなった俺は、ソレを彼女に聞いてみたんだが、

俺からの言葉にミルフィールは困った顔をしてるだけで応えちゃくれなかったのでよ、

なので俺は、ミルフィールの年齢を仮定で計算してみる事にしたんだわ。


 ミルフィールから視線を外し、自分の頭上を見上げる様な具合にして……

んで、さっき彼女から聞いた種族ごとの歳の取り方を元に「ソレ」を思案してみたんだ。


「……えーと、ミルフィールの見た目は二十八歳くれぇだろ……んで、歳の取り方を

 ドラゴン族の十倍だと仮定して……二百年に一つ歳を取るとすりゃ……コイツが

 エリカ達と魔法の件で会ってた時が、今から約千百年程前って話だから、そんときゃ

 二十三歳くれぇになるな。まぁ、なんとなく話の辻褄つじつまはソレで合うんだが……

 うーん、ダメだっ!『基準』が分からねぇコトにゃ正確なトコがハッキリしねぇ……」


[パチンパチン……]


 思考が上手くまとまらなかったモンだからよ、俺の頭にゃ髪の毛はねぇから、

昨日の風呂の時に手入れの済んだ頭皮を叩いたさ。……こうするとシッカリすんだ。

 しかし、どうなんだろうな。見た目からで計算すっと、こんなモンなんだが……。

 相手は……ちょっとテンションが高い、ヘンな女神様だっつっても神様だしなぁ。


 ……よし、決めた。迷ってても仕方ねぇ。

「ミルフィール歳」さえ分かりゃ、後は……なんとか割り出せるってモンだ。


「なぁ、ミルフィール?『ミルフィール歳』ってのは、幾つなん……えっ?」


[もさっ……]


「……イチロー? 私の事を……知りたいのですか……?」


「……お、おい。ちょ、ちょっと……? あ、あの。そ、その。え、えぇと……」


 俺は頭上に向けていた視線をミルフィールに戻す事にして、彼女の年齢を

割り出す上で必要になる「ミルフィール歳」を彼女へ聞こうとしたんだが……

何故か彼女は、いつの間にか、先程迄いた井戸の傍にはいなかった。


 ドコに行ったのか、って……いうとだな……。お、俺の……目の前……だとっ!?

 ってか!! ち、近い近い近い!! 後少しで「接吻」が出来そうな位の場所に!!

 彼女の顔があるんだよっ……!! そ、そんな至近距離で! 蒼く透き通った

サファイヤみてぇな瞳で! ミルフィールは、俺の目を「じっ」とみてやがるぅう!?

 しかも……俺の身長は百八十三あるんだが、ミルフィールは百七十五くれぇある!!

 なので、百六十くれぇしかねぇエミリーん時と全く状況が異なって「二つの山」が! 

 丁度、俺の胸元辺りに「もさぁ」って! 乗っかってやがるんですよぉおぉおっ!?


 ワザとなの? ねぇ? ワザとなの? あ、あたってますよ? ミルフィール女史?

 ねぇ? 聞いてます? 私の心の声を? 一万年と二千年前から愛しちゃいますよ?

 始めから一万二千年前から愛してるって、ストレートに言っちゃダメなんですか?


 ……車の車庫入れで、どうみても車体が擦りそうなのに「このまま行っちゃえー!」

って感じのノリで、そのまま行っちゃう様な……そんな簡単な距離感すらも掴めない様な

ドジっ子な女の子なんですか? 貴女の車に装着されてる立派なフォグライト二つが、

僕の身体に擦っちゃってますよ? もし良かったら、ボクが「ソレ」修理しましょうか?

 勿論、無料で。ハハッ。……懇切丁寧、優しくソフトに取り組みますですよ。はい。


 ……ってか!? な、なんなんだっ!? こっ!「コレ」わぁっ!?

 い、いま俺は白いシャツ一枚なんだが、そのシャツ越しだからこそ分かる、

この質感っ……! そして重量っ……! え、エミリー以上かっ……!?


 なぁ……そこの君……。君は実弾の込められた実銃を「ごりっ」と、

頭に突きつけられた事はあるか……? この「緊張感」は、ソレと同類なんだぞ……。

 一丁だけとか、そんな生易しいモンじゃねぇぞ! モノ買うってレベルでもねぇぞ!?

 二挺だぞっ!? 二挺拳銃だぞっ!? 某女トレジャーハンターが握ってたみてぇな

「砂漠の鷹」並な、大型自動式拳銃が二挺もっ!! なんだぞぉおぉおっ!!!!


 しかも、甘ったるい何かの花の匂い付きなんだぞ……。って、あ……? やべ……

い、意識が朦朧としてきたぞ……。ん……? この匂い? 何処かで嗅いだ事のある様な

匂いだな……? まぁ……そんなこたぁ、どうでもいいけどなぁ……ハハハ。


[すぅっ……]


 むっ……ミルフィールの肩越しに見える井戸の傍に、また「弟者」の姿が……。

 どうした……弟者よ……そんな三○志演義の話の中に出てくる武将が着てる様な、

ヘンなカッコして……まさか家族揃って○ちゃん仮装大賞にでも出るつもりなのか……?

 なに……?「……兄者っ! 恐れながら申し上げます!!」だとぉ――



「ふっ……。よかろう、申してみよ」


「兄者っ!『狭道、相狭まって行き! その道に草木繁るは敵に火計の備えあり』と、

 兵法書の行軍篇に記されておりますれば……この進軍は、何卒! ご自重を!!」


「ふっ……弟者よ、おぬしも『その道』を通って来たからこそ、五人もの子宝に

 恵まれたのではないのか?『虎穴に入らずんば虎児を得ず』の、故事を知らぬワケ

 でもあるまい……。故事だけに、穴だけに、虎児と故事ネタを掛けた的にも考えて」


「えっ……? で、ですが……あ、兄者に、その覚悟は……おありなので……?」


「ふっ……故事ネタは無視か、やるおる。更に、このワシの度量を測ろうとせんと、

 反計を使うとはな……おぬしにも『将器』があったか。……だが、まぁよいのじゃ。

 確かにこの進軍、おぬしの進言とおり、家計が火計に遭うやもしれん。そして……!

 敵将は『パツキン姉ちゃん』じゃ。当然、その周りには筋肉モリモリマッチョメンな

 イケメン護衛兵が伏兵として潜んでおろう。……しかし、そやつ等の持つ槍を見よ」


「はっ……? 槍……ですか……? ソレがいったい……あっ!?」


「……ふっふっふ、気付きおったか。奴等の槍は、所詮は洋物!『ふにゃふにゃ』で、

 硬度の足りん代物じゃ。じゃが、ワシのは……! 日の本特有の『カッチカチ』な

 『豪槍』じゃ!『長さ』こそ奴等に遅れを取ろうが……兵装の差は歴然としており、

 折れず曲がらずじゃ! 何を迷う事があろうか! 一気に突っ込んでくれるわいっ!」


「……さ、流石は兄者っ! そ、それがし、奴等の『長さ』だけで勝敗を見ており、

 ソレで戦の大局を見誤る処でした!『知彼知己百戦不殆』というコトですな……!?

 こ、これなら勝てる。この戦、我等の勝ちだっ! さ、されば不肖! この弟者めが!

 勝利の暁には、仲人の大役を仰せ付かりましょうぞ! その際の挨拶文には……

 そうですな? 兄者は、パツキン姉ちゃんとの一騎打ちに臨み、見事百合もの死闘を

 演じた後に、その敵将を捕獲致しました! と、コレで如何ですかな……?」


「ふっ……弟者よ、相手方は恐らく『エゲレス』の方々となるであろう。

 なので、ソレは全て英文に直し……おぬしも英語でスピーチ出来る様に致して参れ」


「ははぁ! で、ですが兄者! それがし、英語は赤点ばかりでありまして……!

 そ、その大役は仰せ付かる自信がありませぬ……。『かも~ん』『おう・いえ~す』

 くらいしか……分かりませぬ! な、なので、その儀は兄者が代わって戴けませぬか」


「ふっ……ワシとて『でぃす、いず、あ、ぺん!』くらいしか分からぬが……。

 まぁ、文字通り『自分で撒いた種』から生じる話でもあろうし、その儀はワシが

 なんとかしてやろう。言葉は通じずとも『ボデー・ランゲージ』という方法もある!

 しかし洋物好きの性癖をしおってからに、その英語が分からぬとは……」


「こやつめ、ハハハ」


「ハハハ」


[すぅ……]


 ……そう言い残すと、弟者は笑いながら「すぅ……」と井戸の傍から消えて行った――



 ふっ……。エミリーが、この場におるのであれば……ワシも遠慮はしようが。

 おらぬのならば遠慮はすまいて。……そうと決めたら実行あるのみじゃっ!!


「い、イチロー……? 私の事を、知りたいのですか……?

 あ、貴方がどうしても……と、言うのであれば……」


「ミルフィール……」


[すっ……] [ぐいっ……]


「は、はいっ! えっ……? な、なにを……? い、イチロー……?」


「……。」


 俺は彼女の腰に左腕を回すと同時に、その左腕で彼女の身体を「ぐいっ」と更に

自分の方へと引き寄せた。すると……俺の予想外の行為に彼女は、その蒼く澄んだ

大きな瞳を更に大きく見開いて、彼女よりも背の高い俺の表情を見上げる様な具合に、

戸惑いの表情を浮かべながらに観察していた。……俺は穏やかな顔付きを作り、

そんな彼女の瞳を「じっ」と無言で見つめ返した。


 ふっ……例え、相手が神であろうが構わぬ。人の身でありながら神と契りを結ぶ……。

 ソレも、男としての生き甲斐やもしれぬ。それに今、この場にエミリーはおらぬ……

そう、ワシの邪魔をする者はおらぬのじゃ。ならば叫ぼうではないか「あの言葉」を。

 そして、その後は。……今宵は連奴れんどの準備じゃな。ふっふっふ。


 俺は意を決すると「あの言葉」を、心の中で叫ぶ事にした――



「……ワシを止めれる者はおるか!?」


「……ここにいるぞ!!」


「なっ……!?」


「えっ……?」


 何者かの声がした様な気がした! それと同時に! 思わず声が出てしまった俺と!

 その声を訝しげに思って返事をするミルフィール! そんな……時だった――!


[べちょ……]


「……うおっ!? 冷たっ!?」


「……ひゃあっ!?」


[ばばっ!]


 「何か」が、俺の……綺麗に剃り上げられた頭皮に向かって突然降って来た! 

 その際に、つい大きな声が出ちまったモンだから……ミルフィールは、その声に

驚いて顔を強ばらせて、一つ可愛らしい悲鳴を上げて俺から離れて行ったぜ……。

 ……まぁ、驚かしちまったのは俺の手落ちだから仕方ねぇ。ってなモンで、

少々、名残惜しいが……とりあえず、そのミルフィールから離れたままの状態で、

いったい何が降って来たのか「ソレ」を確認する俺。頭に手をやってみた。すると……


[ぬるっ……]


「こっ、コレはっ!? 鳥のっ……!?」


「ど、どうしました? い、イチロー? って……あ、あらぁ……?

 朝から『ウン』の良い事で……と、とりあえず、お、おめでとう……?」


 か、確認してみたらよ……そ、ソレの正体は。鳥の「ピー」だったよ……。

 み、皆もこういう経験あるだろ……? しかし、何で臭いって分かってるのに、

そういうモンの匂いを、みんなして嗅いじゃうんだろうな……。アレ、な、謎だよな。


[……スンスン]


「ぎゃあぁあっ!? く、くせぇえぇえっ!? みっ!ミルフィールっ!?

 た、頼むっ!! こ、コレ!! と、取ってくれっ!! は、早くっ!!」


「ええっ!? い、イヤですよっ!! み、ミルちゃん、そんな趣味ないモンっ!!」


 俺は、綺麗に剃り上げられた自分の頭の天辺に付着した「ソレ」を! 

 目の前に居る彼女によく見せる為に、勢い良く自分の頭を突き出してみせた!!

 ……見方によっちゃ、どっかの地方でやってる御祭りの「御神体」の「先っぽ」に

「白濁した液体」が付着しちまったみてぇで……卑猥だが……今はっ!!

 ソレどころじゃねぇっづの!! だが、彼女は嫌がってて助けちゃくれなかった!!


「だぁー!? そ、そんな難易度のたけぇプレイなんかじゃねぇってば!!

 た、頼むからっ!! こ、コレっ!! なんとかしてくれってぇえぇえっ!!

 おぉ……? おめぇのスカートって……コレ拭くのに丁度良さそうだ! よしっ!!

 ……なっ!? 良いだろっ!? ソレ、無駄になげぇし、減るもんでもねぇだろ!?

 ちょ、ちょっとだけ!! 端ッコの方だけで良いからっ!! か、貸せって!?」


 ……頭の天辺を彼女に向けてたらよ、足元の視界に丁度タオルになりそうな

布地が見えたモンだから……俺は迷わず、ソレを掴んで引っ張ったぜ。


[ぐいっ]


「ぎゃー!? や、やめてっ!? け、穢されるぅ!! ミルちゃん、毛が無い人から

 穢されるぅー!! なんかの白い液体を付けられちゃうー!? た、助けてぇー!!」


「……ちょ!? ばっ、バカっ!? さ、騒ぐなっ!?

 直ぐ済むから!! 直ぐ済むから!! なっ!? なっ!?」


「……あっ! そ、そういえば! ミルちゃん急用を! たったいま思い付いたの!!

 だ、だから……い、イチロー!? あ、後は、自分でなんとかしてねぇ!?

 じゃ、じゃっ!! そゆコトでっ! ばぁいっ! ま、まったねぇえぇえぇ!!」


[すぅ……]


「あっ!? この薄情者っ!! ち、チクショー!!」


 ……俺は必死になって、この窮地を救って欲しくて懇願したんだが、

結局ミルフィールは「すぅ……」と、消えちまったよ。神様なのに、冷てぇ女だぜ……。


 仕方ないので俺は、とりあえず独り寂しくミルフィールみてぇに冷たい井戸の水で

鳥の「アレ」が付着した頭を洗う事にして急場を凌ぎ、その後は……。

 


 家に戻ってお湯を沸かして、もう一度。念入りに、頭を洗う事にしたよ……。





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