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英霊少年〜三百年前に転移した少年が魔法理論を解明して世界を救うまでの物語〜  作者: 仁見ヒロ


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第十話:新たな魔法の産声




 昼ごはんを食べ終え、三人は庭先に出た。



 リィナとの修行で倒れたアルトも、

食事を終える頃には元気になっていた。



 老婆は庭先の切り株に腰掛け、

二人を静かに見守っている。



『陽の光、招きて結ぶ ―― 灯れ、小さな火』


 ぽっと、指先に火がつく。


「まずは僕の生活魔法から、実験してみようと思うんだ」

「おもしろそう!何するの?」

「僕が魔法を使う時に言ってる、詠唱の言葉を変えようと思うんだ」


 アルトの指先の火がふっと消える。


「詠唱って、アルトがぶつぶつ言ってるあれのことだよね?」

「そうそう!

 村では生活魔法って呼んでたけど、

学校では『詠唱魔法』って習うんだ。

 詠唱っていうのは、神父さんの祈りみたいに、言葉を唱えることなんだって。

 その言葉に意味があるのかわからないけど、まずはここから試してみようと思うんだ」

「別の言葉を考えれば良いのね。任せて!」


 リィナは片腕を組み、もう片方の手で自身の頬を触りながら、空を見つめる。


 アルトも一緒に、顎に手を当て考え込む。



 リィナはすぐに思いつき、人差し指を立てる。


「じゃあさ!

 『小さな』を『大きな』にするのはどう?」


「うん、単純だけど良いね。やってみよう!」



 アルトは集中して、詠唱する。


『陽の光、招きて結ぶ ―― 灯れ、"大きな"火』


 指先にぽっと光が出る。



 さっきより火は大きくなっているが、

形は安定していない。


 小石くらいの火の玉が、指先にふらふらと浮かぶ。


「大きくなった…」


 アルトは驚きと喜びのこもった声でつぶやく。


「すごい!大きくなったね! 成功?」

「……大きくはなったけど、

まだこれじゃ魔族と戦うなんてできないよ」


 喜びも束の間、アルトは悩みの渦に戻される。


(うーん、どうしよう…)



 考え込むアルトにリィナが声をかける。


「もっと色々試そうよ!」



 リィナの純粋な好奇心が、

立ち止まっていたアルトの背中を押す。


「そうだね、まだはじめたばかりだった。とりあえずやってみよう」


 詠唱を変えれば魔法も変わる。

本当は変わるかどうか不安だった。


 まずは変わってよかった。


 小さな一歩だけど、着実に前進している。



 アルトがリィナに問いかける。


「ほかに変えられるところってあるかな?」


「変えるとしたら前の方かな?

『陽の光』って、お日様だよね!

お日様より熱いのってなんだろ〜」


「お日様より熱いの…

 それこそ火そのもの…ぐらいかな。

 うーん、でも、燃えてる火は熱いけど、

なんか違和感あるんだよね」


 アルトは苦しそうに考えを言葉にする。


「どういうこと?」

「火って勝手につかないだろ?

 たとえば『めらめら燃える火よ、集まれ!』って詠唱してもさ、

 そもそも火がないから集められない」


 それを聞いたリィナは小首を傾げる。


「それ言ったらさ、

『陽の光、招きて結ぶ』もよくわかんないよ」


「僕の頭の中では、お日様が集まって、

熱くなって、メラメラって…」


「そっか、私にも教えてくれたイメージよね!

 …じゃあさ、その火がメラメラで、

もっと大きくなって、バーン! って……。

 それを言葉にしたらいいんじゃない?」


 リィナの言葉でアルトの中の考えが繋がる。


「すごいよリィナ! そうだよ!

 擬音ばっかりだけど、その通りだよ」

「褒めてるの? バカにしてるの?」

「褒めてるにきまってる」


 アルトはいじわるに笑いかけ、

リィナはイーと歯を見せる。



 二人の笑い声が、静かな庭に響いた。



「そうか…頭の中で火をもっと大きくするんだ…

 なんだろう、

 『燃え上がる、大地を焦がすような、

敵を倒せるような――』」



 アルトはぶつぶつと考え事をしながら、

『生活魔法』と同じ感覚で手を前に開いた。



 リィナもさっきまでと同様、

興味深そうにどんな魔法が出るか覗き込む。



『陽の光、招きて結ぶ。

 灯る火は勢いを増し、大地を焦がさん。

 ―― 立ち塞がる敵を焼き払え…』



 そこまで詠唱して、アルトは気づく。


(まずい、何かわからないけどこのままじゃ危ない!)


 アルトは咄嗟に、二人とは逆の方角へ手を向けた。



「だめだ、火がでるっ!」



 直後、巨大な火の球が放たれた。


 裏庭に続く道と森の境目に着弾し、地面が弾ける。


 凄まじい熱気と熱風が吹き荒れ、

舞い上がった砂粒に、三人は咄嗟に顔を覆う。


 着弾地点は大きくえぐれ、

草花は黒く焦げ、煙が燻っていた。



 幸い、家や森を傷つけることはなかったが、

当たればただの火事では済まなかったはずだ。



 ましてや、人にあたっていたら……。



 考えるだけで恐ろしくなり、アルトは二人を見た。


「リィナ、おばあちゃん、大丈夫?!」

「私たちは大丈夫。でも、ほんとに、びっくりした…」


 リィナは心臓の鼓動を確かめるように、

ぎゅっと胸を押さえて答える。


「アルトこそ大丈夫? 」

「うん、僕は大丈夫」



 おばあちゃんが、呆然と口を開く。


「今のは、王国に仕える火の魔法使いのそれと、遜色ない…すごい威力の魔法だ」


 言われてアルトは納得する。


「たしかにそうかも。

 逃げる時に見た火の魔法も、こんな感じだった…」


 じっくり見れたわけではないが、同じような威力だった。


 ふと光景が思い出され、疑問が生まれる。


「あの時、魔法使いの人は、

魔法を使ったらすぐに倒れていたけど、

それが普通なの?」


「ああ、ほとんどの魔法使いは、

一度使ったら立ってられないほど疲弊するんだ。

次に使うには、早くても半刻はかかるよ」


 老婆は、驚きを隠せない様子で続けた。


「なのにお前さんはピンピンしている…本当に大丈夫かい?」


「うん、何ともないよ。

 …でも、そっか、そうなんだ。

 もしかしたら詠唱魔法って、

力を効率的に使うためにあるのかもしれない」



 一度で倒れるはずの魔法を、何度も。

あの火の球を、何度でも――。



 魔族と戦う姿を想像する。



 直接魔族を見た訳ではないが、あの背筋が凍る恐怖に立ち向かえる魔法。



 文字通り火の海になるかもしれないが、

あの迫り来る魔族たちを倒せる…。



「――ルト、アルト、ねぇ、聞いてる?」



 そんな夢想に耽っていると、

リィナの声に引き戻された。



「あ、ごめん!考え事してた、どうしたの?」

「とりあえず、さっきの場所を消火しないと!

 それに、地面に穴が空いてるから、

このままじゃ誰か落ちちゃうよ!」


「ああそっか、すぐやるよ!

 二人とも驚かせてごめん、でも無事で良かった!」



 詠唱魔法についての疑問は尽きないが、

大きな進展があった。



 詠唱の言葉を変え、頭の中で思い描くと、想像以上の魔法が形になった。



 希望の光を感じつつも、

まずは目の前の問題を解決しなくては。



 アルトは元気に、水汲み場に走っていった。

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