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第15話~孫呉の将集結、荊州掃討前哨戦~

投稿間隔が空いてしまった。挙げ句、賊の掃討戦まで行けなかった。今の時期は忙しくて辛いな・・それではどうぞ!

雪蓮と手を組むことになってから幾ばくかたった。いつものように政務に励んでいると、雪蓮から城の広場に集まるように言われたので行ってみるとそこには冥琳と祭さんと陸遜がいた。


昴「雪蓮はまだ来てないみたいですね。」


冥「雪蓮なら袁術に呼ばれている。用件は・・・言うまでもあるまい?」


昴「このあたりに集結している賊か。」


陸「そうでしょうね~。」


昴「今さらな気がするが。」


祭「所詮は袁術だしのう?」


ひどい言われようだな。まだ1回も会ったことないけど。


昴「そういえば陸遜と顔合わせするのはこれが初めてだな。」


陸「そういえばそうですね~。」


お互い間が悪くてまだ雪蓮達に名前を聞かされたぐらいだな。


昴「なら改めて、俺は姓は御剣、名は昴だ。呼ぶときは昴でいい、よろしくな。」


穏「ご丁寧にありがとうございます。私は姓は陸、名は遜、字は伯言、真名は穏です~。」


昴「真名までいいのか?」


穏「雪蓮様達も預けているようですし、お噂は聞いています。是非穏とお呼びください。」


昴「分かった。では穏、よろしく頼む。」


穏「はい~。よろしくです~。昴さんは天の御遣いということで私達にはない知識をお持ちみたいですね~?」


昴「まぁ、いろいろなところに行ったりしてるからな。」


穏「お時間ありましたら是非一度お話をお聞かせください~。」

昴「あぁ、構わないよ。」


穏「それでは楽しみに待ってます~。」


軍師だけあってやっぱり新しい知識というのは興味あるんだろうな・・・・ん?


昴「冥琳?祭さん?どうしたんだ?」


冥「・・いや、何でもない。」


祭「気にするでない。」


2人とも俺から目を背けている。何だ?まぁいいか。


冥「雪蓮が戻る前に話を進めておく。袁術からの指令は十中八九荊州に集まっている賊の討伐だろう。」


祭「それしか考えられんしのう。」


冥「それでその賊だが、現在隊を2つに分けている。一方は空き城を占拠してそこを根城にしている。数はおよそ2万といったところだ。率いてる将は波才という将軍くずれだ。もう一方は空き城からかなり離れた場所に陣を構えているらしい。数は1万5千ほど。率いてる将は程遠志だ。」


祭「何故2隊に離れておるのじゃ?」


冥「集めた情報によると空き城にこれ以上兵を置くことが出来ないのが1つ、もう1つは率いているそれぞれの将の仲が悪いらしい。」


昴「下らない。所詮は賊ということか。だがわざわざ2つに分けているのは好都合だな。」


穏「確かにそうですが~、それでも兵力差はあります~。」


昴「ま、それもそうだ。」


冥「こちらの兵力は5千、無理をすれば7千ぐらいは集められるだろうが現状はこれが手一杯だ。」


昴「袁術から兵や物資を出す可能性は?」冥「あまり期待しないほうがいいだろうな。仮に出すといっても意見を変えられる可能性もある。」


面倒だな。


昴「兵力を増やすか、せめてもう少し兵を率いられる将がいれば何とかなるんだがな。討伐出来ないこともないがそれではこっちにもそれなりに被害がでちまう。さてどうするか・・。」


どのように討伐するか策を練っていると・・、


雪「あぁ~もうムカつく!#」


怒気を纏った雪蓮が戻ってきた。


冥「おかえり雪蓮、それで、袁術は何と?」


雪「・・聞かなくても分かるでしょ?」


冥「やはりか。」


やれやれと言った感じだな。


祭「それで、策殿はどうするおつもりじゃ?」


雪「とりあえず皆を呼び寄せてから考えるわ。」


冥「皆?ということは、旧臣を集めることに関して袁術が許可を出したのか。」


雪「ええ。馬鹿よね、ホント。」


昴「あり得ないな。・・だけどこれである程度は問題が解決されるな。」


冥「あぁ、軍もこれで増強できる。」


穏「それでは~、早速興覇ちゃんに周泰ちゃんに凌統ちゃん、孫権様に尚香様に使者を出しますね~。」


冥「頼む。・・それで、出陣はいつにする。」


雪「全ての準備が整うまで出陣しないわ。・・袁術にも伝えてあるから、しばらくは何も言ってこないでしょう。」


穏「それは有り難いですねぇ~。では私は使者の選定と兵站の準備に取りかかりますね。」

祭「策殿と公謹と昴には軍略の決定を頼もうかの。」


雪「了解。部隊の合流は行軍の途中で行うから、そのつもりで居なさい。」


冥「分かったわ。ならば軍の編成が終わり次第、出陣しましょう。」


昴「了解。」


さてと、忙しくなるな。


雪「いよいよ独立に向けて動き出せる。皆、私に力を貸してちょうだい。」


冥「当然だ。」


祭「うむ。」


穏「はい♪」


昴「ま、今は君の仲間でもあるから、それまでは力の限り協力するよ。」


これを号令に各々が動き出した。





※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



それから10日ほどがたち、出陣準備が整い、黄巾党の残党との決戦が始まろうとしていた。そして今、俺達は進軍中である。


雪「穏。蓮華達はいつ合流するって?」


穏「兵をまとめ、もうまもなく合流できると思います~。」


雪「そう。久しぶりに皆と戦うことができるわね。」


祭「じゃがそれでも兵力差は否めぬがのう。」


昴「率いている将とその数、それに兵の質はこちらの方が上だ。作戦次第では完勝も可能だろ。・・・そういや、これから雪蓮の妹・・孫権と孫尚香だっけ?どういう人なんだ?」


雪「そうね、仲謀はちょっと真面目でカタブツっぽいところもあるけど、とっても良いよ。可愛いし、おっぱいも大きいし、お尻の形も最高だし。」

真面目でカタブツねぇ、後半はとりあえずどうでもいいが・・。


雪「もう1人は尚香と言ってね。弓腰姫とか呼ばれるぐらいおてんばだけど、可愛い妹ちゃんよ。」


昴「なるほど。」


雪「きっと昴のこと、気に入ると思うわ。尚香については先に御愁傷様って言っておくわね。」


昴「?・・どういうことだ?」


冥「多少、イタズラ好きでな。それに孫呉の中では1番女らしい方だ。・・喰われんように気をつけるんだな。」


昴「おいおい・・。」


雪「まぁ将来的には2人の間に子を貰わないと駄目なんだから、気にしたって意味ないわよ。」


昴「いやだから俺はそういうつもりはないっての。」


どこまで本気なんだか。


話をしていると、


穏「後方に砂塵あり、です~。どうやら蓮華様達がやってきたみたいですよぉ♪」


冥「さすが蓮華様だ。蒼天中央に日輪が至る刻に・・という合流時間をしっかりと守ってくれているな。」


雪「そういう融通の効かなさが、心配ではあるんだけどねぇ。」


昴「真面目だねぇ。」


雪「カタブツとも言い換えられるわよ?」


昴「悪いことじゃないだろ?」


祭「まぁ色々言い方はあるじゃろうが、孫家の人間として頑張っておられる御方じゃよ。」


昴「ふ~ん。」


孫権に孫尚香。どんな人物なのか楽しみだな。






※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



孫権side


権「ふぅ。」


甘「どうかされましたか?」


権「限りなく続く大地。忘れていたから、少し嬉しくて。」


甘「軟禁状態となって早2年。まさか袁術公認で出陣出来るようになるとは思いませんでしたね。」


権「そうね、袁術が馬鹿で良かったわ。」


甘「御意。」


権「でも、愚かだったお陰で姉様と合流出来る。いよいよ孫呉独立に向けての戦いが始まるのね。」


甘「はい。もうまもなく雪蓮様に合流出来るでしょう。そこからが正念場です。」


権「そうね。心して掛からないと。・・姉様、お元気かしらね。」


甘「雪蓮様のことです。必ずやお元気でいらっしゃることでしょう。」


権「冥琳に迷惑を掛けっぱなしでしょうけどね。」


甘「その自由闊達さこそ、雪蓮様です。」


権「ふふっ、そうね。・・でも1つ気になるのが、手紙にあった天の御遣いとはいったい何者なのかしら?確か今共闘していると書いてあったけど・・」


甘「天の御遣いについては私にも噂が聞き及んでおります。たしか単身で数多の賊を討伐しているという噂です。」


権「私もそれは聞いたことがあるわ。だけど共闘するなんて、私はあまりそういうのは良くないと思うわ。」


甘「御意。ただ周瑜殿や黄蓋殿がお許しになっているからには何か事情があるのでしょう。」


権「そうかもしれないけど・・・でも1番気にかかるのが、手紙の最後の方に書いてあった『いずれあなたの夫か義兄になるかもしれない男だから仲良くしなさい。』っていうのが気がかりだわ。」


甘「・・雪蓮様は御自身か蓮華様に嫁がせるおつもりなのでしょうか?」


権「冗談ではないわ!私は絶対にそんなの認めないわ!」


甘「とにかくお会いになれば分かることですので・・・蓮華様、旗が見えてまいりました。雪蓮様の旗です。」


権「分かったわ、すぐに準備をお願い。」


甘「御意。」


言うとすぐさま思春は準備を始めた。

天の御遣い。あなたがどのような人物か見定める。もしくだらない人物ならその場で頸をはねるわ!






※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴side


砂塵が徐々に近づき、やがて孫呉の牙門旗が俺達の前で止まった。先頭を走っていた人影がこちらへやってきた。


権「お姉様!」


尚「おっねぇさまーーー!」


権「お久しぶりです!お元気でしたか!?」


雪「もちろん、こちらは変わりないわ。蓮華、シャオ、あなた達も元気そうね。」


権「はい、この瞬間を彼方より待ち望んでおりました!」


尚「もっちろん♪毎日水浴びしたり街で遊んだり。楽しかったよー?」

雪「ふふっ、相変わらずね。」


久しぶりの再会でお互いに楽しそうに言葉を交わしている。


昴「あれが孫権と孫尚香か・・。」


冥「ああ。雪蓮の妹にして孫呉の後継者だ。」


昴「孫権は雪蓮とは対称的だな。」


冥「とても真面目な御方だ。器で言えば、おそらく雪蓮よりも大きいだろう。」


昴「なるほど。」


確かにそんな印象が受けられる。


祭「英雄に相応しい器と能力を持っておられる。あとは経験だけといったところかの。」


穏「皆に愛されてる、素晴らしい御方ですよ♪」


昴「へぇー。」


雪蓮との会話を聞く限り、真面目な印象が受けられる・・・おっ、孫権がこっちに来たな。


権「貴様が天の遣いと言われている男か。」

さっきとはうって変わった態度だな。


昴「ま、一応そういうことになってる。」


権「・・・腕は立つみたいだけど、何が目的でお姉様に近づいた?」


昴「お互いの利害が一致したから共闘している。荊州に集まった賊を何とかしたいってね。」


権「荊州で何が起ころうと貴様には関係ないのではないか?」


昴「異なことを言うな?・・孫権、君は自分に関係なければ守らないのか?自分の周りさえ良ければそれで満足か?」


権「そのようなことがあるか!私は貴様が信用するに足らんと言っているのだ。」


昴「経験不足故に狭量だな。目の前の人物と言葉を交わしてその人となりを掴めないようじゃ将止まり、王にはなれないぜ?」


権「貴様!私を愚弄するか!」


孫権が腰の剣に手を掛ける。


冥「お待ちください蓮華様。確かにこやつは素性が知れませんが、今まで行動をしていて怪しい点などまるで無く。またその武力と知略は他の追随を許さない程の能力を有しております。共に並び立てば必ずや孫家に繁栄もたらす存在でしょう。」


権「・・公謹がそういうのならばそうなのでしょうが、私はまだ信用することは出来ないわ。」


それを言い残すと孫権は立ち去ってしまった。


昴「やれやれ、若いというか何というか・・」


冥「昴よ、あまり蓮華様をからかわないでくれ。」


昴「悪い悪い。大器を見るとついな。・・しかし、今は経験不足故に柔軟性には欠けそうだが・・ふふっ、この先に期待って感じだな。」


祭「お主が認めたのなら問題はあるまい?」


昴「俺はあくまでも素質を見たに過ぎない。それを開花させるも埋もれさせるも孫権次第さ。」


冥「蓮華様なら心配は無用だ。」


昴「なるほどね。」


信頼されてるんだな・・・もう1人こっちに来たな。


尚「おねぇちゃんは相変わらずねぇ・・ねぇねぇ、あなたが天の御遣い?」


昴「ああ、そうだよ。」


尚「ふーん・・・ニヒッ、えい!」


昴「おっ?」


突然孫尚香が俺に飛び付いた。あわてて俺は受け止める。


尚「・・(ジ~)」


孫尚香は俺の顔の近くで顔を覗きこむ。


昴「どうした?」


尚「へぇー、顔も髪もすごく綺麗なのね。」


昴「ど、どうも。」


何か誉められたな。


小「うん!シャオ、あなたの事気に入った!私の名前は尚香。真名は小蓮っていうの。シャオって呼んでね♪」


昴「真名までいいのか?」


小「シャオあなたの事すごく気に入ったし、それにそのうちシャオの旦那様になるんでしょ?シャオは全然構わないよー。」


昴「その件はともかく、俺は御剣昴だ。よろしくな。」


小「ん♪よろしくしてあげるー♪」


俺はシャオを地面に下ろす。なるほど、冥琳の言葉の意味がよく分かった。すると先程立ち去った孫権と他に3人が雪蓮に連れられてやってきた。


昴「よう雪蓮、どうした?」


雪蓮に尋ねると、


権「貴様、何故姉様の真名を口にする!」


はぁ~、孫権が突っ掛かってきた。


昴「んなもん預けてもらったからに決まってんだろ?孫権言えどそこにとやかく言われる筋合いはないぞ?」


権「姉様、本当なのですか!?」


雪「本当よ。ちなみに私だけじゃなくて、冥琳と祭、それに穏も許してるわよ。」


権「なっ!」


甘「・・・腕は立つようですが・・。」


泰「雪蓮様が真名をお許しになる人物なのでしょうか?」


凌「・・・。」


雪「そう言わないの。昴はあなた達の夫になるかもしれない男なんだから♪」


権・甘・泰「ええっ!?」


凌「・・!?」


おいおい。


泰「あ、あの、どういうことでしょう?」


雪「昴は今この国で大きく知れわたってる。天の御遣いなの。そんな貴種の血を孫呉に入れることが出来たら、大きな力になるでしょ?」


冥「少なくとも、孫呉に天の遣いの血を引く人間がいる、という評判に繋がるだろうな。」


いや、そんなこと言われてもな・・。


雪「そういうこと。昴と共闘する際に交わした約束事の1つよ♪」


昴「いやいや約束してないし。」

権「な、何たる浅慮!お姉様は私たちの意志を無視するおつもりですか!」


雪「とは言っても強制はしないわ。あなた達が昴を認めたのならそうするっていう話よ。」


権「そう・・ですか。」


雪「それに、いざという時は私が昴の子を成すつもりだしね♪」


権「お姉様!」


雪蓮はどこまで本気なんだか・・。


冥「あくまでもそういうことだ。興覇、幼平、公績。3人とも良いな。」


甘「・・はぁ。」


泰「は、はい!」


凌「・・・。」


祭「安心せい、昴はなかなか骨のある奴じゃからのう。」


祭さんが俺をフォローしてくれている。それでも孫権は、


権「ふん。」


不満そうだ。そりゃそうだろ。


雪「とにかく皆昴に真名を預けなさい。」


明「は、はい!あの、姓は周、名は泰、字は幼平、真名は明命!昴様、よろしくお願いします!」


昴「俺は御剣昴だ、よろしくな?」


明「はいっ!」


元気な子だな。それにこの子の得物、俺の村雨に似てるな。


思「・・我が名は甘寧、字は興覇。・・王の命令による真名を教えよう。思春という。」


昴「よろしくな。とりあえずその物騒な殺気をしまってくれると助かる。」


思「ふっ、やはり腕は立つな。だがよろしくするかどうかは孫権様次第だ。」


そういうと思春は孫権の後ろに下がった。身のこなしと得物からして速さを生かして戦うタイプか。

そして最後はショートカットの拳法着をきた人物だ。


凌「・・・。」


冥「公績、どうした?」


凌「・・気に入らねぇ。」


雪「ん?」


凌「気に入らねぇんだよ。いくら大将の命令でもはいそうですかと真名は教える気はねぇ。」


祭「これ、公績!」


凌「へっ!」


はぁ、また癖のある・・。


昴「ならどうすれば認める?」


凌「そうだな・・俺と一騎討ちをしろ!俺に勝てば認めてやる!」


昴「って言ってるが?」


俺は雪蓮の方を見る。


雪「・・良いわね。公績がどれほどになったか見ておきたいし、それに・・・昴の実力も気になるしね。」


あっさり許可がおりたな。


凌「そんじゃ、早速始めようぜ!」

昴「ああ。」





※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



俺達は雪蓮達から少し離れた位置で対峙する。


雪「審判は私がするわ。勝負は決着が着いたら終わりにするわ。」


凌「がっかりさせないでくれよ、御遣い!」


昴「期待には答えるよ。」


凌統が構える。見たところ得物は見えない。


昴「(暗器使いか?そんな感じはしないな。なら凪と同じ拳法家か?)」


先程祭さんに聞いたら凌統の実力は雪蓮の次に強いらしい。まぁ仕掛けて見れば分かるか・・俺は朝陽と夕暮を抜く。


雪「それでは・・始め!」


空に上げた手が下ろされた。


凌「おりゃあ!」


先に仕掛けたのは凌統。右拳を俺に振り抜く。


昴「ふっ。」


俺は左に避ける。


凌「甘ぇ!」


凌統は反動を利用して左足で俺に一撃を見舞う。俺はそれをスウェーで避け、そのまま朝陽を降り降ろした。体勢が崩れているため、凌統は避けられない。


入る。


そう思った瞬間、凌統が左腕で朝陽を受けた。


ガキン!


昴「!?」


朝陽を当てた感触は皮膚でもなく鉄そのものだった。


昴「(腕を氣で硬化させたわけではない。これは・・・っ!?)」


すると凌統が俺の懐に飛び込み、そして、


ヒュンヒュンヒュン


手元で何かを回し、そして。


凌「はぁ!」


俺に振り上げた。


昴「ちい!」

俺は先程以上に後方に身体を反らし、3回バク宙を繰り返し、距離をとる。

そうか、凌統の得物は、


トンファー


トンファーとは攻防一体の戦いが出来る武器で、扱いは難しいが熟練すればかなりの代物になる武器だ。


昴「(トンファー、話には聞いたことがあるが相対するのは初めてだな。)」


凌統はステップを踏みながらトンファーを回している。


凌「やるじゃねぇか。だがなまだまだこれからだぜ!」


凌統が再び距離を詰めてくる。打つ、突く、払う、そして薙ぎ払う、そこに足技も加わるため、相手ペースに嫌でも巻き込まれる。

防戦一方のまま時間が過ぎていく。


凌「どうしたどうした!手を出さねぇのか!?それとも出せねぇのか!?あまり俺をがっかりさせんなよ!」


依然として勢いを落とさずにこちらへ向かってくる。


昴「(だいぶ掴めてきたな。)」


凌「おらぁ!」


凌統がトンファーを突いてくる。


ギン!


凌「何!?」


俺はトンファーの突きを夕暮の剣先で押さえた。


昴「初めて相対する得物だから少し戸惑ったが、もう慣れたし間合いも掴んだ。第2幕、明けさせてもらうぞ。」


俺はトンファーを押さえ込みながら凌統に告げた。





※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



凌統side


トンファーと双剣の一本との鍔迫り合いは未だに続いている。


凌「(もう慣れただと?馬鹿な、大将ですら俺の得物に慣れるのにかなりの時間がかかったんだ。ハッタリに決まってら!)」


剣を払いのけ、もう一本のトンファーで一撃を放つ。


凌「はっ!」


ガキン!


剣で防がれる。


凌「まだまだ!」


波状攻撃を御遣いに浴びせる。


ヒュン、ヒュン、ガキン!ヒュン、ガキン!


先程まで大きく避けていた時とは違い。必要最低限の無駄のない動きで避けられる。


凌「(ちい!ホントにこの短時間で間合いを掴みやがったのか!だがそれならこれはどうだ!)」


一度距離を取り、一直線に突っ込む。


凌「はぁ!」


渾身の突きを浴びせる。


ガキン!


やはり剣先で防がれるが予想の範囲内だ、本命はこっちだ!

トンファーが剣先に当たると同時に半身になってそのままの横向きで一気に懐に飛び込んだ。


凌「いただきだぜ!」


手元でトンファーを回し、そのまま一撃を見舞う。


ギィン!


御遣いは慌ててもう一方の剣で防ぐがその剣を弾き飛ばされてしまう。勝負をかけるならここだ!ここを勝機と見た俺は一気に勝負をかけた。相手は剣を一本飛ばされているのだ。勝機はこっちにある。だから気付かなかった。俺が剣を弾き飛ばした時。御遣いの表情は驚愕ではなく、笑みを浮かべていたことに。防戦一方で防ぐことに必死になっている御遣い。勝負あった。止めに向かった。


凌「終わりだー!」


俺はありったけの力を込めて御遣いに一撃を振るった。しかし右手の一撃は剣で弾かれ、左の一撃は空いた手で払われた。


凌「ちぃ!まだまだ・・!?」


よく見ると、左の一撃を払った直後、その手は硬く握られ、拳を構えていた。


凌「(ヤバい!)」


慌てて両腕を胸の前で十字を組み、攻撃に備える。


ドン!


凌「ぐうっ!」


防いだものの衝撃までは殺すことが出来ず、後方へ飛ばされる。慌てて体勢を整える。


凌「ちぃ!仕切り直しだ!」


再び距離を摘めようとしたその時、


昴「動くな!死にたくないならじっとしていろ!」


凌「(!?・こいつ、何を言って・・)


その刹那、


ヒュン、ヒュン、ヒュン、ザク!


俺の髪の毛1本が何かを掠めた。


凌「何が・・っ!?」


髪の毛を掠めたものの正体、それは先程弾き飛ばした双剣の片割れだった。


昴「危なかったな、後一歩前にいたらあの世行きだ。」


その顔は笑っていた。


凌「(!?・・こいつまさかこれを狙ったのか!?だからあの時あっさり剣を飛ばされ、いや違う。剣を上空に飛ばしたんだ。)」


その時には気付かず、今になって分かる違和感。その答えがこれだ。


凌「(剣を払われたフリをして剣の落下地点に相手を誘導する。こんなの仮にただの賊や雑兵にすら難しい。それを俺相手に・・。)」


慣れない得物相手の適応力、相手の位置を制御する立ち振舞い・・・格が違う。


昴「さて、続けるか?」


御遣いが地面に刺さった剣を抜き、構える。


凌「・・もういい、俺の負けだ。」


俺は敗北を宣言した。





※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※



昴side


凌「・・もういい、俺の負けだ。」


凌統は敗北を宣言した。へぇー、乱暴な言動とは裏腹に相手を推し量る能力にも長けてるんだな。しかし・・苦労したな。トンファーがあそこまで厄介だとはな。星や愛紗や鈴々、春蘭や秋蘭や凪でも初見ならやられるんじゃないのか?


昴「俺の事、少しは認めてくれたか?」


凌「・・・。」


凌統はうつむいたまま黙っている。怪我をさせたつもりはないんだが・・」


昴「凌統、何処か怪我でも・・、」


体調の有無を尋ねようとすると、


凌「・・すげぇ。」


昴「えっ?」


凌「すげぇぜ御遣い!ここまで強ぇ奴はあんたが初めてだ!」


昴「おぉう?」


急に目をキラキラさせて俺に詰め寄った。


凌「噂は聞いてたけどよ、実力は噂以上だ!こんな力の差を見せられたのは初めてだ!」


昴「それは何よりだ。」


凌「くぅぅー!ドキドキがまだ治まらないぜ!」


凌統はおおはしゃぎをしている。


昴「それで、俺の事は少しは認めてくれたか?」


楓「当然だぜ!俺の姓は凌、名は統、字は公績、真名はかえでってんだ、よろしくな!」


昴「俺は御剣昴だ。楓、よろしく頼む。」


楓「よろしくするぜ昴の旦那!」


旦那ね、まぁいいか。


楓「・・あのよ。」


昴「ん?」


楓「その・な、子供についてはもう少し覚悟を決めてからにしてくれよな?その・経験ねぇからよ・・。」


はぁ、そのことか。


昴「心配するな、俺は無理矢理する趣味はないしもともとそのつもりはない。子供は将来の夫に授けてもらうんだ。」


楓「いや、別に昴の旦那で構わないんだ。どのみち俺は相手なんて現れないだろうしな。」


昴「ばーか。」


俺は軽く楓の頭を小突く。


楓「あた!」


昴「楓は自分の思っている以上に可愛い女の子だぜ?武と同じくらい女を磨けば相手なんざいくらでも出てくるぜ?」


楓「//・・昴の旦那!何言ってやがる!」


昴「もうちょい自分を磨け、なっ?」


楓「//・・ああ~、俺戦の準備してくる!」


言うと猛スピードで駆けていった。速いな。


祭「やれやれ、まさかあの楓をのう?」


冥「孫家の将来は安泰そうだな。」


穏「ですね~。」


昴「何の話だ?」


雪「気にしないで。こっちの話だから。・・それじゃあ、戦の軍議を始めるわ。将は皆私の天幕に集まりなさい。」


「「「「御意!」」」」


賊討伐の為の軍議が始まった。


孫呉の集結し、孫家にとっての第一歩の戦が始まろうとしていた。






続く




今回はここまでです。調子に乗って新キャラ出しちゃいました。蛇足にならないように頑張ります。気が付けばPVが7万を突破しました。この小説を覗いていただきありがとうございます。感想、アドバイスも随時お待ちしています。それではまた!

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