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【未来日記で運命が変わる異世界物語】  作者: ねこラシ
第一章 俺は帰りたい
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第三話 猫耳のお嬢様

 人間飛行機となりながら飛翔する中でトウマはお嬢様とやらがどんな人物か気になった。


 やんちゃということなら、歳が幼くまだ子供であることはほぼ確実である。だが、その中でもマシな部分は無いかと希望を探し求めていた。


 お嬢様についてヘルメスに尋ねると彼は「そうだねぇ」と一言置いて、


 「とにかく忙しい方だね。自由で危なっかしい方かな。でも、元気があって周囲に光を灯す太陽のような方なんだ。守らないといけない、そう思わせるほど輝いているんだ」


 なるほど、つまりものすごーく元気の良い園児ってことだな。世界中のありとあらゆるエネルギーの集合体のように元気いっぱいなんだろう。


 だが、悪役令嬢のような人に仕えることにならなかったのは不幸中の幸いか。俺はホッと息を吐きながら心の中で思った。


 「新天地で慣れないことが多くて不安だろうけど、あの方はそれを忘れさせてくれる程素晴らしい姫君だから」


 碧の髪を靡かせながら彼は言った。

 「見えてきたね」、彼の一言で俺は正面に視線を移した。どこまでも連なる山々と、大自然を象徴する森林の中、人工の建物が見えた。


 塔ではないかと思うほど高くそびえる城壁とその奥に広がる西洋風の宮殿が俺の心を鷲掴みにした。


 「あれは……一体」


 「国都ケルガルム、王国屈指の大都市さ。皇族の方達が住まう王宮が見えるだろう?」


 王宮なんてヴェルサイユ宮殿を教科書で見たくらいだ。実物を、しかも使用している時になんて……。


 「じゃあ飛ばそうか!」


 「いや俺、ジェットコースターにがてぇぇぇえ!」


 大森林の上を飛び抜けると、木は靡かれ葉を散らした。

 俺の叫びも虚しくヘルメスは音速を出した。間違いなく道路交通法違反だ。


 


 ╂╂╂╂



 やがて飛空を終えた俺たちはケルガルムの国門近くで地上に降り立った。滞空時間が短いのに俺は体がフラつきその場にへたりこんだ。間違いなく加速して飛んだからだろう。


 俺は城壁を見上げた。首を九十度にしてようやく全体が入る。先が雲に届くのではないかと思うほど高いものだった。


 「建設するの大変だったんだろうなぁー」


 「いや、そうでもない。魔法を使えば数ヶ月で終わるさ」


 魔法、そうか魔法があるのか。

 こんなものを俺がいた世界で作ろうと思えば間違いなく百年近くはかかる。石を掘って、加工して、運んで、積み上げて、考えたくもない。


 その時、国門の前に行列が出来ていた。

 やはり異世界なのだろう、洋服を着ている人なんて一人もいないしアニメや漫画で見慣れた平民服をみんな着ている。


 「どうして並んでるんだ?」


 「あれは入国検査だよ。流石に素通りはマズイからね」


 あぁ検査か、いや検査?

 これってあれじゃね、俺が異世界人だーとか言われて襲われるんじゃ。


 「早く並ばないと人が増えてしまう。トウマ、行くよ」


 流石に検査を無視して入国は無理だろう。ここで逃げ出せばどうなるか分からないし、行くしかないのか。頼む、どうか剣だけは振り回されませんように!


 俺は祈りながら立ち上がり列に並んだ。その間も俺は神に襲われませんようにと祈っていた。やがて、俺たちの番が来た。


 甲冑を纏った青年がまじまじと俺を見てからヘルメスを見ると、


 「これはヘルメス様!」


 「やぁグラン、久しいね」


 「会えて光栄です! 警備帰りでしょうか」


 「そう、特に異常は見つからなかったよ」


 「お疲れ様です。どうぞお通り下さい!」


 俺はヘルメスの背を追って中に入ろうとしたが、青年のもつ槍で前を遮られ「止まれ」と促された。俺はドキッと心臓が跳ね上がり、慌ててヘルメスの背中を指さしなが説明した。


 「俺、あの人と一緒に──」


 「何を言うか。お前のような者がヘルメス様と旧知の間柄なわけないだろう」


 さ、様か……やっぱり見た目から薄々感じてたけどヘルメスって国のお偉いさんじゃね? そんな人と一緒にいたのか、俺。青年はマジマジと俺の服を確認して、


 「にしても、お前の服装は見たことがないな。怪しいぞ」


 そう言われ俺は自身の服装を確認する。フードの着いたパーカーに、反対色のウインドパンツ。確かに異世界なら怪しいな。


 だが、俺はそれでもヘルメスとの仲を説明しようとしたが青年は一向に聞き入れようとしない。俺の後ろにはまだ人がいる。俺のせいでつっかえているのだ。


 「ちょっとこっちに来い」

 

 グイッと俺の腕を引っ張り、今にも尋問が始まろうとしていた。俺は必死に先へ入ったヘルメスの背中を見つめながら「振り返ってくれ!」と心の中で叫ぶ。


 その叫びが聞こえたのか、はたまた中々俺が通ってこないことに気がついたのかヘルメスは俺の方を振り返ると、こちらに歩み寄って来た。


 「トウマは僕の──」


 彼が説明しようとした時、列に並んでいた人達がざわつき始めた。俺も後ろを振り返ってみれば中央の道が作られ、その間を走り抜けてくる少女がいた。

 

 彼女が走る度に紫陽花のような紫の髪が揺れ、海のように波打つマリンの瞳は輝きを放っている。紫の花のようなミニドレスのスカートを揺らしながら走る様は本物の花のよう。


 「って、猫耳?!」


 そう、何よりも目を引いたのが髪色と同じ猫耳が頭に二つ付いていること。


 彼女はそのまま人の間を走り抜け、俺に飛び込んで来た。飛びかかられると思っていなかった俺はバランスを崩し、仰向けに倒れた。彼女は飛びかかったままに馬乗りになり俺の顔をまじまじと見つめる。


 幼い童顔の顔がドアップで視界を覆い尽くす。


 「わぁー! ねね、名前なんてゆーの?!」


 「は、はい?」


 「名前教えて教えて!!」


 満面の笑みを浮かべキャッキャッと何故か嬉しそうにしながら名前を尋ねる少女。まさか、この子がお嬢様……なわけないよな! お嬢様はこうやって馬乗りになんてならないし、もっと品性を大事に──


 「ミユ様、今日もご機嫌なようで何よりです」


 「うんうん! ヘルメスも元気そー!」


 ちょっと待ってくれ、嘘じゃないよなヘルメス。この猫耳少女がお嬢様なんて、冗談だよな? 


 すると、彼女が通ってきた通路を同じように歩く初老の着流しを来た男性がミユと呼ばれた少女の様子を見て声を大にして「はしたないですぞ」と言った。この人は爺やとか呼ばれてそうだ。


 場の注目は俺たちに集まった。耳を傾ければ「ミユ皇女」という単語が聞こえてくる。あぁ、てことはこの娘なのか。これは、相当やんちゃだ。


 「起きて起きて」


 俺の上体から降りると彼女は手を掴み、俺を起き上がらせた。立ち上がって彼女を見てみるとやはり幼いのか身長差はある。俺の身長は170くらいだから、大体20センチくらい差があるのか。


 いや、園児で150センチってデカくね? もしかしたら園児じゃなくて中学生くらいの年齢はあったり……?


 そんなことを思っていると、彼女は俺の手を握ったまま門の下を走り抜けた。


 「えええ? ちょ、な、何してるんですか?!」


 「遊ぼー!」


 パッと花が咲いたような笑顔で俺を見る少女。これがお嬢様、だがヘルメスの言うように周囲を明るくしてくれるハーモニーがある。


 門を潜ると、様々な店が並び、牛車を押している人もいれば、買い物をしたり、食べ歩きをしている人もいた。その人たちの間を縫うように抜けながら走った。その中で彼女はまたしても同じ問いを投げかけてきた。


 「ねねっ! 名前はー?!」


 「あ、えぇとトウマです。トウマ・カガヤ」


 「へぇー! トーマ! いい名前! ミユはミユだよ!」


 「な、なるほど。ミユ様、か」


 彼女の名を様付けで呼ぶとそれが気に食わないのか、先程の笑顔は無くなり、ぷっくりと頬を膨らませジッと俺を見つめて言った。


 「様はいらないー! ミユって呼んで」


 「えぇ、でもお嬢様なのに──」


 「だーめ! トーマはミユって呼んで、あとさほーとかいらない」


 それって主従関係じゃなくて、単なる友達じゃない? 良いのかなそれで……。そんなことを思っているとミユは突如として人混みを抜けて裏路地へと入った。


 裏路地に入ればチンピラのような悪い奴に襲われる、というのが異世界もののテンプレなのだが、大丈夫なのだろうか。


 「ちょっと休も!」


 「ここって入っても大丈夫なの? 警備してる人とかは」


 「だいじょぶ! ちゃんと兵士いるよ」


 俺はそれを聞いて少し安心した。いざとなればあの時のように助けを呼べば──


 そうだ、王都に入ったんだし手帳の中身を見ておこうか。でも、あんまり人に見られるのは良くないかも。


 すると、タイミングの良いことにミユが「ふんふん♪」と鼻歌を歌い出しよそ見をしたタイミングで手帳を素早く取り出し、中を確認した。黄ばんだパピルスのような紙にはインクが滲み新しい記述があった。


 『裏路地で戦いが巻き起こりミユが巻き込まれて死ぬ。ヘルメスから離れないほうが良かった』


 誰かの後悔のようにそう書かれていた。俺は冷や汗をかき始めた。もっと早く読んでいれば、そう思ったがもう遅い。ヘルメスとは離れ、路地に入ってしまった。


 俺は呑気に鼻歌を歌っているミユに急いで言う。


 「あ、あのさ、戻った方がいいんじゃない? みんな心配してるだろうし」


 すると、ミユは「うーん」と虚空を見上げ始めた。頼むから戻ってくれ、君の命が危ないんだなんてことは言えないから俺はまたしても祈ることしか出来なかった。しばらく経った後に、彼女は「あともう少し!」と言って再び俺の手を取った。


 「路地は危ない」と告げようとしたが、彼女もそれを知っているのかは分からないが入ってきた細道を見据えて走り出した。


 俺はホッと息をついて彼女の手を握り一緒に走った。するとミユは嬉しそうに「えへっ」と笑った。


 これで変わったはず、そう思っていたが運命とやらはそう簡単に最悪から逃げさせてくれない。まだ、何も終わっていない。だが、俺はもう大丈夫だと心の中で思っていた。


 


 


 

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― 新着の感想 ―
天真爛漫なミユ様ですが思ったよりも高身長ながら、でも可愛らしかったですね。門番へのケアは忘れてるヘルメス氏も面白かったです。楽しく読ませて頂きました。
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