バズる国会
「いいね!」共和国の政治は、国民の声に何より忠実だった。
毎朝、国会議員たちはスマホを手に取り、自分の投稿についた「いいね!」の数で政策を決める。
「昨日の夕飯にカレーを食べました!」
――10万いいね。
「カレー税を撤廃せよ!」
――議会満場一致で可決。
「やっぱり外国人は怪しいですよね!」
――50万いいね。
「怪しい外国人排除法」可決。
一方で、「温暖化対策を強化しましょう」と投稿した議員は、わずか200いいねしか取れなかった。
翌日、その議員は議席を失った。
国民から「バズらないやつに政治を任せられるか!」と罵られたからだ。
やがて国民は二つに割れた。
「ハンバーガー派」と「ピザ派」である。
SNSは両派の対立を煽り、互いを「国賊」と呼んだ。
国会も、議題は「どちらが正義か?」ばかり。
そのうち経済は傾き、環境は荒廃し、外交は孤立した。
だが国民は満足していた。
毎晩スマホの画面を眺めながら、こう呟くのだ。
「我が国は、世界で一番“民意”が反映されている」
そして今日も、議会では叫びが響く。
「ピザを食うやつは国家反逆罪だ!」
「ハンバーガーこそ正義!」
外の世界では、海面がじわじわと街を飲み込んでいたが――
そのニュースは、いいね!がつかなかったため削除された。
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