表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第5話 おっさん仲間と旅立ち、敵を知る

焼け落ちた村の朝は静かだった。

多田野仁は斧を肩にかけ、深く息を吐いた。


「もう、このままじゃいけねえ。俺は強くなる。絶対に強くなって、守りたい奴らを守るんだ。」


ゴブ郎が目を輝かせて近づく。


「おっさん、僕も一緒に行く! もっと強くなるって決めたんだ!」


リリスも穏やかに微笑みながら言った。


「私もあなたと一緒に行くわ。あなたの力になりたい。」


仁は二人の顔を見て、心に熱いものがこみあげた。


「ありがとう、リリス、ゴブ郎。俺、弱虫だったけど、もう逃げねえ。」


三人は村の跡を後にし、魔界の荒野へ足を踏み入れた。



旅の途中、うっそうと茂る森で異変が起きた。


「……あれは?」


ゴブ郎が指差す先に、巨大なトロールが立っていた。

その目は仁たちを敵視し、棍棒を構えている。


「俺たちの仲間か?」


仁が声をかけるが、トロールは唸り声をあげ、襲いかかってきた。


「こいつ、敵だ!」


リリスは魔法詠唱を始め、仁は斧を振りかざし、ゴブ郎も勇気を振り絞って前に出る。

仁が低く呟く。相手は、巨大な岩のような棍棒を持つ、凶暴なトロールだった。

だが、目つきは冷たく、どうやら無意味に襲ってくる相手ではないようだ。


「一筋縄じゃいかねえな……」


リリスが小声で言う。


「力だけじゃ勝てない。どうやって戦う?」


仁が仲間に呼びかけた。


「俺は正面から挑む! お前たちはどう動く?」


ゴブ郎が即答する。


「僕は足元を狙う! で、トロールが倒れたら僕がしめる!」


リリスは冷静に答えた。


「私は魔法で相手の視界を乱すわ。お互いの攻撃のチャンスを作るの。」


作戦は決まった。


仁がトロールの正面に立ち、斧を構える。

彼の狙いは、巨大な棍棒を振りかざす隙を作ること。


「来い!」


トロールが大きく棍棒を振るうが、仁はわずかに身体をかわす。

その瞬間、リリスが風の魔法で相手の目に砂塵を送り込み、視界を奪った。


ゴブ郎は素早くトロールの足元に回り込み、岩の根をつかみ引っかける。


「足を取ったぞ!」


トロールはバランスを崩し、大きな体が揺れる。


「今だ!」


仁が全力で斧を振り下ろし、トロールの膝を狙い撃ち。

大きな音と共に膝が砕け、トロールは崩れ落ちた。


しかし、まだ倒れてはいない。

巨体を起こそうと必死に足を動かす。


「リリス、続けて目を封じて!」


リリスはさらに魔法の結界を展開し、トロールの動きを封じる。


「ゴブ郎、後ろからサポート頼む!」


ゴブ郎はすばやくトロールの背後に回り込み、小さな拳で急所を連打。


ついに、トロールは動かなくなった。


仁は息を整えながら言った。


「ただの怪物じゃねぇ。知恵もある。だから俺たちも知恵を使わねえとな。」


リリスは頷き、静かに話す。


「魔界の敵は強い。だけど、私たちも負けない。

力と知恵、そして絆があれば。」


ゴブ郎も誇らしげに言った。


「おっさん、僕らチームだもんね!」


仁は仲間たちに目をやり、力強く答えた。


「そうだ。俺たちは一人じゃない。どんな敵でも倒してやる。」


仁は息を切らしながら言った。


「魔界には俺たちみたいな味方じゃねぇ奴らもいる。気を抜けねぇな。」


リリスは真剣な眼差しで頷く。


「そう。しかも……私の家系には、ある秘密があるの。」


「秘密?」


仁が問う。


「私の一族は古代魔族の血筋。だが、その中に裏切り者がいる。彼らは我々を内部から崩そうと、暗躍しているのよ。」


ゴブ郎が不安そうに顔をしかめる。


「そんな……魔族の中にも敵がいるなんて……」


リリスは静かに答えた。


「この魔界は一枚岩じゃない。仲間も敵も入り混じる、複雑な世界よ。」


仁は力強く拳を握りしめた。


「俺はこの世界で生き抜く。仲間を守りながら、敵も倒す。

そして……必ずリリスの秘密も暴いてみせる。」


ゴブ郎が笑顔で言った。


「おっさん、僕も頑張るよ! 一緒に強くなろう!」


リリスも優しく言葉を添えた。


「あなたならきっとできる。だから、一緒に歩きましょう。」


三人は重い決意を胸に、まだ見ぬ魔界の地平線へと歩みを進めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ