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第92話~勝利と和平の宴、物語の終結~


昴side


三国連合と五胡との戦は終わった。総大将である刃、北郷一刀が討たれ、将である徹里吉と越吉が撤退。更に軍も敗走した事により、三国連合の勝利で終わった。俺達に力を貸してくれた穏健派である姜維は・・。


姜『必ず盟を結ぶ為に五胡を1つにし、今一度来る。』


と言い残し、国に帰っていった。


三国連合の今後だが、同盟はこのまま継続される事になった。元々、桃香も、雪蓮も、華琳も、大陸を支配する為に戦っていたのではなく、乱世を治め、民が笑って暮らせる国を作る為に戦っていた。その想いが同じである以上、もはや争う理由がない。1度、それぞれの国に戻り、戦後処理をした後、再び洛陽に集まり、先勝祝いと同時に和平の調印式が行われる事が決まった。


とうとう終わったのだ・・。乱世が・・。


蜀軍は、一時的に避難をしていた民と共に成都に帰還し、戦後処理と国の復興と調印式の準備に取りかかっていた。成都は、思った程荒らされておらず、立て直しにはさして時間がかからないと報告があった。これからの調印式の為に俺も準備を手伝おうかと思ったんだが・・。










・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



昴「・・・。」


俺は自室で待機、静養が命じられた。桃香の命で・・。


華佗のおかげで傷も体力も万全なのだが・・。


桃『駄目!ご主人様は死ぬ所だったんだから大人しくしてなくちゃ駄目!』


と言われた。勿論俺はもう怪我は完治してるし、体力の方も大丈夫な事をアピールしたのだが・・。


桃『このぐらいは私達にさせて。今まで、私達はずっとご主人様に頼りきりだったから・・。だからお願い。このぐらいの事は私達にさせて。ね?』


と、お願いされては俺は無理にとは言えない。時折、将が順番に顔出しに来るため、抜け出す事は出来ない。無理に抜け出せない事もないが、あまり皆を困らせるのも悪いので大人しくしている。


昴「はぁ・・。」


退屈だな・・。


思えば、この外史に来てからこんなにゆっくりするのは久しぶりだな。旅して、戦って、政務をして、修行して。大忙しだった。


昴「たまには良いか・・。」


俺は寝台に横になった。ふと、手の平を天井に掲げた。


昴「今更ながら、俺はどうして生きてられたんだろう・・。」


俺は七星閃氣の最終星、破軍を解放した。七星閃氣を会得出来たのは数える程度だが、破軍を解放した者は例外なくその直後に死んだらしい。何故俺は生きていられたのか。勿論生きていられるのは良い事だ。何故そうなったのか未だに疑問だ。


智夜や北郷一刀のおかげか?それとも桃香達の・・・ま、どちらも良いか。俺は今生きている。それだけで充分か・・。


何をするではなく、ぼんやり過ごしていると・・。


桃「ご主人様、入っても良い?」


ん?この声・・。


俺は体を起こして寝台に腰掛けた。


昴「ああ、良いよ。」


そう答えると、桃香が部屋にやってきた。


桃「ご主人様、具合はどう?」


昴「いや、俺は病人じゃないから。」


桃「今のご主人様は病人なの!」


桃香はプンプンしながら俺の傍までやってきた。


桃「えーと、どれどれ・・?」


桃香は俺の横に座ると、自分の額を俺の額に合わせた。


桃「・・・うん!熱は無いね・・。」


昴「健康そのものだって・・っ//」


桃香の心地よい体温と、吐息が掛かり、思わず目を反らした。


桃「ふふっ、なら良かった。」


桃香はイタズラっぽい笑みを浮かべ、そっと額を離した。


昴「ところで、そっちはどうなんだ?」


桃「うん!皆一生懸命頑張ったから戦後処理も終わって復興作業も順調に進んでるよ。この分なら1ヶ月後の調印式までに終わるよ。」


昴「そうか。頑張ったな。」


俺は桃香の頭を撫でた。


桃「っ//、頑張ったのは皆だよ。私は別に・・。」


昴「桃香だって良く頑張ったよ。」


桃「えへへ。」


桃香は恥ずかしそうに笑った。


その後、経過報告であったり、相談であったり、他愛のない雑談を桃香とした。


桃「それじゃ、そろそろ私は政務に戻るね。」


桃香はスクッと立ち上がった。


昴「分かった。頑張れよ。」


桃「後で愛紗ちゃんが来ると思うから、愛紗ちゃんの事も褒めてあげてね?」


昴「勿論。」


桃「それじゃ・・、あ、そうだ!」


桃香が何かを思いつき、俺の前に立ち、体を屈め・・。


桃「ん・・。」


桃香はそっと俺に口づけをした。しばらく唇を合わせた後そっと離した。


桃「ご主人様補充完了♪それじゃ、また後でね!」


桃香は部屋を去っていった。


昴「っ//」


俺は頭をガリガリと掻き、もう一度寝台に横になった。










・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



それから代わる代わる将が俺の部屋を訪ねてきてくれた。桃香の時と同じく、報告や他愛のない話をし、最後は口づけをして仕事に戻っていく。と言った感じだ。今日俺、1日中顔赤かっただろうな。


やがて全将が部屋を訪ね終わった頃には日は沈んでいた。


昴「・・・。」


時刻は夜更け。辺りはすっかり静まりかえっている。


昴「・・居るんだろ?入って来いよ。」


ギィッと扉が開いた。


?「・・・。」


昴「・・1つ、俺の頼み・・、俺の我が儘を聞いてくれ。」










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



1ヶ月後、復興作業に目処が立ち、俺達は洛陽へと向かった。俺達が到着した時には既に曹魏、孫呉の将達は到着していた。


そしてその翌日、調印式が始まった。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



桃香、雪蓮、華琳と、それぞれの国の王が並ぶ。和平の調印式。立会人は俺に決まった。


昴「蜀王劉備、呉王孫策、魏王曹操、前へ。」


俺の声を合図に、3人前に出る。それぞれが証書を確認し、印を押した。俺はそれを確認し・・。


昴「証書への調印。立会人である御剣昴が確かに見届けた。ここに、三国の同盟、そして・・。」


俺はスゥッ、と息を吸う。


昴「乱世の終結を宣言する!」


辺りが一瞬シーンとなり・・。


「「「「「おぉぉぉーーーっ!!!」」」」」


その場に立ち会った将兵、及び民達の歓喜の声が洛陽に轟いた。










遂に終わった・・。


乱世が・・。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



その後、盛大な宴が始まった。和平の調印と先の大戦の勝利を祝う為に。宴の形式だが、従来のこの国のやり方の宴ではなく、立食パーティー形式にする事になった。この方が自由に移動が出来て良いと思ったからだ。俺が提案すると、すぐに了承され、立食パーティーの用意がされた。


昴「うん。盛り上がっているな。」


俺は1人、宴を見つめていた。するとそこへ・・。


愛「ご主人様、こちらにおられましたか。」


凪「師匠。お疲れ様です。」


愛紗と凪がやってきた。


昴「よう、愛紗。それに凪も・・。怪我はもう大丈夫なのか?」


凪「はい。華佗殿のおかげでこのとおり・・。師匠、申し訳ありませんでした。」


昴「どうした突然?」


凪「私は、師匠と交わした禁を破ってしまいました。」


・・・ああ、あの事か。


昴「気にするな。凪の大切なものを守る為だったんだから。それにこうして生きて再会出来たんだから良しとしようぜ。、辛気臭い顔するな。ほら。」


俺は凪に器を放った。凪がそれを受け取ると、俺は酒を注いだ。


昴「飲め飲め。」


凪「師匠・・。」


愛「ご主人様の言う通りだ。凪殿。祝いの席にそのような顔をするものではないぞ?」


凪「ふふっ、そうですね。失礼しました、師匠、愛紗殿。」


そう言うと、凪は酒をクイッと一口飲んだ。


ちなみに宴の前に皆、それぞれに真名を預け合っている為、勢力関係なく真名で呼び合っている。


昴「そうそう。」


俺も凪と同じように酒を煽った。すると愛紗が・・。


愛「ご、ご主人様、よろしければ、こちらを食していただけませんか?」


昴「ん?分かった。」


愛紗が持っていたのは炒飯だ。皿を受け取り、俺は一口頂く。


昴「・・うん。なかなか美味いな。」


若干米のぱらつきにムラがあるものの、普通に美味しく頂ける炒飯だ。


愛「!?、本当ですか!?、良かった・・。」


愛紗が歓喜の声を上げた。


凪「良かったですね、愛紗殿。師匠、こちらの炒飯は愛紗殿が作ったのですよ?」


昴「そうだったのか。」


俺は炒飯を完食し・・。


昴「ごちそうさま。美味しかったよ愛紗。」


愛「もったいないお言葉です!」


愛紗の目にうっすら涙が浮かぶ。大袈裟だな。


凪「師匠、よろしければこちらも。」


凪が麻婆豆腐の盛り付けられた皿を渡す。


昴「頂くぜ。」


俺は一口頂く。


昴「うん。これもなかなか・・辛っ!」


何だ!?喉が焼ける!


ふと麻婆豆腐を見ると、真っ赤だった。


昴「凪・・これは・・。」


凪「?・・麻婆豆腐ですよ?麻婆豆腐大盛りビタビタ唐辛子添えですが・・。」


昴「さ、さよか・・。」


俺は水を一杯飲み干す。


昴「な、ならこれも頂くよ。」


凪「ありがとうございます、師匠!」


凪は頭を下げる。


昴「なら俺は他行くな?」


凪「分かりました。」


愛「楽しんで下さいね。」


昴「ああ。」


俺は愛紗と凪の元を後にした。


昴「うーん、この麻婆豆腐どうするか・・。」


正直辛すぎる。でもせっかく凪が作ってくれたんだ。残すのは失礼だ。うん!


昴「落書き~!」


翼「胡軫だ!ていうかあんたに真名預けただろ!」


昴「悪い悪い。ところで、楽進将軍の手料理があるんだが、食うか?」


翼「楽進将軍のか!?食う食う!」


翼(だっけか?)は皿を受け取ると、麻婆豆腐を一気にかっ込んだ。


翼「ギャーーーッ!!!」


さあ、次行こう。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



別の卓に行くと、そこには・・。


鈴「ガツガツ・・。」


季「ガツガツ・・。」


鈴々と季衣が料理をすごい勢いで食べていた。


鈴「おわかりなのだ!」


季「流琉ー!おわかりー!」


流「もう、2人供もう少し味わって食べてよ~。」


流琉がそんな2人を呆れた目で見ていた。


昴「よう、流琉、季衣、鈴々。」


流「あっ、兄様!」


鈴「お兄ちゃん!」


季「兄ちゃん!」


昴「俺も1つ貰って良いか?」


流「あっ、兄様!」


鈴・季「お兄ちゃん(兄ちゃん)!」


流「どうぞ!是非食べて下さい!」


季「兄ちゃん、ここ座って!」


季衣が隣の席に催促する。俺が座ると、季衣が俺の膝に座った。


鈴「ちびっこ!何でお兄ちゃんの膝に座るのだ!?」


季「ちびっこ言うな!お前の方がチビのくせに!」


鈴々と季衣が喧嘩を始めた。


昴「こらこら喧嘩するな。ほら、鈴々もおいで。」


鈴々を手招きして呼ぶと、もう片方の膝に鈴々を座らせた。ただ、座らせたのは良いが・・。


昴「これだと料理が食べれないな。」


季「だったらボクが食べさせてあげる!」


鈴「鈴々も!」


鈴々と季衣が料理を取り、俺の口元まで運んでくれた。


昴「モグモグ・・おぉ、美味い!」


流「本当ですか!?」


俺の言葉に流琉が喜んだ。


流「良かった。これ、私が作ったんです。」


昴「そうだったのか。」


そういえば連合の時に貰ったクッキー美味かったな。この娘には料理の才能があるんだな。


昴「・・ごちそうさま。美味かったよ。」


流「あ、ありがとうございます//」


流琉は照れながら礼を言う。


昴「ふう・・、俺は他行くな。」


季「えぇー、兄ちゃん、もっとお話しようよ?」


鈴「そうなのだ。」


昴「悪いな、まだ話ししていない人が居るからな。」


季「うーん、ならしょうがないか・・。」


鈴々と季衣がしぶしぶ俺の膝から降りた。


昴「じゃ、またな。」


季「うん!」


鈴「またなのだ!」


流「はい!」


俺は3人を後にした。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



別の卓に移動していると・・。


楓「よう、旦那!」


昴「ん?」


声のした方を振り向くと、楓と思春の姿があった。更に楓と思春はいつもの服ではなく、艶やかなチャイナドレスに身を包んでいた。


昴「おぉ!2人供良く似合ってるよ。」


楓「そ、そうか//」


思「っ//」


2人供顔赤くした。


雫「そうでしょう?わたくし達が見立てたのですから。」


沙「そうなの!とても似合ってるの!」


2人が見立てたのか。沙和は服の流行りには敏感だったし、雫も仕立て屋に頼んで特注の服を普段は着ていたな。


麗「あら?昴様こちらにいらしたのですか。」


猪「よ、アニキ!」


斗「こんばんは。」


麗羽と、それに続いて猪々子と斗詩がやってきた。


昴「よう、3人供。麗羽は髪、元に戻したんだな。」


ふと見ると、麗羽の髪型がポニーテールではなく、昔の髪を2つにクルクル分けたものになっていた。


麗「えぇ。祝いの宴ですので、精一杯の正装をさせていただきましたわ。」


昴「そうか・・。やはりその髪型だと麗羽らしいな。」


麗「ふふっ、もったいないお言葉ですわ。」


麗羽は上品に喜んだ。

ふと見ると、猪々子と楓が意気投合して騒いでいる。沙和と雫はそれぞれの国のファッションついて語り合っている。思春と斗詩も話をしている。


昴「すっかり溶け込んでいるようだな。」


麗「そのようですわね。」


俺と麗羽はそんな5人を見守っていた。

すると、楓と猪々子が酔っ払ったのか、騒ぎ始めた。


麗「まったく猪々子さんは・・、止めて来ますわ。」


昴「ははっ、そうだな。」


やれやれと言った感じで麗羽が猪々子を諌めに行った。楓は思春が諌めていた。


昴「・・すっかり蚊帳の外だな。」


俺はしばし見届けた後移動した。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



霞「おーっ、昴やないか!」


昴「おっ、霞か。」


別の卓には霞が居た。他にも星、雪蓮も一緒だった。


雪「ほら昴、こっちに来て一緒に呑みましょう。」


雪蓮が器をひらひらさせながら催促する。


昴「ああ、そうさせてもらうよ。」


俺は誘いを受け、持っていた器に酒を注いでもらい、飲み干した。


この3人は何と言うか、ある意味で似た者同士だな。


星「主よ、こちらの酒もなかなかのものですぞ?」


ギュッ・・。


星が俺の左腕を抱き、酒を勧めてくる。


雪「私のお酒も美味しいわよ?」


ギュッ・・。


雪蓮がもう片方の腕を抱き、酒を勧めてきた。当然、互いの胸が俺に当たっている。


昴「あのさ・・、そのままだと飲めないのだが?」


雪「あら?そうね。なら私が・・。」


星「そのようですな。でしたら我らが・・。」


雪蓮と星はニヤリと笑い、揃って酒を口に含んだ。嫌な予感がしたが、遅かった。


昴「ん゛ぅ!」


雪蓮が顔を寄せると、口移しで俺の口に酒を入れた。


昴「ん・・ぷはぁ!しぇ、雪蓮!?」


思わず身動ぎした。その直後・・。


昴「ん゛ぅ!」


今度は星が顔を寄せ、口移しで俺の口に酒を注いだ。


昴「星まで//」


星「おや?両手が塞がり、難儀をしていたようですので手伝いをさせてもらっただけですぞ?」


雪「そうよ。こうしないとお酒飲めないじゃない。」


まったく、この2人は・・。


霞「まったく、無粋な酒の飲み方やなぁ。普通に飲みや。」


霞がやれやれとした様子で星と雪蓮を俺から引き離した。


はぁ、良かった・・。まともなのが居て・・。


霞「でも、たまにはそういうんもありか・・。(ボソッ)」


昴「ん?今なんて・・ん゛ぅ!」


今度は霞が口移しをしてきた。


霞「どや?この酒も美味いやろ?」


昴「っ//」


この酔っ払い共が!


何とか逃げたいが3人が俺を押さえている為、逃げれない。


このままじゃ・・。


すると横から神の一声が・・。


冥「まったく・・。お前達は何をしている・・。」


蓮「雪蓮姉様!はしたないです!」


翠「ななななっ、なにやってんだよお前達//」


蓮華と冥琳と翠がやってきた。


雪「ぶぅーぶぅー!良いじゃない。」


星「何か問題があったであろうか?」


霞「ええやんええやん♪」


3人は特に悪びれる様子もなく、酒を煽った。冥琳は呆れており、蓮華は怒り、翠は顔を真っ赤にしてあわあわしている。そして更にその横から・・。


稟「口づけ・・、口移し・・、初夜・・。」


何やらぶつぶつ呟く稟の姿が。どうしたんだ?


風「皆さ~ん、退避なのです。」


風が皆に告げる。その直後。


稟「ぶーーーーーっ!」


稟から大量の鼻血が!


昴「退避ー!」


俺は大急ぎで退避した。










風「ほら、稟ちゃん。お鼻かみますよー。はい、ちーん。」


稟「ちーん。」










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



退避した後、俺は別の卓に移動した。そこには・・。


朱「茉里ちゃん!久しぶり!」


雛「久しぶり。」


茉「うん・・久しぶり・・。」


そこには国中に名を轟かすちびっこ軍師達が居た。


朱「茉里ちゃんの名前は益州まで聞こえてきたよ!」


雛「・・(コクッコクッ)」


そういや、茉里は魏の鬼謀って通り名だった。教え子の1人ながら、軍略なら茉里の横に並ぶ軍師はいないだろうな。鉄砲の斜め撃ちとか、俺でも考え付かなかったからな。


茉「(フルフル)」


茉里は首を横に振り・・。


茉「朱里ちゃんも・・、雛里ちゃんも凄いよ・・。政は・・、私得意じゃないから・・。」


茉里は謙遜する。苦手と言っても他の軍師と比べて、だけどな。

するとそこに・・。



穏「私達もお話に加えてください~。」


亜「よ、よろしくお願いします!」


穏と亜莎がやってきた。蜀、魏、呉の名軍師達が勢揃いし、歓談が始まった。


朱「では亜莎さんもご主人様の教え子なんですね。」


亜「はい!昴様の推挙で軍師をやっています。まだまだ若輩者ですが・・。」


穏「そんな事ないですよ~。前線で武を振るい、かつ冷静に戦況を見渡しながら指揮を取った亜莎ちゃんも見事ですよ~。」


雛「凄いです。私には真似出来ない・・。」


茉「私も・・。」


亜「いえいえ!私は皆さん知には足元におよびませんから!」


亜莎は照れながら謙遜した。確かに戦いながら指揮を取れるのは見事だよな。


昴「ふむ・・。」


歓談に邪魔するのも悪いな・・、うん、他に行こう。


俺は別の卓に移動した。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「ん?」


卓を巡っていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。


小「もう!何よ!」


焔「何だと!」


シャオと焔耶が喧嘩をしていた。


昴「おいおい、何事だ?」


小「あっ、昴♪」


昴「おっと・・。」


シャオが俺に気付き、俺に飛び付いた。


焔「あっ!?、貴様!」


焔耶が激昂する。


昴「やめろって。・・原因は何なんだ?」


俺が2人に尋ねると・・。


蒲「何かね、小蓮がいずれご主人様の夫婦になるんだーって言ったら焔耶の奴が怒り出したの。」


昴「なんだそりゃ・・。」


良く分からん理由だな・・。


小「孫呉との同盟をより強固にするために私が昴に嫁ぐのは当然でしょ!」


焔「そのようなものは必要ない!」


昴「ああもう。俺を無視して喧嘩するなって。」


俺は2人の間に入る。たんぽぽも間に入る。


蒲「そうだよ。第一、ご主人様と夫婦になるのはたんぽぽなんだから♪」


チュッ♪


するとたんぽぽが飛び上がって俺の首に手を回し、口づけをした。


小「あぁー!?」


焔「たんぽぽ!貴様!」


蒲「べーだ♪」


たんぽぽは2人に舌を出した。


焔「たんぽぽ!そこになおれ!」


小「待ちなさいー!」


たんぽぽが逃げ出し、シャオと焔耶が追いかけていった。


昴「やれやれ・・。」


俺は3人を見届け、移動した。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「おっ?」


俺の視線の先に紫苑と桔梗と祭さんの3人が卓を囲んで酒を飲みながら談笑していた。


昴「ここ良いか?」


桔「お館様ではありませぬか。どうぞお座りください。」


俺は空いている席に座った。


何と言うか、さっきの雪蓮達と違い、この3人は優雅と言うが、絵になるな。


昴「何を話していたんだ?」


祭「なに、儂らはこの歳まで武人として、将として生きてきたが、儂らも女。そろそろ身を固めたいなどと、話しておったのじゃ。」


紫「そうね。私も1度結婚して璃々を産んだけど、このまま未亡人で終わるのもねぇ。」


桔「しかしながら、身近で我らのお眼鏡にかなう男が・・、1人しか居らぬと、嘆いておったのじゃ。」


昴「へぇー、1人ねぇ・・。」


俺が注いでもらった酒をグイって煽る。


すると、祭さんが顔を寄せる。


祭「昴よ。儂と夫婦になれば毎日青椒肉絲が食べれるぞ?」


紫「あら?それがお好きでしたら私も毎日作りますわ。」


紫苑が俺に顔を寄せる。


更に桔梗が後ろから俺を抱きしめ・・。


桔「であるなら儂も・・。そしてその後は儂らを食して・・。」


紫・桔・祭「ふふっ・・。」


3人が妖艶の笑みを浮かべる。


あれ?ひょっとして、ライオンの群れに小鹿?


紫・桔・祭「ご主人様(お館様)(昴)・・。」


3人が更に顔を寄せる。


これは、逃げられないな。なら・・。


チュッ・・。


紫・桔・祭「!?」


俺は3人に触れるだけだが口づけをした。


昴「すまん。今はそれで許してくれ!」


俺は3人が動揺している隙に席を離れた。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「ふぅ・・。」


俺は3人の席を離れてから一息ついた。


昴「さてと・・。」


次は何処に行こうか・・。辺りを見渡していると・・。


春「昴ー!貴様ー!」


昴「うおっ!」


突然俺の肩を誰かが抱いた。


春「貴様ー!何処をふらふらしていた!」


昴「何で怒ってるんだよ。」


春「怒ってなろー、いないー!」


いや怒っているだろう。ていうか酒臭いな・・。


するとそこに・・。


秋「なに、姉者はいつまでも昴が来ないから拗ねていただけだ。」


春「すねてなろー、いないー!・・ガブッ!」


昴「痛っ!、噛むな!」


俺の首筋噛みやがった!


春「フー!」


こりゃ猫だな・・。


昴「ごめんな春蘭。ほらナデナデ~・・。」


俺は春蘭の頭を撫でた。


春「うみゅぅ・・。」


春蘭猫は気持ち良さそうだ。今度は喉元を撫でる。


春「うー・・にゃん♪」


・・凄い可愛いな、これ。


秋「ああもう、姉者は可愛いなぁ・・。」


・・うん、同感だな。それと秋蘭も完全に出来上がってるな。


昴「とりあえずこの春蘭猫をもう少し・・。」


更にナデナデしようとすると・・。


クイッ・・。


昴「ん?」


俺の袖を後ろから誰かが引っ張った。振り返ると・・。


桂「・・・。」


桂花が俺の袖を引っ張っていた。若干うつ向いている為、表情は伺いしれない。


昴「桂花?」


俺が桂花の名前を呼ぶと・・。


ギュッ・・。


桂花が俺に抱きついた。


桂「・・こっちの猫も可愛がりなさいよ。」


桂花が俺の胸に抱きつきながら見上げる。


うわ、可愛い・・。


どうやら酔っ払っているみたいだけどこの桂花も可愛い。


桂「・・にゃん♪」


・・ヤバい・・、思わず抱きしめたくなる。


俺が桂花を抱きしめようとすると・・。


ペロッ・・。


昴「っ!?」


首筋を誰か舐めた。


春「むー・・ペロン・・。」


春蘭猫が頬を膨らませながら首筋を舐めている。


こっちも可愛いなぁ・・。


桂「ペロン・・。」


今度は桂花猫が・・。うぅ・・、いかん・・萌え死ぬ!


春・桂「昴~・・。」


2匹の猫が俺に抱きついた。


うん、死ぬかも。


秋「あぁ・・姉者・・。」


あっちも危険だな・・。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「はぁ・・。」


何とか脱出に成功した。あれはまずいな・・。


白「うぅ・・私は・・。」


想「・・気を落とすな。」


白蓮がヤケ酒をしており、想華が慰めていた。


恋「・・(モキュモキュ)」


あっちでは恋が料理を平らげている。


ね「恋殿!料理なのです!」


ねねが料理を運んできた。


月「んしょ、んしょ・・。」


詠「まったく!何でボクが・・。」


メイド服姿の月と詠が忙しく料理や酒を運んでいた。


すると、酒宴会場の舞台が騒がしくなった。


昴「おっ、始まったな。」


遂に始まった。今日の酒宴を盛り上げる為の余興が。


天「皆ー!いっくよー!皆大好きー!」


「「「「てんほーちゃーーーん!!!」」」」


地「皆の妹。」


「「「「ちーほーちゃーーーん!!!」」」」


人「とっても可愛い。」


「「「「れんほーちゃーーーん!!!」」」」


数え役満☆姉妹が舞台に現れた。


美「妾も歌うのじゃー!」


七「美羽様~、頑張ってくださーい♪」


更に美羽が現れ、七乃が後ろで楽器を持って立っている。


以「美以達も歌うのにゃー!!」


ミ・ト・シ「にゃー!!!」


南蛮猫娘達も現れた。


璃「璃々も歌う~!」


更に璃々も現れた。


大盛り上がりになりそうだな。


昴「ん?」


ふと舞台のすぐ下を見ると・・。


明「あ~、お猫様・・♪」


明命が両手をワキワキさせながら舞台を見つめていた。


昴「さて、もう1つの余興の準備に行くか。」


俺は宴会場を離れた。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「首尾はどうだ?」


真「万全や。いつでもええで。」


昴「悪いな。せっかくの宴の時に頼んで。」


真「かまへんよ。これはこれでおもろいからな。・・・ほな、行くで!」


真桜がとある物に火を着けた。


ドン!!!、ヒュー・・・。


何かが轟音と共に打ち上がった。そして・・。


ボーン!!!


綺麗な花火が打ち上がった。


真「どんどん行くでぇー!」


ドン、ドン、ドン!!!


真桜が花火にどんどん火を着けていく。


ボーン、ボーン、ボーン!!!


綺麗な花火が次々打ち上げられていく。


これは対五胡用に備えて作成した鉄砲の弾丸作りの際に余った火薬で作ったものだ。残しておく訳にもいかないので、ただ廃棄するぐらいならと、真桜に火薬と花火の設計図を渡して作ってもらった。


昴「うん、やっぱり良いな。」


色違いの花火が次々打ち上がっていく。


真「ウチは残らず打ち上げるから隊長は戻ってゆっくり鑑賞してや。」


昴「分かった。そうさせてもらうよ。」


真「ほなな。」


俺は手を振り、真桜の元を後にした。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



会場に戻り、花火を眺めようと夜空が一望出来る場所に向かった。そこに居たのは・・。


昴「隣、良いか?」


華「構わないわ。」


そこには華琳が1人で夜空と花火を眺めていた。


ボーン!!!


また1つ花火が上がった。


華「綺麗ね。」


昴「ああ。」


華「これもあなたの発明?見事ね。」


昴「俺は聞き齧った知識を参考にしただけだ。」


華「相変わらず謙遜するのね。」


昴「そんな事ないよ。」


またしばらく花火を眺める。しばし眺めた後華琳が喋り出した。


華「あなたの王道に私は負けたのね。」


昴「・・正確には桃香の王道、だけどな。」


華「あなた達の描いた夢物語が、現実になるとは思わなかったわ。」


昴「最後まで自分の道を信じ続けた。ただそれだけだよ。」


華「・・私が負けたのは自身の道に迷ったから?それとも私が未熟だったからかしら。」


昴「未熟な訳あるかよ。大国、曹魏の王にまで登り詰めた華琳がさ。勝ったと言っても半ば反則勝ちみたいな感じだっただろ?」


オーバーテクノロジーを使ったからな。


昴「ただ、一言言わせてもらえば、華琳は覇道を歩むには優しすぎた。心が綺麗すぎた。」


華「・・・。」


昴「覇道は、たとえ優秀だろうと天才だろうと、清い者に歩む事は出来ないよ。」


華「ならばあなたはどうして・・。」


昴「俺の心は酷く醜くかったからだよ。俺は勝つためには手段も犠牲も考えなかった。・・ま、だからこうなっちまったがな。」


華「昴・・。」


華琳は何か言おうとしてやめた。


昴「・・・。」


華「・・・。」


またしばし2人の間に沈黙が流れた。


華「ねぇ。」


昴「ん?」


華「もしあなたがこの大陸に降り立って、桃香より先に私に出会っていたら。結末は変わっていたのかしら?」


昴「さあな。たら、とかれば、とか言い出したらキリがないからな。」


華「ふふっ、そうね。」


華琳は自嘲気味に笑った。


昴「・・なあ華琳。」


華「何かしら?すば・・っ!?」


俺は言い終わる前に華琳の頭に手を伸ばし、頭を撫でた。


華「な、なに・・するのよ・・。」


昴「良く頑張ったな。」


華「えっ・・?」


昴「嫌だったらごめんな。何か、こうしたくなってな。」


華「・・ふん。」


俺は華琳の頭を撫で続けた。


華「・・こんな事をされるのは久しぶりよ。」


昴「・・そうか。」


ポスン・・。


突然華琳が俺の胸に顔を埋めた。


昴「華琳?」


華「少し、愚痴を言うわ。黙って聞きなさい。」


昴「・・分かった。」


俺は頷きながら答えた。


華「・・馬鹿・・馬鹿!・・どうして私の傍に居てくれなかった!?どうして私と同じ道を歩んでくれなかったの!?どうして・・・私の傍に降り立ってくれなかったの?」


昴「・・・。」


華「辛かった・・。寂しかった・・。」


昴「・・・。」


華琳はずっと覇王という仮面を被り続けていた。辛くても寂しくても、覇王を演じ続けた。今俺の胸に居るのは覇王ではなく、ただ1人の女の子だ。


華「馬鹿ぁ・・。馬鹿ぁ・・。」


昴「・・・。」


ごめんな・・。


俺は心の中で呟きながら華琳の頭を撫で続けた。










・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



ひとしきり頭を撫でると、華琳は俺の胸から顔を離した。


華「ふぅ。言いたい事言ったらすっきりしたわ。」


昴「それは何よりだ。」


華「そういえば、桃香があなたの事を探していたわよ?」


昴「ん?そうなのか・・。」


辺りを見渡すと、桃香が誰かを探していた。


昴「なら行ってくるよ。」


華「ええ。早く行きなさい。」


昴「ああ。じゃあな。」


俺は桃香の元に向かった。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



桃「あっ、ご主人様!もう、探したよ~。」


昴「悪い悪い。いろいろ回ってたんだ。」


桃「そうだったんだ。・・ご主人様は楽しんでる?」


昴「もちろん。桃香は?」


桃「もちろん楽しんでるよ!」


昴「それは結構。」


桃香は周りを見渡した。


桃「今私は夢の中に居るみたい。私の目の前に、私の思い描いた夢が広がって居るから・・。」


昴「夢でも幻でもないよ。これは俺と、桃香と、皆で手に入れた未来だ。」


桃「うん・・。」


桃香は真剣な顔をして俺の目を見つめた。


桃「ご主人様、ありがとう。」


昴「どうした、突然?」


桃「あの日、幽州でご主人様に出会ったおかげで、私はこの未来を見ることが出来た。」


昴「皆が頑張ったからだ。俺は、少し手助けしただけだ。」


桃「ううん。そんな事ない。ご主人様はいつだって皆の中心だった。ご主人様が皆を引っ張って、導いて、繋げて、そして今があるの。」


昴「・・・。」


桃「本当にありがとう。私、ご主人様出会えて本当に良かった。」


昴「・・どう致しまして。俺も桃香に出会えて良かった。桃香に出会えたおかげで、俺は忘れかけていたものを思い出す事が出来た。」


桃「ふふっ、どう致しまして♪」


ははっ、俺の真似か。


昴「大変なのはこれからだ。平和は、掴むより維持する方が遥かに難しいからな。」


桃「うん!皆が笑って暮らせるように、私達が頑張らなくちゃね!」


昴「うん。そうだ。」


桃香達ならやれる。


きっと・・。


昴「桃香。俺少し夜風に当たってくるよ。」


桃「分かった。また後でね!」


昴「ああ―――」










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



ここは洛陽から少し離れた森の中・・。


昴「・・待たせたな。」


貂「全然待ってないわよん。」


卑「我らも今来た所だ。」


昴「すまないな。俺の我が儘を聞いてもらって。」


俺はあの日。貂蝉と卑弥呼が訪れたあの日。1つの頼み事をした。


別の外史に移動するのは、和平の調印式まで待ってほしい、と・・。


貂「そのくらいお安いご用よ。あなたはこの外史・・いいえ、全ての外史を救った英雄なのだから、そのくらいの我が儘言ってもバチは当たらないわ。・・それよりも、良かったの?皆にお別れを言わなくて・・。」


昴「宴の趣旨を変えるつもりはない。それに・・湿っぽいのは苦手でな。」


卑「本当に良いのだな?」


昴「ああ。」


貂「・・そう。昴ちゃんがそういうなら何も言わないわ。」


突如、俺達の目の前に光の柱が現れる。


貂「扉は開いたわ。次の外史に行きましょう。」


昴「ああ。」


俺は光の柱に向かって歩き出す。その直前足を止め、後ろを振り返った。


昴「・・・。」


俺はこの外史で大切なものを思い出せた。大切な人が出来た。


俺は、この外史に来て良かった。


昴「ありがとう・・。」


俺はそう呟き、光の柱をくぐった。










何年掛かるか分からない・・。


俺は必ず・・。


いつか必ずこの外史へ・・。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



洛陽のすぐ傍から一筋の光が蒼天へと登った。それは英雄の旅立ちを意味する。


英雄は去り。これにより、外史の守り手、御剣昴と、恋姫達の物語は終結した・・。












次回、最終話・・。



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