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【未来日記で運命が変わる異世界物語】  作者: ねこラシ
三章 名無しの放浪者たち
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第四十一話 「士気を高めて」

 因縁の二人が向かい合っている。深夜帯、とまではいかない夜が深くなり始める午後九時台。ミナバルトの街、その中央で激しい戦いが巻起きようとしていた。


「死ね……っ!」


 『昇神教』の幹部である青年が銀の仮面に月光を浴びせながら腕を薙ぐ。青年の挙動に沿うように不可視の斬撃が飛ぶ。

 対面しているのは『幹部殺し』と呼ばれるラダール・トラヴィス。すぐさま防御魔法を展開し、攻撃を防いでみせる。


 長年『昇神教』の相手をしていた男は歳を食ったとはいえ、実力は絶頂期にも負けない。豊富な知識と経験は未だに健在なのだ。


「ふむ……見た事がない攻撃じゃ。さては『祝福』の力、はたまた幹部の特権じゃろうか」


「――っ!」


「おぉ顔は見えないのじゃが、体がピクリと反応したのう。無駄じゃよ、ワシの防御魔法は普通のそれとは違うのじゃ」


 奴が飛ばす攻撃は人間の四肢を軽々と切断する。人の肉体を切り裂いたとて、威力は劣らず人を通り抜け後ろの壁に傷跡をつける程だ。にも関わらず、ラダールの防御魔法は何事も無かったように眩い光を放っている。


「うぉららぁ!」

「やってやらぁ!」

「街から出ていけや!」


 周囲を取り囲む信者達が圧倒され始める。それを見ていた連中の一人が幹部に耳打ちをする。コソコソと何かを伝えると、幹部の男は軽い舌打ちを入れて、


「ここは退く。だが覚えておけ。街の放送が鳴った時、この街全体を使い生き残りを賭けた殺し合いをする。手段は選ばない、勝った方がこの街に残り、負けた方が出ていく」


「良いじゃろう。自分で言った以上、必ず守るのじゃぞ」


「当たり前だ。僕は約束を違えない。お前を殺すのはこの僕だ。今夜限りの人生。残りの数時間楽しむといいさ」


 捨て台詞のようなものを吐き捨て幹部の男は「撤退だ」と叫んだ。すると、軍隊のようにその声掛けに応答し、フッと消え去った。


「すみません。何も出来ませんでした……」


「良いのじゃよ。あれはワシの戦いじゃからのぉ」


 その場に座り込み、傍観することしか出来なかった。ラダールが扱った防御魔法、あれはヘルメスが俺に教えた『プロテゴ』と似て非なるものを感じた。


 俺は彼の手を借りて立ち上がり、礼を伝えようとした時、


「トウマ殿!」


 屯する街の住人や冒険者たちを押し退けてジュラルが走ってきた。呼吸は乱れ、顔はどこか心配そうにしている。


「大丈夫です。なんとか無事です」


「貴殿が連れていかれた時、血の気が引きましたぞ」


「すみません。でも、こうして生きて再会出来たので良かったです」


 ホッと安堵の息を漏らすジュラルの後を追うように、他の五人も駆け寄ってきた。先頭をやって来るミユは俺に飛びついた。


「だいじょぶ? 死んでない?」


「死んでない死んでない。なんとか、ラダールさんのおかげで」


 街長の名前を口にした時、皆が「ありがとうございます」と頭を下げた。が、ラダールはその感謝を笑いながら受け取り「当然のことをしたまで」と言った。


「しかし、街全体を巻き込んだ戦いに発展するとは思いもよらなかったな」


 ワンジュの言葉に皆が頷く。

 初めはミナバルトで起きている殺人事件の犯人を追っていたのだが、それが『昇神教』という世界規模で活動する組織で、その一味がこの街に巣を作り始めているなんて思わなかった。


「これからのことを話したいので、皆を集めるとしようかのぉ」


 最早これは俺たち六人でどうこうできる戦いではない。みんなで立ち向かわなければいけない、街の存亡をかけた戦いだ。



─────────────


 

「さて、集まったかのぉ」


 俺たちはそのまま広場を活用し、作戦会議を立てることにした。およそだが、今ここにいる人間は千人程度だ。ミナバルトの街は人口が千人、という訳では無い。


 戦える住人プラス冒険者たち、という構成であり非戦闘員は街の外に避難してもらった。近くにはザマスがある。あそこなら、争いは起こらない。


「では早速――」


 ラダールが台の上に登り、周囲をぐるりと見渡して言う。


「まずは皆、集まってくれて感謝する。今夜、このミナバルトでは街の未来を左右する戦いが発生する。敵は世界的組織の『昇神教』。一人一人が猛者であり、中でも幹部の男は指折りの強さ。我々はそれと対峙せねばならん。この中で、誰が死に、誰が生き残るは正直分からぬ。もしかしたら、全員死ぬかもしれん」


「ぜ、全員って……」

「やっぱり、やめておいた方が……」

「俺、帰ろうかな、まだ死にたくねぇ」


 嫌な空気を纏い始める大衆。だがこれはラダールも想定はしている。


「無論恐ろしいじゃろう。じゃが、それでも戦わねばならぬ。ミナバルトの街は門が無いが、ワシは先程出入りを制限する結界を張った。故に、何人たりとも出ることは叶わん」


 「俺たちを殺す気か!」と罵声が飛んだのを皮切りに、あちこちから非難の声が飛び交う。だがラダールはそれをものともせず続ける。


「そなたらは生き残りたいのか!」


「ったりめぇだ!」

「私はまだこんな所で死ぬたまじゃないのよ!」


「じゃったら初めからここに残るでない! 戦うと、この街を助けると決めたのじゃったら最後までやらぬか!」


 咆哮に近い声に皆がビクッと反応する。老齢の身で大人顔負けの大声だ。


「ミナバルトの民と、未だ名が知られておらぬ冒険者たちよ。そなたらは栄えある騎士だ。街のために己の命を捧げんとする誠の騎士!」


「冒険者たちよこの戦いが終わった後に大いに知らしめると良い。我はミナバルトの地で、全身に血を浴びながら悪と戦い打ち勝ったと! 膝を曲げず最後まで立っていたと! やると決めたのならやり通せ! 刃を振り上げたなら最後まで振り切れ! そなた達は今晩、歴史に残る戦いに参戦する勇者だ!」


 ラダールの演説に徐々に心奪われ、先程のマイナスな雰囲気から暑い炎が脇上がろうとしている。


「この一晩で、我々の手によって歴史が動くのじゃ! 勝てば官軍、負ければ賊軍。そんな賭けのような戦いにはさせぬ。お主たちには『昇神教』を恐怖に貶めた『幹部殺し』ラダール・トラヴィスがおる! ワシがいる限り、そなたらの勝率は百を超えており負けることなどないのじゃぁ!!!!」


「「「――っ!」」」


「立ち上がれ! この一晩で、世界に知らしめるのじゃ! 冒険者たちよ、ミナバルトの民よ! 悪なる組織を全滅させるぞぉぉぉぉぉ!」


「「「ぉぉぉぉおお!!」」」


 地をどよめかずほどの歓声が夜の街に響いた。


 

次回 第四十二話 「作戦会議」


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