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いつわり郷  作者: 融点
月と島の守護
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6.マネオン・パラスカナイス島保全委員会

お読みいただきありがとうございます。

 さっき、金庫の整理でも使用としたのだが、壊れて鍵をかけられなくなっていた。鍵なくても大丈夫だろうけど。

 鍵をつけたいから、持ってきた南京錠でガチガチに閉じようとしたのだが、その南京錠がバックの中からは見つからなかった。

 杉近さんがいいって言ってたから、外に探しに行った。船はいいや。そして、今ホテルの周辺を見渡しているところだった。

 現在時刻九時半。あれからあまり時間は経っていない。八月ということもあって、やっぱり少し蒸し暑い。知らない場所でそんなに長い時間起きているのは気が引けるから、そろそろ寝たい感じもするがまぁまだいいだろう。と言ってしまうと、正直南京錠もなくていいかもしれないが……

「ないな~」

 ちょっと暗くて見づらいが、必要最低限の情報は得られる。

 ……でもやっぱり分かりづらい。

 何故か懐中電灯は持ってきていなかったから、どうもすることはできない。明日の朝探すか……

 結局船も一人で行きたくないので、やっぱり明日探すことにした。ホテルに戻ろうとしたとき、後ろから強い風が吹いた。

「うわ」

 パタン。強風の衝撃で、ウェルカムと書かれたドアプレートが落下した。これが落ちるって、結構な風だったのではないだろうか。

 落ちたドアプレートを直そうとして、僕は地面の上にしゃがむ。

「あっ」

 来るときはあまり意識していなかったが、ホテルの前にあった段差に足が引っかかってしまった。そのまま壁の方に倒れる。

「ゴッ」

 えっ?

 ドアプレートがかかっていた位置辺りだろうか。一つの煉瓦がボタンのように押し込めるようになっていた。……どうなるんだ?

「ゴゴゴ……」

 煉瓦の一部がスライドドアのようになって、目の前に空間ができた。その空間から、まさに人工的と言えるであろう、僅かな光が漏れた。

「え、え?」

「誰?!」

「えっええっ?」

 僕の視界に、なんか威圧感のすごい二十代くらいの茶髪の女性が飛び込んできた。何だこの人?

「どしたのー。……だれ?」

 今度は奥から四十代くらいの中年男性。しっかりしてそうともぼーっとしてそうとも言えない雰囲気を醸し出している、が、多分優しそうっていっていいんだと思う。

「わかんない。急に入ってきた。何?中学生?」

「小学生です。」

 ここに来て何故か自分が落ち着いていることに気づく。

「どっから来たの」

「東京の小学校の自由研究で……」

 よく見ると、特にその人は自分に危害を与えそうなものは持っていなかった。

「名前」

「天安軟です。」

 あれ、なに安安と答えてんだろ。

「ハァ…どうする?」

「まぁ別にいんじゃない?口軽く見えないし」

 なんか変な偏見をされている気はする。でもそんなことより、別にいいんじゃないという言葉に、なにか恐怖感を抱いていた。

「まぁいいや。座りな。」

 何もした覚えはないけど、なんか指示されたから座ろう。

 随分慌てていた感じがあったのだが、急に冷静になったように見える。

 この部屋は、なんだか事務所って感じの雰囲気がある。鉄でできた棚にファイルがズラって並んでいて、……エアコンはないものの、電気はしっかり付いている。仕事場って感じの部屋は個人的に好きだ。そんなこと言ってる場合じゃないけど。

 指示されたようにそこにあった椅子に座る。結構ちゃんとした椅子で、普通に店に売ってそうだ。ホテルに入ったときもそうだったが、やっぱり外とのギャップがありすぎる。

「絶対に、この場所のことを言うんじゃない。」

「別に変なこと企んでるわけじゃないからね。悪の秘密結社とかじゃないよ。」

 女性の後に、その中年の人が補足する。……厨二病だとでも思われているのだろうか。

「らん、この場所が何かぐらい言っていいんじゃない?」

「うーん、いっか。」

中年の人から目を逸らして、こちらを向いた。

「ほんとに自由研究できたんか」

 僕はなんとなく頷く。

「一人で?」

「友達と、友達の父親と合わせて五人で来ましたけど。」

「……じゃぁ、これだけは守れ?」

 また頷く。

「絶対にこの場所のことを言うな。」

 何回言うんだ。今度はさっきよりゆっくり頷く。

「よし。じゃぁ言おう。この場所は、この島の町内会みたいなもんだ。この島を保全するための場所だ。だから悪ではない。」

「そう…なんですね。」

「それで今、けっこう大変な事が起きている。だからできるだけあんまり関わるんじゃない。以上」

「……じゃぁ、出てけってことですね?」

 二人はしばらく互いを見つめ合って、中年の人のほうが、

「んま、知ってはおいてよ。」

 と言った。どういうことだろう?

 まぁいいかと、僕はその場を後にした。鍵が閉められているとかそういうのはなく、普通に出ていけた。……悪ではない……

 その部屋から出ていくとき、女性の方の目の奥に、何か悲しい感情が伺えるような、そんな気がした。

...けっこう大変なこと、ってなんでしょうか?

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