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第5話~大梁義勇軍との防衛戦と乱世の覇王

2日あいてしまいました。ボリュームは過去最大ですが中身は薄いです。華琳の扱いは難しいです。それではどうぞ!

昴「朱里、雛里よろしく頼む。」


朱「はい!」


雛「よろしくお願いします。」


昴「ただな、今俺は旅の途中なんだ。君達には俺についていくよりも行ってほしいところがあるんだ。」


朱「行ってほしい・・・ところですか?」


2人とも少し残念そうだ。


昴「劉備玄徳という名を聞いたことがあるか?」


雛「はい、幽州の公孫賛さんのところで名をあげている義勇軍の方ですね。」


知っていたようだ。桃香達、頑張ってるんだな。


昴「今は別行動をとってるが、旅が終われば劉備達のところに戻る予定だ。俺のいない間劉備を支えてほしい。」


朱「劉備様は仁徳を兼ね備えた方だとお聞きしています。あのお方でしたら喜んでお仕えします。」


昴「劉備は俺と同じ理想を掲げる仲間だ。きっと君達も仲良くやれるはずだ。今彼女らに必要なのは君達のような軍師だ。俺の変わりに彼女達を支えてほしい。」


雛「分かりました。御遣い様に変わり、劉備様をお支えします。」


昴「ありがとな。ならさっそく・・。」


鞄から紙を取りだしボールペンで桃香に紹介状を書いた。・・・これだけだと俺からの紹介状だと信じないかもな、愛紗とか堅物そうだし。・・・そうだ!俺は頭の髪留めを外し、


昴「この紹介状と髪留めを持っていけば劉備も受け入れてくれるはずだ。」


朱「分かりました。お任せ下さい。」




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※





朱「行ってきます!」


雛「水鏡先生もお元気で!」


街に行くと、幽州行きの行商人に交渉し、2人を送ってもらった。


昴「桃香達によろしくなー!」


俺は大きく手を振り見送った。


昴「水鏡さん、よろしかったのですか?」


水「あの子達が決めたことですから。私は朱里と雛里の無事を祈るだけですわ。」


昴「そうですか。」


水鏡さんは少し寂しそうに言った。


水「ところで昴さんはこれから何処へ行く予定ですか?」


昴「これからですか?とりあえず陳留へ向かおうと思ってます。」


会ってみたい者が1人いるからな。


水「それでしたら一緒に連れていってほしい子がいるのですが。」


昴「一緒にですか?」


水「えぇ、この子なんですが。」


すると水鏡さんの後ろから麦わら帽子を被った女の子がひょこっと出てきた。この子は確か私塾にいた子だな。


水「さぁ、自己紹介なさい。」


女の子は1歩前に出ると、


司「・・姓は司馬、・・名は懿、・・字は仲達・・です。」


とスローテンポで自己紹介をした。この子、俺の授業での近未来の政策を朱里と雛里以外で理解したもう1人だ。


水「私の妹の娘なのですが、朱里や雛里と並び、優秀な子です。」


だろうな、正史じゃ諸葛亮と並び称される軍師だからな。


昴「司馬懿ちゃん?」


司「何・・でしょう。」


昴「何故俺と一緒に行こうと思ったんだ?」

司「・・・仕えるべき・・主君を・・・探す・・為です。」


昴「それなら朱里や雛里と一緒に行けばよかったんじゃないか?」


司「・・(フルフル)」


首を横に振る。


司「朱里ちゃん・・・も・・・雛里ちゃんも・・・大好き。・・・でも2人の求める主君・・・・と、私の求める主君・・・は違う・・・から。」


昴「劉備ではないと?」


司「・・(コクリ)」


なるほど。


司「曹操・・・孟徳様。あの方に・・・会ってみたいです。」


昴「曹操が自分が仕えるべき主君だと?」


司「かも・・・しれないです。」


昴「・・・・分かった。それなら一緒に行こうか。」


司「宜しく・・・お願いします。」


水「それではお願いします。茉里?身体には気をつけるのよ?」


司「お世話に・・・なりました。叔母上も・・・お元気で。」


水「私は私塾に戻りますので、それではこれで。」


昴「本当にお世話になりました。」


と頭を下げ、水鏡さんを見送った。


昴「それじゃ行こうか、司馬懿ちゃん。」


司「・・・茉里。」


昴「ん?」


茉「茉里と・・・呼んで下さい。」


昴「それ真名だろ?いいのか?」


茉「センセなら・・・いい。」


昴「分かった。なら茉里行こうか。」


茉「はい。」


俺達は陳留へと向かった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※




水鏡さんの私塾を旅立ち2週間程が過ぎた。茉里と邑邑を転々と、時には野宿をしながら旅を続けていた。茉里だが当初あまり感情出さない子だなと思ったがそうでもないらしい。例えば甘味屋に寄った時、とても嬉しそうな顔をしていた。他には暇をみて勉強を見てあげてるんだが、良くできた時に頭を撫でてあげた時もとても嬉しそうな顔だった。後茉里は俺のことを『センセ』と呼ぶ。何故そう呼ぶのかを聞くと、


茉『センセは・・・センセだから。』


らしい。1日だけの先生のつもりだったのだが。まぁ本人が呼びたいなら別にいいか。旅の道中やはり賊に襲われることがしばしばあった。普段なら早々に叩き潰すんだが今は茉里と一緒だからあまり無理はできない。そのためこちらからは手を出さない。教われた場合も500人以上いる場合は手を出さず、茉里を邑に預けてから片付けるようにしている。しかしここで1つの問題が発生した。名をあげるために各地で賊を鎮圧してまわっていたことが実り過ぎた。最近では邑や街行くだけで指を指されるようになってしまった。正直煩わしいので今では外套のフードを被り、スカーフで口元を隠している。歩き続けていると、邑が見えてきた。


昴「今日はあの邑で宿をとろう。」


茉「はい・・・分かりました。」


邑の近くまで来てみると様子が少しおかしかった。


昴「(やけに物々しいな。まるで何かを警戒してるような感じだ。)」


茉「・・・へん。」


昴「茉里もそう思うか?」


邑の手前で話していると、


?「そこで止まれ!」

昴「ん?」


声の方向を見ると手甲を身につけた傷痕だらけの女性が立っていた。


?「お前達賊の手先だな!ここは絶対に通さない!」


昴「待て、俺達は賊じゃな『問答無用!はぁ!』いや聞けよ。」

女性はそのまま俺に飛び込むと拳を繰り出した。とりあえず俺は右に避ける。避けられるのを確認すると拳を繰り出した反動で回し蹴りを繰り出してきたのでそれを右腕で受け止めた。


昴「(型の荒らさから考えて我流だな。しかし筋はいい・・・が、今はそれどころじゃないな。)」


戦うつもりはないからとりあえず大人しくさせるか。女性が1度下がり、今一度飛び込み右拳を繰り出した。俺は顔に直撃する直前に縮地で女性の背後にまわった。


?「くっ!何処に!?」


女性は俺を見失っている。俺はそのまま彼女の左腕をひねり、動きを封じた。


?「ぐっ!離せ!」


昴「いやいい加減話を聞けって。」


問答を繰り返していると、


?「凪!ちょい待ち!」


?「凪ちゃん、落ち着くの~。」


すると、邑から女の子2人が現れた。


?「凪、いくら何でもいきなり手ぇ出したらアカンやろ。」


?「そうなの~。」


話が通じそうな2人が来たので俺は傷痕の女性から手を離した。


昴「とりあえず話を聞いてもらってもいいか?」


?「あ~、すまんな。」


俺は旅の者で邑へ泊めてもらう為に来たことを説明する。


?「やっぱり凪ちゃんの勘違いなの。」


?「うぅ、真にすみません。」


昴「何、構わないさ。・・・ところで、やけに物々しい雰囲気だが何かあったのか?」

尋ねてみると、今この辺には賊がおり、邑は警戒しているのだという。


?「という訳でこの邑は今賊の襲来に備えています。ここにいては巻き込まれますよ?」


昴「しかしそろそろ日も暮れる。暗がりを歩く方が危険だろ。」


?「・・・それもそうですね。ならこの邑に入らして下さい。」


昴「恩にきる。」


茉「ありが・とう。」


?「しかしな、そないな被り物と布で顔隠しとったらそら凪でなくても警戒するで?」


昴「ま、確かにな。」


?「顔に怪我してるわけやないんなら外してもらってええか?」


まぁしょうがないか。


昴「分かった。」


俺はフードを外し、スカーフを首に下げた。


?「何や意外に別嬪さんやないか。何で顔隠しとったん?」


昴「ま、いろいろとな。」


するとメガネっ娘が、


?「ねぇ、この人今噂の人に特徴似てない。」


と言い出した。気づかれたか?


?「黒い外套、5尺の長剣に黒髪。ホンマや!」


どうやら気づいたようだな。


?「あなたはもしかして天上の天罰神と呼ばれる天の御遣いでしょうか?」


その二つ名か。他よりマシか。


昴「そう呼ばれることもあるが、俺は御剣昴。一応天の御遣いだ。」


?「「「!!」」」


3人は驚愕している。


楽「私は楽進です。」


李「うちは李典や。」


于「沙和は于禁なの~。」


楽「御遣い様、我らに力をお貸し下さい。」


昴「分かった、とりあえず詳しい話を聞かせてくれ。」


楽「ありがとうございます!それではこちらにいらして下さい。」



※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



街の作戦本部にて


楽「賊の数は約3千。それに対し我ら大梁義勇軍は1千3百程です。」


昴「戦力差は2倍以上・・・。」


李「今西側と東側に防壁を築いとるんやけど東側は材料が足りひんからかなり脆いねん。」


昴「なるほど。」


于「さっき偵察に行ったんだけど、賊は2里ほどの距離なの~。」


昴「(2倍以上の戦力差、東側の脆い防壁。2里ほどの距離か。よしここは。)」

昴「茉里、君ならどういう策をとる?」


茉里に聞いてみた。


茉「はい、・・・まず部隊・・・ですが、西側と・・・東側に250人ずつ・・・配置して下さい。」


李「東側の方が防壁が脆いんやで?そっちを多くせんでええのか?」


茉「どうせ脆いなら・・・・抜かせてしまいます。」


楽「どういうことだ?」


茉「罠を・・・仕掛けます。」


楽「なるほど。」


茉「西側にも同様に・・・・罠を仕掛けます。これで西側と東側の入り口は・・・大丈夫。」


まぁ無難だな。


茉「次に・・・2百人程・・・邑の南の森に・・・伏せてください。」


李「賊の背後を突くちゅうことやな。」


茉「(コクリ)」

于「なるほどなの~。」


茉「賊が退いた後は・・・夜襲を仕掛け・・・糧食を燃やします。策は・・・こんな感じです。センセ、どうでしょう?」


昴「あぁ、問題ない。よくできました。」


茉「・・んっ//」


頭を撫でてあげたらとても嬉しそうだ。


李「ほんなら、何処にうちらを配置するん?」


茉「東側は・・・李典さん、西側は・・・于禁さん、・・・北側は・・・私。南側は・・・楽進さん、お願いします。」


昴「と、すると俺は伏兵を率いればいいんだな。」


茉「はい。天の御遣いが現れた・・・というのは、賊には脅威・・・だから。」


昴「分かった、任せろ。」


策は決まったな。


昴「よし!それでは、準備を始めるぞ。終了後はそのまま開戦まで待機だ。」


楽・李・于「了解です(や)(なの~)!」


昴「それともう1つ。絶対に死ぬな!名誉も矜持も生き残って初めて意味を成す。だから死ぬな!必ずまた会おう!」


茉・楽・李・于「はい!」


昴「それでは行動開始だ!」


おれが檄を飛ばすと各々が持ち場へ向かった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※


楽進side


数時間後賊が来襲し戦が始まった。


当初の目論見通りに東側の防壁は開戦してしばらくして突破されつつあった。


「東側の防壁を2つ突破されました!残る防壁はあと1つです!」


楽「狼狽えるな!これも軍師殿の目論見通りだ!そちらは真桜に任せろ!」


「分かりました!」


「西側も1つ目の防壁が破られました。」


くっ!思っていたより早い!


楽「そちらも予定通りだ!沙和に任せろ!」


真桜、沙和任せたぞ!かといってこちらも余裕があるわけでもない。


楽「踏ん張れ!もう少しもちこたえれば!御遣い様がどうにかしてくれる!」


その時後方から悲鳴が轟いた、


「申し上げます!東側の賊が罠にかかりました!」


「西側の賊も同じく罠にかかりました!」


よし!こちらの思惑通りだ!東側と西側の防壁近くには落とし穴を仕掛けた。穴に落ちた賊に油をかけその上から火矢をいかけ、火だるまにする。正直あまりに気味悪い光景だが賊は所詮は農民あがりだ、火はこれ以上にない恐怖と混乱を産む。賊に動揺が走っているその時、


昴「我はこの地に舞い降りた天の御遣い、御剣昴だ!皆俺に続け!」


南の森に伏せていた伏兵が飛び出した。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴side


今俺は邑の南側の森に兵2百を伏せている。邑の方角から悲鳴が轟いた。よし、仕掛けた罠にかかったな。まだだもう少し・・・・・今だ!


昴「皆、行くぞ!」


俺は先頭を切って飛び出した。


昴「我はこの地に舞い降りた天の御遣い、御剣昴だ!皆俺に続け!」


「おー!!」


それに続き義勇軍が飛び出した。


俺は浮き足立っている賊の背後から突っ込み、さらに混乱させる。敵は多数だが今回は朝陽、夕暮ではなく村雨を引き抜き後方正面の賊を一気に5人を斬り捨てた。その勢いのまま敵陣を突っ切って行く。


昴「1人で敵に当たるな!必ず2人で1人に当たれ!」


義勇軍も賊も兵の質は互角。なら個と個ではなく、集と個で当たる。質が同じなら個が集に勝てるわけがないからな。俺が賊を斬り捨てていると、


「ば、化け物だ!」


「い、一度退くぞ!」


賊が次々と退いて行く。


昴「追撃をかける!しかし深追いはするな!」

今日の戦は終わった。賊の被害が7百人に対し大梁義勇軍は50足らずだった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



その夜、俺は精鋭50人の義勇軍と楽進を率い敵陣の側まで来ていた。


昴「見張りは8人か。」


奇襲を仕掛ける為に敵陣に来たが、


昴「今飛び出してもさほど被害は与えられないな。」


楽「やむ得ません、行きましょう。」


楽進が飛びだそうとしたのでそれを手で制した。


昴「まあ待て。」


俺は邑から持ってきた小刀を8本を両手に構えそのまま投げた。


「ぐ!」


「あが!」


8人の賊が頭や喉や心臓を貫かれ息絶えた。


昴「行くぞ。」


楽「は、はい。(なんて人だ!)」

俺達は敵陣の兵糧を焼き払い、そのまま陣を突っ切り、賊に打撃を与えた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



翌朝、敵は兵糧を焼かれたことによる士気の低下と夜襲による疲労でガタガタだった。俺は今は西側、于禁と共に邑の防衛に当たっている。昨日の戦の際に邑の案山子を大量に立てていた為、矢も十分な量があった。案山子は戦力を多く見せる為のハッタリの役目もあった。とはいえ、倍以上の戦力を相手にしている以上矢にも限界は近付いてくる、そして遂に、


于「矢が尽きたの~。」


矢が底を尽きた。だが茉里はこの事態をも予測していた。


昴「よし、石を投げろ!」


昨日のうちから非戦闘員に邑の中の石垣や、岩を投げやすい大きさに崩して、一ヶ所にまとめておいてもらった。ちなみに案山子も彼等の手作りだ。昨日の作成会議の後に協力を依頼に行ったら『力に慣れるのなら』と快く引き受けてくれた。今のところ全てが順調だったが思わぬ訃報が飛び込んだ。


「南側が苦戦しており、楽進様が討って出ました。」


昴「何だと!」


ち、こっちの兵力が少し少ないと思ったがまさか南側に戦力を集中していたか、この辺で兵を伏せられるのは南側だけだ。昨日の例があるから警戒していたのだろう。しょうがない。しかしだからといって防衛側が討って出るのは迂濶だろ。


昴「于禁、ここは任せた、俺は楽進の援護に行く。」


于「凪ちゃんを助けてあげてほしいの~。」


于禁は3人の中で1番兵の統率力があるので大丈夫だろう。俺は南側に急行した。楽進無事でいろよ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



楽進side


現在南側の防衛にあたっているのだがやけに敵戦力が多い。矢も崩した岩も早々に尽きてしまった。


楽「(やむを得ないか。)」


覚悟を決めよう。


楽「私が討って出る。皆はこのまま防衛を続けてくれ!」


私は防壁を飛び出し、敵へと突進した。


楽「はぁぁぁ!!」


賊に拳で殴り、蹴り、氣弾で吹き飛ばす。


「囲め囲め!」


「相手は1人だ!」

「殺せ!」


くっ!数が多い!が、しかし、


楽「舐めるな!」


脚に氣を集中させ、


楽「猛虎蹴撃!」


大きな氣で賊を大量に吹き飛ばす。しかしそれでも賊はまだ大量にいる。


楽「次から次へと!」


襲いかかる賊を次々殴り、蹴り飛ばすが、体力も徐々に限界に近付いてくる。


楽「(真桜、沙和すまない。)」


覚悟を決めよう。皆の為に1人でも多くの賊を道連れにする。そう心に決めたその時、


?「飛龍衝撃!」


ドコーーーン!!!!


と、声が轟くと、黄金龍が、賊を飲み込みその周辺を吹き飛ばした。爆煙が消えるとそこには大きな穴が空いていた。


?「全員生き残れと言っただろ。何故死を覚悟してんだ?」


そこには長剣を肩に下げた御遣い様がいた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴side


俺は縮地で建物の屋根を跳び跳ねながら、南側の門に向かった。門を飛び越えると楽進が1人で戦っていた。良かった、まだ無事かすると楽進が氣を脚に集中させると、賊に大きな氣を飛ばした。敵はある程度吹き飛ぶがまだまだ残っている。氣を消耗したことが原因で体力が限界に近付いていた。ふと楽進の目を見るとその目は生きることをあきらめ、1人でも多く敵を片付ける言わんばかりだった。


昴「(あの馬鹿!)」


俺は脚に氣を集中させ、上空に高く上がると氣を村雨に集中させた。


昴「飛龍衝撃!」


氣で作りあげた黄金の龍を賊の中心に叩き込んだ。そこを中心に大きなクレーターができ、その周りの賊は死屍累々と言わんばかりだった。


昴「全員生き残れと言っただろ。何故死を覚悟してんだ?」


楽「御遣い様。」


昴「そもそも防衛側が討って出てどうするんだ。」


楽「申し訳ありません。」


楽進はシュンとしてしまった。


昴「ま、出てしまった物は仕方ない、とりあえずこいつら片付けるぞ。」


楽「はい!」


楽進の瞳に生への気力が甦ったようだ。


俺は村雨を鞘に納め、


昴「せっかくの機会だ、俺が無手での多数の相手の仕方を教えてやる。」


楽「わ、分かりました。」


昴「多数を相手にする場合は敵が全部視野に入る位置を取るこれが基本だ。」


そうすれば敵の行動が分かるしな。


昴「しかし今回のように前後左右に囲まれた場合は一点突破して敵が見える位置を取りに行くかもしくは、」


賊が背後から襲いかかる。それを肘打ちで対応する。


「げほ!」


昴「五感と周りの氣の流れを感じとり、こちらに向かってくる敵を選別する。」


俺は自身に向かってくる敵を拳、脚、肘、膝を駆使して対応する。賊は俺が暴風雨の中心が如く次々飛んでいく。


昴「簡単に言うとこんな感じだ。正面、きてるぞ?」


楽「はっ!?はぁ!」


楽進はあわてて正面に振り返り賊を拳で殴り飛ばした。


実際は簡単にできることじゃない。やれと言ってこれができるのは達人くらいなものだろう。しかし、楽進の名を冠した君ならできるはずだ。しばらく敵を片づけていると、


ゴーン!ゴーン!ゴーン!


大きな銅鑼の音が鳴り響いた。


楽「何事だ!」


すると1人の義勇兵がやってきた。


「北方より砂塵を確認しました。旗は『曹』と『夏候』です!」


どうやら援軍が来たみたいだな。


「え、援軍だ!」


「逃げろ!」


賊が次々と逃げ始めた。


楽「御遣い様!」


昴「俺達の勝利だ。皆勝鬨を上げろ!!」


「おぉぉぉーーーーー!!!」

義勇軍の声がこの地一帯に轟いた。


昴「楽進よく頑張ったな。」


楽「・・・・。」


楽進は無言だ。


楽「御遣い様。」


昴「ん?どうした?」


楽「此度の戦で自分の愚かさと浅はかさを痛感いたしました。私はもっと強くなりたい!御遣い様、自分の大切な人を守れるよう私を鍛えてはくれませんか!?」


昴「・・・。」


思いがけないお願いだな。しかしこの楽進なかなか面白い。確実に素質はある。


昴「分かった。しかしな仮に強くなっても何でも自分でやろうと考えるな。個人では限界があるし、人には役割がある。自分でできることと出来ないこと、それを間違えるな。」


なまじ力を得ると自分の力しか信じられなくなり、1人で無理をして自滅するか力に悦楽して悪の権化に成り下がるか。後半は大丈夫だろうが前者は生真面目で優しい楽進ではあり得るからな。『自分が何とかしなくてはいけない』は得てして『自分の力しか信用していない』と誤解と疑念を生んでしまうのが人間の心理だ。


楽「はい!」


昴「とりあえず一度邑に戻り、曹操を出迎える。行こう楽進。」


凪「私の真名は凪です。凪とお呼びください。」


昴「では凪、行こうか。」


凪「はい!師匠!」


師匠・・・か、いい響きだな~!



※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



邑に戻り、出迎えの準備を始めた。その際に李典と于禁から真名を預かった。いいのかな?って思ったけど凪が許したのと戦の勝利の礼らしい。


すると北門より赤色の服を着た黒髪の長髪の女性と青の髪と服を着た女性。後金髪でクルクルの髪型をした女の子が兵を率いやってきた。


昴「(赤と青の女性、なかなかできるな。中央の金髪の女の子、あそこだけ空気が違う。)」


?「救援要請を受けてやってきたのだけど、無用だったかしら?」


凪「いえ、曹操様達が来ていただけなければ、もっと被害が出ていました。」


曹「貴女がこの義勇軍を率いていたのかしら?」

凪「大梁義勇軍は私と李典と于禁の3人が率いています。しかし此度の戦、勝利することができたのはこちらのお二方のおかげです。」


と曹操こちらを向いた。


曹「あなた達は?」


ふむ、少し試してみるか。


昴「人に名を尋ねるならまず自分からではないのか?」


?「貴様!華琳様に対して何だその口の聞き方は!」


昴「俺は曹操の臣でも民でもない。従う義理はあっても義務はない。第一俺は礼儀の話をしているだけだ。」


?「貴様~!」


黒髪の女性が剣に手をかけた。


曹「やめなさい春蘭!」


?「しかし!」


曹「そちらの言い分が正しいわ、いいからやめなさい。」


?「ぐぐぐっ!」


そう言われ渋々剣から手を離すが依然としてこちらを睨み付けている。


曹「失礼したわ、私は曹操、字は孟徳、陳留の州牧をしている者よ。あなた達も名乗りなさい。」


淵「夏候淵、字は妙才だ。」


惇「ぐっ!夏候惇、字は元譲だ。」


昴「ご丁寧にどうも。俺は姓は御剣、名は昴。字はない。しかしやはり君が曹操か。」


曹「やはりとはどういう意味かしら?」


昴「君の周りだけ空気が違う。それに覇気に満ち溢れてる。」


曹「あなたから見て私はどう見えるかしら。天の御遣い?」


気付いていたか。


昴「偉大な王だな。とても今の地位に治まる器ではない。君は君自身の力と君に惹かれて集まってくる者の力で更に大きくなるだろうなって行くだろう。」

曹操だからそう言う訳ではないぞ、仮に知らなくても同じことを言っていただろう。本当だぞ?


曹「盛大な評価ね。ところで、この邑を守れたのはあなたの力あってのことみたいのようだけど?」


昴「俺じゃない、策を考えたのはこの司馬懿、邑を守りきれたのは大梁義勇軍の力であって俺は少し手助けしただけだ。」


曹「そうなのかしら?」


凪に尋ねると、


凪「いえ、師匠、御遣い様のお力あってのこどです。」


真「兄さんのおかげでもあるな。」


沙「凪ちゃんや皆を助けてもらったの~。」


昴「ま、要するに皆の力を合わせた結果だ。」


曹「随分謙虚なのね。」


昴「手柄を独り占めにするつもりはない。」

曹「あなた達はなかなか優秀な人材みたいね。あなた達、この曹孟徳に仕えなさい。」


凪「噂はかねがね聞き及んでおります。楽進。真名は凪、曹操様にお仕えいたします。」


曹「そちらの3人のいけんは?」


真「うちの真名は真桜や。陳留の州牧様の話しはよう聞いとるし、そのお方が大陸を治めてくれるなら、今よりは平和になるっちゅうことやろ?うちもええよ。」


沙「真名は沙和なの~。凪ちゃんと真桜ちゃんが決めたなら私もそれでいいの~。」


茉「1つ・・・お尋ねします。」


曹「何かしら?」


茉「曹操様の・・・目指すものは・・・何ですか?」


曹「私は乱世に覇を唱え、王となり、この国を平和へと導くわ。」


茉「・・・。」


曹「・・・。」


場が沈黙する。茉里が片膝を着き、


茉「司馬懿・・・字は仲達。・・・真名は茉里です。・・・私の知略・・・あなたに捧げます。」


茉里は臣下の礼をとった。


曹「茉里、あなたの知略で我が覇道を支えてもらうわ、凪、真桜、沙和あなた達にも期待しているわ。」


茉「・・・御意。」


凪「はい!」


真「まかしとき!」


沙「了解なの~!」


曹「御剣昴、あなたはどうなの?」


昴「悪いが俺は仕える主はすでにいる。だから断らせてもらう。」


惇「きさま!華琳様の誘いを断るとは!もう許せん!」


夏候惇が剣を引き抜き俺に襲いかかった。俺は身体を半身にしてそれを避けた。


ドガーン!


おうおう、クレーターができちまったよ。曹操をちらっと見る。今度は止める様子はない。怒っているという訳ではなさそうだな。なるほど、俺を試す気か。いざとなれば夏候淵に止めさせるんだろうが。


惇「死ねぇ!」


昴「うお!危ねぇ!」


あわてて避ける。こいつ本気で殺す気だな。


惇「避けるな!」


昴「避けるわ!」


ったくよ。


昴「お前おでこ広いくせに心狭すぎだ。」


惇「ぐぐぐっ!きさま!私の気にしてることを!もう許せん!」


更に夏候惇のスピードが上がった。しかし、頭に血が昇っているため攻撃は単調で大振りだ。避けやすいことこの上無い。もう飽きたな。


惇「うぉぉぉ!」


パシン!


俺は夏候惇の腕を掴んだ。


惇「なっ!」


昴「速さに膂力は申し分ない。が、しかし動きが単調過ぎる。しかもいちいち相手の言葉を鵜呑みにしてどんどん泥濘にハマっている。」


俺は左手の人差し指をしならせ、


昴「夏候惇0点。」


バシーン!


惇「ギャン!」


デコピンをかました。インパクトの瞬間に人差し指に氣をこめたのでかなり痛い。夏候惇はデコピンを受けると後ろへ倒れた。


惇「うぐぐぐ。」


夏候惇はおでこを押さえている。


曹「まさか春蘭を子供扱いするなんてね。」


夏候惇が弱い訳じゃないがあれではどうにもならないだろ。


曹「私に仕える気はないと?」


昴「悪いな。」


俺は桃香と約束したからな。


惇「きさま~!」


夏候惇が立ち直って剣を構えていた。


曹「春蘭、いい加減に『やれやれ、話が進まないな』?」


昴「少し黙れ!」


俺は夏候惇に本気の殺気をぶつけた。


惇「!?」


殺気に当てられ、夏候惇は剣を落とし膝立ちになった。


曹「!・あなた!春蘭に何をしたの!?」


昴「殺気をぶつけただけだ。しかし俺の本気の殺気を浴びて意識を保っていられるとはな、0点は取り消すよ。」


皆が沈黙している。


昴「話を戻すが、君には仕えられない。」


凪「師匠、鍛えていただけるのではないのですか?」


茉「センセ・・・行っちゃうの?」


2人が不安そうに見つめる。


昴「が、しかし凪との約束があるし、何より賊がもう活発化し過ぎて最早個人の力じゃどうにもならない。だから黄巾の賊を潰すまでの間客将という形で勘弁してくれないか?」


曹「・・・・まぁいいわ。その間だけ私のもとで働きなさい。」


昴「すまない、恩に着る。」


曹「私達はこのまま先程の賊を追うわ。あなたは義勇軍を率いて私達の傘下に入りなさい。」


昴「了解。それじゃすぐに準備をする。」


俺は邑の駐屯地へ向かった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



曹操side


曹「春蘭、大丈夫?」


惇「は・・・はい。」


それにしても春蘭を殺気だけで圧倒するなんてね。


淵「姉者を殺気だけで・・・信じられん。」


惇「あの殺気には驚きました。・・それ以上に驚いたのが・・、」


曹「?」


惇「奴が殺気を放った時、奴から華琳様と同じ覇気を感じました。」


淵「何だと!?」


私と同じ覇気?ということは御剣昴は私と同じ種類の人間ということかしら。・・・・ふふ、これから楽しみね。





※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



その後棄てられた空き城に賊が逃げ込んだ賊を討伐し曹操軍と大梁義勇軍は陳留へと帰還した。


覇王曹操、天の御遣い御剣昴が今出会った。






続く




正直自分ではあれが限界です。書けば書くほど自信なくなります。次回から魏の拠点フェイズに入ります。ですが決して魏√に入るわけではありませんので。またこの駄文にお付き合い下さい。それではまた。

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