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第90話~破壊者の心、受け継がれる心~


昴「ハァ・・ハァ・・。」


雌雄は決した。互いの全てを込めた一撃がぶつかり・・、そして、昴が勝った。


昴「・・・。」


昴は倒れた刃の元に歩み寄る。刃は目は開いているものの、ピクリとも動かない。だが、死んでいる訳ではない。昴もそれに気付いている。


昴「・・・。」


ザッ・・。


昴がさらに歩み寄る。


刃「くくくくっ・・。」


昴「?」


刃「あははははっ・・!」


昴「・・何が可笑しい?」


刃「あははははっ!・・違うよ、可笑しいんじゃない、嬉しいんだよ。・・・ありがとう。俺を止めてくれて。」


昴「北郷一刀・・。」


刃「俺は守りたかった。守れなかった愛紗や鈴々達の分まで・・。」


昴「・・・。」


刃「どうしても守れない。そして力を求める。それを繰り返した。気が付けば守る為の力は倒す為の力に変わっていた。そして、倒す為の力は、欲求を満たす為の力に成り果てた。」


昴「・・・。」


刃「俺は、俺自身を抑える事が徐々に出来なくなっていった。俺は抵抗した。自身の醜い感情に・・。遂には自分を抑えられなくなり、最後には、抑える事すらしなくなっていた。」


昴「・・・。」


刃「暗い闇の中。俺はそこに1人でいた。何も見えない・・。何も聞こえない・・。そんな場所に一筋。・・そこに一筋の光が射した。聞こえたよ。君の声が・・。」


昴「・・・。」


刃「その光は、俺を救ってくれた。本当に、ありがとう。」


昴「・・礼には及ばない。むしろ、感謝するのはこちらだ。お前が抵抗してくれたおかげで俺はお前を救う事が出来た。」


刃「抵抗?」


昴「お前が本当に純粋に俺を殺す気だったら。俺はとっくに死んでいた。反董卓連合の時にな。お前は以前にも、お前に差し向けた守り手をすぐに殺そうとはしなかった。充分に泳がせ、育てさせてから殺していた。よりギリギリの命のやり取りをしたいが為。お前はそう言ったが、本当は望んでいたんじゃないのか?自分を討てるぐらいに強くなってくれる事を・・。」


刃「・・・。」


昴「後、1つ疑問に思っていた事がある。お前が何故五胡の掌握などという面倒な手段を取ったか・・。お前が現れた当時、お前の意のままになる勢力はこの国にいくらでもあった。なのにお前はわざわざ時間をかけて五胡を掌握した。これだけならさほど疑問は生まれなかった。疑問を生んだきっかけになったのは、この国への威力偵察を姜維に任せた事だ。それによって、お前が五胡を掌握し、この国への侵攻を画策した事が明らかになった。穏健派の姜維に威力偵察を任せればこうなる事は予見出来たはずだ。そして、この国への侵攻のタイミング。五胡にとっては最悪とも言えるタイミングだ。・・ここからは俺の勘だ。お前が五胡を掌握した理由。それは、いずれ、五胡がこの国へ侵攻する事を知っていたからなのではないか?穏健派の劉豹が考えを変えるのか、あるいは討たれるのか。理由は分からないが・・。そして、そうなったらこの国は滅んでいたということを。」


刃「・・・。」


昴「だからお前は五胡を掌握し、自分の存在と五胡の侵攻を匂わせる為に姜維を派遣し、最後に、三国が連合を組めるようにあのタイミングで侵攻した。」


刃「・・考え過ぎだよ。ただの偶然。いや、戯れに過ぎない。」


刃はそれを否定した。そして刃は昴に懇願する。


刃「・・御剣昴。俺の最後の頼みを聞いてくれないか?」










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



愛「勝った・・のか?」


翠「勝ったんだよ。ご主人様が勝ったんだ!」


星「主・・。」


5人が昴の勝利を喜んだ。やがて、昴はこちらへとやってくる。しかし・・。


愛「!?、貴様!」


鈴「何でそいつを連れてきたのだ!?」


愛紗達は激昂した。理由は昴が刃の腕を肩に回し、担いでいたからだ。


刃「・・・。」


刃は桃香の前で膝を付いた。


愛「貴様!桃香様に・・っ!?、ご主人様?」


昴「・・(フルフル)」


刃に掴みかかろうとした愛紗を昴は首を振って止める。


刃「・・村雨が折れ、呪いが無くなった今なら・・。」


刃は目を瞑り、左手を自分の胸に、右手を桃香の胸に添えた。


刃「―――。」


刃が詠唱を始める。すると、刃と桃香の体が淡い光に包まれ始めた。


刃「―――。」


刃は尚も詠唱を続ける。


刃「――言霊よ、我の願いを聞き届けよ。そして、今一度この者に――。」


刃がそう唱えた瞬間、刃と桃香を包んでいた光がより強くなった。


愛「くっ!何が・・。」


鈴「桃香お姉ちゃん!」


しばし、眩い程の光を放たれると、やがてその光は消えた。


刃「・・・。」


光が治まると、刃は立ち上がり、桃香の元から離れ、歩き出した。


愛「貴様!桃香様に何を・・。」


ピクン・・。


愛「っ!?、桃香様!?」


突如、桃香の指が微かに動いた。


桃「・・あ・・れ・・、わ・・た・・し・・。」


桃香が目を開け、喋りだした。


鈴「桃香・・お姉ちゃん?」


桃「鈴々・ちゃん?」


鈴「桃香お姉ちゃん!」


鈴々が桃香に抱きついた。


奇跡が起きた・・。


桃香が生き返った・・。


昴「北郷一刀、お前は・・っ!?・・北郷・・。」


昴は驚愕した。刃が・・、北郷一刀の体が・・、薄くなり、今にも消え入りそうだったからだ・・。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



刃side


刃「・・・。」


良かった・・。術は成功した。


昴「北郷一刀・・。お前まさか、転生術を使ったのか?」


・・気付いてしまったか・・。


刃「ふふっ、ご名答。」


転生術。それは自身の命を他人に譲渡する術。使用した者は当然・・。


昴「お前・・。」


刃「気に病む必要はない。どのみち俺は死ぬ運命だった。残りの命を彼女に移しただけだからな。・・これで償える訳はないが、俺に出来る、最後の償いだ。」


昴「北郷一刀・・。」


また俺の体が徐々に薄くなっていく。


桃「北郷・・一刀さん・・。」


劉備が、関羽に支えられ、俺に歩み寄ってきた。


桃「あなたは、あんなにも・・、あんなにも辛い場所で、1人で戦って来たんですか?」


刃「・・・。」


転生術の折りに俺の記憶が彼女に流れたか・・。


刃「劉備玄徳。お前は乱世を憂い、力無き者達を救う為に立ち上がった。そして知ったはずだ。想いだけでは、何も救えない事を・・。守るには力が必要だって事を・・。俺もお前と同じように、守る為に力を求めた。求めた結果、俺は力に溺れた。」


桃「・・・。」


刃「君は、大きな力を得た。権力、財力、兵力、様々な力を得た。力は、人を狂わせる。・・これは俺からの助言だ。劉備、決して俺のようにはなるな。」


桃「・・はい。私は、あなたような、どんな時も諦めない、如何なる人達も救える、そんな優しくて、強い人間になります。」


刃「ふふっ、そうか・・。」


これが劉備か・・。昔の俺は、彼女ように振る舞えていたのだろうか・・。


刃「・・・。」


俺は関羽達に視線を移した。


愛紗・・。


鈴々・・。


星・・。


翠・・。


紫苑・・。


別人なれど、同じ存在。最後に会えて良かった。最後に、皆に見送ってもらえて良かった。


刃「さよなら・・。」


俺はゆっくり目を瞑り。彼女達に背を向けた。

そして、俺の意識は無くなった・・。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴side


刃「さよなら・・。」


北郷一刀はそう呟くと、俺達に背を向けた。

そしてゆっくり。・・ゆっくりと・・。










消えていった・・。









愛「ご主人様・・。」


昴「愛紗?」


愛「奴は・・刃は・・、この国に侵攻し、我らを苦しめた大罪人。・・なのに・・。それなのに・・、何故こんなにも・・、悲しいのでしょう。」


愛紗は涙を流していた。ふと見ると、鈴々、星、翠、紫苑。そして桃香も涙を流していた。この外史は北郷一刀が創造した外史を元に新たに作られた外史。元の外史の彼女達が・・、北郷一刀を愛した彼女達が、北郷一刀の死を嘆いているのだろう。桃香は、北郷一刀の記憶を知り、その境遇を知ったが故に・・か。


愛「これで、本当に終わったのですね。」


桃「うん、終わったんだね。」


昴「あぁ・・終わったんだ・・。」


ガシャン・・。


桃「?」


愛「ご主人様?」


俺の手から村雨が溢れた。


体から力が・・、感覚が無くなっていく・・。

以前にも七星閃氣の武曲まで解放した事がある。その時は使用した直後、体がバラバラになるような激痛に襲われた。今回は違う。体の感覚が無くなっていく。恐らくこれが、最終星を・・。人を越え、神の頂まで達した代償か・・。


これからなのになぁ~・・。


これから始まるのになぁ~・・。


約束、破っちまったなぁ~・・。


ごめんな・・、皆・・。


俺の意識は徐々に薄くなり、そして・・。










意識を手放した・・。











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