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第87話~守り手対破壊者、希望と絶望~


時は遡り、劉備軍が益州を平定した直後、破壊者、刃の2度目の来襲時まで遡る。










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「貂蝉、1つ聞きたい事がある。」


貂「あら、何かしら?」


昴「刃とは何者なんだ?」


貂「あら、昴ちゃんも知ってるでしょ?彼は外史の破壊者と呼ばれる者で、あらゆる外史を混乱と混沌に貶め、破壊して回った存在よ。」


昴「それは俺も聞いている。俺が知りたいのはそういう表面的な事じゃない。」


貂「なら、何が聞きたいの?」


昴「俺は過去にも破壊や殺戮を悦とするような奴とは戦った事がある。そんな奴の心は決まってドス黒いものだった。刃は少し違った、奴の心も同じようにドス黒かったが、その心の奥底。とても深い所から冷たい、悲しみを感じた。」


俺は氣を扱う為か、対峙してた相手の心が流れ込んでくる事がある。先ほど、刃と対峙した時、ほんの僅かに深い悲しみを感じた。


昴「奴は一体何なんだ?」


貂「・・知りたい?知ったら彼とは戦いづらくなるかもしれないわよ?」


昴「知らずに戦う方が後悔しそうだ。知っているなら教えてくれ。」


俺は貂蝉の目を見て頼んだ。


貂「・・分かったわ。なら教えてあげるわ。」


貂蝉は1度深くをまばたきをしてから話し始めた。


貂「彼の事を話す前に、まず今あなたがいるこの外史について話す必要があるからそこから説明するわ。この外史はね、1度消滅した外史なのよ。」


昴「1度消滅した?」


つまり終焉を迎えたという事か?・・・いや待て。


昴「ちょっと待て、1度消滅した外史が蘇る事は無いんじゃなかったのか?」


通常外史が消滅すると蘇る事はない。少なくとも俺はそう聞いているし、そんな現象にお目にかかった事もない。


貂「ええ、そうよ。それは昴ちゃんの言う通りよ。正確にはこの外史は、1度消滅した外史を元にとある者によって新たに作られた外史なの。」


昴「作られた?そんな事が可能なのか?」


貂「可能よ。禁忌、ではあるけどね。そしてこの外史を作ったのが、刃なのよ。」


昴「刃が?一体何のために・・。」


貂「刃。これは彼の本当の名前じゃないの。彼の本当の名前は北郷一刀。彼は外史ではなく、正史の人間なのよ。」


昴「正史の?正史の人間が外史に行くことって出来るのか?」


貂「不可能よ。私達のような管理者が宝具を使って、条件付きで僅かに時間正史に行き来する事は出来るけど、正史の人間が外史に行くことは不可能。でも、とある偶然が2つ重なってしまった事によって彼は外史に来てしまったの。」


昴「2つの偶然?」


貂「以前にね、とある管理者に、正史で見つかったある宝具を回収する任務が命じられたの。その宝具とは特殊な力を持った銅鏡。その銅鏡は安易に外史を作り出してしまう危険性があったから回収が命じられたの。管理者が回収に向かった時、その管理者を泥棒と勘違いして捕まえようとした子が居たの。それが刃こと北郷一刀。当時の彼は歳相応の子供でしかなかったのだけど、その管理者が油断をしてしまって、その銅鏡が割れてしまったの。ここで昴ちゃんに質問よ。何で正史の人間が外史を作り出す事が出来るか分かる?」


昴「・・分からないな。」


理屈では、正史の人間の思いや願いが具現化されて生まれるってのは聞いているが・・。


貂「それはね、正史の人間は皆、潜在的に強い魔力を有しているからなの。」


昴「強い魔力を?」


貂「そ。まあそれが外史を生む以外に発揮される事はないのだけど。正史の数百、数千の人間の思いに内なる魔力が反応して外史が生まれる。これが外史の出来る仕組みよ。」


昴「なるほどな。」


貂「話しを戻すわ。その銅鏡が割れて、通常ならたいして問題はないのだけど、そこでまた1つの偶然。通常なら数百数千の人間の魔力が無ければ生まれないのだけど、北郷一刀には、たった1人で外史を生み出してしまう程の魔力が内に備わっていたのよ。そしてさらに傍には外史を生み出す銅鏡。その銅鏡が割れた時に北郷一刀の内なる魔力に反応して銅鏡が外史を生み、彼はその弾みでその外史に行ってしまった。北郷一刀の内なる膨大な魔力と宝具の銅鏡。この2つの偶然によって彼は外史に来てしまった。」


昴「その外史がこの外史の元になったという外史な訳か。」


貂「そうよ。その外史に降り立った彼はそこで、この外史で言う愛紗ちゃんと鈴々ちゃんと出会い、彼女達の弱き人を救う為に乱世を鎮める手助けをしてほしいという願いを叶える為に天の御遣いとなったの。そしてそこから勢力を築き、戦に勝ち続け、少しずつ勢力を拡大させ、やがて巨大な勢力を打ち破り、大陸を治めたの。本当ならそこで戦いは終わりなのだけど、そんな彼に立ちはだかる敵が現れた。」


昴「立ちはだかる、敵・・。」


貂「それは銅鏡の回収に失敗した管理者、左慈ちゃんとその仲間の于吉ちゃんよ。」


昴「あいつらか。」


貂「左慈ちゃんは銅鏡回収の失敗という汚名を晴らす為と失敗によって生まれた外史を消滅させる為に北郷一刀達の前に立ちはだかったの。そして北郷一刀はその外史と外史に住む世界の人達を守る為に左慈ちゃん達管理者と戦った。戦いは激戦となって、窮地にも陥ったのだけど、かつて死闘を繰り広げた勢力達が力を貸してくれた事によって北郷一刀とその外史の愛紗ちゃん達は左慈ちゃん達の前まで辿り着いた。そして彼は外史消滅の阻止を試みた。・・・けど結末は、その外史は北郷一刀、彼1人を残して消滅してしまった。」


昴「・・・。」


貂「彼は自分を責めたわ。愛する人とその世界を守れなかった自分を。弱かった自分を。何より、強くなろうとしなかった自分を。それからしばらく塞ぎ込んでいたのだけど、ある時彼は守り手という存在を知ったの。彼は私に、守り手になる為の修行を付けてくれとお願いしたわ。もう2度と外史を消滅させるような事が無いようにしたいからって。私はそれを承諾し、修行を付けた。彼には潜在的な魔力だけではなく、氣もかなり備わっていたから数年もしない内にかなりの強さになったわ。やがて守り手となった彼はあらゆる外史を巡るようになった。誰も不幸にしない。誰も死なせないという信念を掲げて・・。実際彼は優秀だったわ。強さは昴ちゃんの知っての通りだから分かるでしょ?・・でも、彼はその強さに対して心は強くなかったの。昴ちゃん。守り手が送られる外史は基本乱世が中心だわ。乱世で誰も死なせないなんて出来ると思う?」


昴「・・まず不可能だ。」


貂「そう不可能よ。彼は不可能だと知りつつもその信念を貫こうとした。それでも救えられない者はいる。ならばもっと強くなろうと力を求める。それでも救えない。それを繰り返していく内に彼の心はどんどん壊れ、蝕んでいった。そしてある時、彼は外史を作り出す方法を知ってしまった。その方法は外史が消滅した時に現れる因子を複数集め、膨大な魔力を注ぎ込む事で作り出す事が出来るの。それを知った時に彼の心は完全に壊れてしまった。自分の愛した人達ともう一度会いたいが為に彼は外史を破壊する側になってしまった。そして外史を破壊していく内に心はさらに荒み、破壊する事が彼の生き甲斐になってしまった。」


昴「・・そうだったのか。」


貂「私は彼の心が壊れていくのをただ見てる事しか出来なかったわ。彼を助けようと思った時にはもう手遅れだったの。」


昴「貂蝉・・。」


その時の貂蝉はとても悲しそうに見えた。


貂「彼の封印が解かれて、彼の討伐にあなたを使命したのはね、あなたが現存する守り手の中でも指折りな実力を持っているからなのだけど、それだけじゃないのよ。あなたには誰よりも人の心を理解し、救う事が出来る人だったからあなたにお願いしたの。昴ちゃん。これは管理者としての私ではなく、私個人としてあなたにお願いするわ。お願い、あなたの手で彼を・・。ご主人様を救ってあげて・・。」










※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴「・・・。」


刃「・・懐かしい名だ。そういえば居たな。そんな名前を持つものが・・。けどそいつはもう死んだよ。愚かな理想を抱えて、ね。」


昴「愚か・・俺はそうは思わない。不可能と知りつつ、それでも追い求めようとする。そんな事、出来る事ではないからな。」


刃「・・・。」


昴「俺は刃、お前を討ち倒し、この外史を救う事だけを考えていた。だが今は違う。俺は守り手の使命に則り、お前の心をも救ってみせる。」


刃「黙れよ、お前・・。」


ズシッ・・。


昴「っ!?」


俺の体全体に恐ろしい程の重圧がのし掛かった。

これが刃の殺気か・・。


刃「さあ、始めようか。」


刃が腰の刀に手を置き、重心を落として構えた。


昴「・・・。」


俺も自身の村雨に手を置き、構える。

俺達の間に微風が吹き荒れ、そして止み・・。


ドン!!!


同時に飛び出した。

お互いが同時に刀を抜き、そして・・。


ガキィン!!!


刀と刀がぶつかり合い、すれ違うと、同時に振り返る。

ちっ、いきなり俺の疾風を・・ん?刃の持つ刀・・。


刃「あぁ、気付いてくれたみたいだね。この刀の名は村雨。村雨影太刀。君の持つ村雨の対となる刀だよ。」


昴「・・・。」


なるほど、いわば兄弟みたいなものか。だからさっきから村雨が騒いでいるのか・・。


刃「ただ気をつけてね?この刀で人を斬り続けている内に刀自体に呪いがかかってしまってね。この刀で斬られた傷は如何なる医術、魔術、妖術を用いても治癒する事は出来ないから。」


昴「ご忠告、どうも!」


俺は再び刃に飛びかかった。


ギィン!!!


刃「ふふっ、良いねぇ!ゾクゾクしてきたよ!」


ギィン!ガキン!ガキン!ギィン!


俺と刃の村雨がぶつかり合う。


刃「やるねぇ。なら、少し本気を出すよ?」


ドン!!!


刃が俺の目の前から消える。


刃「それ。」


俺の背後から刃の斬撃が襲う。


ギィン!!!


刃「・・へぇ。」


俺は刀だけを背後に置き、斬撃を防ぐ。


刃「見えていた、という訳ではないみたいだね。気配を追ったのか。」


昴「さあな。」


刃「何でも良いけど、それがいつまで持つかな?」


ドン!!!


再度刃が消える。そして先ほど同じく背後から斬撃が襲う。


ドン!!!


刃「!?」


俺は斬撃が当たる直前に縮地で刃の背後に回り込む。


昴「次は俺の番だ。」


俺は刃に村雨を振り下ろす。


ガキン!!!


俺と同じく、刀だけを背後に置き、斬撃を防いだ。


刃「うんうん、よく育っている。君は嫌いだけど最高だよ。もっと楽しませてね。」


ガキィン!!!


刃は刀を振り切り、距離を取った。


昴「・・・。」


やはり強いな。鍛練を重ねたとはいえ、そう簡単に差は縮まらない、か。なら、この戦いの為に用意した駆け引きを披露するか。


刃「おいで。何かあるんでしょ?」


昴「慌てるなよ。今見せてやるからよ。」


俺は地を蹴り、刃との距離を詰めた。


ギィン!ガキン!ギィン!ガキィン!


再び斬り合いが続く。

俺は村雨を鞘に納め、抜刀術の一撃を浴びせる。


ブォン!!!


その一撃は避けられてしまう。


刃「危ない危ない。」


刃が距離を詰め、俺に斬撃を振るう。


ギィン!!!


俺は振り抜いた刀をすぐさま戻し、ギリギリ防いだ。刀を振り抜き、刃と距離を取ると、もう一度距離を詰める。


ギィン!ガキィン!ガキン!ギン!


再び斬り合いをし、もう一度抜刀術の構えを取り、振り抜いた。


刃「無駄だって。当たらな・・っ!?」


余裕を見せて避けた刃だが、僅かに肩口を斬られていた。


刃「(何故だ・・。)」


表情には出していないが、俺には刃の動揺が見て取れた。俺は考える時間を与えない為に斬撃を加える。ひとしきり浴びせると再度抜刀術の構えを取り、振り抜いた。


ブォン!!!


これは避けられる。


刃「(避けられた。先ほどは距離を計り間違えただけか・・。)」


何かを確信した刃が再び距離を詰めてきた。

俺は距離を詰められる前に刀を鞘に納め、再度抜刀術を浴びせる。


刃「くっ!」


刃の胸が僅かに斬れる。刃は苦々しい顔を浮かべながら距離を取った。


刃「ちっ・・なるほど、種が読めたよ。氣を刀の先に僅かに放出して射程を伸ばしたのか・・。」


気付いたみたいだな。こいつ程の相手に2度も見せれば流石に種は割れるか・・。俺がやっていることはまさに奴の言う通りだ。達人同士の戦いは如何に相手の射程と相手のリズムを見切るか。この二点に尽きる。相手の射程を掴み、最小限の動きで避けられれば次への行動が速くなるし、リズムを掴めば主導権を握れる。実力が秀でていればいるほどこれらの能力を見極める能力は高い。ならば俺の取る行動は、その2つを狂わせる。


昴「まだまだあるぞ。」


俺は刃に正面から突っ込んだ。


刃「調子に乗るなよ!」


同じく刃も前に出る。


ガキィン!!!


両者の刀がぶつかり合う。


刃「ふん!」


刃は力任せに俺の刀を弾き、俺に横薙ぎの一撃を見舞う。


ブォン!!!


俺はその一撃を上体を後ろに傾ける事で避け、瞬時に村雨を鞘に納め、朝陽と夕暮を引き抜き・・。


ギィン!!!


刃「っ!?」


一撃を繰り出した。


昴「まだまだ!」


俺はとにかく手数を駆使し、刃の手を封じた。


刃「ちぃ!」


刃が水面蹴りで足を刈りにきた。


昴「ふっ!」


俺は跳躍、一回転しながらそれを避け、空中で朝陽と夕暮を納め、村雨を引き抜いた。

俺が用意したもう一つの物は高速での武器の切り替え。機を見て村雨から朝陽と夕暮に切り換える事でリズムを変え、狂わせる。小細工だが効果は充分だ。


昴「行くぞ!」


俺は村雨を背中に下げ、左手を前に出し、突っ込み、両手で村雨を振り下ろした。


ガキィィィン!!!


刃「っ!?」


刃は驚愕した。そうだろう。俺は戦いの型を変えたからな。これは春蘭の型だ。


昴「次だ!」


今度は左手の小指薬指を曲げ、その他の指は伸ばした左手を前に突きだし、再度距離を詰め、斬りかかった。


ガキィン!!!


刃「ぐっ!」


昴「まだまだ!」


俺は型を切り換えながら攻撃を加えていく。


愛紗、星、翠、恋、想華、雫、たんぽぽ、焔耶、美以、華琳、凪、霞、沙和、真桜、雪蓮、蓮華、思春、楓、明命と、俺の知る仲間達の型に切り換えながらどんどん刃を追い詰めていく。


刃「ちぃ!小癪な真似を!」


刃が斬撃を振るう。


ブォン!!!


俺は僅かに距離を取る事でそれを避け、村雨を鞘に納め、抜刀術で刃に刀を振り抜いた。


ズシャッ!


刃「ぐっ!」


その一撃は刃の胸を斬り裂いた。


刃「こんなのかすり傷だ!」


刃はお構い無しに体勢を立て直し、攻撃を繰り出そうとする。俺はそんな刃に外套を眼前に投げつけ、視界を奪い、真後ろへ跳躍し、村雨を鞘に納め、朝陽と夕暮を引き抜くと、その双剣を刃に投擲した。


刃「このような小細工!」


刃は外套を斬り裂き・・。


刃「何度も通用すると思う・・?」


刃はその時周囲のある異変に気付く。自分の周囲にキラキラする何かが漂っていることを。


昴「それは硝石の結晶帯に硫黄等の元素を混ぜ合わし、粉末化させた物だ。」


刃「硝石・・っ!?」


昴「気付いたな、だがもう遅い。」


そう、刃の周囲に舞っているのは火薬の粉末。そんな所に火種が生まれたらどうなるか・・。


昴「答えはこれだ。」


ガチン!


朝陽と夕暮れが刃の目の前でぶつかる。


ドゴォォォーーン!!!


刃の周囲に大きな爆発が起きた。


昴「俺の外套には火薬を仕込んでおいた。投げつけると同時に周囲に舞うようにな。勿論、こんなので仕留められるとは思っていない。だが・・。」


煙が消え去り、その中から刃の姿が出てくる。


刃「くっ!」


昴「流石に無傷とはいかないだろ。」


刃の体からは煙が立ち上っており、所々に火傷の後も見られた。


昴「俺とお前の差はまだ大きい、鍛練を積み重ねた俺でもまだ縮まらない。だが。差は縮める事は出来なくとも埋める事は出来る。冽翁殿が教えてくれた事だ。」


実力差がありながら俺と対等と戦った冽翁殿。あの人が教えてくれた事をここで実践した。


昴「2度も通じる手ではないが、一度通じれば充分だ。ここで勝負を決めさせてもらうぞ。」


俺は村雨を構えた。


刃「くくくっ。あはははは・・!」


昴「?」


突然刃が笑い出した。


刃「良いよ!最高だよ!やっぱり戦いとはこうでなくては!命を賭けたやり取りは最高の一言に尽きるよ!」


刃はスクッと立ち上がる。


刃「やっぱり君は最高だよ。俺の見込んだ通りだよ。良くここまで強くなってくれた。先ほどから君が主導権を握っていたけど、今度はこちらからいかせてもらうよ。見せてあげる。俺と君との、差を。」


刃が片手を前に出し、手のひらを空に掲げるとおもむろに握った。


!?、やばい!


俺は嫌なものを感じ、即座にその場から飛び退いた。


ドゴォォォーーン!!!


昴「っ!?」


突如、俺が先ほど居た場所が大規模な爆発を起こした。

何だ?何が起こった?俺がしたような仕掛けは何もなかった筈だ。


刃「流石流石。良く避けた。次にこれはどうかな?」


刃が何かを呟くと俺の周囲に雪が降り始めた。

何故雪が・・!?


すると俺の周囲から氷柱のような物が複数出来始めた。

まさかこれは!

刃がニヤリと笑うと・・。


刃「アイスエッジストーム。」


その言葉を皮切りに氷柱が俺に降り注いだ。俺は確信した。


これは・・・魔術だ!


昴「ちぃ!」


俺は跳躍でそれを避けたが、避けられた氷柱が再び俺に襲いかかった。


昴「くっ!追尾するのか!」


俺は襲いかかる氷柱を避け続ける。そしてその氷柱を先導しながら刃に接近する。


刃「くくくっ、古い手だ。追尾するなら術者に接近してぶつけてしまえば良い。けど、その考えは甘いよ?」


俺が刃の眼前で横に飛び、氷柱が刃に襲いかかる。しかし、氷柱は刃の数センチの所で霧散する。


刃「術者の発動した術でやられるのは物語の中だけだよ。術はいわば術者の下僕、術者に牙は剥かない。さて、もう少し数を増やすよ?」


再度刃が詠唱すると、先ほど以上の氷柱が刃の周囲から生まれ、俺に襲いかかった。


昴「くそ!」


横っ飛びで氷柱を避け、先ほど刃に接近した際に拾った朝陽と夕暮を構え・・。


ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


氷柱を氣弾で次々と破壊していく。


刃「あまり、それ(氷柱)ばかりに気を取られちゃ駄目だよ?」


昴「くっ!」


気が付くと目の前には刃がおり、俺に斬撃を振るった。俺はそれを首の皮一枚ギリギリで避け、距離を取った。


刃「お見事。次はこれだよ。」


刃が詠唱すると、刃の周囲がゆらゆらとボヤけ始め、そこから小さな炎が生まれた。


刃「フレイムアロー。」


その言葉を合図に火矢が俺に襲いかかる。


ドン!


俺は氣弾を炎にぶつけるが、炎は一瞬形を崩しただけで、すぐさま元の形に戻ってしまった。


刃「固体である氷柱と違ってその炎は気体。消し去るのは至難の技だよ?」


昴「ぐっ!」


氣弾では止められない。尚も火矢は俺へと襲いかかってくる。ならば!

俺は朝陽と夕暮を戻し、村雨をに構え、それを地に突き刺し・・。


昴「滅氣列破!」


地に村雨を突き刺すと同時に氣を俺の体から周囲に放出し、放出した氣で火矢を消し飛ばした。


昴「これで!・・っ!?」


火矢を消し飛ばした直後・・。


トン・・。


眼前に刃がおり、刃の手が俺の胸に触れていた。


刃「終わり。」


ドクン・・。


そう呟いた直後、俺の体の内側から衝撃が走った。


昴「がはぁ!」


俺は口から血を吐き出し、体からは血が吹き出した。


昴「く・・そ・・。」


俺は力を振り絞り、刃から距離を取った。


刃「俺の魔術の中にはね、水等の液体を操る術があってね。液体であるなら何でも操れる。それがたとえ血液であってもね。今のは君の体に触れた時に君の体の血液を逆流させたんだよ。本来ならバラバラになるんだけど、氣で体を硬化している君ではその程度か。でも、かなり効いたみたいだね?」


昴「ぐっ!」


俺の体はかなりの手傷を負い、その場で膝を付いてしまった。


刃「俺の内なる魔力は管理者に交じっても上位。君は誇って良いよ。過去に俺に魔力を使わせる事はおろか、傷1つ付けられた者も居なかったのだから。」


昴「っ!」


俺は膝に力を込め、村雨を構える。


刃「ふーん、まだ勝てる気でいるんだ?なら君に、絶望を教えてあげるよ。」


そう言うと刃の体が淡い光に包まれ始めた。


昴「なっ!?」


すると、刃の体に付いていた傷や火傷がみるみる塞がれ、消えていった。


刃「くくくっ、良いよ!最高だよ!人が絶望に染まる様は!この姿は何度見ても堪らない!」


刃が高笑いが響く。


昴「・・・。」


俺はそんな刃を無視して村雨を構える。


刃「・・何で絶望しないの?これを見せると皆、逃げ惑うか、錯乱して襲いかかるかするんだけど、君にはそれが見られない。それどころか、まだ希望を捨ててない。分からないよ。君の希望の源は何?」


昴「諦めた先に何もない。諦める事に意味はない。お前は強い。強いよ。だが、それが何だ?諦める理由にはならねぇよ!」


俺は刃に飛びかかった。


ガキィィーーン!!!


昴「おぉぉぉーっ!」


ガキン!ギィン!ギィン!ガキン!


刃「・・・。」


俺は斬撃を刃に繰り出し続けた。


ザシュ!


俺の村雨が刃の肩口にぶつかる。


刃「・・再度認識。君は最高だけど、やっぱり、嫌いだよ。」


刃は自身の刀で俺の刀を弾いた。今付けた傷も淡い光によって塞がっていく。


刃「こうなったら意地でもその顔を絶望で歪ませてあげる。」


刃が詠唱を始めた。

ちっ、させるかよ!

俺は詠唱を阻止するために刃に飛びかかろうとした。


昴「っ!?」


しかし動かない。ふと足元を見ると、俺の足が氷結していた。


刃「(ニヤリ)フレイムアロー。」


火矢が俺に襲う。

くそ!ならばもう一度吹き飛ばして・・!?

滅氣列破で吹き飛ばそうとした所、俺の両腕がどんどん氷結していった。


刃「歪め!火の矢で俺に絶望を見せろ!」


ドォォーーン!!!


昴「ぐあぁぁぁーーっ!!」


俺の体に恐ろしいまでの熱と衝撃が襲った。


昴「くっ!」


俺はその場で倒れそうになるが、村雨を杖に何とか踏み止まった。両腕と両足の氷結は今の熱で一緒に溶けて自由になったが・・。


刃「火の矢は心地よいだろう?硬氣功は物理的な攻撃には強いけど、それ以外には効果が薄いからねぇ。どう?これでもまだ勝てる気でいるつもりか?」


昴「くっ・・そ・・。」


くそ!体が・・。立っているだけで精一杯だ・・。顔を上げろ!動け!動けよ!ここで動かなきゃ、ここで動かなきゃ皆が、この外史が・・!


刃「・・ほう。楽しみがまた1つ・・。」


昴「?・・っ!?、お前ら・・。」


俺が顔を上げると、そこには愛紗、鈴々、星、翠、紫苑が俺と刃の間に立ちはだかっていた。


















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