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第1話 おっさん、魔界の状況を知る

焼け跡の村ゾル・ヴァレアの崩れかけた民家の片隅。

仁はぼろ布を肩にかけながら、焚き火の前で静かに考え込んでいた。


「……それで? この魔界ってのは、今どうなってんだ?」


問いかけに、リリスは薄く微笑む。

だがその瞳の奥には、憂いと緊張が色濃く混じっていた。


「“魔界”は一つの国じゃないわ、仁。今は七つの大領主がそれぞれの勢力を支配してる。まるで、戦国時代みたいなもの。」


「マジかよ……やっぱ国家ってのは、どこ世界でも揉めてるんだな。」


リリスは頷き、焚き火に小枝を投げ入れながら、ひとつずつ説明し始めた。


七つの魔王領土(リリスの語り)

「まず、力と闘争を信奉する灼熱の魔人――焔王バルザーク。彼の支配する『ラヴァストラ』は、血と火の修羅の国よ。生き残った者しか“存在”を許されない。」


「うへぇ……完全に筋肉脳だな。俺が行ったら『お前も戦え!』って一瞬で殺されそうだ。」


「次に、幻覚と誘惑の沼の夢蛇妃アザレアの『ミラージュ沼界』。彼女の民は、永遠に夢を見続けてる。“気づかぬうちに奴隷”にされる土地よ。」


「うわ……リアルに怖いやつじゃん……」


「そして、死の理を司る不死の支配者の冥帝ゾル=オメガ。領地『ネクロディウム』は、全てが死者で構成された国家。理性的だけど、感情も命もない。彼の後ろに“人間の裏切り者”がいるって噂もある。」


仁の目が鋭くなった。


「人間の……裏切り者? まさか転生者ってことも?」


「可能性はあるわ。」


焚き火の炎がパチパチと音を立てる中、リリスの声が少し低くなる。


「残りの三つも厄介よ。飢えと本能で動く蟲の王のグズゥ・ザ・ハングリィ。理性はあるけど、基本的に何でも食べる。“食べる”ことが正義の世界よ。」


「俺、狼男だから“うまそう”とか思われたら即終了だな……」


「それから、神を騙る双子の姫のメネス&メノス。彼女たちの“クレイヴァ教国”は、日によって秩序と混沌が入れ替わる不安定な国。しかも私の“堕天の血”を、異端とみなしているわ。」


「おいおい、今のとこ安心して行けそうなとこ一個もねぇじゃん!」


リリスは最後に、口元を少しだけ緩めて言った。


「最後に、あなたがいま目指すべき場所……吸血鬼ヴァルグリム伯爵が治める『ドラキュラス』。そこには、私の叔父がいるの。」


仁は眉を上げた。


「え? 叔父って……お前、吸血鬼の血も入ってんのか?」


リリスは頷いた。


「私は“堕天”と“夜族”の混血。ドラキュラスは、魔界で最も秩序だった都市国家。戦争は好まないけれど……内部には、“黒い議会”と呼ばれる秘密組織があるわ。私の父もそこに関わっていた可能性がある。」


仁はしばらく沈黙し、焚き火の炎を見つめていた。

どの国もろくでもない。

だけど、この“強さの制御”の真相に近づくためには、一歩踏み出さなきゃならない。


「よし、決めた。最初はドラキュラスだ。お前の叔父さんに会って、真相のヒントを探そうぜ。」


リリスは静かに頷く。


「ありがとう、仁……。でも気をつけて。“夜族”は、優雅に見えて誰よりも冷酷よ。」


ゴブ郎が、荷物の縄を引っ張りながら小さく叫んだ。


「おっさん! オラ、準備できたよ! ドラキュラスって……ドラキュラさん、怖くない?」


仁は笑いながら斧を背負う。


「安心しろ。怖かったら、俺がぶっ飛ばしてやるさ。」


こうして、三人の旅は始まる。

向かう先は、血と夜のドラキュラス

そこに待つのは、リリスの過去、バーサーカーの正体、そして……この世界の“裏切りの根”であった。



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