第四十三話 「俺にもいつか青い春が」
「へぇーあれがトウマのパーティーか。中々個性的な感じだな」
広場に着き、俺が元いたチームを遠くで紹介するとアナゼルが相槌を入れた。まぁ彼の言うように青年三人に猫耳族二人、初老の男性一人なんて個性的すぎるパーティーだ。
ともかく俺が抜けてこのチームに入ることを伝えなければいけない。
「トウマ殿随分と、おや」
「お待たせしました。それと、話があります」
四人の先頭に立って俺は五人の前に現れる。遠巻きに見ていた感じ未だに何か話し合っている感じだったから、時間は惜しいだろう。手短に済ませる必要がある。
「突然なんですが、俺はこっちの三人パーティーに入ることにしました」
「どーもー」
俺の後ろからアナゼルが顔を出す。
単刀直入に告げると五人全員が目を丸くした。ただ移籍すると伝えるだけでは言葉足らずだと思ったから、三人という情報を付け加えた。そうすれば、何故かというのは理解してくれるだろうという算段だ。
「三人、つまりは人数が足りなかったというわけか。君はその穴を埋めるために移る、という見解で間違いはないかい?」
「その通りです」
「最低人数は四人だったね。それなら問題ないよ」
流石ワンジュだ。物分りが早くて助かる。まぁ問題なんか起こらないと分かってたけど、そう思った時否を叩きつける者がいた。
「トーマが行くならミユも行くー!」
天真爛漫な猫耳少女ミユだ。
そうだったこうなることも視野に入れておくべきだった。彼女は立ち上がり、俺の足にピッタリとくっついた。
「うーむ、どうしたものか。ユジンどう思う」
彼女の反応に判断が困ったワンジュは側近のユジンに尋ねる。
「行かせるべきではないかと。先程我々の担当する場所を聞かされたことを基にすると一人でも多く人員を確保するべきです」
「担当する場所?」
「あぁそうか君はいなかったね。私たちはラダールさんの近く、その周囲を守ることになったんだ」
「――ッ!」
ラダールの近く。俺たちの担当する場所は知らないが『未来日記』には彼の死が書かれていた。ここでミユを連れていかなかったからという可能性がある。となれば彼女は俺側ではなく彼の近場に置いて、その魔法で守るべきだ。
「ミユ、悪いけど今回ばかりは俺も残った方が良いと思う」
「えぇー、なんでなんで!」
「ラダールさんの近くはとても重要な役割なんだ。敵は何をしてくるか分からないし、もしかしたら彼が死んでしまうかもしれない。そうしたら俺たちの負けは濃くなる。彼の死の可能性を可能な限り下げるためにはユジンの言うように一人でも多く連れていかないといけないんだ」
頬を膨らませて、駄々を捏ねるミユ。俺はそれをなんとか収めさせようと言ったが彼女はそれでも断固として行くという。
見かねたウリルが立ち上がり、ミユを無理やり俺の足から剥がした。
「姉様ダメですよ、今回ばかりは論理的にいかないと本当に危ないんです」
「でも……」
「ダメったらダメです。ラダールさんの命は僕たちの命と言っても過言では無いんです。彼が死んでしまえば本当に僕たちも死ぬかもしれないんですよ」
「……分かった」
ナイスだウリルと俺はウインクする。彼はそれを受け取り軽く頷く。こういう時に姉弟の関係が強く活きることになるとは。
ではひと段落、と思ったがミユが「でも」と続ける。彼女は俺の後ろにいる小人族のリリアを指さして、
「その女の子、ミユのトーマに何もしないでね!」
「え、えぇ? あたしのこと?」
まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったリリアは戸惑いながら返答する。
「別に何もしないから安心してちょうだい。あたし、他人の男に色目は使わないから」
と返すリリアにミユはバチバチと火花を散らしながら見つめていた。ミユのトウマって、俺は別に彼女のものになった覚えは無いんだが……。
「ではこれで一件落着。トウマ殿、そろそろ持ち場に移動されよ」
従者として沈黙を守っていたジュラルが口を開いた。持ち場、と言っても俺たちの場所は知らないんだが……。キョロキョロと見渡していると、アナゼルが俺の肩を引っ張った。
「じゃあ皆さん生きて会いましょう!」
元気に手を振りながら彼は俺を連れていった。アナゼルの言葉にミユを除く皆が手を振ってくれた。依然としてミユは恨めしい視線を向けていたが……。
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アナゼルに連れていかれるまま案内されたのは砂浜にドンと構える大きな灯台のふもと。ここの中に上がって戦えとでも言うのだろうか。
「俺たちは三番街より北側だ」
彼が正面を指さす。俺たちが歩いてきたのは西。南には灯台と、真っ黒な大海がある。これを背中に北上するってことだ。
「にしても意外だったわ。あんたガールフレンドいたのね」
「ガールフレンド……? もしかしてミユのことか?」
彼女に恨めしい視線を送られていたリリアが呆れ気味に言う。もしかしてミユが、私のトウマって言ったことに引っ掛かりを覚えているのだろうか。だとしたら修正をしておく必要がある。
「いや彼女がそう言っているだけで俺にそんな気はないよ」
「勿体ないわねー。女の子からあんなに熱い攻めを受けてるのに」
そうかやはり客観視して彼女と俺が付き合っていると見られているのか。ミユが彼女、考えたこともなかったな。もとよりミユにそんな感情を抱いたことはない。
だって彼女は亡国の皇女だ。国が無くなったとはいえ元皇族ということに変わりはない。国が再興されれば彼女にも良い縁談話がやってくるはずだ。俺が入って良い間合いではない。
「私なら少しときめいてしまうかもです」
「えぇ……俺がおかしいのかな」
頬を少し赤くし乙女心全開となったセイラがそう言う。もしかして恋愛経験が無い童貞というのがここで出ている、という訳じゃないよね。
「まぁ好みなんて人それぞれだからな。男はもっとボンキュッボンが好きなんだよ。チラチラ」
「あんた遠回しにあの子とあたしのことバカにしてるわよね」
アナゼルの言葉にリリアが怒りを露わにする。そういえばリリアとミユは容姿に共通点がある。身長が低いことだけなのだが、もしかしたらミユは自分と近い何かを察知してあのように釘を刺したのだろうか。
「まぁ子供にもいつか青い春がやってくるよ」
「だから! 私は子供じゃないから! 十六歳だって何回も言ってるじゃない!」
十六歳。俺と少し歳が離れてるだけか。まぁ彼女の所作でそんな気がしていたが。
アナゼルが小馬鹿にしながら砂浜の上を逃げるのを必死に追いかけるリリア。やっぱりあそこいい感じじゃん。
セイラを見てみるとこの光景に慣れているのか口角が上がっていた。
「大変? あの二人の中間に立つのは」
楽しそうに眺めるセイラの隣に立ち、俺はそのように聞いてみた。すると彼女は蒼の髪を耳にかける動作をしながら、
「えぇ大変です。でも、あのように面白い光景が見られるので思わずクスッと笑ってしまうんです」
笑顔でそう語る彼女はやはりどこか楽しそうにしていた。まぁこういうのは見てる側が一番面白いものだしな。
「待ちなさい! いい加減にその口閉じさせてあげるわ!」
「おっかねぇな! だから良い縁がないんだよ」
「違うわよ! あんたのせいであたしが周囲にそう見られてるのよ!」
砂浜で追いかけあう男女一組。本当であればリア充爆発しろ、とか思うのだがあの二人のやり取りを見ていると少し微笑ましくなる。
ゼロに恋をしろって言われたが……俺にも青春はやって来るのだろうか。もう十八歳だし、いい加減彼女の一人連れて来なさいって言われたが、やっぱり少し厳しそうかな。
いやいや、俺は一体何を考えてるんだ?
まずはこの戦いを生き延びなければ恋愛なんて出来るわけが無い。気を引き締めないとな。
俺が二人を呼び戻そうとした時、「あー、あー聞こえてるかな?」という放送が入った。
次回 第四十四話 「チームワーク」
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