ヴィーナスの腕
~1~
身の丈2mもあるミロのヴィーナスは当然知られているように腕がない。ルーブル美術館でそれを観光客たちが見ながら論じていた。
「なあ、どうして、ヴィーナスには腕がないんだい?」
「事故じゃね?」
「いや、失敗したから作者が折ったんだよ。」
「どっちでもいい!重要なのは腕がない、その事実だ。」
「つまり?」
「ヴィーナスがいない事で腕がどんな形をしていたか。不確かな美がそこに含まれているのだ。」
「なるほど。つまりどんな腕をしてるか分からないからこそ面白いてわけでしょ?例えば腕がへびとか。」
「ヴィーナスに限ってそんな事はない!」
「なんだよ、石像なのにムキになって。」
「うるさいな!」
その時一人の人が怒鳴り出した。
「うるさいのはてめえだ!静かにしろ!」
その日、ギリシアの海岸は夜で黒々とした海面を波で白く泡立てていた。水平線よりやや下には、やや欠けた月がゆらゆらと反映させされていた。波音がさわさわと聞こえる。
やがて岸の方になにかが上がってきた。波に流され滑りながらもそれは上がってきた。それは白かった。細長く、二つあった。先が五つに分かれていた。よく見るとそれは二本の腕だった。右腕が左腕より短い。指と肘で陸を這い、道路を渡っていった…
観光客の名はそれぞれ、鮒田、鮭上、鯨野、鰻中であった。彼らは美術館から出ても相変わらずヴィーナスの腕について論じていた。
「やはりヴィーナスの腕は、折られたんじゃない?」
「鮒田、お前はそう言うかもしれんが、やはりビーナスは今や腕が無いことが一つのシンボルとなっている。自然だとすると神の御業で、折ったのならなおさら天才的だ。」
「でもそれって、あくまで結果論じゃない?」
「結果論だと?ヴィーナスの腕でない部分はどれも精巧に作られている。だからこそ歴史に残った。歴史の過程で腕が失われたのは、歴史性によって作られたヴィーナスの昇華であり従って…」
論じているうちにギリシアのホテルに着いた。だがフロントマンはいない。
「すみませーん、鍵!」
だが返事はない。
「これじゃあ荷物の整理ができないじゃん。」
「どうするんだよ。」
「ほんと…あ、ちょっと待って…」
鰻中が言ったので、皆が彼の見ている先を見た。ホテルのフロアの奥の、赤いカーペットの上に、うつ伏せで横たわっている人を発見した。眠ってるにしてはどうも様子がおかしい…四人は顔を見合わせ、言った。
「これ…やばくね…」
「ずらかろう。」
「そうだな。」
ぼと
背後で音がした。振り替えると二本の真っ白な華奢な、それでいてやや大きな腕。四人は天井を見たが何もない。再び腕を見つめながら四人は言った。
「なんだこれ…」
「やけに白いな…」
「ん?」
突然、その腕の指が動き出して、どどどどどと走り出して、鮭上に飛び掛った。
「わあああああ!!!!」
「鮭上ぃぃぃ!!!!」
鮭上は苦しみ、首を掴む白い腕を掴んで解き放とうとしたが力があまりにも強く、やがて鮭上の腕はだらんと下がってしまった。
「・・・!!!」
三人が唖然とする中、白い腕は鮭上を離してゆっくりとこちらに向かって旋回した。
「逃げろ!」
三人が逃げ出すと、二本の腕は、指で高速にだだだだだと走り出した。その速度は異常に速い。このままじゃ追いつかれると判断した三人はフロントの開いてるオフィスのドアの中に、鮒田、鯨野、鰻中の順番に入った。鰻中が入ろうとするときに鮒田は「早くしろ!」と叫んだ。腕はすぐ後ろにある。鰻中は急いでオフィスに入った。
がんっ
だがドアに白い腕が挟まれた。
「うわああ!!!食い止めろ!」
鰻中がドアを必死に押さえつける中、二人は腕をがんがん蹴った。だが異常に腕が硬く効果すらない。
「これは・・・石・・・?」
そして腕はどんどんもがいて、ドアから飛び出そうとしていた。
「もはや、だめだ!鰻中を手伝え!」
三人でドアをぎゅうと押し付けるとようやく腕はひじのあたりでもがきながら進行を止めた。
だが、もう一本の腕がドアの隙間から現れた。
「!!!」
そして両腕がどんどんドアから飛び出してきた。
「どうしよう!」
「部屋の中にいてもだめだ!こうなったら・・・外に逃げよう!」
「どうやって?」
「今だ!と言ったら、腕を踏みつけて行け!!!」
がたがたがたがた、ドアが激しく揺れた。もはや腕がほとんど部屋の中に入ろうとしていた。
「今だ!」
ドアを離すと腕が勢い良く飛び、入れ違いに三人は飛び出した。腕が部屋の中に入ると、三人は急いでドアを閉め、フロントから鍵を発見してオフィスの鍵を閉めた。部屋の中で腕ががんがんと暴れる音がした。
「・・・あれは・・・一体・・・」
「あれは・・・ヴィーナスの腕じゃないか・・・」
鯨野がぼそりとそう言った時、三人の間に小さな衝撃が走った。
「ヴィーナスの・・・」
「腕・・・?なぜ・・・」
「あれは石でできている・・・ヴィーナスは通常の人間より大きいがその寸法と会う・・・そしてヴィーナスの断片同様に片方が短い・・・」
「そんな・・・・」
「私も信じたくない・・・・ヴィーナスがあんな腕だなんて・・・・」
三人は警察に話したが、もちろん信用されなかった。そこでフロントのオフィスに閉じ込めてあると話し、警察とともにオフィスに行った。だが、オフィスには誰もいなかった。良く見ると、鍵が壊されていた。
三人は再び寒気がした。
~2~
それからと言うもの、原因不明の殺人事件が次々と発生した。どの事件も絞殺で、異常に力が強く、窓が割れた痕跡などはあった。
鮒田と鯨野と鰻中は「自分は腕に襲われた」と何度も警察に説明したが、警察は信じてもらえなかった。むしろ警察は笑いだした。おまえら、何を言ってるんだ。腕が、ヴィーナスの腕が襲ってくるだって?かつぐつもりか?公務執行妨害で逮捕するぞ。帰れ帰れ。
だが、ちらとその情報を聞いた相田小見郎と言う青年は、何か閃く物を感じた。彼は考古学者でギリシアの石像の研究をしていた。彼にはとある研究結果があって、ヴィーナスの腕はそれに新たな風を吹き込むのではと興味を覚えたのである。
ある日の事である。再び殺人事件が起きた。被害者は52才の大富豪。なんとこの富豪は部屋中に監視カメラを設けていた。何故か警察は鮒田、鯨野、鰻中、そして考古学者の相田を呼んで言った。
「三人ともいままで疑って申し訳ありませんでした。相田さんはあなたたちに興味を持ったので是非会いたいとの話を伺い呼びました。まずはこれをご覧ください。」
テレビは砂嵐からやがて一つの光景を映し出した。
富豪のシュセン・ドーは古き良き時代のシャンソンをレコードで流しながらテーブルの上の書類を読んでいた。やがて疲れたのかふああぁとアクビして、伸びをした。「肩こった」と独り言を言っていた。
その時、肩に手が伸びて、肩揉みされた。彼は気分が良くなって「サービスがいいじゃないか。誰だい」と振り向こうとした。
その瞬間肩揉みした白い手が突然シュセンの首を絞め始めた。あまりにその力は強く、離せない。「ごげげぐ」と呻きながらシュセンは椅子から崩れ、床に倒れて事切れた。たった今一人を殺めたその腕は、シュセンから離れて指で歩き出した。それは腕しかなかった。
このVTRを見て、警察は鮒田に質問した。
「…この腕は以前貴方がたを襲撃した腕とほぼ同じですね。」
「はい。」
「どうしてヴィーナスの腕だと思ったのでしょうか?」
「あの、その日、ルーブル美術館に行ったのです。ヴィーナスの大きさはそれはそれは、普通の人より一回り大きかったです。そして、この腕もふつうの人間よりほぼ大きく、私の感覚ですが、ヴィーナスとほぼ同じ、人間との縮尺です。さらにはヴィーナスの切れた腕は片方がちょっとだけ長いですよね。それもあの腕と同じだったのです。」
「なるほど。」
その時相田が質問した。
「鮒田さん、襲撃されたホテルはどこでしょうか?」
「マンドセンホテルです。ギリシアの海ぞいです。」
相田の目が光った。
「日時を聞くかぎり、そのホテルはおそらく最初に連続殺人事件が起きた場所ですね・・・・」
「はい。」
相田は察した。あのヴィーナスの腕はあのホテル付近の海から出没したに相違ない。では、あの海を調べよう・・・・
「とにもかくにも、あれを捕獲しなければいけません。捕獲作戦はすでにこちらで考慮済みです。あなた方には護衛をつけますので安心してホテルにお帰りください。」
警察はそう言って、皆を帰した・・・
~3~
広場の真ん中におとり捜査官が立っていた。捜査官は不安な表情を隠せずにいた。しかし、予想ではヴィーナスはここ周辺にいて、近隣住民を全て避難させたから、必ず来るであろう。警察はじっと見張っていた…
*
海中。潜水艦は突き進む。中の相田は操縦しながら考えた。ある日突然腕が海から飛び出した。ヴィーナスのあの能力を考えて、今まで海をさ迷っていた、というよりも、拘束されていたが何かの拍子で解放されていた、と考えた方が妥当だ。腕は棒状だから縛るとすぐ抜ける。では箱なのか…
*
がさがさ、おとり捜査官の背後で音がした。ついにヴィーナスが来たか。警察は音のなる方に注視した。捜査官は自分の四方八方に敷かれている網を見つめていた…
*
見渡しても白い砂。なかなか見つからないのを相田はもどかしく思った。だが、あの海から現れたのだから、何かあるはずだ。
おや?相田は気づいた。何か黒い四角いのがある。箱だ。まさかと思い、潜水艦アームで少し空いていた蓋を開くと、腕が入りそうなスペースと何か書かれた石板があった…
*
がさがさ、と茂みから音がし、次の瞬間ヴィーナスの腕が飛び出した。飛びながら捜査官の首に向かうつもりだ。
「いまだ!」
ひゅいっぱーん。地面に仕掛けた罠が発動し、ヴィーナスの腕は網に引っ掛かった。腕は必死にもがくが、網はかなり強力だ。
*
「ヴィーナスの腕が捕まったそうじゃ。これから、わしは警察に交渉して、腕をもらい、ヴィーナスに着けてみようかと思う」
そう相田の上司の九塁教授から連絡が入った時、相田は早速、見つけた古文書を解読していた。古文書は概ねこのような意味で書かれていた。
“我々は生きた人間や生き物を、そのまま石像にする技術を手にいれた。それらは神殿に飾ったり岩の中に埋めたりした。そしてギリシアに存在した太古の人間との異種、悪魔や天使や神や恐竜も、我々にとって恐ろしいため、捕まえて石にして偶像化した。しかし恐竜は失敗して全て骨になってしまった。骨になった石像は全て埋めた。
だがある一人の神、アプロディテ(ヴィーナス)だけは一つミスがあった。彼女は完全に石像になる前に、腕だけ抵抗して、体から飛び出した。腕は生きていて、確実に人間への復讐の念、アプロディテの意思を感じた。
我々は恐ろしくなった。この石でありながら生きている腕がもし彼女の石の身体に戻ったらどうなるか。腕の生命エネルギーが体内に還元されて、彼女は甦る”
ここまで読んで相田はこれはすごい!と感じ、九塁教授に甦る件を連絡した。教授は「よみがえる?なるほど、今搬入中だ。もうすぐヴィーナスは甦る。あ、今忙しいから電話はあとで。」と嬉々として言って電話を切った。
だが相田は次の文を読んでぶったまげた。
“アプロディテ(ヴィーナス)は豊穣と生命の神。彼女から発せられる生命エネルギーは絶大だ。もし彼女が甦ったら、彼女は全ての石像―たとえ作り物でも―を甦らせて人間に復讐させるに相違ない。だから我々は腕を封じ込める事に”
大変だ!と思った。早く止めないと大変な事になる!相田は研究所を飛び出した。
*
暴れる腕を機械で強固に押さえながら腕は運ばれた。だが、近くにあるのがヴィーナスと知るや否や、腕は大人しくなった。九塁教授は歓喜で叫んだ。
「やはり、再生への期待があるのだ!結合せよ!」
ヴィーナスの破片と腕が接近すると間に火花のような物が散った。作業員は叫んだ
「腕が勝手にずれます!強力な磁力のようです!わあ!」
腕がぎゅん、と動いて、ついにヴィーナスと接着した。断面はピカッと光って、消えて結合した。
「いよいよだ…」
ヴィーナスの頭が動きだし、両手を見つめた。そして突然ヴィーナスは黒い口を明けて「おほほほほほほ」と笑い出し、言った。
「ついに時が来た、人間への復讐の時がぁ!覚悟しなさい!おほほほほほほ」
ずん、突然ヴィーナスの周りから衝撃波が放たれた。研究員と教授らは倒れたが何が起きたか分からず、きょろきょろ見回していた。次の瞬間、ヴィーナスの背後から大量の剣を持った石像兵士が現れ、研究員らに襲撃した。
~4~
世界で悲鳴に満ち満ちた。世界中の石像が甦ったからだ。あちらこちらで声がした。
「離せ!離せ!うわっ!」「やめて!やっ!」「その剣はどうせ偽物だろ、ははは、ごげぐはぁ!」「ごがぎぎぐげ」「あぁぁぁあぁぁ」「ぼぼぼぼぼ」
アメリカでも悲鳴が上がっていた。自由の女神が歩き出してビルを破壊しまくっていたのだ。
日本でも、座っていた大仏が立ち上がって東大寺を破壊したと言う。
そしてギリシアの悪鬼や騎士に襲われた人民の中を相田はバイクで駆け抜けた。まずヴィーナスを止めねば…と彼は考えていたのだ。
目の前に騎士が3人現れた。走って矛を持って現れたが、相田は銃を抜き、パパパンと3人の額を撃ち抜いた。バイクが騎士の上を通った。
*
鯨野は悲鳴を上げた。ヴィーナスが歩いていたからである。完全な姿で。それは彼にとってあってはならない光景だった。
「うぎゃあああ」
「よせ!鯨野!」
「気づかれるぞ!」
ヴィーナスはこちらを見た。そして接近して来た。
「来るぞ!」
「逃げろ!」
「いや、無理だ、追いつかない!」
「じゃあ、闘うのか?」
「その通りだ!」
見渡せばすぐ近くにシャベルとかなずちと電動ノコギリがあった。鮒田はシャベル、鰻中はかなずち、鯨野は電動ノコギリを手にした。
「がああああ!」
*
バイクで相田は走り続けていた。さっきは周りは怪物と騎士で溢れていたが、今はひっそりと静かだ。バイクの音と悲鳴しか聞こえない。どうしたのだろう。
その時、背後から、どすどすどすどすと地鳴りが聞こえた。何だろうと思って振り返ると、ダビデ像がこちらにむかって全力疾走してきた。相田が悲鳴を上げる間もなく、ダビデ像は高く跳び、バイクを蹴った。バイクに乗った相田は勢いよく飛んで、ずざざざざと床を滑っていった。
う…と呻きながら相田は起き上がった。ダビデ像が後ろを向いている。逃げるなら今だ…と相田は逃げ出した。
やがて、どすん………どすん……どすん、どす、どす、どす、と背後から地鳴りが聞こえた。相田は嫌な予感がしたので更に走った。どすどすどすどすどどどどどと足音は早まった。後ろを振り返るとダビデ像がこちらに向かって走ってくる。瞳孔のない目は確実に相田を捉えている。相田は悲鳴を上げながら、逃げた。ダビデ像はジャンプした。相田の周りに影が落ちる。
ずどーん!
幸い相田はダビデ像の足の間にいた。だがピンチ。ダビデ像は相田にむかってパンチしようとした…
だが、突然ダビデ像は立ち上がり、相田の元から去った。あれ…どうしたのだろう…
悲鳴が聞こえる。
「天使だ!天使が来た!」
空を見上げると、大量の石像の天使が飛んでいた。天使は一斉に弓を構え、光の矢を引っ掻けた。
「逃げろ!」
ビュン、ビュンビュン、ビュン、
天使は矢を飛ばした。矢は建物や道路に当たって爆発した。
ヒュ、ズドーン、ズガーン、ドゴゴゴゴ…
*
全ての騎士を粉々にした三人は3mあるヴィーナスに向かった。ヴィーナスは三人を見ると高笑いして言った。
「おや、また会いましたね?あの時の生き残りとは憎い…今度こそは仕留めますわ。」
鰻中は叫んだ。
「鮭上の仇だ!お前こそ今度は…うわっ!」
鰻中の足に騎士の腕が絡み、鰻中は身動きが取れなくなった。
「『お前』とはねえ…。神に敬意を払っていただきたい。」
ヴィーナスは上から手を降り下ろして、鰻中を叩こうとした。
だが、鮒田が、工具入れから釘抜きを投げた。釘抜きはヴィーナスの額に命中し、ヒビが入った。
「うがああああ!」
ヴィーナスはもがき苦しんだ。鰻中は逃げた。その時。
「どけ、二人とも。」
鯨野がバズーカを構えて言った。
「鯨野、そのバズーカは…」
「そんな事はどうでもいい。俺の理想を打ち砕いたヴィーナスめ!今から貴様の頭を打ち砕く!」
ばぎょーん!バズーカはヴィーナスの胸部に命中し、胴体から爆破された。腕と脚だけになったヴィーナスはそのまま倒れた。
「はっはーざまーみろ!ヴィーナスめが!」
*
突然天使の襲撃が止んだので相田は何事かと周りを見た。あたりはシンとしている。人をたまに見かけるが、石像は見かけない。よく見ると、妙なポーズのまま静止しているダビデ像があった。あれ?ヴィーナスはやられたのか、それとも重傷を負って生命エネルギーが損なわれたのか。
ガシャーンという音がした。なにかが道路に落ちて道路が壊れたのだ。見ると、天使の像だった。次々とガシャーンと言う音をたった。天使が降ってきた。ガシャガシャと音を立てて、天使は町と言う町を埋めつくしていった。
*
「鯨野、そのバズーカ、どこにあったの?」
「軍部がヴィーナスに破壊されたからそっから持ってきた。」
「そうか…」
三人は残骸を見つめた。今残ってるのは足だけだ。
「これも、壊そう。」
「そうだな。」
ズガーン。
*
その日もギリシアの海岸は黒々とした海面を波で白く泡立てていた。水平線よりやや下には、満ちた月がゆらゆらと反映させされていた。波音はあまりしない。
岸から白い何かが這っていた。ヴィーナスの腕だ。三人が会話している最中に逃げたのだ。ヴィーナスは体は破壊されたが意思はまだ生きていた。人間への憎悪の念、体の復元への期待を腕に抱きながらヴィーナスは海に沈んでいった…
(完)